広告:Back-Street-Girls(6)-ヤングマガジンコミックス-ジャスミン・ギュ-ebook
[携帯Top] [文字サイズ]

■△・武者修行(10)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

千里1が青梅・川越に行っていた5月14日、千里2は午前10時頃桃香の病院に行き、そのまま夕方までいた。12時過ぎお昼を食べに青葉と2人で出た時、青葉には先に帰っていてと言い、貴司に電話を掛ける。青葉の眷属・小紫が自分をじっと見ているのを意識して内心微笑む。
 
「貴司、17日から代表合宿でしょ?いつこちらに来るんだっけ?」
「明日(15日)の朝から新幹線で移動しようかと思っていたんだけど」
 
本当は16日夕方までに入れば良いのだが、1日早く来て千里とデートしようという魂胆である。
 
「それなら今日の夜、プラドで走って来てくれない?」
「今夜!?」
「ちょっとそのプラドを借りたいのよね」
「分かった。でもひとりだと休憩しながらだから、明日の昼くらいになるかも」
「それは交代のドライバーをそちらにやるから」
「交代?」
 
↓ ↑ Bottom Top

「矢鳴さん、知っているよね?」
「うん。何度か会っているし」
「彼女を大阪にやるから。落ち合いやすい場所を指定して」
「だったら、彼女が来る時間帯に新大阪か伊丹に行くよ」
「分かった。じゃ彼女の方に確認して連絡するね」
「うん」
 

↓ ↑ Bottom Top

千里2は病院の事務の所に行くと、明日退院になるので概算で今日の内に支払っておきたいと言った。それで計算してもらったら、明日のお昼の御飯まで計算した上で825,336円ということであった。千里はそれを現金で支払って領収書をもらった上で、明日また退院の時に必要なら精算しますのでと言った。
 

↓ ↑ Bottom Top

16:00頃、千里2は、千里1が経堂に戻ったのを認識すると、飲み物を買ってくると言って病室を出てロビーに行き、矢鳴さんに電話した。
 
矢鳴さんは、ちょうど千里と別れて少し自分の車を走らせた所でこの電話を受けた。
 
「今日1日遠出に付き合ってもらったばかりで申し訳ないのですが、ちょっと大阪に行ってもらえませんか」
と千里2は言う。
 
千里1,3の行動は全て把握している。
 
「いいですよ」
と矢鳴さん。
 
「そのまま東京駅か羽田空港かに移動して、新大阪駅か伊丹空港に行って欲しいのですが。それで私事で申し訳無いのですが、細川貴司と会って、彼のランドクルーザー・プラドを東京に回送して欲しいんです。実際には運転は彼と美里さんの交代で」
 
↓ ↑ Bottom Top

「分かりました。だったら車を駐めやすいので羽田から伊丹に飛びます」
「よろしくお願いします」
 
それで貴司に伊丹で落ち合ってもらうよう頼んだ。時間などの連絡はふたりの間で直接してもらうことにして、双方に電話番号とアドレスを通知した。また千里は貴司に、後でその分渡すから、航空券代分と矢鳴さんの車の駐車場代相当で3万円を矢鳴さんが持っている千里のサブ財布に足しておいてくれるよう頼んだ。また矢鳴さんが疲れていると思うので、貴司が先に運転してくれるよう言っておいた。
 

↓ ↑ Bottom Top

その電話の後、千里2はいったん病室に戻り、青葉とふたりで病院を出ると、退院後に必要になるベビー用品などを一緒に買い出しに行った(オーリス使用)。
 
買い出しが終わった所で夕食を取ってからふたりで一緒に大宮の彪志のアパートまで移動する。青葉が自分の鍵でアパートを開け、ふたりで荷物を運び込んだ。
 
「掃除が必要だと思わない?」
「思う!」
ということで、その後2時間ほど掛けて2人でアパートの大掃除をした。
 
やがて彪志が帰宅するがすっかりきれいになっているアパートを見て
「わっ」
と声を挙げた。
 
「じゃ後はごゆっくり〜」
 
と言って千里は2人を放置して、オーリスで彪志のアパートを離れた。この日はスワローズの方は試合も無く、練習もお休みなので、千里2はそのまま深川まで走り、5/15 1:00頃から4:00頃までひとりでバスケの練習をした。それから京平とデートした上で、葛西のマンションに入った。;
 
↓ ↑ Bottom Top

「何か最近、私、2人分くらい活動しているような気がする」
と千里2がひとりごとのように呟くと、《つーちゃん》が
 
「いや、間違い無く2人分活動しています。だから今千里さんは4人くらい居る感じですよ」
などと言った。
「私、住所もたくさんある気がする」
「日本国内に、経堂・用賀・葛西、アメリカのフィラデルバーグ、フランスのマルセイユの5つですね。他に彪志さんのアパートに泊まり込むこともありますし、3番が帰国した後のために川崎に物件を探しています」
 
「私ひょっとして6人くらい居たりして?」
「居ても不思議でない気がします」
 
(5/14夜の時点でミラは用賀、アテンザは経堂、オーリスは葛西にある。千里1は経堂、千里2は葛西、千里3はフランスに居る)
 
↓ ↑ Bottom Top


5月14日、《せいちゃん》は無事卒業検定に合格した。合格した後で宿舎に行って荷物を片付けたが、同室の佐倉さんは
 
「おめでとう!でもうらやましい!」
と言っていた。
 
佐倉さんは《せいちゃん》より先にこの学校に入っていたのだが、仮免試験に7回落ちたらしく、《せいちゃん》の方が先に卒業することになった。
 
「じゃ頑張ってくださいね」
 
と言って退出したが、この人、この分なら卒業試験も5回くらい落としたりしてと思った。
 
5月15日、本物の宮田雅希が運転免許証を取得したので、《せいちゃん》はそのクローンを佳穂さんからもらった。
 
「ねえ。宮田雅希ってまさか****なの!?」
と免許証の写真を見て《せいちゃん》は驚く。
 
↓ ↑ Bottom Top

「念のため、彼女のサインの練習しておく?」
「俺が書いたらニセモノじゃん!」
 
しかし宮田雅希が女性なので、結局《せいちゃん》は女に見える格好をしていないと、この免許証を使うことができない!
 

↓ ↑ Bottom Top

5月15日朝。《きーちゃん》が千里1の居る経堂のアパートを訪れる。最近《きーちゃん》は千里と分離して独立行動していることが多い。
 
「おはようございます」
「おはよう」
「今日、桃香さんが退院するのはご存知ですか?」
「え!?今日なの?」
「退院を手伝いますよね?」
「もちろん」
 
「それで独断で勝手なことして申し訳なかったのですが、千里さんを装って貴司さんに電話して、ランドクルーザー・プラドをこちらに運転してきてもらっているんですよ」
 
「プラドを?」
 
「退院する時にですね。今、朋子さんと青葉さんが来ていて、桃香さんと早月ちゃんが居て、千里さんがいると、アテンザには乗り切れないんですよ」
「ほんとだ!」
 
↓ ↑ Bottom Top

「プラドなら、3列目に桃香さんと早月ちゃん、2列目に朋子さんと青葉さん、運転席に千里さんが乗れば問題無いです。青葉さんに運転してもらってもいいし」
 
「なるほどー」
「今貴司さんは海老名SAまで来ています。もう少ししたらここに到着すると思いますので」
「きゃー。貴司ひとりで運転してきてもらって大変だったね」
「これも独断で申し訳なかったのですが、矢鳴さんに大阪に飛んでもらって交代で運転してもらっています」
 
「わっ。矢鳴さんは昨日も1日付き合ってもらったのに」
「アテンザは私が適当な所に一時移動させておきますね」
「うん。よろしく」
 

↓ ↑ Bottom Top

実際、貴司と矢鳴さんは8時頃に経堂に到着した。千里は矢鳴さんをねぎらい、疲れたでしょうから、よかったらこのアパートで少し仮眠してから帰って下さいと言い、彼女もそうすると言っていた。
 
それで千里1はプラドを運転して貴司と一緒に用賀まで行き、貴司を置いたままミラを運転して経堂の駐車場に戻って駐め、矢鳴さんには羽田まではミラで行き、ミラはそのまま放置しておいていいですと言った。後で《きーちゃん》に回収してもらおうと思った。
 
朝 経堂アテンザ 用賀ミラ
↓ 経堂− 用賀ミラ (きーちゃんがアテンザを移動)
↓ 経堂プラド 用賀ミラ (貴司到着)
↓ 経堂− 用賀ミラ/プラド (プラドで用賀に移動)
↓ 経堂ミラ 用賀プラド (千里がミラを回送)
 
↓ ↑ Bottom Top

※この後、千里1はプラドで桃香の病院へ。
矢鳴はミラで羽田に行き、羽田に置いていたスイフトスポーツで帰宅。
その後きーちゃんが羽田のミラを回収して経堂に戻す。
 

↓ ↑ Bottom Top

それで千里1は用賀のアパートまでジョギングしていき、貴司と少しだけ甘い時間を持った。その上でシャワーを浴びてから、貴司にはそのままこのアパートで休んでおいてもらい、自分はプラドを運転し、まずは《きーちゃん》に言われて、ホームセンターに行き、彼女お勧めのベビーシートを購入。その後、桃香の病院まで行った。到着したのが11時頃である。(貴司は運転してきて疲れた身体で性的な興奮状態を味わって、熟睡し、夕方まで寝ていた)
 
桃香は診察を受けて退院許可をもらうと、事務に行って病院代の請求書をもらおうとした。すると
「昨日、妹さんが払って下さいましたよ。その後、追加費用とかは発生していません」
と言われた。
 
↓ ↑ Bottom Top

「妹って、背の高い方?低い方?」
「背の高いかたです」
 
ああ、千里が払ったのかと思う。
 
それで病室を片付け、早月を籐製バスケットに入れて退院した。
 
千里1が持って来たランドクルーザー・プラドの3列目にベビーシートをセットし、そこに早月を乗せて自分は隣に座る。そして2列目に朋子と青葉、運転席に千里1が座って、彪志のアパートに移動した。
 
彪志のフリードは一時的に近くの時間貸し駐車場に移動させておいた。
 
一緒に夕食を取った上で夕方、千里1は高岡に帰る青葉と朋子を大宮駅まで送って行き、その後そのままプラドを運転して、自分は用賀に戻る。(桃香と早月はそのまま彪志のアパートに居る)
 
そして千里1は貴司と一緒に晩御飯を食べてから、その夜は同じ布団で寝た。(例によって一緒に寝るだけであって、何もしない)。
 
↓ ↑ Bottom Top


千里1と貴司は翌5月16日、午前中杉並区内の体育館(たまたま空いていた)で手合わせをした。ふたりにとってはこれが最高に楽しい時間である。その後、一度用賀に戻ってシャワーを浴びてから、貴司はプラドを運転して北区の合宿所に入った。
 
千里1は16,17日は午後から(きーちゃんが羽田から経堂に回送してくれていた)ミラを使って彪志のアパートまで行き、御飯を作ってあげたりして桃香と早月のお世話をした。17日の午前中も千里1は空いている体育館を探してそこで練習をしていた。
 
5月18日は合宿所に入らなければならないので、千里1は早朝に彪志のアパートに行き、今日から合宿に入り、5/24から6/13までヨーロッパに遠征してくることを言った。
 
↓ ↑ Bottom Top

そしてそのままミラで北区の合宿所に入り、合宿に参加した。
 
合宿所に入った後で、千里1は5月22日が青葉の誕生日であったことを思い出した。彪志が桃香のお世話のために動けないので、青葉自身が大宮に出てくると言っていた。それで千里1は《きーちゃん》に不二家の商品券を買って彪志のアパートに届けておいてくれるよう頼んだ。
 
実際には《きーちゃん》は千里2と話し合った上、不二家のルミネ大宮店に電話してバースデイケーキの予約を入れるとともに、千里2が、ケーキは私が買うねと彪志・桃香・朋子に連絡しておいた。
 

↓ ↑ Bottom Top

千里2は15日の桃香の退院、16-18日のお見舞いを千里1にさせておいて、自分は葛西のマンションで集中して作曲の作業をしていた。
 
「1番が貴司さんとデートしていて、2番は嫉妬したりしない?」
と《きーちゃん》が訊くと
「デートしたのが私だから問題無い」
と答える。
 
「それ本気で思っているなら、やはり千里は変わっているという気がする」
と《きーちゃん》。
 
「うん。私、変人だから」
と言って、千里2は笑っておいた。
 
《きーちゃん》は3人の千里を観察していて、貴司への思いが一番強いのは、千里2のような気がしていたのである。千里1はむしろ桃香のことを思っている気もする。貴司に対しては受け身的である。千里3は恋愛感情が弱くバスケットを愛している感じ。千里3の場合は、性腺が無いからかも知れないと《きーちゃん》は考えていた。
 
↓ ↑ Bottom Top

「千里3には女性ホルモンを錠剤か何かで摂らせた方がいいかな?女性ホルモン濃度が低すぎるのはIOC基準に照らしてまずいし」
などと《きーちゃん》は独り言を言った。
 

↓ ↑ Bottom Top

ところで、作曲の作業をするにはこの葛西は最高の環境である。大半の楽器をここに置いているし、魑魅魍魎のおかげで住民がほとんどおらず、気兼ねなくその楽器を鳴らすことができる(千里の演奏は浄化の助けにもなっているようである)。千里の部屋自体は、千里自身の手で強力な結界を張っているので、これを突破できるような妖怪・幽霊はまず存在しない。
 
他に住人が居ないというと“神様の場”である用賀もそうだが、あちらは環境がきれいすぎて、発想が浮かびにくいし、あまり大きな音を立てるのは神様に対して恐れ多い。俗な環境の葛西の方が使いやすい。
 
千里2が取り組んでいるのは、先日フロリダで結婚式を見て書いた作品『お嫁さんにしてね』である。1960年代のサーフィンや日本のグループサウンズのような世界を下敷きにした作品に仕上げている。エレキギター・エレキベースを楽器として指定し、いわゆるテケテケテケテケのサウンドまで組み込んでいる。これは村上社長へのサービスだな、などと千里2は思った。
 
↓ ↑ Bottom Top


↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 
△・武者修行(10)

広告:國崎出雲の事情 2 (少年サンデーコミックス)