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■夏の日の想い出・ボクたち女の子(12)
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ところで、ダーリン夫妻はロストボーイたちをダーリン家の子供にしてくれたので、みんな学校に通い、やがておとなになって色々な職業に就いた。
トゥートルズは相変わらずのんびり屋さんだったが、しっかりお勉強して法律家の資格を取り、裁判官になった。トゥートルズの落ち着いた雰囲気は裁判官の威厳になっている。
ニブスは大学を出ると10年くらい小さな会社に勤めた後、独立して自分の会社を作った。そしてその会社を大きくして、大会社の社長さんとして人々から尊敬された。彼は偉そうにしているのが好きである。
スライトリーはこちらに来てからは学校でよく運動するようになり、ネバーランドにいた頃はかなり太っていたのが、引き締まって筋肉質になる。そしてポロの選手になり、1920年のアントワープ・オリンピック (Antwerpen Olympic) で金メダルに輝いた。
カーリーは絵に才能があることを学校の先生が気づき、いい先生について訓練を受け、やがて画家になり、個展なども開いた。
ふたごのノーランとブライアンは音楽を志し、ピアノやヴァイオリンなども習ったのだが、やがて双子歌手として人気が出て、たくさんレコード(*9)を吹き込んだ。
(*9) 現代のレコードの原型になったのは 1887年にエミール・ベルリナーが発明したグラモフォンである。これが発達して1940年頃にいわゆるSPレコードになった。SPの規格(78rpm)が成立する以前のレコードは製造元によって回転速度がバラバラだったが、今日でも回転速度を変更できるプレイヤーで再生するか、あるいはデジタル化してからピッチと速度を変更すれば聴くことは可能である。
そしてウェンディーの実の弟たちだが、冒険好きのジョンは「旅行できる仕事がいい」と言って、鉄道会社に入り、機関車の運転士さんになった。
少しのんびり屋のマイケルはお父さんに勧められてお父さんと同じ銀行に入った。そして若き銀行員として顧客の所を歩き回って、投資商品などを勧めたりしている。
ウェンディは大学を出てから、学校の先生になった。ネバーランドで女性が高い地位を持つ社会を見たので(本当はそれはウェンディの心の中の理想)、自分も頑張ろうと思い、父の反対を押し切り、ウェイトレスのバイトで学費を稼ぎながら女子大を出た。
学校の先生になってから数年経った所で「結婚しても仕事を続けていいから」と言う男性がいたので、結婚して子供も産んだ。そして小学校で児童たちに教える一方でママとしても頑張った。最初に産んだのは女の子で名前はジェーン(Jane), 2番目は男の子でダニー (Danny < Daniel) と言った。
ウェンディは世界大戦(1914-1918),スペイン風邪の流行(1918-1920)を生き延びている。ピーターがやってきたのは、スペイン風邪の記憶も薄れ始めた頃で、まだ第二次世界大戦(1939-1945)が始まる前の束の間の平和な時期だった(*10).
(*10)ピーターパンがお芝居として発表されたのは1904年で、上演中に少しずつ変わっていき、本にまとめられたのが1911年である。それで今回のドラマではウェンディがネバーランドに行ったのを最初に上演された1904年頃と想定した。するとジェーンがネバーランドに行くのは1925年頃という計算になる。
assumed timeline
1904 NeverLand(1) Wendy 13 John 9 Michel 7 LostBoys 5-11 (*11)
1905 NeverLand(2) Wendy 14
1914 Wendy(22) becomes teacher
1917 Wendy(26) marries
1918 Jane is born
1920 Danny is born
1920 Antwerpen Olympic Slightly=25(9+16)
1923? Twin becomes Singer 24(5+19)
1925 Jane(7) & Danny(5) goes to Neverland
1950?? Margaret (daughter of Jane) goes to Neverland
(*11)子供たちの年齢は原作では明確には書かれていないが、ウェンディは12-13歳っぽい。しかしマイケルはかなり幼い。それでウェンディ13, ジョン 9, マイケル 7と想定してみた。今回のドラマで子供たちを演じた俳優の実年齢はウェンディ:アクア20, ジョン:水森ビーナ16, マイケル:羽田小牧14 だが、実際のお芝居でも概して設定年齢よりかなり上の役者さんが使われる。
ウェンディについてはデータが不明確なのだが、ウェンディと似た年齢設定のはずのピーターパンについては、1904年の初演で演じたのはNina Boucicault(37). 1905年に大ヒットしたブロードウェイ版ではMaude Adams(32)がピーターパンを演じている。Maude Adams は原作者が絶賛したこともあり、ピーターパンが当たり役となり、Maude Adams といえば Peter Pan という感じになる(一時期の榊原郁恵に近い:榊原郁恵が初めてピーターパンを演じたのは22歳の時で6年間にわたって演じている)。
ちなみにこの Maude Adams は、007の「黄金銃を持つ男」「オクトパシー」に出演した Maud Adams とは別人。名前が似ているので時々混乱している人がいる。
なお、ピーターパンを男性の俳優が演じたことは、ほとんど無いと思われる。
ピーターが久しぶりに来た時、ジェーンが7歳になっていた。
ピーターは前回と全く変わらない様子で
「ウェンディ、ネバーランドに行くよ」
と言った。
前回ピーターが来てから、もう20年ほどの月日が経っているのだが、ピーターは前回来た時の1年後にウェンディを迎えにきたつもりだった(とにかくピーターは忘れん坊)。
ウェンディは言った。
「私はもうおとなになっちゃったの。代わりに私の子供たちを連れてってくれない」
ピーターはウェンディがおとなになってしまったことにがっかりしたが、ジェーンがピーターに物凄くなついたので、連れて行くことにした。ダニーは「そんなおとぎ話みたいなこと信じない」と言っていたものの、お姉ちゃんがティンカーベルに妖精の粉を振り掛けてもらって浮遊しているのを見て羨ましくなり、自分も粉を掛けてもらう。最初は浮かばなかったが「ネバーランドひょっとしたら、あるかも」と言うと、浮かんだ。それで一緒に行くことにし、2人はネバーランドに1週間の旅に出かけることになった。ピーターが忘れん坊なので、ウェンディはティンカーベルに2人を一週間後に連れ帰ってくれるよう頼んだ。
(ジェーンとダニーは劇団桃色鉛筆の子役さんを使っている。本当に7歳と5歳)
ティンクがウェンディーに
「もう空を飛べないの?」
と訊くが、ウェンディは
「内緒」
と答えた。
「ふーん」
とティンクは答える。
ピーターパン、ジェーンとダニーが窓を飛び出す。
「おーいティンク、行くよ」
とまだ部屋の中にいるティンカーベルにピーターが声を掛ける。
ティンクは妖精の粉をウェンディに掛けた上で、窓から出て行った。
ふわっとウェンディ(アクア)が浮遊して微笑んだ所でウェンディが「終」の文字の入ったペナントを掲げて、ドラマは終了する。
そういう訳でアクアはこのドラマで、ウェンディとフックの二役をしたのだが、フックの造形は、付けひげ・付け眉をして、顔全体に日焼けしたように見えるファンデを塗ってるし、声も男声なので、翌年1月に今回のドラマが放送された時、フックをアクアと認識できなかった人も多かった。それで
「アクアちゃん、今回はウェンディとお母さんの二役をしたんだね」
「やはりアクアちゃん、女の子役だけでいいよね」
「紅白にも紅組から出たし、今後は普通の女優さんとしてやっていくのかな」
「アクアちゃん女の子なんだから、無理に男役することないよね」
などと言われた!
舞音ちゃんタロットの制作が9月一杯までしていたのだが、青葉にはその途中の9月の連休に、ラピスラズリと一緒に“作曲家アルバム”の取材をお願いした。今回の取材先は下記である。(取材日/放送予定日)
9.18/1.10 野潟四朗
9.19/1,24 鹿島信子
9.20/2.07 フェイ・ヒロシ
最初はシュール・ロマンティックの野潟四朗さんである。
シュールロマンティックのメジャーデビューは2015年と遅いのだが、野潟さん自身はそれ以前から作曲家として活動していて、そのキャリアはわりと長い。
ただ野潟さんは音楽に対して厳しい人なので、この日は青葉もラピスラズリも緊張していた。野潟さんが書いて室川美瑠花が歌った曲をラピスラズリは今回歌ったのだが、歌唱指導!が入り、30分ほど指導されていた。でも確かにその30分で2人の歌は物凄く改善された。
野潟さんは音楽に対して多くの持論を持っており、この日の取材ではそれを拝聴するのがメインとなった、特に理論的な問題については、東雲はるこが結構よく反応し、野潟さんも、はることかなり意気投合していたようだった。
野潟さんの御自宅マンションを出た後、町田朱美が
「でもかなり厳しく歌唱指導されたぁ」
と言っていたので、私は
「君たちだから30分で終わった」
と言った。
「並みの歌手なら歌唱指導で1日潰れてますね」
と青葉も笑いながら言うので、朱美が
「きゃー」
と悲鳴をあげていた。
翌日、9/19(日)は、リダンダンシー・リダンジョッシーの鹿島信子を訪問する。
リダンダンシー・リダンジョッシー(略してリダン♂♀←これで“リダンリダン”と読む)は、昨日訪問したシュール・ロマンティックとよく同じライブハウスで演奏していたバンド(元々の名前はベージュスカ:類似バンド名があったのでデビューの際に改名した)で、ほぼ同時にスカウトされ、ほぼ同時にデビューしている。
現在はバンドリーダーで夫の中村正隆(2017結婚)と一緒に暮らしているので、この日も中村さんがお茶を出してくれたりして、結局一緒にカメラに映ることになる。
鹿島信子は極めて常識人なので、今回の取材の中ではいちばん楽だった。鹿島信子が書いて、ムーンサークルが歌った曲をラピスラズリが歌ったら「あんたたち本当に上手いね」と褒めてくれた。
元々“ベージュスカ”という名前だっただけあり、リダン♂♀はホーンセクションを持ち(本来は“ホーン女子”という別のバンドだったのが合体した)、楽曲もスカ系統の曲が多い。しかし結果的に8人という大編成なので、それに合わせて編曲する大変さ、また8人もの人数をまとめていく大変さなども、お二人からは話を聞き出した。
「まあ喧嘩する時は3人のバンドでも喧嘩するからね」
「ある程度は開き直ってるよね」
「今リズムセクション、元々ベージュスカと言っていた4人にしても最初は6人だったんだけど、1人減って2人減って」
「1人はレーサーになると言ってやめて」
「1人は結婚するからと言ってやめて」
「女性ですか?」
「いや。男だと思うよ」
「相手も女性に見えたし」
「本人、女装させたいような甘いマスクだったけど」
「実は彼目当てで女の子のファンがたくさん付いてたから彼の脱退は痛かった」
「私彼からメイクセットの購入の相談受けたから、女装するのかなと思ったけど、彼女へのプレゼントだったみたい」
(要するに信子は女装でステージにあがるようになる以前から、他のメンツには“半分女の子”と思われていたということだが、信子はそれを意識していない)
「やはり結婚するとなると、バイト生活というわけにもいかないから本気で就活しないといけないし、バンドと両立できなかったんだと思う」
「そのあたりって難しいですよね」
「でも4人になってから随分長く一緒にやってるね」
取材が一通り終わって帰ろうとしていた所で、鹿島信子が言った。
「私分かっちゃった」
「はい?」
「世間では朱美ちゃんは、病気で性別が変わってしまって、男の子から女の子になったとか言われているけど、本当は性別が変わったのは、はるこちゃんの方だ」
「よく分かりましたね。実際そうなんです」
と朱美が答える。
ここから先はむろんカメラは動かしてないし、カメラマンとディレクターは目配せして先に車に行った。
「でも私実は彼氏がいるんで、元男の子と思われていた方が“虫が付きにくくて”助かるから、その噂放置してるんですよ」
と朱美。
「ああ、彼氏いるんだ?」
「その件は内緒で」
と私。
(本当は、はるこが元男の子というのがバレにくいように、自分がその噂を引き受けている)
「だからここに性別が変わっちゃった人が4人集まってるんですよね」
と青葉は笑って言っている。
「4人?」
と、はるこがその数字が分からないようである。
「私も男の子から女の子に変わっちゃったからね」
と信子。
「そうだったんですか?」
とはるこは驚いている。
「別に隠してないし、Wikipediaにも書いてあるけどね」
と信子。
そこから先は、中村さんも席を外したので、信子・ラピスラズリ・青葉・私の5人だけで“大暴露大会”になった。
お互いのことを正直に告白したが、はるこが“身代わり”で陰茎を切断してもらったという話に信子が驚いていたし、信子が目が覚めたら女の子になっていたというのにも、はるこや朱美が驚いていた。
「でも結局ここにいる5人は現在は全員妊娠可能な完全な女性なわけだ」
「ただ。はるこちゃんはもう少し体重増やさないと、妊娠した時大変だよ」
「それコスモス社長からも言われてます。私ヨーロッパならBMI規制にかかるらしいです」
「ああ、どう見ても禁止体重を下回っている」
はるこは161cm 35kg なのでBMIは13.5である。ヨーロッパではBMIが18未満だとモデルができない。BMI=18になる体重は47kgだが、161cmなら最低でも美容体重(BMI=20) 49kg 程度はあることが望ましい。
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