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■△・武者修行(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-10-20
 
4月23日(日)。この日は千葉ローキューツでこの3月まで主将を務めた愛沢国香の結婚式であった。しかしこの時期は日本代表の合宿中ということで、出席はできないということを千里は予め伝えていた。
 
しかし落雷の影響で休んでいなさいと言われたことから、“千里”は出席できるなと考えた。
 
特にこの時期、千里3は桃香が入院していることも知らず、三宅先生から頼まれたAYAに渡す曲(『ゴールドラッシュ』)を仕上げるため、江戸川区葛西のマンションに籠もって曲作りをする傍ら、わりと地理的に近い深川アリーナに出かけてはバスケの練習をしていた。この時期、深川アリーナはまだサブ体育館の方は工事中なので、メインアリーナの方で練習する。
 
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するとしばしばローキューツ・40 minutes・江戸娘のメンバーと一緒になり、だいたい人数が少ないので合同練習という感じになる。千里3はローキューツの原口姉妹、40 minutesの麻依子や星乃、江戸娘の青山さんや六本松さんたちと手合わせをしていた。
 
それで国香の結婚式のことについても話題が出る。
 
「そうだね。23日は合宿中のつもりで欠席と言っておいたけど、出席できるね」
と千里3は言い、原口姉妹も歓迎歓迎と言っていた。
 

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一方、千里1はこの所、午前中に入院中の桃香のお見舞いをし、午後からはだいたい秋川あるいはどこか都内の体育館でバスケットの練習をして自宅アパート(経堂)に戻るという生活をしていた。しかし23日は国香の結婚式ということが分かっていたので、千里1は前日になってしまったが、国香に電話して出られるようになったことを伝えておいた。
 
(千里1は国香本人に、千里3は発起人である揚羽に連絡したことになる)
 
当日は朝からドレスと靴を用意した上で桃香の病院に行き、11時半頃病院を出て、国香の結婚式が行われる船橋市のホテルに向かった。13時くらいに船橋市のホテルに着く。結婚式は15時からの予定である。
 
車内でドレスに着換えてから、フロントで尋ねて花嫁の控室に行く。
 
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「おめでとう!」
「わあ、ありがとう。忙しかったんじゃないの?」
「うん。何とかなったけど、ごめん。花束でも持ってこようと思っていたのにうっかり忘れていた。これ取り敢えずご祝儀」
と言って、分厚い封筒を渡す。
 
「おお、これさえもらえば問題無い」
と言って国香は祝儀袋を受け取る。
 
「あとこちらは祝賀会の会費ね」
と言って、祝賀会の発起人になっているソフィアに18,000円、お釣りの無い状態で渡した。
「どもども。じゃこれ領収書と記念品」
と言って、ソフィアが袋を渡す。
 
「揚羽は?」
と千里は部屋を見回して言う。
 
今回の結婚式祝賀会では、ローキューツの揚羽・ソフィア・万梨花の3人と、彼氏のチームメイト3人が発起人になっており、揚羽が発起人代表である。
 
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「紫(揚羽の妹)と2人でバスケットのゴールを取りに行っている。祝賀会の会場の後ろに置いてみんなにシュートしてもらおうという話になって」
「さすが、バスケット選手の結婚式!」
 

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それで30分くらい花嫁控室でおしゃべりしていた。
 
「ところで赤ちゃんの予定は?」
「まだ。私たち混雑を避けて5月の連休明けに新婚旅行に行くつもりだからその旅先で解禁にする予定。それまでは全弾ブロックショット。ゴールはさせない」
「なかなか厳しいディフェンスをしているようだ」
 
「リバウンドからターンオーバーして彼氏のゴールに放り込んでしまうとかは?」
「ああ。あいつが妊娠してもいいよね」
 
「どちらが産んでもいいけど、産まれた子はぜひローキューツの選手に」
 
「女の子なら入団できるけど、赤ちゃんが男の子だったら?」
「それは当然性転換させて」
「その話既に10回くらい言われている」
「もう完全に男の子が生まれたら性転換というのが刷り込まれているな」
 
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ところが13:30頃に電話がある。
 
見ると日本代表チームの風田アシスタントコーチである。
 
「はい、村山です」
「風田だけど。体調はどんな感じ?」
「かなり回復してきたとは思うのですが」
 
風田コーチがこの千里1が持つiPhoneに掛けてきたのは、落雷で焼損した携帯に代えてこのiPhoneを買ったということで、取り敢えずバスケ関係者に新しい番号とメールアドレスを送信していたからである。
 
千里2は元からのフィーチャホン(東芝T008)を使っている。また千里3はアクオスを使ってはいるものの、ごく少数の親しい人にしかその番号は報せていない(この時点で知っているのは、桃香・朋子・青葉・玲央美・三宅・雨宮と、きーちゃん・千里2のみ)そういう訳で、風田コーチは以前のT008の番号に上書きしてこのiPhoneの番号を登録したので、風田コーチからの電話はiPhoneにつながるのである。
 
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「リオ組は25日から合宿なんだけど、その前に1度今の君のプレイを見たいんだけど、良かったら今からでも、合宿所に来てくれない?」
「今からですか?」
 
と言って、国香たちの顔を見る。国香が
 
「代表活動なら行っておいでよ」
と言った。それで千里は返事をする。
 
「今船橋市にいるんです。そちらに行くのに1時間半くらい掛かるかも知れませんが」
「うん。構わない。だったら3時くらいになるかな」
「はい」
「じゃ待っているから」
 

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それで千里1は電話を切ってから国香に言う。
 
「ごめんねー」
「日本代表なんて、私なんかは手が届かないし。頑張ってきて」
「うん」
「来てもらっただけで嬉しいですから」
と国香の母。
 
「千里さん、祝賀会に出られないんだったら、会費返します」
と言って、ソフィアがさっきの18,000円を返してくれる。
 
「ご祝儀はもらってていいんだっけ?」
と国香。
 
「もちろんもちろん。そちらは結婚のお祝いだから」
「千里さん、記念品は持っていってください」
とソフィアが言う。
 
「え〜?でも会費払ってないのに」
「会費の大半は食費ですから。なにせ今日のお客さんは胃袋の大きいバスケ選手ばかりだから」
とソフィア。
「うん。そもそも来てくれたし、ご祝儀ももらっているから問題無い。記念品代は私が出しておくから」
と国香。
 
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ということで、記念品の袋だけもらって、千里1は会場を出たのである。
 
そして、ソフィアは出席者名簿の千里の所にいったん付けたチェックマークを消しゴムで消した。
 

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それで千里1はミラで東京北区のナショナル・トレーニング・センターまで走った。到着したのは14:20くらいで、千里は駐車場の車の中で代表の練習用ウェアに着換え、軽く準備体操をしてから中に入った。ロビーで待っていたのだが、14:40くらいに風田コーチが通りかかり
 
「おお、来ているのなら今から見よう」
と言って、千里を練習が行われているフロアに連れて行った。
 
まずはスリーの精度を見る。
 
「あれ〜〜!?」
と千里自身が言うほど外してしまう。
 
いつもの千里ならフリーで打てば百発百中なのに、この日は10本の内8本くらいしか入らない。むろん“しか”とはいうが、これ以上の確率でスリーを入れられる選手は他には居ない。玲央美でもせいぜい5〜6割である。1on1をやってみる。
 
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その玲央美とは4勝6敗。これは元々千里は玲央美には相性が悪いので仕方ない。しかし玲央美は言った。
 
「千里、どうした?キレが無い」
「うん。私も今レオとやってみて感じた」
 
江美子とは7勝3敗、絵津子とは8勝2敗、広川キャプテンと9勝1敗だった。そして3人が全員
 
「千里は本調子ではない」
と言った。
 
しかしこの4人以外には千里に勝てる人はいなかった。
 
「代表のレベルではあるけど、本調子ではないね」
「すみません。何とか上げていきます」
「うん。頼むよ」
 

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一方、千里3はこの日、午前中深川の体育館でバスケの練習をして、それを1時くらいで切り上げると、体育館の牛丼屋さんでお昼を食べてから葛西のマンションに戻る。シャワーを浴びた上でドレスに着換える。そして船橋市のホテルに向かった。但し《きーちゃん》が
 
「百万円の札束を4つ用意しておいた方がいい」
 
と言ったので、銀行に電話した上で取りに行った。それで結局、到着したのは15時半頃である(千里1がこのホテルを出てから2時間ほど経っている)。結婚式は終わって祝賀会が始まるのを待っている時間である。千里3は結婚式自体には出る予定は無かったので、全然問題無い。
 
受付で会費18,000円を払い、出席者名簿にチェックしてもらう。領収書と記念品の引換券(荷物になるので帰る時に受け取る)をもらい、この会費とは別にご祝儀袋を受付に立っていた発起人代表の揚羽に託した。
 
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やがて祝賀会が始まる。
 
会場内でソフィアに会う。彼女は驚いたようにして
「千里さん、バスケの方はいいんですか?」
と言った。
それで千里3はバスケの練習のことかと思い
「うん。終わらせてきた」
と言った。
 
「早かったですね!」
とソフィアは言った。
 
またローズ+リリーのケイにも会う。マリも一緒に来たが、マリはひたすら食べて回っているという話だった。
 
「よく来られたね!日本代表の合宿中かと思った」
「よく来られたね。KARIONでツアー中かと思った」
と言葉を交わしてからしばらく話す。ローズ+リリーの次のアルバム『Four Seasons』に入れる曲を1曲もらえないかというので快諾した。
 
他にも音楽関係のことで話していた時、千里3はふと、アメリカ遠征中に信子たちの結婚式があることに気付いた。そうか。《きーちゃん》が言っていた札束が必要というのはそれのことだと思い、千里はケイに尋ねる。
 
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「冬は鹿島信子と中村正隆の結婚式には出るよね?」
「もちろん」
「ご祝儀、言付かってくれない?その時期はアメリカ遠征中だから」
「いいよー」
 
それでバッグからさっき用意しておいた100万円の札束を4つ出し、葵照子名義と醍醐春海名義で200万円入りの祝儀袋を2つ渡しておいてと頼んだ。
 

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