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■夏の日の想い出・ボクたち女の子(11)

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ピーターパンたちが船縁まで登ってきた時、ちょうど船室から出て来た操舵手のエド・ティントと目が合う。ティントが声をあげようとした時、それより速くピーターは彼を羽交い締めにして、リーンウルフが腹に一発お見舞い。気絶させてしまう。そしてすぐ猿ぐつわをして縛り上げた。これを見ていたのは、右舷の“飛込み板”近くにいた子供たちだけである。
 
しかしこんなことをしていたので、ピーターパンのチックタックが止まる。
 
それでフックが
「音が聞こえなくなった。どこかに行ったのか?」
と言うが、まだ不安そうである。
 
しかし音が聞こえないので、フックは“復活”してまた偉そうに振る舞っている。そして子供たちをもっと怖がらせようと鞭で打つと言いだし、ビル・ジュークスに船室から鞭を取ってくるよう命じる。
 
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しかし船室に入ったビル・ジュークスはたちまちピーターたちに捕まり、ティント同様、猿ぐつわをされて縛り上げられた。彼のうめき声が聞こえたので、海賊たちの間に緊張が走る。
 
「何だ?何があった。おい、チェッコ。様子を見てこい」
というが、チェッコは明らかに怖がっている。それで見に行くのを嫌がっていると、フックから
「言うことを聞かないのか?」
と右手の鈎を見せて脅されるので、仕方なく船室に入る。たちまち悲鳴が聞こえた後静かになってしまう。
 

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海賊たちに動揺が走る。
 
「きっと船室に化け物がいるんだ」
と迷信ぶかい船員たちの間で声があがる。
 
「そうだ。子供たちを船室に入れよう」
という声が出る。それで海賊たちは“怖がっているふり”“嫌がっているふり”をしている子供たちを船室に押し込んでしまう。
 
船室からは何も聞こえてこない。ピーターたちは子供たちに静かにしているように言い、みんなの縛られている紐を切ってやった、そして子供たちのことをリーン・ウルフたちに頼むと、船室の窓から抜け出し、見つからないように背を低くしてウェンディのそばに寄る。
 
「声を出さないで。縄を切るから、子供たちと一緒に船室に隠れてて」
「うん」
 
それでウェンディはそっと船室に入った。
 
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船員たちは、女なんかを船に乗せたからいけないんだ。女を処分してくれと船長に要求する。それでフックもやむを得ずウェンディを殺そうとマストの所に寄ってくる。しかしそこでマストに縛り付けられているふりをしていたのは
 
ピーターパンだった!
 
「フック、今度こそ勝負だ」
「望む所だ」
 
それでピーターパン(七浜宇菜)とフック(アクア)の戦いが始まる。手下たちがその行方を見ていたら、岸壁に大勢の声がする。ピカニニ族の戦士たちか、ピーターたちを助けようとやってきたのである。
 
ピカニニ族が船にどんどん登ってきて、海賊たちとピカニニ族の戦士たちとの戦いが始まる。リーン・ウルフも他の2人に子供たちのそばに付いているように命じて戦いに加わった。
 
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船に登ってきた者たちのリーダーはタイガーリリー(恋珠ルビー)である。
 

フックとピーターは激しい闘いをしていた。
 
しかしとうとうピーターの剣がフックを貫く。フックはよろめいてデッキから転落する、ピーターが船縁に駆け寄って下を見る。
 
「あっ・・・・」
 
船の下には、あのクロコダイルが大きな口を開けて待っていたのである。フックはそのクロコダイルの口の中に転落し、フックが飛び込むとクロコダイルの口は閉じられた。
 
ここは大きく口を開けたワニの形が海面に出るように作られており、アクアがその中に飛び込むと、テコの原理で口が閉じられるようになっている。ワニの内部には充分なクッションが入っているし、万一転落位置がずれても水面なので危険は少ない。万が一にも怪我しないように、アクアには足から飛び込むように言っており、アクアもそれを守ってきれいに立った状態で飛び降りた。
 
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その頃、ピカニニ族たちと海賊たちの戦いも終わっていた。海賊たちはあるいは海に落とされ、あるいは降参したり倒されてて拘束されていた。
 
タイガーリリーとピーターパンはがっちり腕を組んだ。タイガーリリー(恋珠ルビー)はピーター(七浜宇菜)を熱い目で見ているのだが、ピーターはやはり彼女の気持ちには気付かない。
 
その様子をヤード(横桁)に腰掛けて見ていたティンカーベル(坂田由里)は、
 
「ふん。族長の娘と結婚して、次の族長にでもなればいいわ。私知〜らない!」
などと呟いていた。
 
この嫉妬の表情が本当に嫉妬しているみたいと、これも高評価された。
 

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海賊たちの大半のその後については、後述することになる。
 
甲板長のスミー(岩本卓也)はリーン・ウルフとの戦いで海に転落したのだが、しぶとい彼は多数のワニが集まっている中を何とか逃げ切った。そしてフックが隠し入江に係留していたカッター(小型の帆船)でネバーランドを脱出した。10年後、彼は別の島を拠点にして、自分の海賊団を立てる。
 
その後彼は「俺はあのキャプテン・フックが唯一恐れた男だ」と自称し、若い海賊たちから尊敬されたらしい。
 

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さて、海賊船“ジョリー・ロジャー”をぶんどった形になったピーターたちはこの船でウェンディたちを送っていくことにした。
 
タイガーリリーたちが見送って手を振る中、ジョリー・ロジャーは追い風を受けて出発する。
 
ピーターが船長(captain)、ニブスが一等航海士(forst mate), ジョンが二等航海士(second mate)、トゥートルズが甲板長(bo'sun)である!
 
船は順調に航海してアゾレス諸島経由でイギリスに到着。ウェンディたちはそこからピーターとティンカーベルに先導してもらい、空を飛んでダーリン家に戻ってきた。
 

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子供たちの帰還を最初に見つけたのは“諸事情により”犬小屋で暮らしていた父親のジョージ・ダーリン(松田理史)である。ジョージは
 
「ワンワン!子供たちが帰って来たワン!」
と叫んで帰宅を妻のメアリ・ダーリン(アクア)に報せた。
 
(松田理史の“犬ぶり”が何だか似合ってる!?として高評価された!)
 

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ウェンディは勝手に出て行ったことを母に謝った。しかし母は泣いてウェンディを抱きしめ、ジョンとマイケルも抱きしめた。父も「よく帰った」と言って、子供たちを叱らなかった(ここはアクアと葉月が役割交換して2度撮影している)。
 
「それでお父さん、お母さん、お願いがあるんだけど」
「何だい?」
「この子たちのパパとママになってあげてくれない?」
とウェンディが6人のロストボーイたちを紹介すると、両親は目を丸くした。
 

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両親は、親の居ない彼らを保護することを約束してくれた。更にウェンディの母はピーターに
「あなたもうちの子にならない?」
と誘ったものの、ピーターはやはりおとなになるのは嫌だと言って、彼はネバーランドに戻ることにした。
 
でもピーターが寂しそうにしているので、ウェンディーの母は提案した。
「毎年1度、春の大掃除(*8)の時に1週間だけ、ウェンディーをネバーランドに連れて行くというのはどう?」
 
ピーターはこの提案に乗り、来年の春の大掃除の時、ウェンディーを迎えに来ると約束した。それで、ピーターはティンクと一緒に帰っていった。
 
(*8)西洋では冬の間、暖炉で石炭(18世紀までは薪や木炭)を燃やしているので家の中に煤(すす)がかなり付着していた。それで毎年春に大掃除をして家の中の煤(すす)や灰を取り除くのである。これを春の大掃除(Spring Cleaning)という。日本だと「すす払い」だが、日本の場合は冬真っ最中の旧暦12月13日(新暦なら1月中旬)に行われていた。今日の日本では年末の大掃除に相当する。
 
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西洋の場合は、Clean Monday あるいは Ash Monday と言い、古くは、すぎこしの日曜日の48日前(2021年なら3/15, 2022年なら3/7)に行われていたが、今日では4月1日に行う所も多いらしい。"Ash Monday"は、復活祭46日前のAsh Wednesdayから連想された呼び方と言われる。
 
なお、Clean Mondayは昔の“1日の始まり時刻”の習慣に従い、前日の夕方から始まる。(日本で12/31の夕方から事実上のお正月行事が始まるのも日没から1日が始まるという考え方に基づいている)
 

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翌年の春の大掃除の時(Clean Mondayの前夜)、ピーターパンは約束通りウェンディーを迎えに来た。ウェンディの母との約束に従い、行ったのはウェンディーだけである(ジョンたちが羨ましそうにしていた)。
 
ウェンディは1年ぶりにネバーランドに来て、様子が随分変わっているのに驚いた。
 
ピカニニ族は、昨年来た時とは別の場所に居て、ティーピーではなく、もっと本格的な住居であるウィグアムに住んでいた。タイガー・リリーはウェンディを歓迎してくれた。
 
「ああ、ティーピーは夏の間の住居で、冬の間はこのウィグアムで暮らすんだよ。もう少ししたら、ティーピーを建てて、バッファロー狩りを始めるよ」
「へー」
 
そのウィグアムが並ぶ彼らの村に隣接して、新しい村ができていた。こちらは木造のロングハウスが数軒建っていて、そこに居た人々を見てウェンディはびっくりする。
 
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「やぁ、ウェンディ、久しぶりだね」
などと言っているのは、海賊をしていたスターキー(大林亮平)である。
 
フックがピーターに倒された後、ピカニニ族に拘束されたり投降したメンバーはピーターに海賊をやめることを誓い、ここに土地を与えられて、トウモロコシ、インゲン豆、カボチャ、更には小麦なども育てることになったらしい。また、鶏と豚も飼っていた。
 
「スターキーさんが村長?」
「村長というのは決めてない。年長の3人の合議制で運営している」
「なるほどー。でも男の人ばかり?」
「ピカニニ族の女の子と仲良くしてる奴もいるよ」
「ああ、いいかもね」
 
あの戦いの時に船から転落した人たちも生き延びた者は大半がスターキーを慕ってこの村に集まり、一緒に農業をしているらしい。ピカニニ族は夏の間はあちこち移動するが、スターキーたちは一年中ここに留まり、村のお留守番をすることになる。
 
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彼と少し話をしていたら、女性(原野妃登美!)が寄ってきて、こちちらに嫉妬するような視線を送る。ヘアバンドをしており、ピカニニ族のようだ。ウェンディは明るく挨拶した。
 
「奥様ですか?」
「まあ、この人の赤ちゃんの母親かもね」
「わぁ、赤ちゃんがいるの?」
 
それで赤ちゃんを見せてもらった。
 
「可愛い!」
とウェンディが声をあげるので、奥さんは気を良くしたようである。
 
(この子供は大林亮平と原野妃登美の本当の子供・月花ちゃん:12ヶ月。実は元々奥さん・子供と一緒に出てくれそうな人を探して亮平にスターキー役をオファーしたものである。実際には原野妃登美が勝手にOKした!)
 

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ウェンディは入江にも行き、メルリンたちとおしゃべりをした。
 
「そういえば、あなたたちって女の子ばかり?」
「男もいるよ。でもあまり陸の近くには寄らないみたい」
「なるほどー」
「女しかいなかったら子供作れないよ」
「そうだよね!」
「まあ時々、陸に寄りたがる男の子もいる。でもわりと女の子っぽい」
「なるほどぉ!!」
「そういう子にはもう貝殻ブラジャー着けさせちゃう」
「あはは」
 
(ネバーランドは子供たちの想像から生まれるもので、今回は海賊の存在を望んだジョンが来ていないことから、平和を望むウェンディの希望に沿った形のネバーランドが形成されていたのだが、ウェンディはそんなことには気付いていない)
 
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1年前に島に居たロストボーイたちはウェンディたちと一緒にネバーランドを出たのだが、新たなロストボーイが2人居て、あの地下の家で暮らしていた。昨年はまだ幼いので妖精たちに育てられていたらしい。
 
ピーターも彼らと一緒にいることで、日々が楽しいようである。
 
ウェンディも彼らには島を出ないかと声を掛けるのは控えた。だってこれ以上子供が増えたら、ウェンディのパパがパニックになる!
 

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一週間の滞在の間に、ウェンディはその地下の家や、地上に建っている小さなおうちの大掃除もした。タイガーリリーも手伝ってくれた。ロストボーイの2人も手伝ったが、もちろんピーターは何もしない!ピーターは偉いから、細かいことはしないのである!!
 
楽しい一週間を過ごして、ウェンディはピーターとティンカーベルに送られてロンドンに帰還した。そして1年後の再会を約束して別れた。
 

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ウェンディはまた1年後にネバーランドに行くのを楽しみにしていた。
 
しかしピーターは翌年の春の大掃除の日、来なかった。ウェンディの母が
「きっと何かで忙しくて遅れているのよ」
と言ったが、ピーターはずっと来なかった。
 
そして何年も来なかった。
 
ピーターパンは“忘れっぽい”という性格があるのである!!
 

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夏の日の想い出・ボクたち女の子(11)

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