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■娘たちのドラゴンテイル(6)

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「いわゆる恐竜属は卵の化石がたくさん見つかっているから卵生ではないかと言われている。でも『ドラえもんの恐竜』に出てきた、フタバスズキリュウみたいな首長竜は胎生。出産途中の化石が見つかっている」
 
「あらら。だったらフタバスズキリュウの卵って存在しないんですか?」
「そうそう。あと魚竜も胎生。これは今のイルカみたいな形をした動物ね」
「海の生き物だと胎生になるんでしょうかね」
「あるかもね。海中だと妊娠していても比較的動きやすいかも」
 
「だったら、フタバスズキリュウにはおちんちんがあったんでしょうか?」
と彩佳は言い出す。
 
どうも彩佳はあくまで、ちんちんの話をしたいようだ。
 
「うーん。。。おちんちんは化石に残らないかも知れないから、分からないね。鳥類みたいに、おちんちんが無いのに性交して有性生殖する生物もあるし。まあ鳥類は卵生だけどね」
 
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「そうか。おちんちんが無くても性交は可能なんですね」
「そうだね。おちんちんが無くても、精子の出てくる器官をメスのヴァギナに接触させた状態で射精すればメスを妊娠させることは可能よね」
と龍虎母は半分笑いながら答える。
 
龍虎はかなりドキドキしながら、その話を聞いていた。
 
「だったら、龍ちゃんはおちんちんが無くなっても、女の子を妊娠させられるかな?」
と彩佳。
 
「まあ睾丸があればおちんちん無しでも原理的には妊娠させることは可能かもね。龍、いっそおちんちん取っちゃう?」
と母。
 
「どうしよう?」
と龍虎が悩むように言うが、桐絵は
 
「既におちんちんは無くなっている気がするけど」
と言い
 
「確かにそうだ!」
と彩佳にも母にも言われた。
 
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「だから割れ目ちゃんだけ形成すればいいんですよ」
「なるほどー!」
「龍、そういう手術してくれる病院知ってるけど」
「要らない!」
 

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「おちんちん無くなって、割れ目ちゃんができた感想は?」
と淑子は成美に訊いた。
 
「すっごくいい。宏佳も慶古も早くこうなれるといいね」
と成美は言った。
 
「普通の人はこの手術すると1ヶ月くらいは安静にしておかないと辛いらしいよ」
「ボクは割と平気。痛いけど我慢できる範囲だし」
 
実際今、成美はヴァイオリンコンチェルトを通して弾いた所である。淑子はピアノ伴奏をしてあげたのだが、成美が既に結構体力を回復していることを成美本人も母も認識した。ちなみにここは家の地下の防音音楽練習室で、この場にいるのは淑子と成美だけである。
 
「弟たちからお姉ちゃんと呼ばれる感想は?」
「それも凄く心地良い」
 
「でも、なるちゃん、お医者さんの質問には随分嘘答えてたね」
「だって女の子になりたい男の子を装わないと、手術してもらえないもん。心理テストも女の子になりたい男の子の気持ちになって答えた」
 
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「まあいいけどね」
 
「中学はセーラー服で通いたいから、教育委員会の面接とかあったら、自分は女の子だと思っていると答えるつもり」
 
「そうしないとまずいだろうね」
 
と言ってから淑子は尋ねる。
 
「でもあんた戸籍は男のままにしておきたいの?」
 
「うん。お医者さんに書いてもらった診断書出せば法的にも女の子になれるんだろうけど、ボク、基本は男の子だし。将来可能なら女の子と結婚するかも知れないから取り敢えず戸籍は男のままでいい。そのために精液も冷凍保存したんだもん。もし戸籍上も女になりたくなったら、あらためてその時点で診断書を提出して性別変更するよ」
 
「そのあたりが私も完全にはあんたを理解しきれない」
「ボクはストレートだから」
 
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淑子はその“ストレート”の意味を判断しかねた。
 
「ねえ。ここだけの話にするから、正直に答えて。あんた、女の子の裸とか見て欲情する?」
 
「それはしないよ。ボクは男の子の裸にも女の子の裸にも反応しない。物理的な刺激以外では興奮しないんだよ。だから妄想逝きができないんだよね」
 
「・・・だったら、いいか」
 
成美は学校ではふだんも女子と一緒に着換えたりしているようだが、それはひょっとして羊の群れに狼を放っているのではと淑子は実は心配していた。しかし本人の弁が正しければ、それは大丈夫のようである。ともかくも今回の手術で「加害者」にはなれなくなったし、と淑子は考えた。
 

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ところで11月3-4日には、日本の広島市の広島県立総合体育館(グリーンアリーナ:ウィンターカップをした所)で、今年の全日本社会人バスケットボール選手権が行われていた。
 
お正月のオールジャパンに出場するチームを決める大事な大会なのだが、これに参加しているジョイフルゴールドの玲央美と王子、山形D銀行の鶴田早苗はこの大会の1日目(11月3日)は、まだタイでアジア選手権の決勝戦をしていたので、参加できなかった。1日目の結果はこのようになっている。
 
ドリームキャッスル×−○ジョイフルゴールド
千女会×−○ローキューツ
東女会×−○山形D銀行
カステラズ×−○クレンズ
 
1日目は日本代表組不在のまま戦ったジョイフルゴールドと山形D銀行だが、2日目の準決勝・決勝はそういう訳にはいかない。それで日本代表組は祝勝会の途中で抜け出して、このような連絡で広島に急行することにしたのである。
 
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BKK 23:15(TG622) 6:25KIX
関空からバイク輸送 7:00-8:00 新大阪駅
新大阪8:21-9:42広島
 
関空から新大阪までの連絡については、3人は財布やパスポートなどを入れた小さなバッグ以外、荷物を持たないことにした。使い慣れたバッシュや換えの下着など、どうしても必要なものは前日にバスケ協会のスタッフが予め運んでおく。他の荷物は同じ飛行機に乗った別の協会スタッフが運ぶ(彼らは結局お昼すぎ広島に到着した)。一方、協会からは文部科学省を通して関空側にこの3人の入国手続きを迅速に取り扱ってもらえるようお願いした。また機内でも優先的に扱ってもらえるように3人はビジネスクラスに乗せる。
 
飛行機の遅着などの恐れもあったのだが、運良くこの便は定刻より少し早く到着し、3人が到着ゲートを出ることができたのは6:45頃であった。そこから手配していたバイク3台のタンデムシートに乗り、新大阪まで走る。実際に新大阪に到着したのは7:35頃で、待機していた協会スタッフから切符を受け取り、すぐ新幹線に飛び乗る。それで3人は7:53の《みずほ》に間に合ってしまった。これが広島駅に9:14に到着。そこから協会が手配していた車で9:30頃に会場に到着した。
 
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事前荷物運び係、同時荷物運び係2人、バイク3台、切符準備係(広島駅まで同行)、広島駅から会場までの車の運転手、計8人のエージェント?によるスペシャル・ミッションであった。
 

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この日、本来の予定は9:30から男女の準決勝4試合が行われることになっていたのだが、この大会に参加予定の選手の中から3人がアジア選手権に出ることになったことが決まった時点で、女子の準決勝は1時間程度遅らせることをバスケット協会とクラブ連盟・実業団連盟・教員連盟は合意していた。
 
それで玲央美たち3人は会場に到着して30分ほど休んでから試合に出ることができたのである。玲央美たちの到着を待ってからこの後のスケジュールは次のようにすることが発表された。つまり30分遅れで始めるが交流戦は最悪途中で打ち切っても3位決定戦を13時から始める。そしてその後は10分遅れにするのである。これはあまり時間を遅らせるとその日の内に地元に帰られない人が出るからである。
 
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9:30 男子準決勝:予定通り開始
9:30 女子準決勝→10:00
11:10 男子交流戦→準決勝が終り次第 (12:50強制打切り)
12:50 3位決定戦.女子交流戦→13:00
14:40 男女決勝戦→14:50
16:30 表彰式→16:40
 

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準決勝で激突してしまったジョイフルゴールドとローキューツだが、アジア選手権の興奮がまだ冷めてない王子が大活躍し、ローキューツにまさかの20点差で勝利した。早苗が入った山形D銀行もクレンズを粉砕。またまたこの2チームで決勝戦が争われることになった。
 
そして山形D銀行は2年連続のオールジャパン出場、ジョイフルゴールドは2011年から4年連続のオールジャパン出場が決まった。
 
王子や玲央美は昼食も取らずに仮眠して決勝戦に備えた。
 
そして14:50からの決勝戦では王子も玲央美もフル回転で30点差でジョイフルゴールドが勝利。4年連続の優勝を飾った。
 
玲央美は「さすがに疲れた。祝勝会パス」と言ってホテルを取ってもらい熟睡した。王子は元気いっぱいで祝勝会でも、よく食べ、よく飲み、よくしゃべっていた。しかしさすがに祝勝会が終わった後、緊張の糸が切れたのか座り込んでいたので、「君も広島に1泊して帰りなさい」と言ってホテルに放り込まれた。チームのマネージャーさんが1人王子のために残り、他のメンバー・スタッフは19:58広島発の最終新幹線で東京に戻った。
 
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玲央美は翌朝ちゃんと起きて午前中の新幹線で帰京したが、王子は夕方まで丸一日寝ていたらしい!
 

さてバンコクに居た日本代表であるが、表彰式の後は、駐バンコク日本大使に招かれてバンコク市内の料理店でお祝いの食事会に出席。大使から全員に記念品が渡された。
 
「わあ、きれい!」
 
大使が用意してくれたのは、各メンバーの名前のイニシャルが入ったシルバーのペンダントトップである。
 
入野朋美はT、鶴田早苗はS、三木エレンはE、千里はC、広川妙子はT、佐藤玲央美はL、湧見絵津子はE、高梁王子はK、月野英美はE、渡辺純子はJ、馬田恵子はK、石川美樹はMであった。
 
「佐藤さんはRかなと思ったんだけど、スタッフの人に訊いたらサインではLeomi Satoとサインしてますよと聞いたので」
「はい。私のサインはライオンの Leo に掛けているんですよ」
 
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「高梁さんはうっかりOを頼みそうになったけど、きみこちゃんですよと言われたので」
「《おうじ》に改名してもいいかもね」
「ついでに男の子になる?」
「ついでに性転換手術してから帰国するとか?」
 
「性転換もいいなあ」
などと王子が言うものの
 
「性転換は勘弁して」
と言ったのは高居さんであった。
 
むろん王子にはFTMなどの傾向は無く(レスビアンはやや怪しい)、男の子になりたいというのは、普通の女子が「男だったら良かったのに」と言う程度のものである。
 

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この祝勝会を千里・玲央美・王子・早苗の4人は途中で抜けさせてもらった。それ以外の8人と多くのスタッフは、翌11月4日に
 
BKK 10:15-17:55 HND
 
という便で帰国。夕方から記者会見、協会会長への挨拶をして、そのまま解散になった。
 
千里は、すぐにスペインに戻らなければならないので、この連絡で帰西した。
 
BKK 11/3 23:40 (TG920) 5:30 FRA 11'50
FRA 11/4 7:10 (LH1124) 9:05 BCN 10:45-12:10 GRX
 
(FRA:Frankfurt am Main, BCN:Barcelona)
 
つまり11月4日のお昼にはグラナダに到着したので、千里はアパートに寄って練習着に着換え、自転車でトップチームの練習場に行き、午後の練習に参加した。千里が練習を休んだのは結局、10月22日から11月3日までの13日間である。
 
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「オラ(Hola)!」
「オラ(Hola)!」
と挨拶を交わす。
 
「アジア選手権どうだった?」
「優勝したよ〜」
「おお、すごい」
「これ金メダル」
「おお、金メダルは素敵だ」
 
「今回は中国調子悪かったんだよね〜」
とシンユウが言っている。彼女は大会経過をフォローしていたのだろう。
 
「うん。アジアでは中国が絶対的に強いから、うちは中国の調子が悪い時を狙って勝つ」
「なるほどー。スペインがアメリカの調子の悪いとき狙って優勝するようなものか」
「ああ、それそれ」
 
「レクエルド(recuerdo)〜」
と言っておみやげのタイのお菓子・カノムチャンを出すと、一瞬で無くなった!
 
「おいしいね、これ」
「色もきれーい」
「へー。タイのお菓子なんだ」
「これはバンコクのデパートで買ったものだけど、道端でもよく売ってる」
「ほほお」
 
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そういう訳で、千里はこの日普段通りにたっぷり汗を流していた。
 
「コラ、今日は調子いいね。スペインに戻ってから1日休んだ?」
「ううん。バンコクを昨夜0時の飛行機に乗って今日のお昼にグラナダに着いた」
 
メンバーが顔を見合わせている。
 
「日本人働き過ぎ!」
と言われて、千里はタジタジとなる。
 
「コラ、君は今日はもうあがりなさい」
「え〜? まだ行けますよ」
「いや、疲れが噴出してバッタリ倒れられたら困る。だから今日は夜の練習は休み」
「そうですか?では休みまーす」
 
スペインやイタリアはたっぷり休む文化である。それで千里もこの日は遠慮無く夕方であがらせてもらい、グラナダ市内のアパートで午前2時(日本時間10時)頃までぐっすりと寝てから、作曲作業をした。
 
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作曲は昼間より夜の方がはかどるので、こういう日はグラナダのアパートで曲を書くことが多い。
 

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