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■少女たちの修復(12)

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ほとんどの児童と保護者はお昼を都内の洋食屋さんで食べた後、教頭先生と一緒に午後のJASで帰還した。
 
羽田15:20(JAS199)16:55旭川(バス)18:30留萌
 
間島さん母子と馬原先生、更に自腹でチケットを買うから付いて行きたいと希望した小塚さんは、朝食後すぐに上野駅に行き↓の連絡で帰ることにした。
 
上野8:58(やまびこ7)11:31盛岡11:39(スーパーはつかり7)13:52青森14:07(海峡7)16:52函館17:15(スーパー北斗17)20:15札幌21:00(スーパーホワイトアロー27)22:04深川(タクシー)23時頃に自宅到着
 
間島さんたちは深川からタクシーを使うつもりだったのだが、実際には小塚さんのお父さんが自分の車で深川駅まで迎えに来てくれた(東京往復の直後にお疲れ様である)ので、間島さん母子と馬原先生もその車に同乗して留萌に戻ったらしい。今回は小塚さんのお父さんも大活躍であった。
 
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「しかしこれ間島さんたちの方がハードスケジュールってことない?」
「そういう見解はあるかもね」
「でも脳震盪とか起こした後は、急な気圧変化は怖いから」
「脳の血管が切れたらやばいもんね」
 
「そんなに気圧差あるんだっけ?」
「ほら、これ」
と言って蓮菜は潰れたペットボトルを見せる。
 
「何これ?」
「機内で飲んだペットボトルが地上に降りたら潰れた」
「きゃー!」
 
「こんなにボトルが潰れるほどの気圧差があるんだ!?」
「これなら血管が切れてもおかしくないよ」
 
間島さんは北海道に戻ってからあらためて旭川の大きな病院で見てもらい、MRIなども撮ったが、特に異常はないということで、みんなホッとした。
 
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千里の母・津気子は昨年夏に乳癌が見つかり、2000.9.6に乳房部分切除手術を行い、病巣の周囲数cmをくりぬくとともに同じ側の腋窩リンパ節を郭清(除去)した。そして病理検査で病巣があまり広がっていなかったことを確認した上、1ヶ月半に渡り、放射線療法も受けた。また乳癌は女性ホルモンで助長されるので、抗女性ホルモン剤を投与し、また微細な転移を攻撃するため抗癌剤による薬物療法もおこなった。
 
放射線療法が終わったのが10月下旬、抗癌剤の投与が終わったのが2001年4月であるが、抗女性ホルモンの投与は5年ほど続けなければならない。
 

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その日大神様は明らかにイライラしていた。小春は「やっばぁ」と思って、こそこそと学校に出かけようとしていたのだが、呼び止められる。
 
「小春」
「はい」
「千里の体内に待避させている卵巣と子宮は、いつ津気子の身体に戻すのだ?」
「それが津気子さんの化学療法はまだ続いているんですよ。軽い薬に変えたから(実際抗癌剤は終了してホルモン剤のみになっている)、もう少しじゃないですかね」
 
「あまり長時間このような状態にしておくのはよくないのだが。千里の身体は、あれ、かなり女性化しつつあるぞ」
 
「本人は女性化を望んでいるし、よいのでは?」
「しかし私たちはゆえなく人間の性別を変えることは許されていない」
と大神様は厳しく言う。
 
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ああ、誰か上司の神様から注意されたのかなあと小春は思った。
 
「別に性別を変えている訳ではなく一時的に女性生殖器の置き場所にしているだけですから」
「本当に一時的なんだよな?」
「もちろんです。治療が終わったら津気子さんに戻しましょう。千里は男女どちらの生殖器も無い状態になるけど、本人はそれでも構わないと言っているし。津気子さんに今卵巣と子宮を戻すと、治療薬のせいで卵巣が痛んで卵巣癌か子宮癌を引き起こす危険がありますし」
 
「あの卵巣は実際かなり痛んでいるよな?」
「みたいです。長年の不摂生のせいだと思いますが」
「千里の身体に置いている内に若干回復してきている気もする」
「やはり若い身体ですからね〜」
「でも男の子なのに」
「あの子が本当に男の子なのかは、かなり疑問がありますよ」
「うーん」
 
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そういう訳でこの日小春は何とか大神様の追及をかわしたのであった。
 

その日千里が七五三の手伝いに来てと言われて神社に行ったら、社務所(兼・宮司の住居)の縁側にお婆さんが1人座って、ぼんやりと植木を眺めているようだった。
 
「こんにちは、おばあちゃん。どちらの方でしたっけ?」
と千里は声を掛けた。
 
「え?私、小春だけど」
とそのお婆ちゃんは言った。
 
「うっそー!?今日はそんなお年寄りなの?」
 
小春の年齢はそもそも“不安定”である。学校に出てきてN小の児童の振りをしている時は小学生に見えるが、しばしば女子高生や女子大生くらいの感じになっている時もあり、また20代の女性に見えることもある。しかしこの日の小春はどう見ても60代に見えた。
 
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「え?ちょっと待って」
と言って小春(?)は何か探すようにして近くのバッグを取ると、中から手鏡を出して自分の顔を見た。
 
「きゃー!?」
と自分で悲鳴をあげている。
「ちょっと待ってて」
と言って、トイレに飛び込む。
 

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千里が勝手に社務所に上がり、狐の縁起物を作り始めてしばらくするとトイレから27-28歳くらいの雰囲気になった小春が出てくる。
 
「あ、そのくらいの年齢に見える状態はよくある」
「一気に小学生まで戻せなかったけど、ここまで何とか戻した」
などと言っている。
 
「小春って何歳なんだっけ?」
「実際には千里たちより1年くらい前に生まれている。だから12歳くらい」
「誕生日は?10月10日って言ってた時と7月7日って言ってた時がある」
「まあ実際はよく分からない。ぞろ目っていいなと思って、そんなことも言った。夏か秋の生まれというのは確かっぽいんだけど」
 
「じゃ本当に小学生相当なんだ?」
 
「人間の12歳は小学生だけどね」
と言って、小春は一瞬遠い所を見るような目をした。
 
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「そういえば小春ってキツネだったっけ?」
「私、キツネに見えない?」
「人間に見えるけど」
「千里の目にも人間に見えるというのは凄いな。千里って外見より中身を直視するタイプなのに」
などと小春は言っている。
 
「キツネにとっての12歳というのは、人間で言えば60歳くらいなんだよ」
と小春は言った。
 
「え〜〜!?そんなお年寄りなの?」
と千里は驚いて言う。
 
「だからさっき千里に見られた姿が私の実年齢相当の姿なのかもね」
 

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2001年10月29日(月)、東京駅で10月7日に銃を乱射した男が、銃刀法違反と殺人未遂、および汽車転覆等罪(最高刑:無期懲役)の罪で起訴された。
 
その翌日、東京地方検察庁から留萌N小学校の教頭に電話があった。
 
「え?銃弾で穴の開いたトランペット、返してもらえるんですか?」
「はい。裁判官にも実物を見てもらったので、写真があるなら返却してよいということになったんですよ」
と向こうの検事は言っていた。今回は事件事実を争う裁判ではないこともあったようだ。
 
還付方法は、こちらが受け取りに行くか、向こうに持って来てもらうか、あるいは郵送ということだったが、取りに行くのは大変だし、持って来てもらうのは気の毒なので、郵送してもらうことにしてすぐに還付申請書を書いて送った。
 
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教頭は旅行代理店に連絡した。
 
「ああ、穴の開いたトランペット返してもらえることになったんですか!」
と向こうの担当者は喜んでくれた。
 
「でもこれ私たちは保険金を頂いて、そのお金で既に新しいトランペットを買っているので、帰ってきたトランペットは保険会社に送付しないといけませんよね?」
と教頭は訊いたが
 
「うーん。保険会社の方はもう全損ということで処理が終わっているので今更物件が出てくるとかえって面倒になるんですよ。そもそも穴の空いたトランペットでは売却もできず、むしろ廃棄費用が必要ですし。だから、その楽器はそちらで適当に処分して下さい」
 
と旅行代理店の人は言った。
 
それでこちらで“適当に処分”させてもらうことにした。
 
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「本当に捨てるのはもったいないし、再度ガムテープ貼って使いますかね?」
と合唱部の馬原先生が言ったが
 
「どうせなら修理できませんか?」
とブラスバンド部の部長・木村君は言った。
 
「修理するとかなり高い気がする」
とブラスバンド部の顧問・重原先生が言う。
 
「どのくらいかかります?」
と教頭先生。
 
「たぶん7-8万円」
「そんなに掛かりますか!?」
 
「新しいトランペット、いくらで買ったんでしたっけ?」
 
「12万円です。穴の開いたトランペットは多分20年くらい前に買った楽器で、当時たぶん10万円くらいだったと思うと保険会社の人に言ったら20年前の10万円なら今の15万円くらいですよね、と言われて15万円頂いたので、その予算内で買えるものを選びました」
と重原先生。
 
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「12万円で買える楽器を8万掛けて修理するのはためらうなあ」
「ガムテープじゃなくて金属の板で穴を塞いだらどうですかね?」
などと言っていたら、ちょうど傍を通りかかった鞠子君が言った。
 
「何かの管の修理ですか?うちの父が溶接の資格持ってますけど」
「おぉ!」
 

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鞠子君のお父さんはトランペットの修理と聞いて驚いたものの、取り敢えず穴を塞いでみましょうと言った。
 
「これは真鍮ですね?」
と郵送されてきた楽器を見てお父さんは言った。
 
「そうです。ブラスです」
「だったら簡単に塞げますよ」
と言って、仕事場に持ち込み、まずは作業服を着て遮光マスクをかぶる。
 
すると見学にぞろぞろと来ていた女子たちから
「かっこいい!」
という声が上がり、お父さんは照れていた。
 
穴の開いている所は、弾丸が通過した方向に金属が王冠状に突出している。鞠子君のお父さんはまずはその部分を加熱しながら、“やっとこ”で挟んで曲げ、まっすぐになるようにした。その後金属を延ばして隙間を埋めようとするのだが完全にはふさがらない感じである。
 
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「お父ちゃん、何かで継げばいいかも」
と鞠子君が言った。
 
「そうすっか」
と言って、お父さんは、棚から、できるだけ近い色の真鍮の薄板を選び金切りバサミで適当なサイズに切る。それを穴の開いている所の上にかぶせた。
 
「内側と外側と両方から挟む方が万全なんだけど、たぶん片側だけでも何とかなるでしょう」
と言って、管体の外側にかぶせ、それを溶接して留めた。
 

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「できたかな?」
 
立ち会っていた小春が吹いてみる。
 
「息漏れがある。どこか完全にはふさがってない所がある」
と言う。
 
「ありゃ、どこだろう?」
 
小春はトランペットに水を満たした。1ヶ所から水が漏れ出している。
 
「あ、そこから漏れているのか」
「自転車のパンク箇所を確認するのと同じ要領ですよ」
「なるほどー」
 
それでその部分をしっかり溶接し直してもらった。
 
小春が吹いてみる。
 
「大丈夫みたい」
「よかったよかった」
 

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「音色はどう?私はガムテープで塞いだ状態のしか吹いてないから元の音色が分からない」
 
「貸して」
と言って、海老名君が吹いてみる。
 
「前より少し明るい音になった気がするけど、音程は変わってないと思う」
「だったら許容範囲かな」
「あとはラッカーポリッシュで磨いて表面に皮膜を作ればいいかな」
と重原先生が言う。
 
「それで行けそうですね。これ、練習用とかに使う分には問題無いですよ。2〜3年はいけるかも」
 
と海老名君は言ったものの、この楽器はこの後更に10年使用されたのであった!
 
「鞠子さん、このお代はいくら払えばいいですか?」
と教頭が訊くが
「ああ、この程度はタダでいいよ」
と鞠子君のお父さん。
 
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「でも金属材料まで使ってもらったし」
「黙ってりゃバレないです」
 
などとお父さんは言っていたが、後ろで社長さんが苦笑していた。
 
 
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