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夏の日の想い出・天使の歌(16)

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「でもケイちゃんは復活したみたいね」
と氷川さんは言った。
 
「やはり宮古島の優しい空気が魂を癒やしてくれた気がしますよ」
 
「今、音楽業界は疲れている人が多いのよね」
と氷川さんは言う。
 
「そうなんですか?」
 
「昨年1年間、上島さんの楽曲制作分をカバーしなきゃというので、どの作曲家さんも頑張ったでしょ?だからその肩の荷が下りたらホッとして取り敢えず楽曲を作る気にならないという作曲家さんが多い」
と氷川さん。
 
「あらぁ」
 
「元気なのは上島さんだけって感じ」
 
「他には、ケイさん、琴沢幸穂さん、大宮万葉さん、丸山アイさん、カノンさん、鮎川ゆまさん、そのあたりかな。元気に活動しているのは」
と秩父さんが言っている。
 
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「性別の怪しい人が多い」
と政子は言っている。
「カノンは怪しくないと思う」
と私。
 
でもそれ以外は確かに全員怪しい!
 
「醍醐春海さんも復活したよ」
と氷川さん。
「ほんとですか!よかった」
と秩父さん。
 
アイや琴沢幸穂が元気なのは、夢紗蒼依のお陰だろうなと私は思った。量産品はコンピュータに任せて、自分で使う分だけ本人が書く。しかし作曲家もデザイナーと似たような仕事の仕方になっていくのかも知れないという気がした。量産品、プレタテポルテ、オートクチュールと3段階かな?夢紗蒼依はプレタポルテくらいの位置づけなのかも知れない。絵で言うと、印刷、版画、直筆画という3段階か?
 
しかしそういう訳で昨年頑張りすぎた人たちのダウンで今年もまだまだ楽曲不足は続いて行ったのであった。そのおかげで、夏を過ぎた頃から、上島先生に楽曲を頼む人たちがぽつりぽつりと現れるようになった。
 
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さて今回のシングルを作るに当たって、私は前作『戯謔』『天使の歌声』などの流れから、使用楽器の数を絞る方針で制作した。
 
"MAX10"という方針で、ひとつの楽曲で使用する楽器を最大10種類に抑えようというものである。スターキッズ(+美野里)だけで、
 
ギター、ベース、ドラムス、キーボード(ピアノ)、アルトサックス、マリンバ(ヴィブラフォン)
 
の6種類の楽器を使うので4つしか加えられない。一般的にヴァイオリンとフルートは欲しいので、残りは2つである。実際には下記の楽器を設定した。
 
『Atoll-愛の調べ』『秘密の大陸』トランペット・クラリネット 
『麹の力』三線(さんしん)・琉球笛(ファンソウ)
 
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琉球笛というのは、九州方面のお祭りなどでよく使用される明笛(みんてき)のバリエーションである。明笛は穴をひとつ竹紙で塞いで使用し、この紙が震えて金属的な音が出るが、沖縄のファンソウの場合この穴がそもそも開けてない。従って基本的な演奏法は同じでも音色が異なり、篠笛に近い音になるようである。
 
実際の演奏では、トランペットはスターキッズ&フレンズの香月さん、クラリネットは詩津紅、フルートと琉球笛は千里、ヴァイオリンは伊藤ソナタ、そして三線は明智ヒバリの友人の三線奏者で横浜在住の後浜門(くしはま)さんという人に参加してもらった。彼女の日程の都合でこの制作は7月13-15の連休におこなった。
 
なお、伊藤ソナタは2018年3月に音楽大学を卒業した後、1年間ドイツに留学していたのだが、最近日本に戻ってきて、現在は音楽教室の講師をしている。授業はだいたい夕方からなので、日中なら参加出来る。
 
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美野里はアスカの専属ピアニストとしてアスカが勤めている音楽大学の助手資格になっているのだが「午後からならいいよ」と言って出てきてくれた。
 
(大学から出るお給料にプラスしてアスカからやや曖昧なお手当をもらっていて本人は「愛人生活」と言っていたが、アスカも美野里もレスビアンではないはず)
 
詩津紅は制作期間、また有休を取って参加してもらったが、マジで心配になって
「有休足りる?」
と尋ねた。
「日数は数えてないけど、有休届けは通ったよ」
と言っていた。
 
今回は早くリリースしたいというのもあり、楽曲を3曲に絞ったのだが、お陰でマスターが完成したのは7月16日(火)の夜で、それからプレスに回し、7月24日(水)に発売した。
 
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ただし発売記者会見は、後述の理由により前日の23日(火)におこなった。
 

発売記者会見は★★レコード本社がある青山ヒルズ“1階”の貸し会議場で行った。ここを使うのは1年半ぶりである。
 
★★レコードは元々このビルの14-15階を使用していたが、ここ数年事業の一部を子会社や関連会社に移行させる処置が多く発生していて結果的にフロアに空きが発生していた。14階に設けられていた記者会見場も空いたスペースを利用しようと設置されたものである。
 
しかし町添社長は家賃も高い(1フロア3000万円/月)し、空いているのなら解約した方がいい決断。14階は使わないことにして全て15階に集中させる方針を決めたのである。引越は業務混乱もあったので、落ち着いてから、9月までに行う予定である。システム部門などは何も場所代の高い青山に無くてもいいのではということで大田区の貸しビルに移転させることになった。システム部を分離するのはセキュリティ対策もある。大田区に置くのは何かあった時品川駅あるいは羽田空港から全国の支店に急行する便も考えたものである。
 
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そういう訳で今まで14階に設置されていた記者会見場が使えなくなったので2018年2月まで記者会見の際に使用されていた1階の貸し会議室を使うことになった。14階に作られていた会見場より広いし、また記者さんたちもわざわざ高層階にあがる必要が無い。
 
そしてもっと重要なことは、本社のエリア内に外部の人間を入れなくて済むことである。この時期は絶対MSM側のスパイが活動している。
 

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マリは本当は8月3日から産休が終わって活動再開する予定だったが、もう間近なので、今日は普通に記者会見に出たし、私と一緒にスターキッズの伴奏に合わせて歌った。
 
この記者会見時の演奏は音源製作と同じメンツで行った。クラリネットを吹く詩津紅と、三線弾きの後浜門(くしはま)さんにもお休みを取って参加してもらった。昼間なので伊藤ソナタさんも参加出来た。
 
「マリさん元気ですね」
と記者から声を掛けられて
「元気です。逆立ちもできます」
などというので
「やってみて下さい」
と言われ、本当に逆立ちをした(私が足を支えた)。
 
“アトール”の意味について質問があったので環礁のことであると答え、実際のルカン礁の写真(木ノ下大吉先生の知り合いにドローンを飛ばして撮影してもらった)を見せると「きれーい!」という声が多数あがっていた。
 
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だいたいの質疑応答が終わった所で私はアルバムの件に言及した。
 
「ローズ+リリーの次期アルバムの件では、色々混乱を招く発言をしていて、大変申し訳ないのですが、最終的に今年制作するアルバムは『十二月(じゅうにつき)』にすることになりましたので、過去の発言についてお詫びします」
 
「それ、★★レコードの社内の混乱が背景にあるのでは?」
という質問もあるが
「その件は私もよく分かりませんね。私たちアーティストは黙々と音楽制作をしていくだけです」
とコメントしておいた。
 

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MSMを巡る★★レコードの混乱だが、7月13-15日の連休の間に、★★レコードを退職してMSMに移籍する社員数は結局170名程度(全社員の8分の1程度)に留まることを★★レコード広報部は発表した。MM系は本来500人ほど居たはずだが、思ったより少なかったことから、経営に大きな影響は無く、恐らく半年程度の内に業務は正常化するだろうと、多くの投資家が判断した。
 
実際、MM系であっても、混乱を引き起こすような退職には反感を持つ人たちも多くいた。むしろ業務妨害で訴えるべきだと憤慨していた人もいた。また氷川さんも言っていたように、何の準備もなくいきなり会社を作って何百人もの社員がする仕事がすぐにあるのか?給料を払っていけるのか?と疑問を持つ人もあった。特に佐田元副社長の系統の人にはそういう人が多かった。
 
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MSMには佐田氏自身は参加したものの、佐田氏の親友であるはずの島長元取締役は参加していなかった。むしろ★★レコードの顧問に就任したことが発表されて、これは残留した社員を勇気付けた。更に佐田氏の“息子”(?)も残留したが、本人は
 
「ボクは親父に勘当されてるから関係無い」
と言っていた。実際“彼”(?)は営業部次長の鬼柳さんに心酔しているのである。これまで営業部の係長の職にあったのだが、無用の混乱を防ぐため、似鳥部長付にして、実際は鬼柳さんの助手的な仕事をしている。
 
「鬼柳さんの奥さんになりたいくらい」
「僕んちの家庭争議を引き起こさないでよね」
「深夜作業になってもホテルに誘ってくれたりしないのよね」
「そんなことしたらセクハラだよ!」
「ボク、セクハラされたいのに」
 
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しかし“彼”(?)が残留したのも残留派を勇気付けた。
 
三つ葉を担当することになった明智さんのように、村上系の人脈でも★★レコードに残留した人は結構いた。明智さんも氷川さんと似たような見解のようで
 
「そんな海のものとも山のものともつかぬ新会社に賭けるのは危険じゃないですか」
などと言っていた。
 
実際30-40代の社員には住宅ローンを抱えている人も多く、この人たちの多くが★★レコードに留まった。
 
また★★レコードは2014年秋に社員の性別移行を許容するプログラムを開始していたが、村上さんはこの制度に何度も不快感を表明していて、その内この制度は廃止されるのではと危惧する人たちもいた。しかし村上さんが新会社に移動したことで、彼ら・彼女らは安堵したし、元々MM系の人でも性別を移行した人、移行を考えていた人たちは全員残留した。この人たちが残ってくれたのも大きかった、
 
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MM系社員は営業部門に多いものの、こういった残留組のおかげで何とか業務の停止は免れた。結局7月第4週には、★★レコードの機能はほぼ回復した。
 

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また村上社長の時代は機能が重複する組織がやたらと作られた一方、40-50代の社員への退職勧奨や子会社・関連会社への出向なども随分行われていたのだが、170人もの退職者が出て手が足りないので、退職した人を対象に(給料は安いし、年下の上司の下で仕事をする必要があるがと断った上で)復職希望者を募った。
 
すると50代でリストラされた社員の多くが次の仕事を見つけられず、コンビニのバイトや建設作業員などをして食いつないでいたようで、復職希望者がかなり出た。面接をして50人ほど採用したが、即戦力なので彼らの働きで、残留社員の負荷が随分軽減された。彼らはここ数年世間で苦労していたこともあり、かつての部下の下に配属されても、分をわきまえた行動をしてくれて、随分社内の雰囲気を良くしてくれた。
 
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「老いては子に従うの気分だね」
と彼らは言っていた。
 
ちなみに退職した後、性別が変わっていた人がこの50人の中に10人もいた!(性別変更で、ますます新しい仕事を見つけられなかったらしい)
 
これ以外に出向していた子会社・関連会社から(緊急処置で)本体に復帰してもらった人も30人ほどあり、これでだいたい人員不足は解消されることになる。
 
KARIONの担当も関連会社に出向していた鷲尾海帆さんが復帰して担当になってくれたが、小風が「山村美喜さん以来8年ぶりにまともな担当さんになった!」と喜んでいた。鷲尾さんは実はKARIONがデビューした頃に担当してくれた人である。当時は固定の担当は決まっておらずその都度色々な人が担当してくれていたのだが、鷲尾さんにはかなりお世話になっていた。山村美喜さんが固定担当になったのはデビューから半年経った2008年7月で、2011年6月まで3年間担当してもらった。
 
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7月24日(水).
 
新経営陣は全国の★★レコードおよび子会社を24-26日(水木金)を一斉に臨時休業にした上で、バイトを含む社員たちを東京・大阪・名古屋・岡山・仙台・札幌・福岡・那覇の全国8ヶ所のホテルの大広間に集め、食事も提供した上で、通信回線を通して町添社長、朝田専務など、新取締役9人の全社員へのメッセージを伝えた。(町添・朝田が東京で他の7人が他の7ヶ所)堂崎取締役のメッセージでは、かなり笑いが起きていた。
 
町添さんは冒頭《社員全員クリエイター》という社是を挙げ、ひとりひとりが音楽家やパフォーマーになった気持ちで、想像力を持って制作していこうと呼びかけた。
 
社員からの質問も受け付けたが、それに丁寧に答えていく町添さんや朝田さんの姿勢に社員たちはモチベーションを高めた。各地の会場に赴いた新取締役たちは会場内を巡回しながら、懇親に務めた。
 
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MM系社員が多かった大阪には常務になった似鳥さんが行って以前居た会社から営業畑一筋50年の彼ならではの話でノリの良い関西人社員たちと連帯感を深めた。加藤制作部長が行った福岡では加藤さんに「やっと部長になったね」とみんなが声を掛けて祝賀会ムード、堂崎さんが行った札幌では飲めや歌えの宴会と化した!また中林さんが行った仙台では、女性社員の一部が中林さんの「性別問題」を追及?し、彼女はあっさりバラしたが、その内容は「個人情報保護法に基づき非公開」として、他の部署には広まらなかった。
 
こうして、大量退職者で目が回る思いをしていた残留社員たちは、一丸となって新しい会社の体制を作り上げていこうというムードになったのであった。
 
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結果的に8月中旬以降、特にフロアが15階にまとめられた9月以降、業務は完全に正常化された。かなり短期間で混乱が収拾されたことを好感して、一時は700円程度まで落ちていた株価は中間決算前の9月下旬には2000円台まで回復した。
 
 
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■夏の日の想い出・天使の歌(16)

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