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■夏の日の想い出・港のヨーコ(12)

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「でも冬ちゃんが、しっかり貯金してるなら充分音楽出版社を設立して音楽制作していく資金はありそう」
 
「音楽出版社って、登録料とか必要なんでしょうか?」
 
「別に必要無い。まあ業界団体のMPAに入会したければ入会金5万円。年会費12万円。もっとも最初は準会員にならないといけないから、その場合は入会金無しで年会費6万円だね」
 
「なるほどー。趣味で作ったような会社は入らなくてもいいよという会費だ」
「そうそう」
 

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「でも個人的に音楽出版社を作っても、仕事がしていけるのでしょうか?この業界は、人と人とのつながりが大事だから、できたら色々な人と協力できる体制を作った方がいいよ、と」
 
「と、その人に言われたわけだ」
「あはは」
 
「冬ちゃんが、そう思ってくれているなら好都合。まあ、要するに今日は相乗りできないかなという打診な訳よ」
と丸花さんが言う。
 
「つまり、私とマリを中心とする権利管理会社を設立して、そこと今争っている10社の中のどこかとが委託契約を結ぶ形に持って行ければいいかな、という線になりますかね。それでその権利管理会社に、みなさん相乗りなさると」
 
「冬ちゃん、よく分かっている」
 
「みなさんに、その管理会社の株主になって頂けたらいいんでしょうか?」
と私は訊いたが
 
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「それをやると、あからさますぎるからさ。こないだから、僕と兼岩さんで話し合っていたんだけど、匿名組合を作ろうかと」
と丸花さんが言う。
 
「どういうものでしょう?」
「出資者の名前を出さずに特定の企業などに投資する仕組みを作ることができるんだよ。元々は少額出資者のための仕組みだけどね」
「ああ。出資してくださる会社でその組合を作って、その組合が株主になる訳ですか?」
 
「そういうこと。君たち2人で裁量権を留保したいなら、君たちふたりで67%以上の株を持って、匿名組合は19%以下にすればいいかなと」
 
「ではちょっと持ち帰って検討を」
 
「あはは。まあ、その人を信頼しているみたいだから、よくよく話し合ってごらん」
「はい」
「19%って何か意味があるんですか?」
「それもその人に聞くといいよ」
「はい!」
 
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その後、今勧誘されている10社の内、△△社と∴∴ミュージック以外の実態がよく分かっていなかったので、情報がもらえたらということで尋ねたら、各々の事務所の方針や雰囲気など色々教えてくれた。アーティストとの揉め事などについても可能な範囲で教えてもらう。やがて16時半を回る。
 
「あ、そろそろ本土に戻る最終便が出るよ」
「また、その内どこかで話をしよう」
「はい。じゃ、皆さんもお帰りになりますか?」
 
「あ、僕たちはもう少し話したいから、冬ちゃん先に帰って」
「はい。でも帰る手段は?」
「うん。適当に」
 
などと言っておられるので、挨拶して先に帰らせてもらった。
 

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猿島から三笠桟橋に戻り、缶入り烏龍茶を買って飲みながら、横須賀駅までのんびりと歩いていく。駅に着いて帰りの切符を買おうとしていたら携帯が鳴った。
 
「ハロー愛しの君」
と私はオフフックするなり言う。
 
「冬も少しは気の利いた挨拶できるようになったね」
「どうしたの、マーサ?」
 
「今横浜に来てるんだけどね。冬、出てこられない?」
「行くよ」
「じゃ、そこから2時間くらいかな」
「今横須賀に来てるんだよ。だから1時間で行ける」
 
「じゃ横浜駅前の松坂屋の8Fレストランフロアで待ってる」
 
「松坂屋? 横浜の松坂屋は去年閉店したし、駅前じゃないし」
と言って少し考えて
「もしかして高島屋ということは?」
 
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政子がそばに居るっぽいお母さんに訊いている感じだ。
 
「ごめーん。高島屋だった」
 
政子と待ち合わせする時は、固有名詞が怪しいので、なかなか危ない時がある。以前も神田駅まで来てというので行ったら、向こうは神保町駅に居た、なんてことがあった。13時と3時の間違いなんてのもよくある。
 
「OK。じゃ、そこ行く」
 

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待ち合わせ場所に私が行くと
「おお、今日は完璧に女の子の格好だ」
と政子は嬉しそうに言った。
 
政子とお母さんで美術展を見に来たのだと言っていた。多分東京から少しでも離れた所の方が落ち着けるかなというのもあったのだろう。一緒に中華料理店で夕食を取り、のんびりと会話を楽しんだ。
 
「この子、期末テストは全教科80点以上で、先生にも褒められたんですよ。1月に休んでいた間に行われていた実力テストを参考で受けさせてもらったのでも校内100位相当の点数だと言われましたし」
 
「ローズ+リリーをしていた時期も政子さん、たくさん勉強していましたし、1月に休んでいた間も、随分勉強したみたいですね」
と私。
 
「うん。私結構頑張った」
と本人も言っている。
 
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「やはり歌手やっていた時期って、勉強自体も時間が限られるから、その時間内に効率よく勉強する習慣が付いたし、歌手の活動自体も、曲を短時間で覚えなければいけないから、とにかく集中力が鍛えられた感じですね」
と私は言う。
 
「うん。またやりたいくらい」と政子。
「そうだねえ」とお母さん。
 
「そろそろまたローズ+リリーやりたくなってきた?」
と私は試しに訊いてみた。
 
「やりたい。ここ3ヶ月近く歌ってなかったから、かなり欲求不満」
「誰かのライブのゲストコーナーとかにちょっと出てみる?」
 
「そうだなあ。お父ちゃんと歌手やめるって約束したしなあ。でも歌いたい気はする。こっそり歌っちゃダメかなあ」
などと政子は言っている。
 
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「もう少しほとぼり冷ましてからにしなさい」
とお母さん。
「それと4月の模試までは、あんた執行猶予中なんだから」
「だよね〜。これ作ったんだよ」
 
と言って政子は、パスポートを見せてくれた。
「なるほどー」
 
「これがあればいつでもタイに連行できる、ということらしい」
「あはは」
 

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「でもさ、冬」
と言って政子はひじょうに重大な問題を打ち明けた。
 
「私ね。凄く歌いたい気持ちでいるの。でも今、歌う自信が無いの」
「ん?」
 
「私さあ。ハッキリ言って歌下手じゃん。去年の秋から冬にかけて歌手活動していた時もさ。こんな下手な歌で、お金取って聞かせてもいいんだろうかってずっと悩んでいた」
 
「マーサは去年の春頃からすると別人かと思うくらい上手になったし、歌手活動していた最中も8月頃の歌と12月の歌では、かなり違っていた。凄く上手になったよ」
 
「そうかなあ・・・」
 

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食事が終わった後で、お母さんは
「ふたりだけで、ゆっくりしてらっしゃい。あ、これホテルのクーポン。冬ちゃんのお母さんにもこの件は話しているから」
 
と言って、クーポンと避妊具を政子に渡して、笑顔で帰って行った。
 
「えっと・・・」
「双方の親で話して、ホテルのクーポン渡されたって、今夜くっつけという意味ね?」
「うーん」
「先週ふたりきりにしてくれた時に、避妊具が開封されてなかったから、今夜こそくっつきなさいという意味ではないかと」
「まいっか」
 

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そういう訳で、私達はタクシーでそのホテルまで行った。ダブルの部屋が予約されていた。年齢は20歳と書きなさいと言われていたので、それで記帳する。今日はふたりとも私服なので、女子大生くらいに見えないこともない。
 
「ここ幾らくらいかなあ」
「微妙な所だね。普通のビジネスホテルよりは少し高い。1万7千円くらいかな」
「なるほど」
「きっと、うちのお母ちゃんとマーサのお母ちゃんが半分ずつヘソクリ出したんだよ」
「悪いな」
 
「ボクとマーサの初夜のためにね」
「そうだったのか」
 
「マーサの御両親からすると、今回の事件で娘が《傷物》になっちゃったから、結婚してくれそうな人がいたら、取り敢えずボクでもいいからくっつけちゃおうという魂胆。うちの親からするとこの子がもし女の子と結婚してくれるなら、この人しかいないという魂胆。両方の親の思惑が一致した」
 
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「なるほどねぇ」
 
と言ってから政子は少し考えるようにして
 
「だったら、後でお風呂入ってから、私をベッドまでお姫様抱っこ」
「いいよ」
 
すると唐突に政子は『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』の繰り返し部分を歌った。
 
「どうしたの?」
「なんか突然歌ってみたくなった」
「たくさん歌うといいよ」
 
「よし、歌おう」
と言って、政子は昨年9月から12月に掛けて、キャンペーンやライブで歌った歌をたくさん歌った。私は手拍子しながら聴いていたが、その内
 
「冬も一緒に歌おうよ」
と言うので、一緒にまたたくさんの歌を歌った。
 
2時間くらい歌ってから
「お腹空いた」
と言うので、ホテル近くのコンビニに行って、食糧を大量に仕入れてきた。
 
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眠ってしまわない内に「儀式」をしようと言って、シャワーを浴びて身体を拭いてから、頑張って政子をお姫様抱っこして、ベッドまで運んだ。
 
「でも冬、今夜は男の子モードでもいいのに」
などと、ベッドの中でキスをしてから言われる。
 
「だって、マーサの前ではボクは本来の自分でありたい。おっぱいがあって、おちんちん無いのが、ボクとしては自分の真実の姿」
 
「真実の姿というか、実は本当にもうおちんちん無いとか?」
「まさか。タックしてるだけだよ」
 
「まあいいや。でも今夜はちゃんと私を逝かせてよ」
「コンちゃん開封する?」
「冬は逝かなくていいから、開封不要」
 
「了解」
 

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12時過ぎまでひたすら愛し合って、それから
「そういえば、まだおやつ食べてなかった」
 
などと政子が言い、ベッドに腰掛けて、一緒にサンドイッチやハンバーガーなど食べた。
 
「せっかく暖めてもらったのに冷めちゃったね」
「無問題」
 
と言ってから政子は唐突に訊いた。
 
「『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』ってさ、あれヨーコを探していた彼はヨーコに会えたのかなあ」
 
「会えたと思うよ」
「ふーん」
「でも多分、元の鞘に戻ることは拒否された」
「ほほぉ」
「だってその気があるなら行方をくらませていない」
「だよね〜」
 
「マーサはどう思う?」
「見つけたと思った彼女は別のヨーコで、人捜しは振り出しに戻る」
「ああ、それもありそうだね」
「ヨーコなんて名前はいくらでもあるし」
「確かに」
 
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「須藤さん、どこに居るのかなあ」
「どこかは分からないけど、元気にしてると思うよ。花見さんのことは心配しないの?」
「まあ生きてることは確実だよ。どんな目に遭ってるかは知らないけど」
 
と言ってから政子は
 
「でも行方不明者が2人も出るとは凄いプロジェクトだ」
などと言う。
 
「全国のファンからすると、行方不明になって動向が分からないのはケイとマリのほうかもね」
 
「・・・私は今すぐはステージに復帰する勇気無いけど、ケイだけでもひとりで復帰しない? 冬は凄く歌手やりたい感じ」
 
「ボクが歌う時は、マリちゃんと一緒だよ。ソロでは復帰しない」
 
「でも冬、高1の頃は、詩津紅ちゃんとかとも歌ってたんでしょ?」
「マリちゃんと歌えることが前提にあれば、他の子とも歌う。でもソロ歌手はしないつもり」
 
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「ふーん。でも私が復帰するの500年くらい先かもよ」
「いいよ。500年待つから」
 
政子は微笑んでいた。
 

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大量にあったはずの食糧は30分くらいで全部消えてしまった。
 
「よし。朝まで頑張ろう!」
「何を?」
「もちろん、私達の初夜」
「もう、そろそろ寝ない?」
 
私はライブで疲れているし、その後横須賀まで往復してきている。明日はKARIONの音源製作(『恋愛貴族』)が待っている。
 
「夜明けまでは頑張るよ。ここチェックアウト何時だっけ?」
「11時と書いてあったよ」
「夜明け何時か分かる?」
「5時半くらいかな」
「じゃ5時半まで頑張って、その後寝てから帰る」
 
まあ、確かに音源製作は13時からだけどね。
 
「まずはキス」
と言って、政子は私に抱きついてキスをした。
 
 
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■夏の日の想い出・港のヨーコ(12)

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