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■夏の日の想い出・星遮りし恋人(20)
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今年のゴールデンウィークは、アクアのネットライブを期待する声もあったが、「映画撮影中なのでアクアのスケジュールが空かないので」と言って、コスモスはアクアのライブは行わないことを言明した・
このゴールデンウィークにネットライブを実施したのは、ラピスラズリ、高崎ひろか、品川ありさ、姫路スピカの4組である。(白鳥リズムもアクアの映画に出ている)。
いづれも石川県の“火牛アリーナ”を使用し、信濃町ガールズ北陸のメンバーと、東海のメンバーがバックダンサーを務めた。
観客(視聴者)の数はラピスラズリで600万回線、他の3組も200万回線ほどの接続があり、大成功であった(接続回線数は全て非公開)。ちなみに東京の深川アリーナでは、ハイライト・セブンスターズ、スリルボカン、スパイス・ミッション、トライン・バブル、三つ葉、UFOなどのライブが連日行われて、いづれも、あけぼのテレビ+ЮЮネット+★★チャンネルで有料ネット中継された。全て大盛況であった。
「なんかネットライブってリアルライブより遙かに収益が大きいよね。コロナが収まってからもネットライブでいいかも知れない」
などと∞∞プロ(ハイライトセブンスターズなどの事務所)の鈴木社長(72)は満面の笑顔で言っていた。
「たぶん、あけぼのテレビの、双方向中継方式が受け入れられているんだと思うよ」
などとζζプロ(UFOの事務所)の兼岩会長(70)は言っていた。
「僕も兼岩君と同じ意見だな。やはり従来のような片方向中継ならテレビと変わらないし、無反応の会場での演奏はアーティスト側もやりにくい」
と○○プロ(スパイス・ミッションの事務所)の丸花社長(77)も言う。
しかしこの3人が集まってたら、私は恐い!!
昔イギリスの政治学者が「議会とは女を男に変えたり男を女に変えたりする以外は何でもできる機関である」と言ったけど(*4)、この人たちは、それさえもできる人たちという気がする。「君、女の子になって。今から手術受けてもらうから」くらいのことは簡単に言いそうだ。
(*4)ジュネーブ生れの政治学者ジャン・ルイ・ド・ロルム(Jean-Louis de Lolme, 1740-1806) のことば。原文:Parliament can do everything but make a woman a man and a man a woman. イギリス議会の権限が強すぎると批判したもの。
「じゃ、女の子になってね。今から手術だよ」
と、手術室に向かうストレッチャーに乗せられた彼は告げられた。
私は百道大輔さんをテレビ番組に出演してテレビ局を出るところで捉まえた。
「百道さん、ちょっとお話があります」
「びっくりした。ケイちゃんか」
私が後から声を掛けたので、大輔さんはギョッとしたようであった。
「もし良かったら私の車に乗ってお話ししませんか」
「いいよ。タクシー呼ぶつもりだったし」
「じゃ帰りはマンションまでお送りしますよ」
「うん。頼む」
それで私は彼を自分の車 (Honda Accord EX 2020model 1993cc Luna-Silver-Metalic)の助手席を勧めて乗せ、運転席に就くとテレビ局の駐車場を出た。私は取り敢えず缶コーヒーを勧める。
「あ、タリーズのこのコーヒー好き」
と言って開けて飲んでいる。
「良かった」
「でも何すんの?性転換手術受けてくれとか言われたら逃げるけど」
「じゃ、性転換手術を受けてもらおうかな」
「え〜〜〜!?」
と百道さんは“期待するような目で”私を見た。
(手術されたいの??本当に病院に連れて行こうかな?飛び込みでも、手術室さえ空いてたら、すぐ手術してくれる所知ってるけど。そういやこの人ステージでは結構スカート穿いてるよな、と私は思った)
なかなか決まらなかった、Ye-Yoのマネージャーなのだが(暫定的に山下ルンバ・桜野レイア担当の村田英世がお世話していた)、5月になってから、やっと決まった。
以前○○プロに居た秋田有花(あきた・ゆか)さんである。苗字は秋田だが、生まれは宮城である。ついでに2015年に結婚していて夫の苗字は福島である。更にその福島さんの生まれは青森で、岩手大学の出身である!!
彼女は篠田その歌(Act=2005-2013)の最後のマネージャーであり、森風夕子(Act=2013-) の初代マネージャーである。2015年に結婚するのに○○プロを退職して主婦をしていたが、子供も2人(双子)産んで、専業主婦にも飽きてきたから、仕事に復帰したいと言っていた。偶然にも、近藤うさぎ経由でその話を聞き、私がスカウトした。念のため前職の○○プロ・丸花社長にも私が電話して、「いいよー」という口頭での承諾を取って雇用した。Ye-Yoの売れ方次第では数日帰宅できないような場合もしばしば発生する可能性があるが、彼女自身の母親と同居しているので、子供(幼稚園の年長さん)のお世話は問題無いらしい。
なおマネージャーの仕事は“秋田有花”の名前をたくさん覚えてもらっているので、旧姓で活動することにした。彼女ならベテランなので、安心して任せることができる。一応§§ミュージックのポリシーについて、彼女と私・コスモスの三者でよくよく話し合い、迷ったらすぐ相談してと言っておいた。
それでYe-Yoは、取り敢えず、前回歌って好評だったロッテ・ショコエールの新しいCM曲の制作に入ることになった。楽曲はまた松本葉子・松本花子ペアから提供してもらう。「便利なものができてるのね」と有花は言っていた。
前回楽曲の制作指導をしてくれた野潟四朗さんのスケジュールの空きを待って制作することにし、Ye-Yoには取り敢えず譜面を渡して練習させると有花は言っていた。しかし多分有花の指導は野潟さんより厳しい。あの元気いっぱいの森風夕子でさえもかなり泣いていたからね!Ye-Yoは泣き虫だから、かなり泣きそうだな、と私は思った。
常滑真音が物凄く売れてしまったので、専属バンドを作ることにした。
ここで信濃町ミューズの木下宏紀(2002生)が
「自分に舞音ちゃんのバックバンドをやらせてもらえませんか」
と言ってきた。
彼(既に彼女かも)は、高校を卒業してしまい、歌手デビューは今更難しいだろうからスタジオミュージシャンになることも考えていたのだと言った。
彼(彼女?)なら、ギター・キーボード・サックス・ヴァイオリン・フルートなど多彩な楽器が演奏できるし、ステージ経験も豊富なので、認めることにした。それで彼(彼女?)はミューズを卒業ということになる。
それでそれ以外のメンバーの選定をする。
最初に選定したのが、元イグニスのベーシスト Lucy(平田留美 1997生)である。イグニスというのは、2016-2018年頃に活動していたアマチュア・ガールズバンドで、Lisa, Lucy, Leia の3人組であった。内Leia(1996生)は桜野レイアとして2019年春にデビュー(赤羽ドラゴンと兼任ドラマーだった)、Lisa=竜木梨沙(1998生)は2019.2にローズ+リリーのマネージャーになった。
それでルーシーは取り残されて、実質イグニスの活動も停止していた。その後はレイアのコネで§§ミュージックの歌手の音源制作にしばしば参加しており、実は“信濃町バンド”のメンバーでもある。彼女も多数の楽器を扱えるので助かる。
3人目として選んだのが谷口翼くん(1998生)である。ローズ+リリーのライプで“愛のデュエット”に出演してもらったことがある。その時は、ピアノ・リコーダー・フルート・クラリネット・アルトサックスと5種類の楽器を演奏してもらっている。青葉の後輩だが、東京音大のピアノ科を今年春に卒業したとても優秀な人である。
しかし・・・・・実は世の中にピアニストというものは、あふれている!
特に男性ピアニストはあまり需要が無い。
ので、彼はどうしても就職先を見つけることができなかった。教員採用試験も受けたが落ちたらしい。音楽教師というのも狭き門である。それで青葉の紹介で、信濃町バンドに取り敢えず籍を置いてクラリネットを担当していた。それをスカウトしたのである。
この3人の担当楽器を考えると、谷口君がピアノ、ルーシーがベース、木下君がギターというのが妥当だと思った。それで私たちはドラマーを探した。
何人かのドラマーを検討していた時、彼が来たのである。
「社長、お願いがあります」
と篠原倉光(春日ライト)が事務所に来てコスモスに言った。
「どうしたの?高校卒業する前に性転換手術受けることにした?」
(ほとんどセクハラ発言)
「それはまだ決断が付かないんですけど」
と篠原君は俯いて言った上で
「木下君が舞音ちゃんのバックバンドやると聞いたので」
「うん」
「ボクにもやらせてもらえませんか?」
「へー!」
「舞音ちゃん、オーディションの12位から、わずか7ヶ月でデビューしたでしょ?男子寮でも女子寮でも“凡才の星”とかいって、凄い人気だし、みんなで彼女を盛り立てて行こうという雰囲気なんですよ。ボクも役に立てたらと思って」
なんか先日ロマンから聞いたのとは違うなとコスモスは思う。女子寮と男子寮では少し空気が違うのかも知れないとも思ったが、篠原君は実は女子寮に自由に出入りできるパスを持っている(木下君も持っている)。女子寮の中でも舞音を応援するグループと微妙な感情を持つグループがあるのかも知れない。
篠原君は言う。
「それにボクは男子のままでは歌手デビューは難しそうだし。といっても、母が高校在学中は性転換手術とかダメよと言っているし」
さっきはジョークで言ったんだけど、この子、マジで性転換手術とかする気あるのか?この子は男の娘路線じゃなくて、西宮ネオン路線かと思っていたのに。
「ボク、ギター、ベース、キーボード、ヴァイオリン、フルート、ドラムスはだいぶ練習しています。プロレベルではないかも知れないけど」
「あ、君、ドラムスできるんだっけ?」
「レッスンは受けてますが」
「ちょっと聞かせて」
と言って、彼(まだ彼女ではないはず)を防音室に連れて行く。たまたま事務所に居た、桜野レイア(ドラムスのプロ!)にも聞いてもらう。コスモスは舞音の『マネのマネキマネキン』の譜面を渡して「これ叩いてみて」と言った。
篠原君が譜面を見ながらドラムスを演奏した。
コスモスは拍手した。レイアもゆっくりしたペースではあるが拍手する。
「合格、でいいよね?」
とコスモスはレイアの顔を見なから言う。
「まあ仮免合格かな」
とレイア。
「篠原君、君に毎日100回の腕立て伏せを課す」
とレイアは言った。
「頑張ります」
「腕立て伏せしてれば、おっぱいも大きくなるよ」
「それ・・・いいかも」
「女性ホルモンは飲んでるんでしょ?」
「すみません。それノーコメントでいいですか?」
「まあいいけどね」
そういう訳で、篠原君が舞音バンド“招き猫”のドラマーになったのである。
Gt.木下宏紀(2002)
B.平田留美(1997)
KB.谷口翼(1998)
Dr.篠原倉光(2003)
篠原君はまだ高校3年生だが、舞音自身が高校1年生なので、活動時間が問題になることは、無いだろうと思われた。
「うちの歌手のバックバンドって女子のみで構成する方針かと思ったのに、舞音ちゃんのバンドは男の子が多いんですね〜」
と川崎ゆりこが、メンバーの初顔合わせに臨席して言った。
「男の子でも女の子でも気にしませんよー、私、男の人のいる所で着替えるのも平気だし」
と舞音本人。
「木下君と篠原君は、女の子が着替えるの見ても平気だよね?」
と花ちゃん。
「女子ガールズたちに鍛えられてますから」
と木下君が苦笑しながら言う。
「僕は目を瞑ってます!」
と谷口君。
「大宮万葉先生からの情報では、谷口君は、高校の合唱軽音部時代は、女子部員の控室にいつも連れ込まれていたとか」
「ふと気付いたら周囲女の子ばかりということはありました」
「みんなセクハラされてるなあ」
と桜野レイアが呆れたように言う。
「結局、ルーシーちゃんが紅一点か」
とゆりこは言ったのだが、コスモスが首を振る。
「ん!?」
「私、男ですけど」
とエナメルのスカートを穿き、豊かなバストの目立つカットソーを着、パンティストッキングにパンプスを穿き、長い髪にカチューシャを着け、マニキュアもしてお化粧もして、耳には可愛いお魚のピアスもしているルーシーは女声で言った。
「え〜〜〜〜〜!?」
と、私・ゆりこ・花ちゃん・篠原君・谷口君が驚いたような声を出した。
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