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■夏の日の想い出・星遮りし恋人(21)
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目次 8
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(C) Eriko Kawaguchi 2021-05-21
常滑舞音の専属バンド“招き猫”の初顔合わせの席で、川崎ゆりこが
「結局、ルーシーちゃんが紅一点か」
と言ったのだが、コスモスが首を振る。
「ん!?」
「私、男ですけど」
と本人が言うと、
「え〜〜〜〜〜!?」
と、私・ゆりこ・花ちゃん・篠原君・谷口君が驚いたような声を出した。
ゆりこがここにいるメンツを見回す。
「社長は知ってたの?」
「契約書交わしたし」
「あ、そうか。レイアは知ってたの?」
「当然。長い付き合いだから。ちゃんと解剖して、ちんちん付いてるの確認した。タマタマは無かった」
と桜野レイア。
「セクハラしているな。ひろちゃんは分かった?」
「体臭が男性の体臭だから」
「君はそんなのが分かるのか」
「女性の体臭はよく分からないけど、男性の体臭はわりと分かりますよ。去勢している人も分かる。凄く体臭が弱いから」
「それはつまり君がもう女の子になっているからだな」
「ボクは男の子ですけど」
「面倒くさいから、今更そういう嘘を言わなくてもいい」
「マネちゃんは分かったの?」
「知らなかったけど、その程度では驚きません」
「さすが」
舞音が少し考えてから言う。
「でも、ルーシーさんが男の子だったのなら、今はこのバンド、全員男の子だけど、そのうち全員女の子になっちゃう可能性あるんですね」
「確かに確かに」
と、ゆりこ。
「いっそのこと、全員性転換してからデビューします?」
「うーん。それでもいいけど」
などとコスモスは言っている。
「私は性転換してと言われたら、性転換してもいいなあ」
「ああ。女の子になりたいですよね?」
「僕、やはり性転換した方がいいですか?」
「迷うなら無理することはないよ」
「僕は女の子になりたくないですー」
と谷口君。
「うん。別に強制はしない。あくまで希望者だけ」
と、ゆりこ。
「でも君の女装見たことある。ドレス姿が可愛かった。普通に女の子に見えた」
とルーシーが言う。
「どこで、そのようなレアなものを・・・」
と谷口君は焦っている。
「まだ睾丸があるのも谷口君だけかな」
と、ゆりこが言うと
「僕もまだありますよー」
「ボクはありますよ」
と篠原君・木下君(上が篠原、下が木下)。
「篠原君にはあるかも知れないけど、木下君は玉も棒も無い気がする」
とゆりこ。
「どちらもありますけど」
と木下君が言うが
「いや君には無い気がする」
とルーシーまで言っている。
「質問です」
と舞音が言った。
「男と女の境界線はどこで引くんでしょうか?」
「うーん・・・」
と全員悩む。
「ちんちんがあるかどうかかなぁ」
「うん。たまたまは無くてもちんちんがあればまだ男だと思う」
といった意見が出るが、ルーシーは言った。
「本人が自分はどちらの性別と思っているかだと思う」
「確かに」
「じゃルーシーさんは、自分は男の子という意識なんですか?」
「そうだよ。将来的には女の子になりたいけど、今はまだ自分は男だと思っている。まあトイレは混乱防止のため女子トイレ使うけどね」
「ルーシーさんは男子トイレ使えない気がする」
「木下君も女子トイレ使うよね」
「放送局でだいぶ叱られたから」
と彼は苦笑いしている。
「そもそも木下君の服は男子トイレが使えない服という気はする」
と篠原君まで言っている。
今日の木下君は前開きの無いパンツを穿いている。男子トイレの利用は無理だ。そもそも彼(彼女)は女物の下着を着けていると聞くので根本的に無理っぽい。
「人のこと言えん気がするけど」
と木下君が言うと
「男子トイレの個室使うよ」
などと篠原君。彼のズボンは、よく見ると前の開きが浅いレディスパンツである。これでは立ってできない。
「だけどさ、タイトスカート穿いてる時ってトイレしにくいと思わない?」
などと木下君が言うと
「知らない!」
と篠原君はちょっと焦ったような顔で言う。
「上にあげるのが凄く大変なのもあるじゃん。いっそパンツみたいに下げてしようかとも思っちゃう。クラちゃんどうしてる?」
「僕はタイトスカートとか穿かないから分からないよぉ」
と言っているが、なぜ焦る必要がある?
「篠原君はフレアースカートの方が好き?」
とゆりこが訊く(誘導尋問)。
「僕はタイトもフレアーもそもそもスカート穿きませんよ」
「でもスカート持ってはいるんでしょ?」
「30枚くらいしか持ってないです」
(きれいに誘導尋問に引っかかっている)
「私より多い!」
と舞音。
「なるほどだいたいは分かってきた」
なんか谷口君がドキドキした顔をしている。
「谷口君はスカート穿かないの?」
「穿きません!」
「持ってないの?」
「大学のクラスメイトが僕のアパートに泊まった時に置いて行った女物の服が20-30着あって、大学卒業する時に電話してみたら、取りに行くのも面倒だし、そのままもらっておきなよと言われて、それで取り敢えずモスボックスに入れて押し入れに放り込んでますけど、自分で着たりはしないですよ」
と谷口君は言っている。
「クラスメイトって恋人?」
「違います。大学のそばのアパートに住んでたから、よくクラスメイトが僕のアパートに泊まっていってたんです」
「クラスメイトって男の子?」
「男の子のクラスメイトが泊まっていったことはないです」
ゆりこが私の顔を見ている。私も苦笑した。
「なるほどねー」
とゆりこは感嘆したように声を出した。
「谷口君、きょうだいは?」
「姉が2人と妹が1人居ますけど」
「お兄さんとか弟さんは?」
「いません」
「なるほどぉ!」
「え?え?何ですか?」
「私社長の意図が分かりました」
と、ゆりこが言った。
「何だろう?」
とコスモス。
「このバックバンドは、“万一”全員男の子だとしても、舞音ちゃんとの恋愛可能性があるメンバーはひとりも居ない」
「ああ、確かに」
とルーシーが言った。
「皆さんの中で性転換手術なさるおつもりの方あったら、私がその費用出していいですよ」
と舞音が言うと
「その内お願いするかも」
とルーシーが言っている。
「むしろ1年以内に性転換手術受けるつもりのある人は今のうちに受けてもらえませんか?養生期間の給料も払いますし、その間は誰か適当な人に代理させますから」
とコスモスが言う。
「1年以内ということはないと思う。私はいづれ手術受けると思うけど、30歳くらいまでに、女の身体になれたらいいと思ってます」
とルーシーは言っている。
「ボクは性転換した方がいいならしてもいいですけど、あまり積極的には性転換したくないです」
と篠原君。
「事務所が性転換を求めることはないよ」
とコスモスは明言する。
「だったら性転換しません」
と篠原君。
「僕は性転換したくないです」
と谷口君。
「谷口君は性転換の必要が無い気もする」
と舞音。
「え?どういう意味ですか?」
「何となく分かる」
と木下君。
「ヒロさんはやはり性転換済みですよね?」
「なぜ、そう思われるんだろう」
と木下君は苦笑している。
「本当にまだなら、手術代出しますよ」
「取り敢えず遠慮しとく」
「ああ、やはり済んでいるんですね」
ということで結局木下君がどこまで身体を直しているのかはよく分からなくなった。彼はあまりにも雰囲気が女性的なので、去勢だけとは思えないのだが。
いつもブラジャー着けてるし。バストはフェイクですと言っているが怪しい:もしフェイクだったとしても、だいたいバストをフェイクするということ自体既に女装のような気がする。彼(彼女かも)は一時期は低い声を開発して声変わりを装っていたが、最近はそれをやめて女の子の声のような地声を使っている(疲れるからだと思う)。彼はコンビニではいつも赤いボタン押されるんですよねーと言っていたが、当然という気はする。
ルーシーはおっぱいも本物で睾丸は除去済みと本人が明言した。ちんちんはまだあるものの、去勢後は全く立たなくなったらしい。
谷口君は男性的な発達が未熟っぽい。今日みたいに男物の服を着てても女の子と思えば女の子にも見える。声もハイトーンだ。22歳になってもこの状態ということは、おそらく何らかの原因で睾丸の機能が低く、二次性徴があまり強く出てないのだろう。今井葉月などと似た系統か。女性に対して不感症のようだが、体質的なものに加えて女性に囲まれすぎてて何も感じなくなってしまったのかも知れない。高校時代も女子の多い社文科で、ほとんど女子ばかりの合唱軽音部に居たし、音楽大学も女子が圧倒的に多い。小さい頃からピアノ教室に通っていたようだが、それもまた女子がほとんどだったろう。加えてきょうだいが女ばかりだ。女装しないとは思えない!(アクアみたいに、スカートくらい穿いても女装とは思ってなかったりして!?さっきも“友人の女物の服を預かっている”とは答えたが、“自分でスカートを持っているか”という問いには答えてない!)
篠原君は少し事務所の方針を誤解していたようだが、女装しないことはないものの、女の子になりたい訳ではないようだ。そして4人の中で唯一の男声使いである。しかし彼はW63 H92 B88 (TB88 UB86) と言っていたので、体型は(胸の膨らみが無いことを除けば)女性体型のようである。彼は過去に「自分はゲイかも」と発言したこともあり、女の子には興味が無いようである。
ゆりこが、木下君と篠原君(および上田兄弟(姉妹))に女子寮に自由に出入りできるパスを渡したのは「いきなり女の子の下着姿の写真を見せた」時、平然としていたのが、その4人だったかららしい。篠原君はむしろ不快な顔をしたらしいので、本当にゲイなのかも知れない。
(しかし、ゆりこもどういうテストをしているのか?)
花ちゃんも「ああその4人は大丈夫」と言ったらしい。「たまに男の子かも知れないと思う子が歩いてないと、この子たち裸で寮内をうろついたりするから」と花ちゃんは言ったらしいが、なぜ裸でうろつく!??
結局“招き猫”バンドは、ゆりこが言うように“舞音との恋愛可能性が無い”子ばかり集めて編成したバンドなのかも知れない。
なお、このバンド《招き猫》のリーダーは、コスモスが木下君を指名した。
「ボクより年齢が上の人が2人いるのに」
と彼(彼女かも)は言ったが、
「君が芸能歴はいちばん長いから君がすべき」
とルーシーは言った。
「うん。この世界は年齢より芸能歴なんだよ」
と、ゆりこも言う。
「そうそう。だから、2008年にデビューした私より2007年にデビューしたコスモス社長の方が先輩」
と私は言ったのだが、
「ケイ会長は“ピコ”の名前で2003年には松原珠妃さんの写真集に写ったり、“柊洋子”の名前でドリームボーイズのバックダンサーしてたから、私より先輩」
とコスモスは指摘した。
「“美冬舞子”という名前で民謡も歌っていたとも聞きました」
と木下君が言うので
「なんでそんな名前知ってんの!?」
と私は驚くよりも呆れた。
私は2004年春に風帆伯母から“若山富雀娘(わかやまふゆすずめ)”の名前を頂いたので、“美冬舞子”の名前で民謡大会などに出ていたのは2002年春から2004年春までの短い期間である。その頃のことを知っているのは、松原珠妃や博多の従姉の純奈・明奈姉妹くらいだぞ!?
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