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■娘たちのドラゴンテイル(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-11-09
 
バスケットボール日本女子代表は、アジア選手権を目前にして故障者が2名出たのに続き、インフルエンザの感染者が3名出て、急遽12人の内5人も交替して大会が行われるバンコクに向かうことになった。
 
シューターでも花園亜津子がインフルエンザでダウンした結果、千里がスペインから緊急召集され、単独バンコクに移動することになる。
 
念のため全員の健康診断・ウィルス検査をした上で新しい選手名簿を、交替する選手の診断書を添えて、大会事務局とFIBAに送ったのはもう交替が認められる30分前の21:30頃であった。
 
PG 6.入野朋美(1989) 13.鶴田早苗(1990)
SG 4.三木エレン(1975) 8.村山千里(1990)
SF 5.広川妙子(1984) 9.佐藤玲央美(1990) 11.湧見絵津子(1992)
PF 12.高梁王子(1992) 15.月野英美(1986) 10.渡辺純子(1992)
C 7.馬田恵子(1985) 14.石川美樹(1986)
 
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9月11日に発表した名簿から大きく変わってしまった。ポイントガードなど2人ともに交替している。
 
北海道から緊急召集された絵津子と純子はちゃんと朝一番の成田行きに乗ってくれたので、日本国内組は全員この便で移動することができた。
 
10/23(Wed) NRT 12:00-16:30 BKK
 
一方、スペインのグラナダに居た千里はこのようにしてバンコクに移動した。
 
GRX 10/22(Tue) 17:25(IB8645 CRJ1000) 18:30 MAD
MAD 22:10(EK144 777-200LR) 10/23 7:15 DXB
DXB 8:50(EK418 777-300) 18:10 BKK
 
以前高梁王子がチェコからインドに短時間で移動した時と同様にドバイ(DBX)経由のエミュレート航空(EK)利用である(便利だが運賃が高い!)。
 
しかしおかげで日本組から1時間40分遅れで到着。充分誤差の範囲であった。それで23日の夕食はチームメイトと一緒に食べることができた。
 
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もっとも玲央美や早苗・美樹たちには“手荒い歓迎”をされて
 
「痛い!痛い!ちょっとやめて」
と悲鳴をあげる羽目になった。
 

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コーチ陣も他の選手も、千里の最近の試合の中でのプレイを見ていなかったので、まずは23日の夕食後、練習場所に指定された中学校の体育館で紅白戦をおこなった。
 
A 入野朋美 三木エレン 広川妙子 渡辺純子 月野英美 馬田恵子
B 鶴田早苗 村山千里 佐藤玲央美 湧見絵津子 高梁王子 石川美樹
 
千里を1回でも停めることができたのは馬田恵子だけだった。Aチームの他の5人は誰も停められなかった。
 
「8月に見た時とは別人だ。無茶苦茶強くなってる」
と月野英美が言った。
 
「じゃ村山君とエレン君、交替してみようか」
と戸田アシスタントコーチが言う。それでエレンがBチーム、千里がAチームに入って紅白戦をすると、Bチームのメンツで千里を1回でも停められたのは玲央美と王子だけであった。王子は逆を突かれたものの、そこから驚異的な反射神経でぎりぎりボールを弾いた。
 
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「2年前の最強の時のレベルに戻っている」
と馬田恵子が言った。
 
2年前のアジア選手権の直前に、千里が“最強モード”になって恵子を全く寄せ付けなかったことがあった。恵子が言うのはその時のレベルまで回復しているということである(実はあの時は《こうちゃん》が千里に擬態して練習に参加し、恵子を鍛えていた)。
 

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コーチ陣は千里の出来具合もだが、やはり直前に大幅に選手が入れ替わったので、連携などがちゃんとできるか不安があったようで、この日はAチームBチームを色々組み替えて練習試合を遅くまで続けたが、実際には、通常の攻撃パターンや守備連携だけでなく、スクリーン、ピック&ロール、トラップなどがサインも無しできれいに決まる。
 
「こんなにうまく行くとは・・・」
とコーチ陣が驚くほどであった。
 
ちなみに、王子や絵津子、月野美樹などは簡単にトラップに引っかかってしまった!
 
「いや、直前の入れ替えで、このメンツはU21で銅メダルを取った子たちが中核になってしまったんですよ。月野・石川の世代もその子たちとよく一緒に練習しているから、サインとか無しでも雰囲気ですべきプレイが分かる。私たちおばあちゃんが脳味噌を全力で働かせて付いていけば何とかなる」
 
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と羽良口の離脱で副主将に指名された広川妙子が言うが
 
「あんたがおばあちゃんなら、私は?」
とエレンが言う。
 
「殿堂入りで」
「ふむふむ」
 

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「ドラゴン・ジュニアバレエフェスティバルですか・・・」
 
龍虎たちはその日の先生の説明に戸惑った。
 
「政府系の団体が予算を出してくれて、取り敢えず、日本・中国・韓国・台湾の4ヶ国の持ち回りで、小中学生のバレエのフェスティバルをしようということなのよ。最初“アジアン”と銘打っていたんだけど、4ヶ国だけでアジアを名乗るのは厚かましいという意見もあってドラゴンという名前になったのよね」
 
「それで今年は第1回目で日本の横浜、来年は中国の上海で開くということ。それでうちのバレエ教室も今年15分間の枠をもらったの」
 
「15分ですか」
 
「うん。短いけど、その15分で、ロシア・中国・アラビア・フランス・スペインを2分ずつ、金平糖2分、花のワルツ3分くらい」
 
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「花のワルツで全員出場か・・・」
「そうなのよ」
 
アジアというから、外国に行けるのかなと思ったら横浜ということで、ややガッカリしたものの、外国のバレエ教室の子供たちの演技を見るのも楽しみだな、と龍虎は思った。
 

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そういう訳で、今年も龍虎たちは年末のバレエ教室の発表会に向けて練習を重ねていた。但し今年はそのアジアフェスティバルがあるので、2度の公演に臨むことになる。アジアの方はショートバージョンになりそうではあるが。
 
今年も演目は昨年と同じ『くるみ割り人形』である。このバレエ教室ではだいたい2年単位で演目を変えていく。来年は『シンデレラ』か『白鳥の湖』かどちらにしたいけどまだ決めていないということである。
 
2010-2011は『眠りの森の美女』をやって龍虎は3年生の時はコール・ド(群舞)に出ただけだったが、4年生の時は青い鳥(チャーミング王子)の役をもらい、可愛く!?青い鳥を踊った。昨年は『くるみ割り人形』になり、スペインの踊りの男性側を踊ったが、欠席者が出て急遽アラビアの踊りの女性側まで踊った。更にはチュチュを着て雪片の踊りの群舞にまで出た。
 
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今年は最初フランスの踊り(の男性側)をしてみようかと言われたものの、この踊りでは男性は女性の踊り手を支えてあげないといけないし、また単独で踊るところでも多数のジャンプがあり、筋力が必要である。それで小柄で筋力の無い龍虎にはフランスの男性側は無理ということになった。
 
「フランスの踊りの女性側なら行けそうな気がするけど」
「女性役は勘弁してください」
 
それで龍虎は中国の踊りを踊ることになった。この踊りは、男1女1、女2、男2女1など、様々なパターンの振り付けがある。今回の振り付けでは龍虎が男性の衣裳、昨年アラビアを踊った鈴菜と日出美が女性の衣裳を着けて前面で踊り、小学3年生以下の子たち7〜8人が後ろで踊るという演出になった。つまり(龍虎が男なら)男1女2の組み合わせになる。実は男女の踊りがほぼ同じパターンで、リフトも無いので、龍虎でも踊れる。
 
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「龍ちゃん、女の子の衣裳でもいいけど。女の子3人の振り付けに調整できるし」
「いえ。男の子の衣裳にさせてください。ジュテ(跳躍)は頑張ります」
 
それで鈴菜たちと同じデザインで、スカートをショートパンツに変更した形の中国っぽい衣裳を制作することにした。なお実際に服を作るのは直前である。11月中旬くらいに採寸することにしている。小学生は成長が早いので夏に作った服は冬に着られない恐れがある。
 

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「そういえば今年は演奏順序が違うんですね」
とひとりの生徒が訊く。
 
「そうなのよ。昨年は“くるみ割り人形組曲”に近い順番だったんだけど、元の“バレエ・くるみ割り人形”の順序でやった方がいいのでは、という意見が結構あって、その順序に戻したのよね」
 
昨年:ロシア→アラビア→中国→フランス→スペイン(→金平糖)
今年:スペイン→アラビア→中国→ロシア→フランス(→金平糖)
 
「でも最後は花のワルツなんですね」
 
「うん。これはやはりそれで終わるのが美しいと思うのよね〜。バレエの順序なら、花のワルツをはさんで金平糖なんだけど」
 
金平糖はプリマが踊るので後に置かれていたのだろうが(実際には金平糖の後に終幕のワルツがある)、やはり小中学生の公演としては賑やかに終わりたいという趣旨だ。ちなみに今年、金平糖を踊るのは、昨年はフランスの踊りを踊った和絵さん(中2)である。今年は中学3年の女子生徒が居ないので、彼女が来年もこの教室に在籍していれば来年もプリマを務めるだろう。
 
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ちなみに今年の唯一の中学3年生で昨年はフランスの踊りの男性側を踊った花丸君は「最上級生だし、金平糖を踊る?」と訊かれたものの「スカート穿くのは勘弁して下さい」と言って、くるみ割り人形(王子)役である。実は、くるみ割り人形役は、あまり見せ場が無い!行進曲では突っ立っているだけだし、雪片の踊りも前半だけで引っ込んでしまう。
 

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練習は夏休み頃から始めたのだが、今年も1学年上(中学1年)の蓮花が夏休みの間は海外の別荘に行っており、練習に出て来ない。それでまたまた
 
「龍ちゃーん、こちらの練習も手伝ってよ」
と言われて、今年蓮花が踊るフランスの踊りの女性側!を結局踊ることになる。
 
「龍ちゃん、軽くてリフトしやすいんだよね〜」
「でも去年からはだいぶ体重増えましたよ」
「それでも軽い」
 
そんなことを言われながら、龍虎は練習していて、とても嫌〜な予感がするのであった。
 
ちなみに去年の発表会で直前に蓮花から「前で踊るの代わって」と言われた件だが、蓮花はサボリの常習犯で、練習不足から前面で踊る自信が無く、龍虎に代わってもらったのが真実だったらしい(実は足など痛めていなかった)。
 
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なお大人の公演ではフランスの踊りと金平糖はトウ(つま先立ち)で踊る所があるが、この教室の公演でトウシューズを使うのは金平糖役の人だけである。それでフランスは普通のバレエシューズで踊れるように振り付けを調整している。この教室では小学生、または身長150cm未満の子はトウシューズ禁止である。龍虎は夏休みの時点で身長140cmくらいだったので、どっちみち禁止であった。
 
つまり少なくともプリマの金平糖を踊らされることは無い!・・・はず!?
 

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ところでバスケット日本女子代表のインフルエンザ騒動の方だが、バスケットチームではバンコクに来たメンバー全員に1日2度の検査を受けさせていたものの、他に発症する者も出ず、関係者は胸をなで下ろした。
 
しかしNTC(ナショナル・トレーニング・センター)ではもっと騒ぎになっていた。バスケット女子で発症者が出たため23日は同時に合宿をしていたあと2つの競技団体の選手の健康診断も行われたのだが、その一方の団体から10人も感染者が見つかったのである。そちらは風邪だろうなどと思って市販薬(ドーピングには引っかからないもの)を飲みながら練習を続けていたという。B型インフルエンザで症状がA型ほど激しくないので、体調の悪いのを我慢していたらしい。
 
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合宿は中止になり、チーム全員を発症の有無と関係無く、近くの病院に移して隔離。使用していた練習場や宿泊していた部屋を徹底的に消毒。もうひとつの競技団体にも2人感染者が見つかり即隔離されたが、そちらは合宿自体は継続した。
 
そういう訳で感染ルートはそちらのチームからという疑いが濃厚であった。そちらの選手の中に、実は横山や羽良口と同じ出身校の選手が複数居て、何度か個室でおしゃべりしていたらしい。その集まりに花園も1度同席していた。
 
なお一時自宅待機していたNTCのスタッフの中には発症者は出ず、そちらは大半が25日には業務に復帰したが、調理関係のスタッフは大事を取って27日からの復帰とした。むろん自宅待機していた間の給料もきちんと支払う。
 
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なお、横山・羽良口・花園の3名は結局10月いっぱい、近くの病院で過ごして完治証明書をもらってから退院した。
 
また捻挫した武藤博美、古傷を痛めた黒江咲子も11月頭には再稼働できる状態になり、Wリーグ(11月8日開幕)には影響が出なかった。
 

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バンコクではタイ・バスケットボール協会が手配してくれていたホテルは2人1室ベースだったのだが、万一にもこれ以上感染者を出してはいけないので、日本バスケットボール協会の負担で近くのホテルに余分に部屋を確保し、スタッフがそちらに泊まる形で1人1室、相互の部屋の訪問禁止というのを23日から25日まで続けたが、発症者は無かった。それで26日からは、2人1室の通常運用に戻した。部屋割りはこうなっている。
 
三木エレン・広川妙子
月野英美・石川美樹
馬田恵子・高梁王子
入野朋美・鶴田早苗
村山千里・佐藤玲央美
湧見絵津子・渡辺純子
 
「今回は部屋割りで全く悩まなかったです」
 
と協会のアシスタントとして同行している事務の坂倉さんが言っていた。確かにごく自然に組み合わせが決まってしまった。
 
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