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■△・武者修行(2)

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千里2は千里3がトイレに行ったタイミングを見計らって、会場内に入り、ダイレクトに雛壇の所にいる国香の所に行った。
 
「あらためて結婚おめでとう、国香」
「あれ?千里、代表の方は良かったの?」
「うん。すぐ終わったんで、とんぼ返りしてきた」
「わあ、お疲れ様ー」
 
それで国香とシャンパンのグラスを合わせ、それから少しおしゃべりした。そして適当なタイミングを見て、次に国香とグラスを合わせようとして待っている長門桃子(A商業での国香の後輩でローキューツのOG)に譲ってテーブルを離れた。そしてそのまま会場を出た。
 
ロビーで《きーちゃん》が待機している。
 
「きーちゃん、ありがとね。調整大変だったね」
「偶然、風田さんが1番を呼び出してくれたから、私も今日は助かりました」
「私はご祝儀もあげてないし、会費も払ってないけどいいよね?」
「会費は3番が払っていますし、ご祝儀を1と3が渡していますから」
 
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そんな言葉を交わして千里2は《きーちゃん》に用賀のアパートに転送してもらった。
 

祝賀会が終わった所で、発起人グループが会費の集計をしていた所に国香が来る。
 
「ドタバタしてて忘れてた。千里ちゃんの分の会費、私が払っておくから」
と言ったのだが、出席表を見ていた万梨花が
 
「村山千里さんなら、会費頂いていますよ」
と言う。
「ありゃ、結局払って行ったのか」
と国香。
 
「そうそう、国香さん。会費と別にご祝儀を千里さん、冬子さんと政子さん、それから国香さんの会社の部長さんから頂いていますから」
と言って、揚羽が国香に金庫の中からご祝儀袋を4つ取り出して渡す。
 
「わっ、重い!」
といって国香が驚く。
 
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「中に入っている金額が凄いのが多くて、金庫に入れておいたんですよ」
 
しかし国香は千里のご祝儀袋もあることに首をひねる。
 
「ちょっと待って」
と言って母に電話する。
 
「村山千里さんのご祝儀袋はお母ちゃん持っているよね?」
「あ。うん」
それで確認していたようだが
「こちらの金庫にちゃんと入ってるよ」
「中身を確認してくれない?」
と言うのでお母さんに確認してもらう。
 
「ちょっとぉ、これ50万円もあるんだけど!?」
とお母さんの焦ったような声。上書きだけ見て、5万円と思い込んでいたようだ。
 
「こちらのご祝儀袋も50万円入っている」
 
それで国香は千里に電話した。
 
「ね、千里ちゃん、千里ちゃんのご祝儀袋がなぜか2つあるんだけど」
「あれ〜!?私もしかして2回渡しちゃった?」
「うん。ひとつは私が結婚式が始まる前に受け取ったもので、もうひとつは再度千里ちゃんが祝賀会の方に来てくれた時に、揚羽ちゃんが受けてっているのだけど。どちらも50万円入っているのよね」
 
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「ごめんねー。実はこないだ私、雷に撃たれてさ」
「え〜〜!?」
「雷に撃たれると、色々身体に異変が起きるという話もあるけど、取り敢えず性別は変わってないようだし」
「性別が変わると大変だよね」
 
「それで身体には異常は無いんだけど、その後遺症で、物忘れがひどいのよ。少しずつ回復していくとはいう話なんだけど。それで一度渡したこと忘れてまた渡したんだと思う」
 
「じゃ50万円はそちらに返すね」
「ううん。2度渡したのなら、そのまま受け取っていて。新婚旅行の代金の足しにして」
「そう?じゃもらっちゃうよ」
「うん。いい旅行にしてね」
 
それで電話を切った千里2はかなり冷や汗を掻いた。
 
国香が千里2のガラケーに電話して来たのは、千里1は国香にまでは自分のiPhoneの番号を通知していなかったからである。
 
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翌4月24日。
 
千里3は今日は夕方には合宿所に入りたいからと思い、午前中に深川の体育館に行って、ひとりでバスケット練習をしていた。この日は他に誰も出てきていなかった。
 
誰も来なかったのが、体育館の入口に「電気系統故障中なので、午前中お休みします」という貼り紙がしてあったからだということは、千里3は知るよしも無い。
 
2時間ほどで300本ほどシュートを撃っていた時、パチパチパチパチという拍手を聞く。見ると日本代表の風田アシスタントコーチと坂口チーム代表である。
 
(昨日の午後、合宿所で“本物の”風田コーチたちに会ったのは千里1である。念のため)
 
「かなりよく仕上がっているね」
と風田コーチは言った。
 
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「ちょっと話せる?」
「あ、はい」
 

それで40 minutesの選手控室に一緒に入った。千里は40 minutesのオーナーなのでここの鍵を持っている。
 
「実は今回のアジア選手権は若手中心に起用しようかという話になっていてね」
「はい?」
 
「アジア選手権は4位以内に入れば世界選手権に行くことができる。実際問題として、アジア選手権では、オーストラリア・中国・日本・韓国という上位4国とそれ以外の国との実力差が明確だから、まず5位以下ということはあり得ないと思うんだよね」
 
「それはそうですが」
 
「そこで、今回はWNBAに行っている平成元年生まれの花園亜津子君、平成2年生まれの佐藤玲央美君、平成3年生まれの村山千里君の3人は外してその分、若手にチャンスを与えてもいいんじゃないかということになって」
 
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「ああ」
と反応しながらも千里としてはかなり不満である。
 
「そしてその3人はワールドカップでの主力になるから、各々今年は大会に惑わされることなく実力を磨いて欲しい。そして来年のワールドカップでその実力を発揮してもらえないかと思っているんだよ」
と坂口代表は言う。
 

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「実力を磨いてですか?」
と千里は思わぬ話に驚く。
 
「それで花園君はWNBAに行っているから大いに鍛えられる。佐藤君にはスペインの女子リーグ、リーガ・フェメニーナ・デ・バロンセストに所属するCDバルセロナに短期留学してもらうことになった」
 
「凄い」
 
「それで急な話で本当に申し訳無いのだけど、村山君にはフランスのリーグ・フェミニン・ドゥ・バスケットボールに所属するマルセイユ・バスケット・フェミニンへの短期留学をしてもらおうと思ってね」
 
「フランスですか!」
 
「村山君はフランス語が得意と聞いたのだが」
「小学生の頃、フランス人の友人がいたんですよ。それで覚えたんです」
「それは心強い」
 
正確にはフランス系日本人なのだが、そこまで説明すると話が結構面倒である。
 
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「WNBAは今からシーズンだけど、フランスとスペインはシーズンオフなんだよね」
「ですね」
「だから練習や練習試合だけに参加してもらうことになるけど、それでも大いに刺激されるのではないかと思って」
「刺激になると思います」
 

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「期間は公式には5月から7月上旬までの2ヶ月半だけど、向こうは世界のスリーポイント女王のムラヤマなら、いつでも見たいと言っていて、明日からでも参加してもらっていいと言っているんだけど」
 
「すぐ行きたいです。ビザはどうなりますかね?」
「フランスはシェンゲン圏だから日本人はビザ不要」
「あっそうか!」
 
現在ヨーロッパの大半の国がシェンゲン協定に入っており、その内部はひとつの国の国内の感覚で移動できる。また日本人は短期(90日以内)の非商用の滞在にビザは不要である。
 
日本代表の遠征で行く予定だったスペインも、千里3が行くように言われたフランスもシェンゲン圏である。シェンゲン圏の西端はフランスとスペイン・ポルトガル、東端はバルト三国・ポーランド・スロバキア・ハンガリーで、ルーマニアとブルガリアも加入予定である。イギリスは加入する予定は無い。バルカン諸国は現在協議中だが、セルビアとマケドニアは日本人の場合、短期の非商用滞在にビザは不要である。
 
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「だから今日渡航したければ今日渡航できるんだよ」
 
「今日というのはさすがにちょっと待って下さい」
「向こうは本当にいつでもいいと言っている。明日でもいい」
「だったら、明日行きます」
「分かった。じゃすぐ航空券手配するから」
 
「はい!」
 
と言って、千里3は風田さん・坂口さんと握手した。
 
なお、レッドインパルスの方には既に話を通しているということであった。千里3としては臨月を迎えている桃香のことは気になるものの、必要があれば《きーちゃん》に頼んでいつでも日本に転送してもらえるだろうしと思った。
 

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それで千里3は桃香に長期間海外に出ることを伝えに行こうと思い経堂のアパートに行ってみる。これが13時頃である。しかし誰も居ない。
 
買物にでも出ているのかなと思い、掃除をしながら待つがなかなか帰ってこない。少し心配になったので桃香に電話をしてみた。
 
「ああ、千里どうしたの?」
「桃香今どこ?」
「どこって、病院にいるけど」
「病院って、桃香どうかしたの!?」
 
桃香は千里の記憶がまた混乱しているなと思う。私より千里を入院させた方がいいのではという気もしてきた。
 
(この日は千里1が午前中桃香の病院に来て、このあと合宿に入るから次は29日まで来れない。更にその後アメリカ遠征に行くと伝えている)
 
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取り敢えず桃香は先日赤ちゃんが胎内で暴れて、緊急入院したこと、その後、大間産婦人科に転院し、このまま出産まで入院していることを説明した。この話は千里3は全然聞いていなかった。
 
「知らなかった!ごめんね。私に連絡してくれたら良かったのに」
と千里が言っているのは、桃香としてはスルーすることにする。
 
ともかくも千里3はそちらに行くと言った。
 

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それで15時すぎに千里3はアテンザを走らせて大間産婦人科に行った。
 
話の内容がおかしいのは桃香はもう気にしないことにしているので、適当に千里と会話をする。それで千里3は急な話だが、明日にも日本を発って3ヶ月くらいフランスに行ってくると告げた。
 
桃香は千里(実は千里1)が午前中に来た時はアメリカに行くと行ってたのにと思ったものの、気にしないことにする。
 
「でも生まれそうだったら、呼んでもらったら飛んで帰ってくるから」
「大丈夫だよ。そのための入院だから」
「確かに病院にずっと入っていたらその点が安心だよね」
 
それで結局千里3は夕方まで桃香と一緒にいた。
 

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