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■夏の日の想い出・港のヨーコ(8)

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しかしこの百道の記者会見のおかげで、私と政子の家の周りにはまた大量に記者が湧いてしまった。敷地内まで侵入してインターホンで「見解を聞かせてください」と言う記者までいた。
 
町添さんから電話が掛かってきて、私、私の母、政子、政子の母、そして職場に居る私の父、タイで会社を早引きしようとしていた政子の父とで、チャットで善後策を話し合いましょうということになった。
 
政子の家にパソコンが1台しか無いので、偶然自宅に居た秋月さんがノートパソコンを持って政子の家に急行したということで、その到着を待って始める。(秋月さんは会社からより自宅からの方が政子の家に近い)
 
(町)このチャットはオフレコということにしませんか? お互いの信頼の許、ログは自主的に消去しましょう。 
 
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(唐本大史)了解です。 
(中田晃義)了解です。 
 
(K)最初に発言させて下さい。あのような事実は全くありません。政子さんが処女であることは私の名誉に賭けて証言します。 
(鞠)私、ケイに処女あげるって何度も言ってるのに、受け取ってくれないんだよねー。 
(K)こらこら。とにかく私達は百道良輔とは、そもそも会ったこともないです。完全な売名行為だと思います。 
 
(秋)最近百道良輔さんはマスコミにも取り上げてもらえずにいたのでガセネタで注目を集めようとしただけだと思います。 
(町)本当はあの手のやからの相手など、しなければいいと思うんですけど、マスコミは話題になることなら何でも取り上げますからね。 
 
(唐本大史)冬彦、お前は本当の所はどうなの?性転換してるの? 
(K)オフレコだから言うけど、本当に手術はしてない。私は身体には一度もメス入れてないよ。 
 
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(唐本大史)オフレコじゃなかったら言えない訳? 
(K)私が本当は女の子の身体なんじゃないかと勝手に想像している友人たちと全国のファンの夢を壊さないように曖昧にしてるんだよ。そう思い込むことで友人たちも私と付き合いやすいみたいだし、ファンの人たちも『仮想女子』
と考えてくれる。 
(鞠)まあ要するに詐欺だよね。 
(K)詐欺に近いことは認める。 
 
(鞠)でも少なくとも11月の段階では、おちんちん付いてましたよ。 
(K)ちょっと、ちょっと。政子さんに見られてはいますけど、性交はしていません。私、意気地無しだから。 
(鞠)ああ、確かに意気地無しだよね。 
 
(唐本大史)じゃ、とにかく事実無根であれば、名誉毀損で訴えるという内容証明でも送りますか? 
 
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(中田晃義)では、本当にそういう事実は無いんですね? でも内容証明送る場合、向こうが破れかぶれで本裁判に進む場合も想定する必要があります。その場合に、事実無根であることを証明できますかね? 
 
(K)私が女性性器を持っていないことは、お医者さんに見てもらって診断書を書いてもらえると思います。 
(鞠)だったら、私も処女だというのをお医者さんに確認してもらって診断書書いてもらおうかなあ。 
 
(中田晃義)処女の診断書だと!? 
 
(K)多分向こうは裁判やる根性は無いですよ。敗訴確実ですから。あの人、借金だらけという噂だから、賠償金払うお金も無いと思う。必要なら診断書出すとこちらが堂々と言うだけでビビると思う。 
 
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(中田恵美)でも、政子、お前本当に処女なの? 
(鞠)取り敢えずまだ破れてないはず? ね?冬。 
(K)なぜ私に振る? まあ少なくとも11月の段階では破れてなかったよ。ごめんなさい、政子さんのお父さん・お母さん。変な事までしていて。 
 
(唐本春絵)お前、政子さんにそんなことまでしてるの? 
(K)うん。でもセックスはしてない。 
 
(中田恵美)若いんだもん。いいんじゃない? この子たちデートする時は必ずコンちゃん持ってるみたいだし。 
 
(K)万一したくなってしまった時は開封して使用する約束です。でも高校を卒業するまでは、使うようなことをするつもりはありません。 
(鞠)使わせようと色々してみるんだけどなあ。性欲が無いのかな。 
(K)無いことは無い。でも普通の男の子より弱いことは認める。 
(鞠)普通の女の子程度の性欲だよね。 
(K)そんな気はする。 
 
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ともかくも、最後は町添さんが、この問題はきっちりこちらで決着を付けるということを明言し、それで政子のお父さんは、日本行き(=政子のタイへの強制連行)を中止したようであった。
 
しかし双方の家の周りに大量に記者がいるので、今夜裏から密かに脱出するという計画は延期することになった。
 

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私と政子はその日の夜、百道の記者会見の内容は事実無根であり、名誉毀損で訴訟の用意があること、またその件について百道の事務所に顧問弁護士名で内容証明を送付した旨のメッセージを★★レコードのサイトで公開した。
 
この件について翌日土曜日、加藤課長が記者会見をして、記者たちの質問に色々答えてくれた。
 
「マリさんもケイさんも、万一裁判になった場合は、百道の発言が事実無根であることを証明する医師の診断書を提出してもよいと言っています」
 
「医師の診断書って、処女膜が存在するという診断書ですか?」
「マリさんは高校生ですので、そのあたりの言葉使いは御配慮頂けませんか?」
と加藤課長は言った。
 
「ケイさんの方は性転換手術をしていないという診断書ですか?」
「プライバシーの問題がありますので、ここでは詳細な説明は控えさせて下さい」
 
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「あのぉ、ケイさんが実は元々女性であったという説については?」
「有り得ない話ですね。ケイさんは普段は男子高校生として学校に通っていますよ」
 
「でもケイさんが学生服とか男の子の服を着た写真というのが1枚も見つからないのですが」
 
「ケイさんは女装がとても似合うので、子供の頃から、友人たちによく女装させられて写真を撮られていたようです。それでそういう写真ばかりになってしまったようです」
 
「中学の卒業アルバムとか修学旅行の記念写真とかもですか?」
「あれはジョークだそうです」
 
と言って加藤課長は初めて笑顔を見せた。
 

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金曜日の百道良輔の記者会見の後で良輔本人が事務所からも連絡不能状態になっていたので、弟のロック歌手で、こちらは兄とは違って真面目なスタイルで人気のある、百道大輔の所にも記者たちが押し寄せたようであるが大輔は
 
「兄貴の言うことなんて99.99%嘘だから、そもそもまともに取り合っちゃいけませんよ。僕からもケイさん・マリさんには謝りたい」
 
と半分迷惑そうな顔で語っていた。
 
そのインタビューをテレビで見て、政子は
「99.99%嘘って、冬みたいだね」
などとメールしてきた。
 
「そんなに嘘つかないよ」
と返信したら
「99.8%くらい?」
などと言う。
 
「でも百道大輔さん、格好いいね」
などとも政子はメールに書いていた。
 
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良輔の不良スタイルも演出であるなら、大輔の真面目スタイルも多分演出だろうと私は思っていたのだが、わざわざ政子の気分を害することもないので私は黙っておいた。
 

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しかしこの騒動は結果的には『甘い蜜』のプロモーションのような役割を果たし、発売初日に、あちこちで売り切れる状況となった。1ヶ月間倉庫代を払って保管していたCDのみならず、町添さんが他の役員さんから懸念を表明されながらも念のためと言って自分の責任で少し追加でプレスしておいた分を加えてもソールドアウトで、レコード会社では、慌てて追加プレスを行った。
 
しかしそういう訳で1月末になっても、私たちの家の周りに記者の数はまだ結構居たので、私たちは政子を脱出させるのに苦労することになる。
 
私は24日(土)の晩、詩津紅の所に電話をした。
 
「ちょっと頼みがあるんだけど。ボクと詩津紅の仲に免じて、一肌脱いでもらえないかと思って」
「脱ぐって私をベッドに誘うの? 冬とならホテルに行ってもいいよ」
 
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「違うよ〜。少し面倒なことをお願いできないかと思って」
 

それで結局、私が若葉と入れ替わりで外出していたのと同様にして、詩津紅が政子の身代わりになってくれることになった。ウィッグを付けた詩津紅を含む政子の同級生数名が朝から政子の家を訪れ、出て行く時には詩津紅が家の中に残って、代わりにウィッグを付けた政子が出てきたのである。
 
この計画は百道の騒ぎがあった1週間後、1月30日の金曜日に実行した。百道の騒動から少しでも時間を置いてほとぼりをさましたかったこと、身代わりになってくれる若葉と詩津紅が1日学校を休むだけで済むようにするためである。
 
(事情を話したら双方の学校とも、若葉と詩津紅は出席扱いにしてくれたらしい)
 
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脱出してきた政子は
「冬、なんで◎◎女子高の制服なんか着てるの?」
 
と何だか楽しそうに訊いた。私が女の子の服を着ているのを見ているだけで、政子の機嫌が良くなるのはよいことだ。
 
「私も若葉と入れ替わりで出てきたからだよ」
「そっかー。てっきり冬は◎◎女子高に転校しちゃったのかと思ったよ」
「男の身体のままじゃ女子高には入れてくれないだろうね。でももし転校するなら、政子も一緒だよ」
「それは当然だよね。ということは、私が女子高に転校すると言ったら、冬もそこに来る?」
 
「その時は速攻で性転換手術受けて、政子に付いていくよ」
「ふふふ。それ実行してよね」
 
と言って政子はまた楽しそうな顔をした。
 
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私は秋月さんに車を運転してもらい、政子を連れて伊豆のキャンプ場に行った。そこは高1の夏に書道部でキャンプをした場所で、ここでその時、私と政子は初めてふたりの共同作品を書いたのである。
 
私達の原点とも言うべき場所に行き、私とふたりだけの時間をゆっくりと過ごし政子はかなり精神力を回復させた。しかしまだ本調子ではないと思った私は、翌日、1月31日、政子をその日から始まるKARIONの全国ツアーの初日、東京公演に連れて行った。
 
私は元々この公演に伴奏ででもいいから出ないかと誘われていたのだが、政子との時間を持ちたいのでと言って断っていた。
 
「へー、デートのために仕事をキャンセルするの?」
などと小風からは、からかわれたものの、状況が状況なので、みんな私の行動には理解を示してくれた。
 
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それで政子にハッパを掛けるためにKARIONの公演を見せようと思い、畠山さんに電話してチケットを融通してもらうことにした時、最初「ステージ上の席ならすぐ用意できるよ。マリちゃんも一緒でもいいよ」などとメールがあった。政子をステージに立たせるというのは面白い方法だとは思ったが、さすがにまだ無理かなと思い、私は「見切席でいいので客席の方でよろしく」と返信したら入場用のQRコードを送ってくれた。
 

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入場してすぐ政子がトイレに行ったので、私はロビーでポスターなど見ていたのだが、バッタリと畠山さんに遭遇する。私は至近距離まで近づいて小さな声で言った。
 
「『遙かな夢』を演奏してもらえません?」
「いいよ。でも譜面あったかな・・・」
「私が電話してレコード会社からこの会場のFAXに送らせます」
「うん。じゃ頼む」
 
それで私が★★レコードに電話したら、秋月さんが出た。ちょうど会社に戻ってきた所らしい。それでお願いして『遙かな夢』のバンドスコアをFAXしてもらった。
 
やがて政子が戻って来たので一緒に客席に行く。それでおしゃべりしながら開演を待っていたら、席まで望月さんが来た。
 
「ちょっとよろしいですか?」
と言われたので、政子に「待っててね」と言って、望月さんに付いていく。望月さんは私を楽屋まで連れて行った。
 
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「はい、今日の衣装」
と小風が衣装を渡す。
 
「ちょっと待って。今日は私は観客だから」
「じゃ後半だけでも入ってよ。伴奏でもいいから」
「ごめん今日は和泉を生で見た時の政子の反応を確認したいから勘弁して」
 
すると和泉が言った。
 
「じゃ、アンコール前の後半ラストで『優視線』を演奏するから、それだけでもピアノ弾いてよ。あの間奏の神プレイの所は今日だけ頼んだキーボーディストさんも譜面見て『すみません。これは私には弾けません』と言ったから簡易な間奏に差し替えようかとも言ってたんだけどさ。お客さんはCDやPVを聴いてあのプレイを聴きに来てると思う。だからやって欲しい。これはKARION公演を聴きに来たお客さんのためだよ」
 
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私は和泉の熱い言葉をじっと聞いていた。
 
「分かった。そういうことなら、やる」
と私は答えた。
 
「『トライアングル』を聴き終わった所でこちらに来て頂いたら衣装替え・メイクお手伝いします」
と望月さんが言った。
 
 
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