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■夏の日の想い出・星遮りし恋人(18)
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さて、お父さんの峰川旅世は、“世界制服計画”と称して、中高生の女子制服の蒐集が趣味である。3000点くらいのコレクションがあるという。日本国内の私立高校については過去の分も1980年代以降の分はほぼコンプリートという話だ。(日本には現在約1300の私立高校がある。むろんその中には男子高もあり、当然それは蒐集対象外である)生徒以外には売らない学校の制服もオークションなどでゲットしたらしい。
集めているのは普通のMサイズだが、それを着るのも趣味らしい。Mサイズの女子中高生制服を着られるのが凄いが、ウェストは20代の頃からずっと63cmをキープしている。逆に男性用の既製服が合わないので、授業の時などに着る紳士用スーツはオーダーメイドである。
高校の先生なのに、女子制服を集めるのが趣味で、自分で着たりもするというのは、とっても危ない感じだが、その制服を着て出歩くのは奥さん(イリヤの母)から禁止されている。20代の頃に女子高制服を着た写真を私は見せてもらったことがあるが、当時ならちゃんと女子高生に見えた。
またお父さんは“学区外では”しばしば(さすがに女子高生の格好ではないが)女装して出歩いており、“ひまわり女子高2年A組17番森野眠美:もりのたみ”と自称して、その名義の生徒手帳も持っている。実はこの生徒手帳は海浜ひまわりのファンクラブ会員証である(現在もアーティストをアクアに変更してファンクラブ会員証としては有効)。
興味があるのは制服だけであり、中身の女子高生には全く興味が無いらしい。そもそも女性に対して不感症で、実は女性とセックスしたこともないらしい。女性の下着姿やヌードを見ても何も感じない。でも奥さんの八千代のことは好きだと言うし、ずっと仲が良いようなので、愛情を感じない訳ではないようだ。なお、セックスせずにどうやって子供を3人も作ったのかは“企業秘密”らしい。
学校ではそういう性格が“理解”されていて、修学旅行や夏休みの林間学校などの女子宿泊場所の番など任せられたりしているらしい。また、女生徒たちから、よく恋愛相談などされるという。但し臨海学校や水泳大会などでは校長から水着になることを禁止されているとか!
「ぼくビキニにも自信あるのに」
と言っていたが、やはり水着姿にはしないほうが良さそうだ。
2019年春、お父さんは“性転換手術を受ける費用を稼ぎたい”と言って、イリヤからお金を借り株式相場に参戦したものの、美事に失敗した。
お金を借りる時に、利益が出たらそのお金で性転換手術を受けることを奥さんから許してもらったものの、損失が出たら一生イリヤの奴隷として働く、という約束だったらしい。
それで失敗してイリヤから借りたお金も返せず、お父さんはイリヤの奴隷になった。しかし学校の先生をしている間は奴隷になると仕事に支障が出るだろうから、定年退職してから奴隷になる、ということでモラトリウム(支払猶予)になっていた。
そして2021年3月31日、お父さんは60歳になった年の年度末で、勤めていた学校を定年退職した。そして翌4月1日、イリヤから
「じゃ今日から私の奴隷ね」
と告げられたのである。
娘のイリヤから「奴隷」を宣告されて、お父さんは期待の目で見ている。
退職金でイリヤから借りたお金は返せたと思うが、退職金は奥さんが自由に使って良い約束だったので、全部奥さんに委ねたらしい。それにそもそも奴隷になりたくてたまらなかったようである。
お父さんは、焼き印を入れられか、手枷足枷付けられるかと期待している。
「もし手や足を切断するなら、できたら麻酔掛けてね」
などと言っている。
「そうね。首を切断する時は麻酔掛けてあげるから安心して」
とイリヤ。
「首を切断するの〜?」
とさすがに、お父さんはビビっている。
「取り敢えずこれに署名して」
と言われて出された“承諾書”には
《私は人権を放棄します。以降私は人間ではありません》
《御主人様に命じられたことには全て従います》
《私は身体のどこを切り刻まれても構いません》
などという条項が入っている。
お父さんは恐る恐るそれに署名して実印を押した。
「取り敢えず私と一緒に来て。お母さんの許可は取ってるから。いいよね?」
と母を見て再確認する。
「まあ好きにすれば?でも私と離婚することは許さないからね」
と母。
「ぼくも八千代のことが好きだから、別れたくない」
「だったら好きにどうぞ。じゃ1ヶ月後に」
「1ヶ月?」
「まあお父さんが生きてたらね」
「生きてたら!?」
それで若干の(むしろかなりの)不安を持ちながら、お父さんはイリヤの車 SKYLINE 250GT Type-S (V36) の後部座席に乗ったのであった。スカート穿いていいよと言われたので、サンローランのスカートスーツを着た。こういう服を着ればメイクとかしなくても普通に47-48歳くらいのおばちゃんに見える。元々とても若く見えるタイプである。むろん下着は全部女性用下着であり、トリンプのブラジャー(C70)も着けている。
そもそも父は男物の下着を持っていない。
イリヤは物心ついた頃から父が女性用下着を着け、家の中でスカートを穿いているのを見ていたので、それが何か変なことであるとは思ったことがない。もしかしてうちのお父ちゃん、他の家のお父ちゃんとは少し違うのかもと認識するようになったのは小学1-2年生の頃であった。
子供の頃、洗濯物を干す時、男物の下着は、長兄・拓朗のものだけで、他は全部女物だった。でも各々の好みが違うから、だいたい誰のものかは区別がついていた。母は実用的な布面積の大きいもの、父はレースやフリルなどの装飾が多くフェミニンなもの。広高(広香)はキティちゃんとかプリキュアとかのキャラクターもの、イリヤ自身は絵の無いシンプルなもの。イリヤの好みは家族の中では最も中性的で、よく姉(?)からは
「いーちゃんも、もっと可愛いの穿けばいいのに」
と言われていた。
イリヤは“姉”広香の性向は父の遺伝なんだろうなと思う。男の娘の息子が男の娘に育つというのは、わりとあちこちで聞く話である。でも姉より父のほうが美女っぽい気がする!
父は学校でも着替える時は個別の更衣室を用意してもらっていた。また、女声の出し方もマスターしているので、生徒たちに唆されてけっこう女声で授業をしていた。行事などで国歌や校歌を歌う時はソプラノで歌っていた。
一応校長との約束で男性用スーツで勤務してはいたが、女の先生だと思われていることもわりとあったようであった。結構同僚の女先生たちと、化粧品やファッションの話などもしていた。一応高校では校長との約束でお化粧も自粛していたものの、アーデンの愛用者である。また3年生女子へのお化粧指導を毎年担当していた!(システマティックに教えられる人がわりと居ないのである)
なお旅世は、足のむだ毛や顔のむだ毛は20代の頃に永久脱毛済みである。(レーザー脱毛の無い時代なので針で1本ずつ焼く方式を取っており、かなりの苦痛に耐えて永久脱毛したらしい:特に男性の体毛は太いので焼き切るのに女性より時間が掛かり苦痛も大きい:性転換手術より脱毛の方が痛いと言われた時代)
ひたすら分裂していくバンド“ラビット4”。
元々は2012年頃に、まだ大学生だった因幡修と四屋晃(どちらも1992年生)がライブハウスに一緒に出演するようになったのが発端である。ハイトーンの四屋さんのボーカルと、因幡さんの篠笛のコンビネーションが魅力的なコンビだった。
(声だけ聞くと女声ボーカルにも聞こえるので『可愛い声だなあ』と思って見てみると、男なのでがっかりする、などと言われていた:レコード会社の人も何人も来たけど、みんな本人たちを見て帰っていった)
最初はユニット名も無かったが、その内、因幡という苗字が“因幡の白兎”を連想させることから四屋の“四”とあわせて“Rabbit 4”を名乗ることになる。やがてベースの高橋とドラムスの佐藤(どちらも因幡たちより3つ上)が加わり、4人組のユニットになって、2015年12月∂∂レコードからデビューした。この時、∂∂レコードはあまり彼らに期待していなかったので、アーティスト契約ではなく委託契約だった。それが1年後に問題になることになる。
2017春、バンドは2つに分裂して片方は龕龕レコードに移籍した(委託契約なのでアーティストを縛れない)が、どちらも“Rabbit4”を名乗った。同じ名前だと混乱するので、テレビ局が勝手に両者を“さくら組”“いちご組”と呼んだ。(高柳あつみアナウンサーの命名)
2018年春、さくら組が2つに分裂して、めろん組が出来、2019年春にはいちご組が2つに分裂して、ばなな組が出来て4つになった。
2020年春、今度は5つになるか、一気に8つになるかとみんなが期待(?)していたら、桜組が2つに分裂して“山桜”と“川桜”になり、いちご組が2つに分裂して“男峰”“女峰”になって結局6つになった。
オリジナルメンバーの因幡さんは、いちご組→男峰、四屋さんはさくら組→山桜になっているが、この2組は各々《1人バンド》でメンバーは本人だけである。
なお、これらの名称は全てテレビ局(高柳あつみアナウンサー)が勝手に付けた《区別するための通称》に過ぎず、ライブでは「次はRabbit4です」としかコールされないし、各々のCDなども単純に Rabbit4 の名前で販売される。レコード会社では、買う人が混乱しないようにと、演奏者の名前をジャケットに明示しているが、やはり間違って買っていく人は多い!
↓分裂の経緯 L=Leader
Rabbit4 因幡(L,Gt/篠笛)・四屋(L,Vo/Gt)・高橋(B)・佐藤(Dr) (∂∂レコード)
さくら組 四屋(L)・佐藤・渡辺・細野 (∂∂レコード)
いちご組 因幡(L)・高橋・大川・津野 (龕龕レコード)
さくら2 四屋(L)・渡辺・村上・川中 (∂∂レコード)
めろん組 佐藤(L)・細野・加藤・小沢 (θθレコード)
いちご2 因幡(L)・大川・中村・八女 (龕龕レコード)
ばなな組 高橋(L)・津野・青山・元木 (ЮЮレコード)
山桜 四屋(L) (ΣΣレコード)
川桜 渡辺・村上・川中(L)・片原 (∂∂レコード)
男峰 因幡(L) (σσレコード)
女峰 大川・中村・八女(L)・桑野 (龕龕レコード)
まだまだ分裂していくのか、名前の権利はどうなっているのか、2020年春にひとりの記者が四屋さんに質問したところ
「その内日本中のアーティストがラビット4になるかもね」
と言って笑っていた。また彼は
「ここまで増えてきたら最後は性転換だな」
と発言した。
この“性転換”ということばは憶測を呼んだが、四屋さんはそれ以上説明しなかった。
2021年春、ばなな組がドールとチキータに分裂、めろんがアンデスと夕張に分裂。合計8つになった。
・・・かと思ったら、男峰(因幡さんだけのユニット)と山桜(四屋さんだけのユニット)が合体して“Rabbit4 Super”を名乗ることを4月4日朝、発表した。
レコード会社については、因幡さんが所属するσσレコードは元々四屋さんが所属するΣΣレコードの子会社というのもあり、自由度が高い(=取り分も多い:その代わりあまり営業してもらえない)σσレコードの方に合流することで、ΣΣ側の承認も得られたらしい。
Rabbit4系ユニットの合体は初めてである。更に別の名前を名乗るのも初めてである。マスコミは記者会見を要請した。それで時節柄、リモートで記者会見が行われることになった。会場は品川のPホテルが使用されるということだった。
17:00 金の屏風!?の前に用意された会見席に“タキシード”姿の因幡修と、“ウェディングドレス”!! 姿の四屋晃(?)が登場するので、リモート会見に参加していた記者たちも、ネットで見ていたファンと野次馬!たちも仰天する。
「俺たち今日の午前中にこのホテルの式場で結婚式を挙げました。夫婦になったのでバンドも合体させます」
とタキシード姿の因幡さんは言った。
四屋さんが左手薬指に填めた大粒ダイヤのプラチナリングをカメラに向ける。かなりのカラット数である。恐らく300万円以上だ。
「あのぉ、籍も入れられるのでしょうか?」
とひとりの記者が質問する。
「婚姻届は今日の朝1番に提出してきました。これが受理証明書です」
と言って、大田区長名の入った“婚姻届受理証明書”をカメラに提示した。
「婚姻届が受理されたということは、因幡さんは女性なのでしょうか?」
「うん。俺は女だよ」
と因幡さん。
「え〜〜〜!?」
と多くの声。
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