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■少女たちの修復(8)

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9月16日の学習発表会は延期になってしまった。アメリカの同時多発テロを受けて、様々なイベントやテレビ放送などで自粛ムードが広がっていた。9月23日に予定されていた合唱サークルの道大会も中止になり、今年は予選の時の録画によって審査するという連絡が来た。
 
「ビデオ審査は有力校が有利だからなあ」
と馬原先生は心配していた。しかし月末になって、札幌の私立L女学園と留萌市立N小学校の2校が全国大会に進出しますという連絡が来たので、その報告を受けて、合唱サークルのメンバーから歓声が上がった。
 
「本来は北海道は代表1校のはずなんだけど、今回は全国から特別に16校選ぶということになったみたい。L女学園は実力派だから、うちは2位だったかもね。ビデオ審査になった代わりに枠が拡大されたのが結果的には運がよかったかも」
と馬原先生は言っていた。
 
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延期された学習発表会は9月30日(日)に実施された。
 
千里は「有志演奏:ワンティス『無法音楽宣言』」と5年1組のクラス劇『魔法の白鳥』、および合唱サークルの演奏に出演する。
 
朝から1年生に始まって各クラスの劇(あるいは合唱・合奏などの演し物)が行われていく。
 
昨年『笠地蔵』のお地蔵様をした玲羅(3年生)は今年は『十二支の始まり』で猫を演じていた。ただし全ての役がダブルキャストになっていて、ネズミも2人、牛も2人、ということで動物役は猫を含めて26人である。そして残りは全員神様役らしい。
 
3年1組・2組の劇が終わった後は、合唱サークルの演奏となる。千里は堂々と合唱サークルの制服(ペールピンクのチュニック+えんじ色のスカート)を着てステージに上がり、コンテストでも演奏した『ロボット』『流氷に乗ったライオン』にもう1曲『小さな木の実』を歌った。地区大会の時は正ピアニストで6年生の阿部さんが伴奏したのだが、今回は度胸付けも兼ねてサブ・ピアニストの5年生・美那が伴奏し、阿部さんは指揮者として参加した(阿部さんはピアノは上手いが歌が下手)。
 
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合唱サークルの演奏の後は、教師合唱を経て、5年生保護者の合唱となる。
 
千里の母はこれに参加するのに出てきてくれていたのだが(夏休み中にも数回練習に出てきてくれている)、千里に「あんた何の役するんだっけ?」と訊き、千里が
「王女様だけど」
と言うと、聞かなかったことにしたようである!
 
母はさっき千里が合唱サークルでスカートの制服を着て歌ったのも見なかったことにしたようである!!
 
母たちはポルノグラフィティの『アゲハ蝶』とMISIAの『EVERYTHING』を歌った。蓮菜のお母さんがピアノ伴奏をしていた。
 

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この5年生保護者合唱の後は、昼休みに入るが、その昼休みの時間帯を利用して、有志グループによるパフォーマンスが行われる。N小の児童でなくてもいいので、保護者有志のフラダンスとか、民謡の会の演奏、老人ホームの皆さんの歌唱、なども入っていた。児童のグループでは、6年生男子3人によるバンド演奏(ギター・ベース・ドラムス)もあり、千里たちは「かっこいい!」と言って見ていた。
 
そして千里たちが出て行く。
 
およそ楽器には見えないものが並んでいるので、結構なざわめきがある。が、蓮菜の「ワンツースリー」の掛け声で演奏が始まると、どよめきが起きる。
 
体育館の広さに響かせるため、田代君のお兄さんとそのお友だちがいくつかの楽器にピックアップを付けてスピーカーにつないでくれている。これをしないとやはりペットボトルに水を入れて作った“瓶琴”などはどうしても音量が足りない。
 
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各自の使用“楽器”
 
佳美 大きさの違うゴミ箱を4個逆さまにして並べ、棒で打つ(ドラムス代り)
蓮菜 水を入れたペットボトルを並べた“瓶琴”(ピアノ代り)
千里 ノコギリをプラスチックの棒で弾く(ヴァイオリン代り)
美那 風船(針で割る)
恵香 おもちゃのチャルメラ
穂花 塩ビの水道管に穴を開けて作った横笛
田代 オモチャの銃とキャップ火薬
鞠古 クラクション付き自動車のオモチャ
その他5年1組女子一同 歌
 
穂花の“横笛”の穴を開ける位置は田代君のお兄さんがパソコンで計算して決めてくれたが最初に作ったものは微妙に音程がずれたので最終的には勘で微調整して音程を合わせ付けた。これもピックアップで拾って増幅している。
 
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最初このプロジェクトに参加していなかった女子も引き込んで1組女子全員参加にしたのは玖美子である。それ以外に田代君と鞠古君が入っている。この2人は昔から女子たちと垣根が無い。
 
演奏が終わると物凄い拍手があった。
 

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昼休みの後、4年1組・2組の劇を経て5年1組の劇が始まる。
 
舞台の背景は絵のうまい子数人で手分けして描いたものをプロジェクターで後ろの幕に投影している。
 
最初の場面は王宮である。ナレーターの佐奈恵が出て、王女が生まれてから1度も笑っていないということを説明する。
 
王様(高山)と王妃(杏子)が並び王女(千里)もいる中、最初に物まね芸人(穂花)が出てきて芸を披露し、王様と王妃も笑うし会場でも結構な笑いがあるが、王女は笑わない。漫才のペア(飛内・福川)が出てきて短いネタを披露するが、やはり笑わない。1人コントの恵香がロシアンジョークを披露するがやはり笑わない。最後に蓮菜が出てきて千里をくすぐるが、それでも千里は笑わない。
 
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それで王様は言った。
「国中にお触れを出そう。姫を笑わせた者には金貨1000枚もしくはこの国をやる、と」
 
それで大臣(上原)が文書を書き、王様が署名して、大臣はその文書を持って出て行った。
 

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幕が降りてその前で演技が行われる。ナレーターは3人の兄弟、ジェイコブ・フレデリック・ピーターが居て、末弟のピーターが上の2人から馬鹿にされていることを語る。
 
「お前は麦の袋も運べないし」
とジェイコブ。
「お前は引き算もできないし」
とフレデリック。
 
「お兄さん、僕のごはんこれだけなの?お腹すくよ」
とピーターが訴えるが
「働けない者には飯(めし)なんかやれない。それだけもらえるだけでもありがたいと思え」
と兄たちは言った。
 

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「お腹空いたよ」
と言いながら、ふらふら歩くピーター(留実子)の前に女神(優美絵)が現れる。そして言った。
 
「あなたはもう家を出なさい。このままでは死んでしまいます。そして家を出たら、十字路に、男が寝ていて、そのそばの梨の木に白鳥が一羽つながれているのを見るでしょう。そしたら、その男に気付かれないようにそっと白鳥がつながれている紐を解いて連れて行くのです。決して男に気付かれないように、そして白鳥自体にも決して触らないように」
 
「連れて行くってどこに行くのですか?」
「王宮まで行きなさい。きっといいことがありますよ」
 
それでピーターはいったん家に戻り、父に自分は家を出ると告げた。父親は心配してくれたが、兄たちは「これで食い扶持が1人分減って助かる」などと言った。
 
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ピーターが家を出てから歩いて行くと、女神が言ったように梨の木があり、男(津山)が寝ていて、その梨の木に白鳥が繋がれていた。ピーターは男に気付かれないようにそっと近寄るが、津山君はまるで起き上がるかのような動作を見せたり、寝返りを打ったりしてピーターをドッキリさせる。しかしピーターは無事白鳥をつないでいる紐をほどき、その白鳥を連れていった。
 
なお白鳥はビニール製の白鳥の形の子供用プール(空気で膨らませるタイプ)を台車に乗せたもので、ピーター役の留実子はその台車に付けた紐を引いている。
 

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幕が上がって、居酒屋っぽい背景である。テーブルと椅子が置かれている。そこにピーターが白鳥を連れて入って行き
 
「喉が渇いた。ビールをくれ」
と言う。それでウェイトレス(美那)がビール(実際には麦茶)を持って来て出す。ピーターがそれを飲んでいると、客の男(鞠古)が寄ってくる。
 
「兄ちゃん、すっごく可愛い白鳥を持ってるね」
「そうかい」
「美事な毛並みだ。ね、ね、触らせてもらえない?」
「うん。触るくらい自由に」
 
それで男が触ると白鳥が突然「ぎゃー」と鳴く(声:佳美)。ピーターは驚いて「落ち着け!」と言った。すると白鳥は泣き止む。
 
「びっくりしたね。あまり機嫌が良くなかったのかな」
などとピーターは言っているが、男が困ったような顔をしている。
 
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「どうかしたの?」
「手が離れない」
「え?うそ」
 
それでピーターは男を引っ張るが、男の手は白鳥から離れない。
 

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そこにウェイトレスが出てきた。
 
「お客さん、どうかしたの?」
「なんか白鳥から手が離れないらしい」
「え?ちょっと貸して」
と言って、ウェイトレスは白鳥と男を掻き分けるように押した。ところが彼女が白鳥に触った途端、また「ぎゃー」と白鳥が鳴く。ピーターが「落ち着け」と言ったら白鳥は鳴き止む。ところが
 
「私の手も離れない!」
とウェイトレスは言った。
 
「困ったな。俺は白鳥を連れていくところがあるし。あんたらも一緒に来る?」
とピーターも困ったように言った。
 

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それでピーターは白鳥を連れて出発する。背景が移動する。手が空いている子たちの手でテーブルと椅子が片付けられる。
 
やがて真っ黒に汚れた服を着て、顔まで真っ黒(顔ペンで塗っている)にした煙突掃除夫(田代)がやってくる。ウェイトレスが声を掛ける。
 
「ジョン!助けて。私たちこの白鳥から離れなくなっちゃって」
「なんだって。どれ」
と言って田代君は白鳥とウェイトレスを押して引き離そうとする。ところが白鳥は田代君が触ったとたん「ぎゃー」と鳴く。ピーターが「落ち着け」と言うと白鳥は鳴き止んだが、煙突掃除夫も白鳥にくっついたままになってしまった。
 
背景が移動してサーカスの絵になる。道化師の格好をした東野君が来る。彼は一行を見て大笑いした。
 
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「君たち何やってんのさ?」
「くっついてしまって離れないんだ」
と煙突掃除夫が言うと
「何馬鹿なこと言ってんの?」
と道化師は言って・・・結局彼も白鳥にくっついたお仲間になってしまう。
 
やがて立派な格好をした村長(佐藤)と白いドレスを着た奥さん(玖美子)がやってくる。
 
「君たちは何をしている。けしからん。警察に連行する」
と村長は言って、白鳥に触り、結局そのままくっついてしまう。
 
「お前、手伝ってくれ。この白鳥からどうにも手が離れないんだ」
と村長に言われて、結局奥さんもそのままくっついてしまう。
 

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ピーターはその一行を連れて、女神に言われた通り、王宮にやってきた。そこに馬車に乗った王女が出てくる。
 
(馬車と馬は段ボールの書き割り。御者役の子、侍女役の子、王女役の千里の3人で持っている)
 
そして王女は一行を見た途端大笑いしはじめた。侍女は王女が笑っているので驚く。
 
「大変です!王女様がお笑いになりました!」
と大きな声で言う。
 
すると奥の方から王様と王妃が走って出てくる。そして2人ともピーターが連れている一行を見て大笑いした。
 

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王様はまだ笑いながらピーターの肩を叩くと言った。
 
「君、全く面白い演し物をしてくれた。姫を笑わせたものに何を取らせると私が布告したか知っている?」
 
「いいえ」
とピーターはきょとんとして言う。
 
「金貨1000枚かこの国をやると言ったんだよ」
 
「金貨1000枚!?とんでもない。私は白鳥を連れてきただけで、そんな大金をもらういわれはありません」
 
「欲の無い奴だな。だったら姫と結婚してこの国を治めてくれ」
「え〜〜〜!?お姫様と結婚するんですか?」
 
「あんた男だよな?」
と王様(高山)。
「男ですけど」
とピーター(留実子)。
 
「ちんちん付いてる?」
「付いてますよ」
 
「だったら姫と結婚出来るな(*2)」
「お姫様って女の人なんですか?」
「もちろん。姫が男なわけない」
 
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(*2)この件は、千里と留実子は果たして結婚可能かというので、後から随分議論された。
 
「花和にチンコが付いている確率は50%くらいだと思う」
「村山にチンコが付いている確率はゼロ」
「あいつ最近平気で女子と一緒に着換えているみたいだから付いてたら騒ぎになっているはず」
「水泳大会で女子スクール水着を着てたけど、ちんこらしきものは無いように見えた」
 
「ということはふたりが結婚出来る可能性は50%かな?」
 

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ナレーターの佐奈恵が出てきて
「そういう訳でピーターは王女と結婚して幸せに暮らしたのでした。めでたし、めでたし」
と言った。
 
「待って。私たちはどうなるの〜?」
と白鳥にくっついたままのウェイトレス(美那)。
 
「あ、ごめーん」
と言って女神(優美恵)が出てきて、魔法のスティックで白鳥に触れると全員白鳥から離れることができて、そのままみんな逃げて行った。そして女神は白鳥を連れて「幸せにね〜」と言って退場した。
 
「これにて一件落着」
と佐奈恵が言って幕が降りた。
 
 
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少女たちの修復(8)

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