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■夏の日の想い出・星遮りし恋人(27)

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このお城を見学してから、迷路をまた数分歩く。するとその迷路の先にはまた空間があるが、さっきの空間よりはずっと小さい。そしてここには可愛い山小屋がある。
 
七人の小人の山小屋である。
 
でも小屋の煙突の所にはサンタ人形があり煙突に足を掛けている。そして小屋の前にはトナカイ人形と橇(そり)が置かれている。
 
小屋のドアを開けて中に入ると、ベッドが大きいのから小さいのまで7個並んでいる。テーブルがあり、その上には、かじられた虹色のりんごが置かれている。
 
「これアップルからクレーム入らない?」
「配色が違うよ」
と千里は言う。
 
アップル社のロゴは、上から順に緑、黄色、橙、赤、菫色、水色である。

それに対してここに置かれているりんごは、上から順に菫色、藍色、青、緑、黄色、橙色、赤、と“虹の七色”になっている。

 
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「ああ、アップルマークとは何か違う気がした」
とFは言っているが
「ボクはさっぱり分からない!」
とMは言っている。
 
千里はこの2人結構性格が違うからふたりで話してると楽しいだろうなと思った。
 
しかしMとFの“2人1役”(double cast)は多分あと1年くらいで終わる。もし2人がちゃんと1人に統合されなかったとしても、ふたりは“見た目”がかなり違ってきつつある。現在“女装のF”と“男装のM”はもう同じ人物に見えなくなってきた。だから2人は、Mが女装してFが男装している。まあ今回の水着写真みたいなのはFにしか撮れないけど。
 
ところでMのちんちんを隠したのは誰なんだ?犯人の心当たりが多すぎて見当が付かん。無意識に人を性転換させちゃう人がいるからなぁ。Fは松田君の赤ちゃんを産む気満々だけど、いっそMにも赤ちゃん産ませるか!?彩佳をちょっと性転換すればいいし!??(彩佳は男になっても生きていける気がする)
 
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木曜日の夕方に、桜井さんとコスモスが到着したので、桜井さんとアクアの顔合わせをした。ここで出席したのはMである。Fを出すとFはヌード撮影に同意してしまうかも知れないと千里は懸念した。実際桜井さんも「鏡の迷宮の中でヌード撮らない?ファンはアクアちゃんの美しいヌード見て感激すると思うよ」と唆していたが、Mは「嫌です」と言った。
 
「それにボク男の子だし。男の子のヌード見ても仕方ないですよ」
「何を今更そんな嘘を」
 
その後、アクアは休ませておき、桜井さんと助手の人たちを千里が迷宮に案内した。助手さんたちは迷宮のあちこちで照度をチェックし、千里から渡された“迷宮地図”と“お城見取り図”に書き込んでいた。
 
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私は金曜日の夕方、信濃町ガールズたちと一緒にG450で小浜に到着した。
 
ガールズたちは“旅館・藍小浜”に取った部屋で休ませる。部屋割はこのようにした。
 
水谷康恵、水谷雪花、鈴鹿あまめ、花貝パール
今井葉月、花咲ロンド、緑川マネージャー
山鹿クロム、三陸セレン、長浜夢夜
柴田数紀
 
葉月は女性と同じ部屋で問題ないであろう。ロンドも長い付き合いだから、お互い気兼ねはない。それにロンドは何度も葉月のヌードを見て“彼女”が女の子の身体であることを確認しているはず。
 
数記くん(高崎ひろかの弟)を1人分けたのは、“男の娘”3人が女物の下着など着けているのを見たら、彼は目のやり場に困りそうだからである。
 
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桜井さんたちも藍小浜に入っている。こちらは桜井さんで1室、助手さんたちはまとめて1室である。
 

そして、私・コスモス・千里・2人のアクアで内密の会談をした。
 
「2019年に紅川さんからこの会社の株式を引き継いで、コスモスちゃんが持っていた1%を除く99%の株を私が保有しているんだけど、実際問題としてこの会社の利益の90%をアクアが稼いでいるのに、そしてコスモスちゃんが毎日ハードなスケジュールで仕事をしているのに、その会社の利益を私ひとりで独占するのはよくないと、ずっと思っていた。だから、8月にアクアが20歳になるのを機会に株式を、できたら私、アクア、コスモスちゃんの3人で共有することにしない?」
 
と私はアクア・コスモスに提案した。千里にも今回同席してもらったのは、立会人兼アドバイザーをお願いしたからである。
 
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「まあ私は充分すぎる役員報酬を頂いていますから、どちらでもいいですけどね。でも確かにアクアには会社利益をもっと還元してあげるべきだとは思っていました」
とコスモスは言う。
 
「でも去年はラピスの2人も凄く稼いだし、今年は舞音ちゃんが急成長しつつありますよ。彼女たちには還元しなくていいんですか?」
とアクアMが訊く。
 
「あまり株主を増やすのもね〜」
と言って私は千里を見る。
 
「うん。船頭多くして船山に上る。それにラピスや舞音に権力を与えた場合、彼女たちはまだウブだから人に欺される恐れがある。その場合、会社自体を危険にさらす。アクアはもうしっかりしているから大丈夫だと思うんだよ」
と千里は言った。
 
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「アクアは特にここ2年くらいでずいぶん大人になったね」
とコスモスも言う。
 
「大人の女になってきたかも」
とFが笑顔で言う。Mは少し悩んでいる。彼はきっとまだ「大人の男」になる覚悟ができてないんだと私は思った。Fが“女”として成長してきているのにMはまだ“男の子”である。
 

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「結局、株主は“4人”もいれば充分だと思う。せめて5人、1%くらい若葉にあげる?随分サポートしてもらっているし」
と千里は言ったが、
 
「それむしろ千里が持ってくれない?ムーランは巨大すぎるから、下手すると軒先を貸したつもりで母屋(おもや)まで取られるからさ」
と私は言う。
 
「いいよ。じゃ1%売って」
「それで行こう。だから、私とコスモスとアクアが33%ずつ、千里が1%のキャスティングボートを握る」
 
そういう比率にすると重要事項(会社の合併など)の決定には4者の内3者以上の賛成(←株数で66.6667%以上の賛成)が必要になり、会社の乗っ取りなどに対する防御が強くなる。そもそも紅川さんが株式を私に売却したのも、自分が突然死したような場合に相続した息子が変な人に株を売ってこの会社の経営がおかしくなることを懸念したものである。4人いれば4人中3人以上が突然死する確率はぐっと低くなる。
 
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「あれ?今5人と言いませんでした?」
とアクアMが質問する。
 
「アクアは2人いるから」
「あ、そうか」
 
「だから、会社の経営方針とかを決める時はこの5人で決めればいいよね」
とコスモスは言う。
 
それで千里とアクアには無役の取締役にもなってもらうことにした。
 
「じゃそういうことにしよう」
「でも株式譲渡に私は幾ら払えばいいの?」
と千里が訊く。
 
「私は紅川さんが持っていた99% の株・株式額面990万円を額面の100倍・99億円で買ってる。その後、資本金1000万円はこの事業規模に対して小さすぎるから、9000万円自分で会社に振り込んで資本金は1億円に増資している」
 
「私も1%分の90万円払ったけどね」
とコスモス。
 
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「そうそう。負担掛けちゃって」
 
コスモスは§§プロの社長に就任した時、社長が株主でないのはよくないからと言われて、株式額面10万円分を額面通り10万円で紅川さんから買い取っている(ストックオプション?)。それを更に90万円分やはり額面で買ってもらい、彼女には1億円の1%額面100万円分の株主になってもらった。
 
「資本金1000万円は小さすぎるというのは私も思ってたから」
とコスモス。
 
「今や1億円でも小さいかも知れない」
「まあその内見直そう」
 

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「でも、現在の§§ミュージックの企業価値は100億円ではなく400億円くらいになっていると思う。赤字でいいと思って始めた“あけぼのテレビ”が凄い利益を出している」
 
この業界には決算を公開していない企業が多く(本来は株式会社であれば最低でも貸借対照表は公開しなければならないが、罰則が無いので実際は公開していない企業が圧倒的に多い)実態が不明だが、現在§§ミュージックは多分業界でも5〜6位の利益を上げている。
 
「400億円とか恐ろしい金額だ」
 
「でも私が紅川さんから買った時の規準で売買しない?」
と私はみんなに提案した。
 
「ということは、私は1億、コスモスちゃんが32億、アクアが2人で33億、ケイに払えばいい訳か」
 
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「私はそれでいいよ」
とコスモスは言った。
 
ところがアクアが焦っている。
「33億ですか?ボクそんなに持ってません」
と言っているのはFである。
 
「まさか誰かに貢いだりしてる?」
「え?そんなの無いですけど。田代の両親にお小遣いあげるよと言ったけど、未成年の子供から小遣いなんか要らんといって受け取ってくれないんです」
 
「田代さん夫妻はほんとにいい人だよ」
と千里が言う。
 
「うん。芸能人の親には、子供が売れるとそれに、たかって結果的に子供を破綻させてしまうバカ親がよくいるけどね」
と私も言った。
 
「それで芸能界から消えて行った人も多いね」
とコスモスも感慨深げに言う。何人かそういう人の顔が浮かぶ。
 
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「でも龍ちゃん、何か大きな買物でもした?油田とか金鉱とか?」
「そんなの買ってません」
 
念のためアクアにスマホで残高確認させてみると、(普通預金と定期預金を合わせた)残高は“ほんの”6億円しか無い。去年の夏頃は7億円くらいあったが、AYAのゆみからマンションを2億円で買ったので5億円になったのが、いつの間にか1億円くらい増えてるなどとアクアは言っている。(今回の迷宮の建築費アクア負担分は支払い報酬から天引き予定)
 
ちなみに口座はこれだけで他行には作ってないという。しかしこれはあまりにも少なすぎる。
 
「アクアには毎年この5倍以上の報酬を払っているはずだけど」
「え?そうなんですか?」
 

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「あ、思い出した」
と千里が言った。
 
「龍ちゃんの収入は、雨宮先生が管理しているんだよ」
「そうだったんだ!?」
とコスモス。
 
「そうなんですか?」
 
とアクアまで言っている。そのことを本人が認識していないようだ。まあ龍虎は自分の資産を気にする必要は無いだろう。『お金を数えるのは貧乏人だけ』というジュリエットのセリフがまさに当てはまるのが龍虎である。
 
「本当は未成年後見人の支香さんが管理すべきなんだけど、あまりにも巨額すぎて恐いと言うからさ。雨宮先生に委ねた。上島さんは自分は資産管理の自信無いと言ったし」
と千里は説明する。
 
「賢明な気がする。雨宮先生って適当そうで、そういう所は厳しいから。上島先生は龍虎と同じで、資産が大きすぎて何も考えてなかったんだよ。それで結果的に失敗してしまった」
とコスモスは鋭い指摘をする。
 
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「だよねー。それで雨宮先生が、龍ちゃんが超売れっ子芸能人としての体面を保てる程度のお金を残して、(納税予定額分を除いた上で)半分は国債を買い、半分は3分割して投資のプロ3人に任せて運用させている。3人に分割してるのは、万一誰かが失敗した時に損害が最悪3分の1で済むようにすることと、相互牽制・監視のため。だから危険な投資はできない。FXとかは禁止」
 
「なるほどー」
 
「これ決めた会議に冬も居たはずだけど」
「そうだっけ!?ごめん。忘れてた」
「まあ私も今まで忘れてたけど」
と千里も言っている。
 
(後で確認すると、2015年春頃、桁を数え間違うような金額が口座に振り込まれてきたのを見て仰天した田代母の呼びかけで、田代夫妻、長野支香・長野松枝、上島先生・雨宮先生、私と千里、川南さんが集まって全員一致で決めた方針のようだ。でも全然記憶が無い!)
 
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「ちょっと雨宮先生に訊いてみよう」
と言って千里はどこかに電話した。
 
すぐ繋がったようである!
 
「はい。わかりました。ありがとうございます」
と言って千里は電話を切った。
 
「よく雨宮先生に電話が繋がったね」
 
雨宮先生はこちらからまず連絡が取れないことで有名である。
 
「今のは****ちゃんに掛けた」
「は!?」
 
思わぬ演歌歌手の名前が出たので、私もコスモスもびっくりした。アクアはよく分からないようである。この人の名前をアクアは知らないかも知れない。
 
「これ、三宅先生やカエルちゃんには内緒でね」
「まあいいけど」
 
「で、雨宮先生も正確な数字はすぐには出ないけど、アクアの資産は現在300億円前後のはずということ」
 
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「うっそー!?」
とアクアMもFも仰天しているが、コスモスは
「私の資産から考えたら、そのくらいあっておかしくない。でも優秀な証券マンが付いてるみたいね」
と言っている。
 
「§§ミュージックを丸ごと時価で買収できるね」
と千里。
「いや、アクアが丸ごと買収してもいいくらいだと思う」
とコスモス。
 

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ということで、雨宮先生には千里から再度話してもらい、現時点で未成年後見人である長野支香にも話した上で、8月になったらアクアが(国債か何かを一部売却して)33億円を私に払って、§§ミュージックの33%の株主になるという線で話はまとまったのである。
 

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