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■娘たちの世界挑戦(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-02-02
 
2011年7月2日、千里たちU21代表チームは、世界選手権が行われるロサンゼルスに移動した。サンフランシスコとロサンゼルスは同じカリフォルニア州内でもあるし、近いように思う人もあるかも知れないが、直線距離で500kmあり、飛行機で1時間半掛かる。東京から岡山くらいまでの距離になる。
 
ちなみにカリフォルニア州の州都はサンフランシスコでもロサンゼルスでもなくサクラメントである!
 
カリフォルニア州の面積は40万平方キロで日本の面積(38万平方キロ)より少しだけ広い。北西端から南東端までの距離は1300kmで、青森県の北東端から山口県の西端までの距離に近い。
 
カリフォルニアを本州にたとえると、サンフランシスコは栃木県の那須付近、ロサンゼルスはやはり岡山付近に相当する。
 
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7月3日は会場となるStaples Center Arenaで開会式が行われた。参加する12チームの選手・スタッフが入場して整列。これには斉江・桂華・星乃もマネージャーの名目で色違いのユニフォームを着て並んだ。
 
前回の大会(2007)で優勝したアメリカから優勝カップの返還が行われる。FIBA会長のイヴァン・メニーニ(Yvan Mainini,フランス)、事務総長のパトリック・バウマン(Patrick Baumann,スイス)からの挨拶がある。そして選手代表でエジプトチームのキャプテンが選手宣誓をした。
 
そのあと選手は退場するが、アリーナでは、白いワンピース型の衣裳をつけた多数の女性たちが入り、アヴリル・ラヴィーンの『Girlfriend』のメロディーに乗せてダンス・パフォーマンスを見せ、観客の目を楽しませてくれた、
 
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「あの衣裳を見た時は、もっと華麗なものを想像したのだが・・・」
「いや、こういう元気なのがアメリカっぽい」
「見てると、白人、黒人、東洋系と混じってるね」
「アメリカはそのあたり、混ぜないと叩かれるから」
「男の娘も混じっていたりして」
 
「あ、それは混じっているとアメリカチームに入った友人から聞いた」
と斉江が言う。
 
「マジ?」
「途中で3人飛び出して前の方で踊ったでしょ?あの左側の子が男の娘らしいよ」
「へー!」
 

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開会式が終わってぞろぞろと会場から出ようとしていた所で、アメリカチームのユニフォームを付けた身長170cmくらいの女性がこちらに何気なく視線を向けると急に笑顔になって寄ってきた。
 
「ナリエ、ロースターに入った?」
と英語で話しかけてくる。
 
「ううん。みんな強いんだもん」
と斉江は答える。
 
「斉江がロースターに入れないなんて、日本チームかなり強いんだね」
「まあアメリカの足元にも及ばないけどね(We can't hold a candle to US)」
 
「ガル、その人を紹介してよ」
と江美子が言う。
 
「私の大学のチームメイトで、アメリカチームのシューティングガード、シャーロット・フィオリーナ(Charlotte Fiorina)さんです」
 
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「おお、凄い!」
「正シューティングガードだよね?」
「そうそう。2年前はサブだったけど、この2年で追い越した」
「頑張ったね〜!」
 
彼女は千里に目をやった。
 
「Ms Murayama, 3 point world champion of Under 19, two years ago?」
「Yes. Nice to meet you, Ms Fiorina」
と千里も笑顔で答える。取り敢えず軽く握手する。
 
「Ms Murayama, Let's compete with 3 point goals」
とフィオリーナは言った。
 
「Amount of goals? success rate?」
「Of course, amount of goals」
「OK,OK. Let's fight」
 
それで千里とフィオリーナは強い握力で握手した。
 
「なんかそれ凄い握力で握ってない?」
と彰恵が少し呆れ気味に言う。
 
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「まあシューターの握力は凄い」
と千里は言う。フィオリーナも笑っていた。
 

今回の参加チームは下記で、明日から5日間でABふたつの組に別れて予選リーグをおこなう。
 
A:USA(アメリカ) CAN(カナダ) ESP(スペイン) FRA(フランス) CHN(中国) EGY(エジプト)
 
B:BRA(ブラジル) RUS(ロシア) LVA(ラトビア) UKR(ウクライナ) JPN(日本) AUS(オーストラリア)
 
これらのチームは下記の予選を勝ち抜いてここに来た。
 
U20-Europe 2010 RUS ESP LVA FRA UKR U20-Asia 2010 JPN CHN
U20-Oceania 2010 AUS
U20-Africa 2010 EGY
U20-America 2010 USA BRA CAN
 
U20ヨーロッパ選手権だけは今後も続いていくようであるが、他の地域では昨年のU20が最後の大会になった。そしてU21世界選手権もこれが最後である。これまではアメリカが第1回大会(2003)、第2回大会(2007)を連覇している。果たしてアメリカが3連覇(=全大会制覇)を成し遂げるか、どこかがそれを阻止するかが、興味ある所だ。
 
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日本は2003年の大会には出場できなかった(中国と韓国が参加した)。前回は出場したものの予選リーグを突破できず9-12位決定戦に回って10位であった。この成績を上回るのが目標とされている。
 

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U21チームはこの日は開会式の後、オフとなった。
 
エステで身体を揉みほぐしてもらい、ロサンゼルス市内には結構ある韓国式スパに入って、身体を温めた。
 
例によって、入場する時に日本語ができる受付の韓国人女性に
 
「ちょっと待って、あんたたち、男湯はこっちだよ」
 
と数人言われた子がいるのは、いつものことである!
 
「性別間違われるのはもう全然気にしない」
などと王子が言っているが
「むしろ女と思われたことがない」
とサクラは言っている。
 
「でもこないだ変な夢見たんですよ」
と王子が言う。
 
「朝起きてトイレに行ったら、ちんちんが付いてたんですよ。おっこれ便利と思って、憧れの立ちションをして、その後それで遊んでいたら、母ちゃんに見つかって『とうとうちんちん生えて来たのか。でもあんた女子代表にならないといけないから、切っちゃうよ』と言われて、園芸用のハサミでちょきんと切られちゃったんですよね。せっかくちんちんが出来たのに〜!と思いました」
 
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「園芸用のハサミで切れるもん?」
「無理っぽい気がする」
「裁縫用の裁ちばさみなら割といけるかも」
「たぶん料理用のハサミの方が切れる」
「確かに肉を切るハサミだもんね〜」
「切った“お肉”はどうするわけ?」
「やはり焼肉にして食べるのでは?」
「私は唐揚げがいいな」
「形状が形状だし、焼いてホットドッグの具にするのは?」
「圧力鍋で煮込んでおでんに入れてもいいかも」
 
何か凄いこと言っている!?
 
「だけどあれ美味しいの?」
「海綿体組織だからなあ。あまり美味しいものではない気がする」
 
「ホルモン焼きでは豚のペニスも食べるね」
「ペニスは“きんつる”、ヴァギナは“こみち”」
 
「やはり食べられるものなのか」
「人間のおちんちんが美味しいかどうかは分からん」
「舐める分にはちょっと苦い感じだけどね。もっとも味より臭いがあるから」
と千里が言うと
 
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「唐突におとなの話が出てきた!」
という声があがるが
 
「舐めるって、サンさん、あんなの舐めたことあるんですか?」
などと王子が訊く。
 
どうもこの子はその方面についてはウブな様子である。
 
江美子がトントンと王子の肩を叩き
「君には後でよく教えてあげるよ」
と言った。
 

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7月4日からは試合が始まる。最初は予選リーグだが、日本はB組で、日程はこのようになっている。
 
7.4 ブラジル
7.5 ロシア
7.6 ラトビア
7.7 ウクライナ
7.8 オーストラリア
 
4日の朝、朝食後に開いたミーティングで、高田コーチは言った。
 
「今回、バスケ協会からは前回の10位を上回る成績をあげて欲しいと言われている。でも僕は優勝しようと思うんだけど、どうだろう?」
 
選手全員から拍手がある。なかなか良い反応である。
 
「そのためには、やはり予選で全勝しよう。すると決勝トーナメントの準々決勝はA組4位とだから、準決勝に勝ち上がりやすくなる。その後はもう全力を出して最後は運の勝負」
と高田コーチは言う。
 
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「A組はどこどこが上がってきますかね?」
「アメリカの1位はたぶん動かない。2-3位がフランスとスペインでこの順序は分からない。4位はカナダが濃厚だと思うけど、中国が頑張るかも知れない」
 
U19の時は中国は一次リーグを3位通過、二次リーグ最下位で決勝トーナメントに進出できなかった。日本は一次リーグを2位通過し、二次リーグ4位で決勝トーナメントに進出するも、準々決勝でE組1位のオーストラリアに敗れて5-8位決定戦に回った。前回は二次リーグでアメリカと同じ組だったことから、決勝トーナメントでアメリカとぶつからずに済んだのである。
 
「まあA組の国はこちらはロシア、オーストラリア、ブラジル、ラトビアあたりが上がってくるだろうとか言っているだろうね」
 
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今日の対戦相手のブラジルについて戦力分析が説明される。
 
「このチームはあまり専門化が行われていない感じで、登録されたポジションは、ガード3人、ガードフォワード1人、フォワード4人、センター4人ということになっている」
 
G 7.ベニテス170, 10.アルベス165, 13.ドゥリウス172
GF 8.リマ175
F 5.コスタ189, 9.ラモナ185, 12.ペレイラ183, 14.カロリーナ179, C 4.カルネイロ193, 6.フランシスコ196, 11.ピント191, 15.ベルト190
 
「センターはみんな背が高いですね」
「うん。全員190cmを越えている」
 
彰恵が思わず天を扇いでいる。
 
「フォワードがだいたい180cm台、ガードもだいたい170cm台なんだけど、1人アルベスだけが165cm」
 
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「その背丈で代表になっているということは物凄くうまいんですね?」
「スピードがあるし、フットワークがある。彼女を止められるかどうかが、勝敗の行方を左右すると思う」
と高田コーチが言うと、朋美と早苗の顔が引き締まる。
 
「しかし南米のスポーツ全般に言えることだが、概して身体能力の高い選手が多い。ビデオを見たけどやはり個人技で得点するパターンが多い。それを如何にしてチームプレイの勝負に持ち込むかが鍵だと思う」
 
と高田コーチは言った。
 

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この日の第1試合(9:00)、ラトビアとウクライナの試合は72-70という接戦でラトビアが勝っていた。
 
11:00。日本とブラジルの試合が始まる。観客自体は少ないものの、双方に結構な応援団が来ている。カリフォルニアは日本人や日系人も多いので、その人たちが応援団を組織してくれたようだ。大きな日章旗が振られ、チアリーダーも並んでエールを送ってくれていた。
 
ここは定員18,000人の大会場である。NBAのロサンゼルス・レイカーズ、ロサンゼルス・クリッパーズ、WNBAのロサンゼルス・スパークスがここを本拠地にしている。スパークスはレイカーズの姉妹チームである。
 
両軍のスターターはこのようであった。
JPN 4.朋美/7.千里/6.玲央美/9.王子/8.華香
BRA 13.ドゥリウス/9.ラモナ/12.ペレイラ/14.カロリーナ/11.ピント
 
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向こうはどうも控え組で様子を見に来た感じであった。
 
しかしこれはチャンスである。
 
ティップオフはブラジルが191cmのピント、日本は182cmの華香で争うが、華香は9cmの身長差があるにも関わらず絶妙なタイミングで飛んで、わずかな差でボールをこちらにタップした。
 
早苗が取って攻め上がる。相手はいかにも強そうに見える王子にふたり付く。それで千里が放置される。早苗が千里にパスする。千里がスリーを難無く決めて0-3.
 
日本が先取点をあげた。
 

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この回は立ち上がりから日本が猛攻を見せ、一時は4-12などという凄いスコアになったのだが、さすがに向こうは選手を替えてくる。しかしこちらは手を緩めない。いきなり千里が2本もスリーを決めたので、ガードをもう1人入れて背番号7のベニテスが千里に付いたのだが、止めきれない。ガードフォワードの背番号8リマに替えるが、それでも止めきれない。そして千里に警戒しすぎると、手薄になった王子がブラジルの長身のセンターやフォワードを蹴散らしてゴールを奪う。この2人にばかり気を遣いすぎると、すかさず玲央美が得点を奪う。
 
玲央美は近くからでも遠くからでも点数を取るので、極めて守りにくい。
 
そういう訳でこの第1ピリオドは13-24とダブルスコアに近い点差で日本がリードしたのであった。
 
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しかしさすがに向こうも第2ピリオド以降は反撃してくる。
 
第2ピリオドでは恐らくベストメンバーと思われる陣営を投入。王子にも厳しいチェックで対抗してくるので、王子が思わず激高しそうになって、慌てて近くにいた彰恵がなだめる場面もあった。
 
アルベスはビデオでもある程度プレイを見ていたのだが、実際にコート上で対決すると、かなりすばしっこい。このピリオドで対決した早苗が完璧に競り負けていた。
 
それで第2ピリオドはブラジルがリードを奪い、このピリオドを23-17として、前半合計36-41と5点差に迫った。
 

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