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■夏の日の想い出・ボクたち女の子(2)
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今回、時代としては16世紀を想定している。バロック文化が始まる前、ルネサンス文化が終わりかけている時代である。結果的には『ロミオとジュリエット』と似た時代になるので、実はパーティーの客の衣裳などを流用することにした。実際話が急すぎて、全てを新たに作るのでは間に合わなかった!
白雪姫の物語の時代がいつかについては議論がある。グリムがこの物語を発表したのは1812年である。この物語は民話蒐集段階で20代だったフランス系の女性から聞いたものである。ただグリムは彼女から聞いた物語の筋に納得が行かず、他の民話から内容を一部取り込んで改変している。どっちみちこの物語は1800年頃以前には成立していたことになる。
しかし、白雪姫のモデルと言われるMargaretha von Waldeck (1533-1554.3.15)は16世紀の人である。彼女は継母との関係がうまく行ってなくて、更に最後は毒殺されている。また彼女が住んでいた所の近くに鉱山があり、多数の少年鉱夫が働いていた。白雪姫の物語に出てくる“小人”というのは、実は少年鉱夫ではないのかというのは、わりとよく言われることである。(少年が使われるのは、坑道をあまり広く掘らなくても済むから)
一方、白雪姫の物語を文章の形で確認できる最古のものはシェイクスピアが1610年頃に書いた『シンベリン』(Cymbeline)とされる。
シンベリン王には2人の王子と1人の王女がいたが、王子たちは行方不明になっていたので、王は残った王女イモージェン(Imogen)に期待を掛けていた。
3人を産んだ王妃は既に亡く、王は後妻を迎えたが、彼女には先夫との息子クローテンがおり、王妃はイモージェンをその息子と結婚させたかった。しかしイモージェンは父王の許可も取らないまま、身分の低い男ポステュマスと結婚してしまう。王は激怒してポステュマスを追放し、王女は軟禁された。
王妃はイモージェンが自分の息子と結婚してくれないのなら、いっそ殺害しようと思い、毒薬を彼女の召使いピザーニオに「万病に効く薬」と偽って渡した。一方、追放されている彼女の夫ポステュマスは欺されてイモージェンが彼を裏切って別の男と通じたと思わされる。嫉妬にくるった彼は、ピザーニオにイモージェンの殺害を命じた。
ピザーニオはイモージェンを王宮から連れ出すが、殺すことはできず逃がしてくれる。彼女は男装!して逃亡し、洞窟に住む3人の猟師に保護される。男装の彼女は猟師たちが出かけている間に、逃亡前に渡されていた薬を飲んでしまい死亡する。猟師たちは彼女を埋葬する。
(つまりヒロインは王妃・自分の夫の2人から殺されようとしていた!)
クローデンはポステュマスの服を着てイモージェンを陵辱しようとして猟師に首を切り落とされ、イモージェンの傍に埋葬される。
しかしイモージェンが飲んだ薬は、調合した人が王妃の行動に疑問を持ち、偽って渡した、一時的に仮死状態にする薬だった。それでイモージェンはやがて蘇生するが、そばにポステュマスの服を着た首無し死体があるので、夫が死んだと思い絶望する。
(このあたりの展開は『ロミオとジュリエット』(1595)に似ている)
しかしそこにたまたま、ローマの将軍が通り掛かり、彼女は男装のまま、将軍に保護される。
(『ロミオとジュリエット』の結末が悲しすぎたので、もしかしたらこの物語はそれを“修正”したものなのかも知れない)
一方、息子が死んだことを知った王妃は嘆きのあまり死亡する。
最後は関係者が一同に集まり(このあたりはいかにも舞台劇風である)、誤解が全て解ける。
イモージェンを保護した猟師は実は行方不明になっていたイモージェンの兄たちだった。それで兄が王位を継ぐことになり、ポステュマスとイモージェンは和解して、再度結婚する。
登場人物の人間関係などは少し異なるが、おおまかな筋はかなり似ている。むしろ『白雪姫』はこの話を簡略化したものではと思えるくらいである。
白雪姫が死んでいる所に偶然王子が通り掛かるというのは、仮死状態から蘇生したイモージェンのそばをローマの将軍が通り掛かるという話の変形かも。
2012年の映画『Grimm's Snow White』では白雪姫が王妃の首を切り落とすが、これはひょっとしたら『シンベリン』で王妃の息子が首を切り落とされる展開を下敷きにしているのかも知れない。
またヒロインは物語の主要部分でずっと男装しているが、これはシェイクスピアの時代には女優がおらず、少年俳優が女役をしているので、男の格好をしている方が、俳優さんとしては楽だという事情もあると思う。『お気に召すまま』のロザリンドの男装、『ベニスの商人』のポーシャの男装も同様の事情だろう。
今回はこのシェイクスピアが書いた劇が存在することから物語の時代設定を16世紀に設定し、結果的に『ロミオとジュリエット』と似たような時代ということにした。
白雪姫の年齢については、グリム版では7歳、ディズニー版では14歳だが、今回は大本のシェイクスピア版で結婚するような年齢になっていることを踏まえ、主役のアクアがちょうど制作中に20歳の誕生日を迎えることもあって、19歳設定にした。実際問題として、最近の白雪姫の実写版映画も多くはおとなの女優さんが演じている。14歳は微妙だが、少なくとも7歳の少女に白雪姫の演技をさせるのは無理がありすぎるし、7歳との結婚は犯罪だ!
2012年に制作された3本の映画では↓のようになっている。
"Grimm's Snow White" - Eliza Bennett (1992) 19歳
"Snow White & the Huntsman" - Kristen Stewart (1990) 21歳
"Mirror Mirror" - Lily Jane Collins (1989) 22歳
なお今回“小人”ではなく“鉱山技師”としたのは、実は上記にあげた3本のひとつ "Snow White and the Huntsman" (白雪姫と猟師:邦題「スノーホワイト」)が、デジタル編集で小人を登場させたら、小人症の患者支援団体から抗議が入ったのを踏まえ、ストーリー上は小人である必要が全く無いので、普通の背丈の鉱山開発者ということにしたのである。
鉱山技師たちの名前について、日本語版では
日郎・月子・火吉・水恵・木蔵・金也・土雄
とした。ドイツ語・英語では
Sonntag, Montag, Dienstag, Mittwoch, Donnerstag, Freitag, Samstag
Sunday, Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday, Saturday
としている。
松田理史は前回の『ロミオとジュリエット』ではアクアとの共演を恥ずかしがってちゃんと演技ができずに一部を七浜宇菜に代わってもらうという失態をやってしまった(美高さんから、かなり叱られた。アクアFまで一緒に叱られた!)が「以降、私情を交えずにきちんと演技します」という誓約書を河村さんに提出して、再登板である。
彼は実は7−8月に河村さんが監督をする『いちご日記』に準主演格で出る予定だった(主演は木田いなほ)が、河村さんがこちらに取られてそちらの撮影が延期されたので、そのまま『白雪姫』にシフトした。
彼もアクアとは関係無い映画で名誉挽回するつもりが、またまたアクア映画に入ることになり、不安だった(河村さんはもっと不安だった!)が、美高さんがわざわざ八王子に彼とアクアFを訪ね!話し合った末、2人とも「ちゃんとやります」と誓うので起用した。(八王子の家を訪問したのは、千里、コスモスに次いで3人目である)
「にやけた顔して演技したら鞭10発のおしおきです」
「それ喜んだりして」
「じゃちんちん切断の刑で」
「それは勘弁して〜」
(なんかじゃれあっているだけという気もする)
元原ユミは、アクアとよく共演している元原マミの妹で、アクアより1つ年上である。マミの方にオファーを出したらスケジュールが塞がっていて「じゃ代わりに妹を使ってください」と言われたので起用した。
アクアが白雪姫と狩人の2役をすることになったので、ドイツから送り込まれてきたロビン・フライフォーゲル(22)が王子役になる。彼と一緒に「脇役要員に使って」と言って送り込まれてきた3人の俳優さんは、最初王子の護衛役に使おうかとも言っていたのだが、必ずしも肉体派ではないこともあり、結局次のような役に当てられることになった。彼らはフライフォーゲルが狩人役になる場合は、狩人仲間の役になり、白雪姫の王宮突入に参加するシナリオだった。
マラス大公:ミハエル・クラウスナー
ルードヴィッヒ王子:ステファン・フランケ
軍医ルター:ユリアン・ウェステマン
王子の護衛役は、結局都内のドイツ人留学生3人をツテ(実はアクアのボディガード川井唯の人脈)を辿って採用した。(オーディションをすると“密”が発生しやすいのでオーディションはしていない)
今回のプロジェクトは『ロミオとジュリエット』の公開とほぼ同時進行で企画が進行したので、そちらの興奮が落ち着くまで一切情報を公開しないことにして進めた。だから実は私も知ったのは、撮影が終わり編集も終わってからであった。§§ミュージック内部でも知っていたのは、出演した人を除けば、コスモスとスケジュール管理の元締めである美咲主任などほんの数人である。ゆりこや花ちゃんも知らなかったらしい。
結構§§ミュージックのタレントが使われているが、彼女たちは“解禁日”まで一切そのことを他人に話したりSNSなどに書いたりしないよう厳命されていた(読者限定投稿でも禁止)。
彼女たちは「万一破ったら罰金1億円」と言われて厳守した。実際そのくらいの損害が発生していたと思う。
今回の制作は、熊谷市の郷愁村にセットを建て、出演者やスタッフも郷愁村のホテル昭和に泊まり込んで作業をすることになった(最終的には専用ホテルを建てた:後述)。これはオリンピックで混雑する東京を避けたいというのと、何といっても感染防止のためである。
ドイツ組は隔離されていた成田近くのホテルから大和映像が手配したマイクロバスで直接郷愁村に入っている(オリンピックで人が増えている東京を素通りするのが重要)。
それで制作中、(制作を休む日も含めて)郷愁村から出る場合は、事前届出制とし、出る場合も公共交通機関の利用は禁止である。映画制作委員会が用意した専用運搬チーム(実際にはSCCが代行)もしくは各俳優のマネージャーの運転する車で移動する。
ということを制作を始めた7月23日(金)に言い渡したのに、その日の夜、王様役の村里泰蔵さん(44)が、無断でタクシーを呼んで熊谷市内に行き、市内のスナックで飲んでいたことが“本人のインスタグラム”で判明してしまう!
温厚な河村監督が苦虫をかみ潰したような顔をしていた。本来今回の出演者の中で一番年上でみんなの手本になるべき人である。彼は特別待遇でコテージ“桜”に泊めていた(逆に外出しやすい)。
7/26(月)の午前中、監督は村里さんにクビを言い渡した。示しがつかないのである。
村里さんも「すまなかった」と謝っていた。
それで急遽、村里さんと同じ事務所の後輩・水川耕祐さん(40)が国王を演じることになり、東京からやってきて交替した。事務所の社長まで一緒に来て、監督や制作の大曽根部長に謝っていた(どちらかというと大曽根さんが恐い!)。村里さんは9月末まで約2ヶ月謹慎させるという話であった(映画の制作日程が約1ヶ月なので1ヶ月謹慎では処分にならない)。
しかしこのクビ通告でみんな引き締まった感じで、この後、ドイツ組を含めて規律を破る人は出なかった。
なお、今回の制作の実務面を取り仕切っている坂口さんが、ドイツ組に「恋人が必要なら紹介するけど」と言った(勝手にコールガールなど呼ばれるとコロナ対策上困る)ものの「大丈夫。僕達、手が恋人です」と言っていた(ジールマン社長から「ドイツ人は紳士でなければならない」とか、かなり厳しく言われた模様)ので、テンガエッグをプレゼントしたら「日本は凄いのある」と喜んでいたらしい(ドイツでもテンガは売られているらしいが、彼らは知らなかったという。最終的にお土産にたくさん買って帰ったようだ)。
念のためジールマンさんにも打診したが
「僕はもう涸れてるから大丈夫だし、万一浮気したら慰謝料は100億ユーロ(1兆円)と言われてるから」
などと言っていた!
1兆円の慰謝料は恐ろしい。
でもテンガエッグは喜んでいた!!
「女房を抱くより気持ちいい」
などと言っていたが、奥さんに聞かれたらまずい気はする。
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