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(C) Eriko Kawaguchi 2021-11-28
第2幕第3場
ドロシーたち一行が歩いて行っていると、突然ライオン(佐藤)が飛び出してきました(ライオンの着ぐるみを着ている)。ライオンは、まずかかしをはねのけると、木こりも突き飛ばします。そしてドロシーに向かってきました。するとトトがドロシーの前に立ち激しく吼えて威嚇します。(ここのトト役の初枝の演技が素晴らしかった)
ライオンはトトに近づき、掴まえようとします。しかしドロシーはトトの前に出て、ライオンの鼻を拳(こぶし)て殴りました(ライオン役の佐藤君が「手加減してよぉ」と後から言った:優美絵は午前中の練習の時さんざん「もっと強く」と言われたので本番では思いっきり殴った)。
ドロシーは言います。
「あなたは百獣の王でしょ。それがこんなかよわい小犬を狙ってどうするの?」
するとライオンは泣き出しました。
「ぼくは勇気が無いんだ。だから大きな動物を狙いきれないんだよぉ」
「ふーん。それで」
とドロシーは怒っているので冷たく言います。
「何とかして勇気を得る方法は無いかなあ」
すると何とか起き上がった木こりが言いました。
「だったら、君も俺たちと一緒にオズの魔法使いのところに行くかい?ドロシーはカンザスに帰る方法ほ教えてもらいに、かかしは脳味噌、俺は心臓をもらいに行くんだ」
「だったらぼくも行きたい」
語り手(穂花):ドロシーは不満だったのですが、ライオンが自分たちに付いてくることは許しました。それで少し行った時のことです。
大きな谷間があり、橋があったのが壊れて落ちてしまったようです。
「俺が木を切って橋を作るよ」
と言って木こりは木を2本切り、それを谷に掛けて橋を作りました。丸木橋は恐いですが、2本掛かっていれば、わりと安心です(実際1本では運動神経の悪い優美絵が渡れなかった!ので急遽2本にすることにした)。
それで渡ろうとしていた時、突然猛獣のカリダ(鞠古)が襲ってきました。ライオンは
「ぼくが戦っているから、その間にみんな、橋を渡って」
「うん」
最初に橋を確かめるようにかかしが渡り、それからドロシーとトトが渡ります。それから木こりが渡りました。この時、かかしが木こりに何かささやきました。
「なるほど、そういう手があったか」
と木こりは感心しました。
「みんな渡ったぞ。お前もこちらに来い」
と木こりはライオンにむかって言いました。
ライオンが橋を渡ります。カリダもそれに続いて橋に乗りますが、木こりはライオンが渡り終えた所で橋を切って谷底に落としました。するとカリダは橋と一緒に下に落ちて行ってしまいました。
この作戦を実はかかしが思いついたのです。
「ありがとう、木こりさん、かかしさん、ライオンさん。あなたたちのおかげで助かった」
とドロシーは3人に感謝しました。
語り手(穂花):こうしてライオンはドロシーと仲よくなり、本当に一行に加わりました。それで、ドロシーとトト、かかし、木こり、ライオンで一緒にエメラルド・シティを目指したのです。
第3幕第1場
エメラルド・シティ、オズの宮殿。
(中幕を開けるとその後にエメラルド・シティのセットは既に組まれている)
緑色の衛兵の服を着て緑色のヒゲをはやした門番(留実子)が立っています。ここで全員目を保護するための眼鏡を渡され各自掛けます(厚紙を切って緑色のセロハンを貼ったもの:玖美子と美那の工作。なおエメラルド・シティの背景画は高山君が描いた)。
「全て緑色に見える」
「エメラルドの都ですから」
「では1人ずつ中に入りなさい」
最初にドロシーが中に入ります。緑色の服の少女(美那)が案内して劇場のような所に入ります。
「ここでお待ちください」
「ありがとう」
(美那は最初マンチキン役だったが、緑色の少女の役が見落とされていたので、こちらに変更された:これは台本配布の翌日に先生が気付き、美那を1本釣りして役を割り当てた。緑色の兵士は省略して少女が全員を案内することにした)
やがて幕が開きます。そこには巨大な頭かありました。頭だけで、手足や胴体は見当たりません。
「私が強烈恐怖の魔法使いオズである。私に何用かね?」
(ビッグ風船を膨らませて顔を描いたもの。声は千里)
ドロシーは自分がカンザスから嵐に飛ばされたこと。カンザスに帰してほしいことを言いました。
「君は銀の靴を履いているね」
「東の魔女が履いていた靴を北の魔女から頂きました。私がカンザスから家ごと飛ばされた時、家が東の魔女の上に落ちて死なせてしまったのです」
「そういえば魔女のお守りのキスマークが付いている」
「北の魔女さんからして頂きました」
「カンザスに帰してもいいが条件がある」
「はい。なんでしょう?」
「西の国では悪い西の魔女がウィンキー人たちを苦しめている。その西の魔女を殺してきてほしい」
「そんなこと私にはできません!」
「だって君は東の魔女を殺しているではないか」
「あれは偶然のできごとで避けようがなかったんです」
「君は銀の靴を履いていて、北の魔女の祝福のキスも受けている。君以外に西の魔女を倒せる者は居ないと思う。君が西の魔女を倒してきたら、君をカンザスまで送り届けてあげるよ」
それでオズとの会見は終わり、ドロシーは困った顔をして出て来ました。次は、かかしが緑色の少女(美那)に案内されてオズの玉座に行きました。
やがて幕が開くと、そこには光輝く服を着た可愛い女の子(穂花)が玉座に座っていました。
「私が強烈恐怖の魔法使いオズである。私に何用かね?」
かかしは、ドロシーから聞いた話と全く違うので驚きます。
『え〜?オズって女の子だったの?』
と思いましたが、用件を言います。
自分は脳が無いので脳を欲しいと言いました。
「だったらドロシーと一緒に西の魔女を殺してきてくれ。そしたら君に脳味噌をあげよう」
つづいて木こりがまた緑色の服の少女に導かれて玉座に行きます。
オズは大きな顔だろうか?それとも女の子だろうか?どうせなら女の子がいいな、などと考えます。ところが、玉座には象のように大きく、サイのような頭を持つ猛獣がいました。そして木こりが自分は心臓が欲しいというと、やはりドロシーを助けて西の魔女を倒してくるように言いました。(オズの姿は映像、声は飛内)。
最後にライオンが緑色の服の少女に導かれて玉座に行くと、玉座には大きな火の玉が燃えていました。ライオンが勇気が欲しいというと、やはりドロシーを助けて西の魔女を倒してくるように言いました。(オズの姿は映像、声は東野)。
語り手(穂花):そういう訳で、結局全員西の魔女を倒してくるよう言われたのです。仕方ないので、取り敢えず西の国へ行くことにしました。
(暗転)
ここで、エメラルド・シティのセットの前に中幕を下ろし、その前に西の魔女の家のセットを搬入する。実は、カンザスの家を裏返しにすると、西の魔女の家になるようになっている。
語り手(暗転の作業をしている間に語る):それでドロシーたちが西の国に向かって歩いていますと、羽猿たち(Winged Monkeys 恵香、上原、工藤、小室)がやってきて一行を拉致します。かかしは体内のわらを抜かれて捨てられ、金属木こりは谷底に落とされ、墜落の衝撃で身体が変形して動けなくなります。ライオンは縛り上げられて檻(おり)に閉じ込められ、トトも狭い小屋に入れられました。
羽猿たちはドロシーも谷底に落とすなら何なりしようとしたのですが、ドロシーには北の魔女のキスがされていたので、羽猿たちも危害を加えることができませんでした。それで羽猿たちはドロシーを、西の魔女のところに連れて行きました。
第3幕第2場
西の魔女の家。
語り手(穂花):ドロシーがそのまま連れてこられたのを見て西の魔女(蓮菜)はギョッとします。しかもドロシーには北の魔女のキスマークが付いているので、うかつに手を出せません。更には彼女が銀の靴を履いているのを見て自分は即こいつに殺されるのでは?と怯えました。しかしドロシーの無邪気な表情を見て、もしかしてこいつは銀の靴の使い方を知らないのではと思いました。それで平静を装います。
「その銀の靴をわしに寄こせ」
「いやです。これを履いていれば、いつかおうちに帰れると北の魔女さんが言ったの。だから絶対渡しません」
それで西の魔女が無理矢理靴を脱がせようとしますが、靴に触ると魔女は手を火傷しそうになり
「あっちっちっちっち」
と手を押さえます。それで無理矢理奪うのは諦めました。
「だったら、お前はわしの召使いとして働け。言うことを聞かないと殺してしまうぞ」
語り手(穂花):それでドロシーは西の魔女の家で召し使いとして働くことになったのです。掃除、洗濯、料理とドロシーは一所懸命働きました。この生活は数ヶ月続きました。
西の魔女はある日言いました。
「ドロシー、わしと賭けをせんか?」
「賭け?」
「ここにトランプが4枚ある」
と言って、西の魔女はダイヤJ、ハートQ、クラブK、スペードAという4枚のカードを見せます。
(カードは観客にも見えるように50cm×30cmサイズで作られている。制作は佐奈恵)
「わたしが4枚のカードを持っている中から、お前が1枚だけカードを引く。赤いカードを引けば誰か1人はお前に返そう。しかし黒いカードを引いたら、その銀の靴を片方わしに寄こせ」
「分かった。やる」
それでテーブルに向かい合って西の魔女とドロシーは座りました。ところがここで西の魔女は不気味な笑いとともに4枚のカードが観客に見えるようにします。するとカードはいつの間にか4枚ともスペードAに変わっています。
ドロシーが1枚引きます。
「やったぁ!」
と言ってドロシーは、ハートQのカードを観客に見せました。
西の魔女は驚きました。そして呟きます。
「これが大魔法使いオズの力か?」
「仕方ない。誰を解放する?」
「トトを返して」
「分かった」
それで狭い小屋に閉じ込められていたトトが解放されたのです。
語り手(穂花):西の魔女は賭けではドロシーというより、その背後にいるオズに勝てないと思い、別の策略を考えました。台所の出入口のところに細い紐を張っておいたのです。
台所から出て来たドロシーは、この紐に躓いて、転んでしまいました。その時、銀の靴が片方脱げてしまいます。魔女はすかさず、その靴を取り上げました。
「返してよぉ」
「返さん。これはもうわしのものだからな」
「そんなの酷いわ。あなたにその靴を履く権利は無い」
「これはわしが履く。そして、その内、もう一方の靴も奪ってやる」
「そんなの許されないことよ」
と言って怒ったドロシーは近くにあったバケツを取ると魔女に掛けてしまいました(実際にはバケツの中は空っぽ)。
すると魔女は「ぎゃー!」という悲鳴をあげて倒れたのです。
「どうしたの?」
とびっくりしてドロシーは尋ねます。
「わしは水には弱いんじゃー」
「身体を拭いてあげればいい?」
「もう遅い。たぶんわしはすぐ死んでしまう」
「そんな」
と言ってドロシーは悲しい目をします。
「お前、わしが死ぬのを悲しんでくれるのか?」
「だって人が死ぬのは悲しいことよ」
「お前はなんて慈悲深い娘なんだ。たぶんわしはその慈悲の心に負けたんだ」
と言って、西の魔女は動かなくなってしまいました。
ドロシーはおそるおそる、魔女から銀の靴を取り返して自分の足にはめました。
そしてトトを連れて魔女の家を出ると、まずは檻に閉じ込められているライオンを解放しました。
「ドロシー、どうしたんだ?」
「西の魔女が死んだの。だからあなたたちは自由よ」
「ドロシーが殺したのか?」
「殺すつもりは無かったのよ。水を掛けたら死ぬなんて知らなかったんだもん」
「西の魔女が死んだって?」
とウィンキーの人たち(杏子、福川、和井内)がやってきました。
「うん。死んじゃった」
「やったぁ、これで西の国も平和になる」
とウィンキーの人たちは大騒ぎです。
「あの、みなさん、もしよかったら、かかしさんと、木こりさんを助けてくれませんか」
「よしまかせろ」
語り手(穂花):それでウィンキーの人たちは捨てられていた、かかしを救出すると、中に新しいわらをたっぷり詰めてあげました。そして谷間に落ちていた木こりを助け出すと、金属加工職人が曲がった所をハンマーで叩き、関節に油を差して、動けるようにしてあげました。
「あ、俺のチンコが無い」
「ここに落ちてたぞ」
「待ってろ。今くっつけてやる」
「助かったぁ。これないと困るよ」
「へー、ティン(tin)のチンコか」
「ティンチンだな」
(というやりとりも台本には無く、男性の観客には受けたが、女子たちから非難された!女性観客からもひんしゅくを買った)
それでドロシーたちはエメラルド・シティに戻ることにします。ドロシーたちは旅の途中の食料に、魔女の家にあったパンなどを少し持って行くことにしました。魔女の家の棚に黄色い帽子があり、かぶってみたらドロシーにきれいに入ったので、それをかぶっていくことにします。
「でもどうやって帰ればいいのかしら?」
ドロシーたちは羽猿たちに連れられてここまで来たので、道がわかりません。ウィンキーの人たちに尋ねてみました。
「ここからまっすぐ東へ行けばいいけど、かなり距離はあるよ。それより、お嬢さん、黄色い帽子をかぶってるじゃん。その帽子で羽猿を呼べばいいよ」
「羽猿たち、私たちに悪いことしない?」
「羽猿はその帽子をかぶっている人の命令に従うんだよ」
「そうだったんだ?でもどうやって呼べばいいんだろう」
「帽子の中に呪文が書いてない?」
「え!?」
それで帽子をいったん脱いで中を見て見ると呪文が書いてありました。そこでドロシーはこの呪文で羽猿を呼ぶことにしました。
再度帽子をかぶります。
「エッペ・ペッペ・カッケ」
「ハイロ・ホロー・ヘロー」
「ジジー、ズジー、ジク」
ドロシーが呪文を唱えると、羽猿の王(恵香)が姿を現します。
「御主人様、何の御用でございましょうか?」
「私たち4人と1匹をエメラルド・シティまで連れていって」
「おやすい御用でございます」
語り手(穂花):それで羽猿は仲間(上原、工藤、小室)を呼ぶと4人と1匹を連れて空を飛び、あっという間にエメラルド・シティに戻ったのです。