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■娘たちのドラゴンテイル(8)

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11月10日(日).
 
龍虎は彩佳と一緒に、大宮に出かけ、埼玉県の子供囲碁大会に参加した。これは各地区の大会で上位に入賞した子が集まって開かれるもので、昨年は地区大会で2位になった彩佳が参加し、2回戦で前年優勝した人と当たって敗退している。今年は地区大会で優勝した彩佳と、決勝戦で彩佳と戦って負けて2位になった龍虎が出場した。
 
ちなみに地区大会優勝した彩佳は2級、準優勝の龍虎は3級を認定されている。
 
「今日も振袖着てきたんだね」
「うん。ボクこの振袖好き〜」
 
龍虎は地区大会の時も昨年同様この青い振袖を着ていた。
 
「まあ可愛いからいいんじゃない?」
と付き添いで来た桐絵が言う。
 
ちなみに彩佳も白系統の小振袖である。龍虎は昨年は振袖は問題なかったものの、長襦袢が少しきつく、また肌襦袢は全く入らなかったのだが、あの後、肌襦袢・長襦袢を新調して、この振袖を着るようにした。この振袖自体は身長150cmくらいまでは着られそう、と今年も着付けしてくれた川南が言っていた。龍虎は昨年以来随分練習したので実は自分ひとりででも振袖を着られるようになっているのだが、今日は川南が「私が着付けしてあげるよ」と言ってやってくれたのである。そして川南の運転するマーチに、彩佳・龍虎・桐絵の3人が乗って、この大宮の会場までやってきた。
 
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参加者は大都市からは多人数選抜されているので、全部で28名である。昨年の上位入賞者の中で今年も参加資格がある子(中学生以下)4人がシードされた上で1回戦不戦勝になっている。
 
「やはり中学生はみんな制服だね」
「まあ制服というのは、それでどこに行くのでも通せる便利な服」
 
実際問題として参加者のほとんどは中学生であり、小学生の彩佳と龍虎が1,2位になった大里・児玉地区がむしろ異例である。
 
「うち、中学の制服採寸会の案内が来てたけど」
と桐絵が言う。
「うちも来てた」
と彩佳。
「ボクの所にも来てた」
と龍虎が言うと
 
「男の子も採寸とかするんだっけ?」
と桐絵が言う。
「あれ?要らないんだっけ?」
 
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「男子はだいたい既製服で行ける場合が多い」
「女子の場合は、学校ごとに違うから量産できない。必要な数だけ制作する必要があるからオーダーになってしまう」
 
「ああ、そういうことか」
 
「でも龍の身体に合う学生服の既製服が存在しないかも」
「うっ・・・」
「だから、龍の学生服は採寸して制作してもらわないといけないかもね」
 
などと言いながら、彩佳も桐絵も“別の可能性”を考えていた!
 

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大会は彩佳・龍虎ともに1回戦は突破。2回戦は彩佳は昨年3位だった人が相手だったが、最後まで打って目を数えてみたら、彩佳が半目勝っていた。彩佳も相手の人も「この勝負は最後まで分からなかった」と言っていた。龍虎は劣勢で進んでいたものの、相手が途中でとんでもないポカをやってしまい投了。思いがけず勝ちを拾った。
 
それでふたりともベスト8まで進出。来年のこの大会のシード権を獲得した。ただしシード権があっても地区大会を勝ち抜かなければそれは行使できないし、シード枠は4つまでなので、上位の人で埋まってしまうと使えない。
 
準々決勝では彩佳は相手とかなり激しい戦いをしたものの、僅差で勝利した。ベスト4になったので来年は地区大会さえ勝ち抜けば確実にシード権を行使できる。龍虎は昨年の準優勝者と当たり、あっけなく投了に追い込まれた。それで彩佳は準決勝に進み、龍虎は5-8位決定戦に進む。
 
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準決勝で彩佳は中学2年生の男の子とかなり厳しい戦いをしたが、僅かに届かなかった。それで負けて3位決定戦に進む。龍虎の相手は中学1年生だったが、終始龍虎がリード。相手が投了して5位決定戦に進んだ。
 

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3位決定戦の相手は物凄く強かった。彩佳はあまり手数(てかず)も進まない内に投了。今年の彩佳の成績は埼玉県4位に終わった。
 
龍虎の方も相手が強く、打っている内にどんどん差が広がっていく。このあたりで投了かな、と思っていた時に、相手が大きなくしゃみをして、その拍子にうっかり碁盤上の石を腕で大量に薙ぎ払ってしまった。
 
「え!?」
と龍虎は声を出して絶句する。
 
「済みません!」
と相手は謝ったが、大会スタッフの顔を見る。和服を着た男性が腕を組んで首を横に振る。それで彼は
 
「負けました」
と言って投了した。それで龍虎は思いがけず勝ち星を拾った。
 
そういう訳でこの大会、彩佳は4位、龍虎は5位になったのである。
 
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1〜4位に初段、5〜6位に1級、7〜8位に2級が認定されるということで、彩佳は初段、龍虎は1級に認定され、認定証をもらった。
 
なお、龍虎の1級は5〜8位決定戦に勝った所で確定していたので、くしゃみで1級になった訳ではない。それで、5位はおまけと思うことにした。
 
「でも彩佳、初段ってすごーい!」
「まあこれは認定証だからね。免状を申請しないと初段は名乗れない」
「申請って面倒なの?」
「面倒では無いけどお金が掛かる」
「そういうことか!いくらくらい?」
「確か初段は3万円くらい」
「高い!」
「龍も申請すれば1級の免状もらえるよ。1級は確か5千円くらい」
 
「龍、申請するならお金出すよ」
と川南が言うが
「別に要らなーい」
と龍虎は答えた。
 
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「うん。だから囲碁も将棋も実力は4段あっても免状を申請しない人が物凄く多い」
「なるほどー」
 

同じ11月10日(日).
 
この日、青葉は軽音部の友人・清原空帆と一緒に、鮎川ゆまに会いに行くことにしていた。青葉と空帆は《フライング・ソーバー》というバンドをしているのだが、メインライターである空帆は「編曲がなってない」と他のメンバーから苦情をうけていた。一度プロに見てもらった方がいいという意見も出て、青葉がサックスを習っている鮎川ゆまに1度助言をしてもらえたらと連絡したら「見るくらいいいよー」ということだったので訪問することにしたのである。
 
空帆はこの日東京に出てきて(正確には土曜の晩から夜行バスで出てきて)、千葉から出てきた青葉と都内で落ち合い、ゆまの所に行くことにしていた。
 
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ところが桃香がその話を聞くと
「鮎川ゆま?大ファンだ。ぜひ私も会わせてくれ」
と言うので、結局、朝10時に千葉駅で集合した後、千里が運転するミラに青葉・桃香・彪志と4人乗りして、池袋に向かい空帆と落ち合った。
 
彪志は東京に出てきたついでに本屋さんに行くというので、池袋では彪志をおろして空帆を乗せ、約束していたスタジオに向かう。千里はスタジオ近くの時間貸し駐車場にミラを駐め、4人でスタジオに入った。
 

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鮎川ゆまと千里が顔を合わせたのは、ラッキーブロッサムが解散した2011年12月以来である。ゆまは千里が青葉の姉だったというのに超絶驚いていたし、千里との再会を嬉しがっていた。桃香は千里がゆまの知り合いだったというのは驚いていたが、しっかりサインをもらっていた。
 
しかし、ゆまと千里の会話から、千里が高校時代“髪の長い女子高校生”だったことがバレてしまい『高校生の頃は男子バスケット部で髪も五分刈りだった』という話が、どうも嘘のようだと桃香・青葉に知られ、千里は焦っていた。
 

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ゆまと別れた後、青葉は自分自身がローズ+リリーのケイ(冬子)から頼まれていた曲の譜面とデータを持って、冬子のマンション(この時期は新宿区戸山の賃貸マンション)を訪れる。成り行きで桃香と千里も付いて行くことになる。空帆はどうする?と訊いたら
 
「ローズ+リリーのケイさん・マリさん?行く、行く!」
と言って付いてきた。
 
なお、ケイはこの日の日中は放送局でBH音楽賞の授賞式に出て、政子と一緒に『花園の君』を歌ってきていたのだが、そちらが終わってマンションに戻ってきたところに、ちょうど青葉や千里たちが行くことになった。
 
なおBH音楽賞には実は千里も大西典香の『恋はシュレッダーに掛けて』の作曲者として出席していたのだが!冬子たちは気付かなかったようである。もっとも実際にそちらに出席したのは、千里に扮した《きーちゃん》である。
 
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青葉が持って来た楽曲を冬子に見せると、彼女は「少し修正していい?」と言って直し始めるが、その修正の仕方は青葉だけでなく、空帆にも大いに刺激になったようである。ケイは楽曲をよりヒットしやすいように調整するのが、ひじょうに巧いのである。
 
そこで6人で話していた所に宝珠七星が来訪し、青葉の顔を見たら、スターキッズの制作中のアルバムに入れる曲で青葉にサックスを吹いてと言い出した。
 
「私、素人ですー」
「素人かどうかはCD買ったお客さんに判断してもらえばいいよ。でも今日は何しに出て来たの?」
 
「友人の空帆が書いた楽曲を鮎川ゆま先生に添削してもらいに来たんです」
 
「おお、ゆま! よし、あの子も呼び出そう」
 
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と言って七星はその場で鮎川ゆまに電話を掛けて呼び出した。ゆまと七星は大学の管楽器科の同級生である。
 

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それで結局、桃香・千里・青葉・空帆・ケイ・マリ・七星がスターキッズの制作をしているスタジオに向かい、ゆまもそちらに移動してくることになった。そして、七星・ゆま・青葉のサックス三重奏で『Moon Road』という曲を演奏することになったのである。
 
個別に練習するのに、七星、ゆま、青葉がスタジオ内の別の小ブースに入る。空帆は「鮎川先生の演奏を見たい」と言って、ゆまのブースに入り、政子と桃香はおやつを食べながら、スターキッズの鷹野さんと3人でおしゃべりしていた。近藤さんはスターキッズの他の男性メンバーとビールを飲んでいたが「飲みすぎないように」と七星さんに釘を刺されていた。
 
そして青葉のブースには千里と冬子が入り、主として冬子が青葉のサックス演奏について指導した。
 
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「冬子、サックス吹くの?」
と千里が尋ねた。
 
「私はウィンドシンセを吹くんだよ」
と冬子。
 
「じゃ、もしかしてKARIONの『雪のフーガ』の中の『月に想う』でサックスの三重奏していたののひとりは冬子?」
と千里が訊く。
 
「KARION?」
と冬子は驚いたように声をあげ、青葉の顔を見た。冬子がKARIONのメンバーであることを青葉が千里に教えたのかと思ったのである。青葉が慌てて首を振る。
 
「え?だって、冬子、KARIONの結成以来のメンバーだよね?」
と千里。
「なぜ、それを知っている?」
 
「なぜって、KARIONのCDを聴けば、歌っている声のひとつとピアノ演奏が冬子だと分かるよ。声やピアノの波動が、ローズ+リリーやローズクォーツで歌ったりピアノ弾いたりしているのと同じだもん」
 
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「波動で分かったの〜〜?」
と冬子。
「え?そんなの誰でも分かるよね?」
と千里。
 
青葉は苦笑しながら千里に言った。
「ちー姉、それが波動で分かる人は、日本国内に10人もいないと思うよ」
 

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練習が一段落した所で千里は携帯(Toshiba T008 Red)を開き、1枚の写真を表示させた。
 
「これ高校時代の私。桃香には内緒にしといて」
と言って、青葉と冬子に見せた。
 
「可愛い!」
と冬子。
「女子高生してる!」
と青葉。
 
「ついでにこういう写真もある」
と言って、冬子の女子高制服姿の写真を見せると
 
「ちょっとぉ!」
と冬子が抗議した。青葉はそちらの写真も見て喜んでいた。
 
「どこでこんな写真を調達したの!?」
と冬子。
「秘密。でもこの写真持ってる人はたぶん1000人以上居る」
と千里。
 
「うーん・・・」
と冬子は悩んでいた。
 
 
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