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■夏の日の想い出・ボクたち女の子(5)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-09-25
 
アクア・葉月、七浜宇菜や坂出モナ、中村昭恵や斎藤恵梨香などが熊谷で『白雪物語』の音声収録をしていた時期、すぐ近くでは、常滑真音、水森ビーナ、山本コリン、水谷姉妹が、舞音のアルバム制作をしていた。しかし彼女たちは“桜”に泊まっていて、桜はひとつひとつのコテージのプライバシー独立性が高いので、お互いに他の客と接触することは希である。実際アクアたちと舞音たちは遭遇していない。(映画組は7710-7715, 舞音たちは7721)
 
それでお互い近くで制作をしていることには気付かないまま、作業を進めていた。舞音の制作に関わっている伴奏者たちはホテル昭和本館および富士に泊まっている(オーケストラのメンバーは富士 *1)。映画関係者は新館・赤城なので、これもまた接触しにくい。本館や富士に泊まっている人たちは「何か新しい棟ができてる」と思って眺めていただけである。
 
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(*1)本来昭和本館は各部屋にデリバリー、富士は食堂に食べに行く方式だったが、コロナ以降、富士も各部屋にデリバリーしている。自動配送装置を導入したので、人手はかからない。
 
それで現時点では、両者は部屋の広さと内装の違いだけである。昭和本館の部屋には、昭和時代に使われていたような家具調テレビ、トランジスタラジオ、パンが飛び出すトースター、有線リモコンの扇風機、ブラウン管モニターのPC(中身は最新型)、初代のファミコン!などが並んでいて、年齢の高い人はレトロ気分に、若い人はタイムスリップ気分を味わえる。若葉はまだこれらの製造設備の残っていた工場を買い取り生産させている。一部は古い製品を知っている高齢の技術者さんに助言してもらい、再構築したものもある。
 
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一方、富士は普通のビジネスホテルの内装である。ただ各部屋にキッチンや水引などもあり、冷蔵庫も大きいので長期滞在しやすい。一部の長期滞在専用エリアの部屋には洗濯乾燥機も備え付けている(客が出る度に清掃消毒する)。
 
オーケストラ代表?の桜木レイアは過去に何度も昭和本館に泊まっているので「長期滞在するとあそこは落ち着かない」と言って、20-30代が多いオーケストラ・メンバーは富士に泊めることにした。それで両者を分離したいということから、バンドメンバーは本館になった。バンドメンバーは若い人が多いので本館の内装を面白がっていた。ルーシーなどファミコンにハマっていた。
 

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そういう訳で、招き猫バンドの4人はホテル昭和本館に泊まっている。4人の内、木下君と篠原君は寮暮らしなので、郵便物などがあれば、ユキさんかツキさんが連絡してくれる。谷口君と留美はアパート暮らしなので、§§ミュージックのスタッフが郵便物チェックに行ってくれる。
 
谷口君は携帯代の督促状が来ていたが、会社で払っておき、次の給料から天引きにすることにした。
 
「携帯代くらい自動引き落としにしときなよ」
「すみません。残高不足で」
「足りなくなるって、何か借金でもしてるの?」
「ボク、クレカとかも持ってないですよー」
 
どうも彼はお金の管理が適当っぽい。
 

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「今スタッフ寮を作ろうかという計画もあるみたいだけどね」
「へー」
「携帯代の督促状に気付かずに止められて、マネージャーと連絡がつかなくなるという事故とかも結構起きてるからさ」
「マネージャーさんたち忙しいもん!」
「だから寮に入っていれば、管理人さんが督促状には気付くからね」
「それいいかも」
「ただタレントさんたちみたいに無料という訳にはいかないだろうけど」
「それでもきっと普通のマンションよりは安いだろうし、独身のマネージャーさんは助かると思いますよ」
「うん。だから独身のマネージャー・伴奏者を収容しようかという計画みたい」
「そういうのできたら入りたいなあ」
 

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その日は、“都合により”普段ギターを弾いてる木下君がドラムスを打ち、普段ドラムスの篠原君がギターを弾いていた。ところがこの日の木下君はワンピースを着ていたので、何度か足が服にひっかかって、タムを打ちそこなった。
 
「ヒロちゃん、もう少し演奏しやすい服に着替えてきなよ」
とルーシーが言う。
 
「すみませーん。そうします」
 
それで演奏は一休みになり、木下君は着替えに行く。ギターなら別にワンピースでも良かったのだが。
 
「だいたいワンピースってオナニーしにくいでしょ?」
とルーシー。
 
「ボク、オナニーとかしないから知りません」
と木下君。
 
「クラちゃんは、ワンピースではオナニーしにくいと思わない?」
とルーシー。
 
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「僕、ワンピースとか着ないから分かりません」」
 
「翼ちゃんは?」
「僕ワンピースとか持ってないし、オナニーもしないから分かりません」
 
「みんな性欲無いの〜?」
とルーシーが嘆いて?いた!?(篠原君は別にオナニーしないとは言ってない)
 

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それで木下君は着替えに出ていった。
 
「でもどうしてオナニーしにくいんですか?」
と篠原君が訊く。
 
「だって手が入れられないじゃん」
「スカートでは入れられるんですか?」
「ウェストのホックを外したりファスナーを下げれば入れられる」
「へー」
「ワンピース1枚あげるから試してみない?」
「僕女装しないし」
 
「ルーシーさんって、見た目は一番女っぽいのに、中身は一番男性的なのかも」
と翼が言う。
 
「ボクは普通の男だよ」
「絶対普通ではないと思う」
と篠原君が言った。
 
「でも睾丸は取ってるんですよね?」
「睾丸なんて20歳になるまでには取るもんだよ。あんなのいつまでも付けてちゃいけない」
とルーシーが言うので
 
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「僕は取りたくないです」
と篠原君も翼も言った。
 

一方、女子たちが泊まっているコテージ。
 
女の子ばかりの気安さで水谷妹とかコリンが下着姿、どうかするとお風呂からあがった後、パンティだけでソファに座ってスマホを見てたりするので、ビーナがたまりかねて
「ふーちゃん、せめてTシャツでも着なよ」
と言う。
 
(水谷雪花の本名は溝口双乃)
 
「だって暑いじゃん」
と雪花。
 
「なんか今年は猛暑だよね」
と言っているコリンもブラとパンティだけである。
 
「エアコンの温度少し下げない?」
と短いワンピースを着た舞音が言っている。コリンがエアコンのリモコンを触るが
「これ以上、設定温度下がらないみたい」
と言う。
「今何度?」
「21度」
「21度設定でこんなに暑いの?」
 
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スマホを見ていた舞音が
「現在のこの部屋の室温は28度」
という。
 

「暑い訳だ」
 
「やはり昼間は寝てて、夜中に仕事したほうがいい気がする」
「でも暑くて眠れないよ」
「コロナが無ければ南半球で作業したいくらいだ」
 
舞音たちがマネージャーの悠木恵美に
「昼間は寝てて夜間に作業したい」
と言うと、
 
「君たちは18歳未満だから、夜間に労働させることは禁止されている」
と彼女は言う。
 
「言わなきゃバレません」
「こんなに暑いとまともに制作できませんよ」
と舞音や水谷姉妹が言うので、恵美は村上麗子に相談する。
 
「じゃ言わなきゃバレないという線で」
と村上も言って、以降(山本コリンと水谷姉妹)は夕食を取ったらすぐ仮眠して、12時頃に起きだし、“夜食を食べてから”スタジオに入って朝8時くらいまで作業し、朝御飯を食べて休憩することにした。午後も寝ている。ホテル昭和の支配人さんに頼んで、夜12時くらいに夜食を持って来てもらうことにした。(1日4食になっている気がする)
 
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オーケストラは普通に日中に作業する。どっちみち伴奏とボーカルは別録りである。
 
そういう訳でここでの制作はこのようなタイムサイクルで動いたのである。
 
●こどもの歌(監修:清水春浩)
 
3-8h コリン・水谷姉妹がスタジオで悠木恵美のピアノ伴奏で歌い仮音源制作
13-16h 仮音源を参考にオーケストラが演奏(練習)
18-20h オーケストラ演奏確定
翌日1-3h 舞音・水谷姉妹(+コリン)が伴奏音源を聴きながら歌う(本歌)
 
オーケストラは契約により稼働時間が13-16h,17-21hと定められているので、その時間内で作業をお願いしている。ともかくも24時間サイクルでだいたい1サイクルに3曲くらいずつ進めていく。コリンは一部の本音源にも参加する。監修の清水さんは、オーケストラに付いているので、最終的な歌については、悠木恵美が事実上の監修役となる。
 
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なお規定時間内に終わらなかった場合は、時間を延長したりはせず翌日に回すことにしている。でないと主として舞音の体力がもたない!結果的に伴奏と歌の収録スケジュールはずれていく。
 
●招き猫2(監修:名寄多恵)
1-3h 譜面に基づきビーナが演奏練習
3-8h ビーナと舞音がコテージ内で仮音源制作
8-12h,18-20h 仮音源を参考に招き猫バンドが演奏(伴奏確定)
16-19h 未確定の伴奏を聴きながら舞音が練習
21-24h 舞音が確定した伴奏音源を聴きながら本歌を入れる。
 
名寄さんは16-24hの稼働である。16-19hの時間帯は、舞音の歌を見てあげつつ、伴奏で直して欲しいところがあったら、同時進行で作業している招き猫バンドの木下君に電話して修正してもらう。
 
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そういう訳で、コリンと水谷姉妹・ビーナは毎日1-8hの稼働になるが、舞音は
 
3-8h ビーナと招き猫の仮音源
16-19h 招き猫の歌練習
21-24h 招き猫の本歌
1-3h こどもの歌・本歌
 
となっていて1日に14時間稼働である。しかも日中東京までヘリコプターで往復してテレビ局などの仕事をしてくることもあり、移動中に束の間の睡眠を取るだけなどという日もあった。(招き猫の本歌入れが翌日午前中に振り替えられる場合もある:その場合下手すると20時間くらい仕事をしている)
 
「私身体が2つか3つ欲しい!」
などと言っていた!
 
実際、舞音はアクアに次ぐ忙しさになっている。
 

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「でもふーちゃんも、せめてブラ付けるかキャミでも着たほうがいいと思う」
とビッグTャツを着ている水谷姉が言っている。
 
ビーナはさっきから彼女が、ひょっとしてパンティ穿いてないのでは?と気になっている。
 
「女ばかりだから、人の目は気にする必要ないけどさ」
とコリン。
 
「ボクは?」
とビーナは遠慮気味に言う。
 
「数ちゃんが女の子であることは確認済み」
とみんなに言われた。
 
また冷房温度については、電気技術者さんに見てもらい、エアコンの室外機に濡れタオルを掛けたらもう少し温度が下がることが判明し即実行した。またサーキュレーターを置いてもらったらかなり変わった。これは他のコテージも同様の対策を取った(アクアたちも恩恵を受けた)。
 
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若葉は翌年夏までに、川の流れを引きこんで、コテージの屋根を冷やすシステムの導入を決め、涼しくなってから作業してもらうことにした。(実際には秋に完成し、冬はそれで温まることも判明した)
 
(ホテルに泊まる人は日中は不在なことが多いこともあり、これまでこの手の苦情は若葉も把握していなかったのである)
 

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舞音たちの音源制作は7月中にオーケストラさんたちの作業が完了して、オーケストラのメンバーは東京にもどる。それでオーケストラさんたちが伴奏していた童謡アルバムの作業を先に進めて、8/3にはそちらが完成。水谷姉妹と山本コリンが退去した。水谷姉妹は仙台に移動して、自分たちのデビュー・シングルの制作をした。
 
舞音はその後、自分のアルバム(仮題)『招き猫2』(最終的に『くろ招き猫』のタイトルで発売)の作業にに専念した。
 
コテージが舞音とビーナだけになるのを、ビーナが気にするので、本館に泊まっていた悠木恵美にこちらにきてもらった。
 
8/7には、九州まで弓曳き童子を見に行ったが、アルバム完成前の息抜きになった。それを経て、8/10にはアルバム『くろ招き猫』は完成した。
 
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ビーナは東京に戻り、自分のデビューシングルの制作をした。
 
一方、舞音は招き猫バンドとともに、そのまま郷愁村に留まり、8/22のネットライブに向けての練習をする。ここでステージでお手伝いをしてもらう、長浜夢夜・山鹿クロム・三陸セレンの3人に東京からこちらへ来てもらった。但し夢夜は9日まで仙台で水谷姉妹の音源制作に参加していたので仙台から熊谷に戻ってきて、そのまま郷愁村に入った。彼ら(彼女ら?)3人は本館に泊めるつもりだった。むろん1人1部屋である。
 
つまり、コテージは舞音と悠木恵美の2人だけになるが、2人だけだと寂しい気がしたので、結局、長浜夢夜をこちらに一緒に泊めることにした。
 
「女の子たちと同じコテージってまずいですよー」
とさすがに夢夜が言ったものの、
 
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「ノリちゃんは既に女の子の身体になっているという確かな筋からの情報がある」
などと舞音は言っていた(情報源は姫路スピカ!)。
 
(長浜夢夜の本名は松元徳世)
 
「ボク、まだちんちん付いてますけど」
「いや、きっと既に無い」
 
当然、この夜、夢夜はお風呂を覗かれて!確かに女の子であることを確認されていた。(セクハラは続く:ほぼ痴漢だと思うが、お風呂に入って鍵を掛けないのも悪い。ビーナもそうだが)
 
なお、セレンとクロムが来ているので、舞音が東京の仕事で不在になる時間を使って、彼らに『くろ招き猫』の歌にコーラスを入れてもらった。
 
彼らは声は女の子なので、女性がコーラスを入れているように聞こえる。制作を監修している名寄多恵は、この子たち既に睾丸は取っているんだろうなと思った。
 
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夏の日の想い出・ボクたち女の子(5)

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