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■娘たちの世界挑戦(11)

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7月12日の朝、青葉は起きた時に何か違和感を感じた。それで朝は慌ただしいので、学校から帰ってみてからタックを解除し、あのあたりを指で触って調べてみた。そして結論に達した。
 
睾丸が消失している!
 
青葉の睾丸は2007-2008年に掛けて機能停止させる魔法を掛け、2008年秋頃にほぼ機能停止。2008年12月頃から女性ホルモンの方が強く出るようになっていた。魔術的に言うと、青葉が空想の力で作り上げた体内の“仮想卵巣”が女性ホルモンを分泌しているのだが、物理的には体内で微量に生産された男性ホルモンがアロマターゼの作用により積極的に女性ホルモンに転換されているのである。アロマターゼは脂肪に多く存在するので、青葉はその時期敢えて身体に脂肪を付けるように調整していた。身体に脂肪を付けることで青葉はその時期、女性的な丸みを帯びた体型に変化して行っていた。
 
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青葉の睾丸は恐らく2009年春頃には完全機能停止している。普通の男の子であれば小学校高学年から高校生くらいに掛けて睾丸はどんどん大きくなっていくのだが、青葉の睾丸は逆にどんどん小さくなって行った。この春に富山県内の大学病院で診察された時も、
 
「凄く小さい。無いかと思った」
と言われたのだが、それがとうとう完全消失してしまったのではないかと思われた。
 
青葉は現在受診しているGID外来に電話をしてみた。すると鞠村医師が直接電話に出てくれた。
 
「とうとう消失したか」
「サッカー選手で、睾丸を負傷した選手が、その睾丸が身体に吸収されて消失してしまった事例があるとおっしゃってましたね」
 
「そうそう。機能停止してしまった器官は身体が吸収してしまうことがあるんだよ。そのままにしておくとよくないから、身体を守るための仕組みなんだろうね。アポトーシス(細胞自死)の一種。建物でも、空き家にはよくないものが住み着きやすくて保安上危険だから取り壊してしまうでしょ?それと同じだよ」
 
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確かに空き家・空き部屋には魑魅魍魎とかが住み着きやすいよな、と青葉は思った。
 
アポトーシスは「プログラムされた死」とも言われる。オタマジャクシがカエルになる時に、しっぽが消失するのもアポトーシスである。また体内で発生したガン細胞のほとんどはアポトーシスを強制的に引き起こされて排除される。青葉は医学や薬学に関する知識は物凄いので、自分のおちんちんもアポトーシスで消滅したりしないかな、とよく思っていた。
 
「今度の診察は7月14日だよね?その時にMRI取って確認しよう」
「はい、お願いします」
 

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7月13日(水)。ロサンゼルス。午前中は、この10日間のU21世界選手権の間、様々な支援活動や応援をしてくれた日本人・日系人のグループと市内の体育館で交歓をした。
 
たくさんサインも書いたが、千里の美しい鳥のようなサイン、玲央美の格好いい獅子のようなサインは好評だった。王子も昨夜一晩絵津子や純子と一緒に考えたという新サインを書いていた。字が下手でも目立たない!王冠のようなデザインのサインである。もっとも適当な性格なので、王冠のギザギザ(ハーフアーチ)が書く度に4本だったり5本だったり6本だったり、バラバラになっていたようである。
 
11時にロサンゼルス空港(LAX)に入り、出国手続きをした上で昼食を取る。
 
ここで千里たち日本に戻るメンバーはこの便に乗る。
 
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LAX 7/13 13:30 (JL61/AA5829 773 11h20m) 7/14 16:50 NRT
 
一方、王子・純子・絵津子の3人はバスケット協会の人が付き添ってこちらの便に乗る。
 
LAX 7/13 13:45 (AA7675/JL7620 B787 8h20m) 0:05 LIM (機内待機)
LIM 7/14 1:35 (LA601 B787 3h15m) 5:50 SCL
SCL 7/14 7:40 (LA257 A320 1h45m) 9:25 PMC
 
LAX:ロサンゼルス国際空港 UTC-7
LIM:リマのホルヘ・チャベス国際空港(ペルー)UTC-5
SCL:サンチャゴ国際空港(チリ)UTC-4
PMC:プエルトモントのエルテプアル空港(チリ)UTC-4
 
チリはUTC-4, ロサンゼルスはUTC-7 なので出発時刻は日本時刻の7/14 5:45, 到着時刻は日本時刻の7/14 22:25になり、これは16h40mの旅である。
 
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ロサンゼルスからリマに飛んだ飛行機がそのままサンチャゴ行きになるので、サンチャゴまで行く人は降りずに機内で待機していればよいことになっている。(実際には3人は寝ていたようである)
 
王子たち3人は7月14日の朝プエルトモントに到着したが翌日からもうU19の試合が始まるので、到着した日は練習免除でひたすら寝ておくように言われていた。
 

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一方千里たちは7月14日の夕方に成田に戻ってきた。
 
そのまま都内のホテルに行き、記者会見をした。主将の朋美、ベスト5となった千里と玲央美がメッセージを述べた。更にそのあと全員ひとことずつ発言した。なお、チリに飛んだ王子・純子・絵津子の3人のメッセージは予め作文させておいたものをキャプテンの朋美が代読した。
 
ホテルにはバスケ協会の麻生太郎会長も来てくれていて、記者会見の後、面会。全員と握手し、U19世界選手権で7位になった時ももらったオパールのブローチと金一封を頂いた。前回はこのブローチには白いリボンが付いていたのだが、今回は茜色のリボンである。
 
「金メダルを取ったら、金色のリボン付けるから」
と会長は言っていた。
 
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この日はそのまま都内のホテルに泊まることになる。夕食は麻生会長の主宰でディナーとなり、美味しい御馳走が振る舞われた。
 
「いちばん食欲のある3人が来てないな」
と江美子が言う。
 
「その3人はあらためてディナーに招待しましょう」
と会長はニコニコ顔で言っていた。
 

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翌15日(金)は午前中に、文部科学省、総理官邸に行き、高木文部科学大臣、菅総理に3位入賞の報告をした。それでお昼はバスケ協会持ちで和食の店で御飯を食べたあとで解散となった。
 
この後、U24のメンバー(玲央美など)は23日から合宿に入り、7.31-8.04に台湾で行われるウィリアム・ジョーンズ・カップに参加する。
 
また7月26日にはA代表の12名が発表され27日から8月3日まで第六次のA代表合宿が行われる。
 
「千里はこの後、どうすんの?」
と玲央美に訊かれる。
 
「うん。ちょっと大阪に行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい、行ってらっしゃい」
と玲央美は笑顔で送り出してくれた。
 

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ところで平良真紗は千里たちより少し遅い便に乗り、14日の19:15に成田に戻ってきた。その日は都内にホテルに泊まり、翌日夕方の寝台特急・サンライズ出雲で米子まで戻り、その後、迎えに来てくれた真紗の父の車で羽合(はわい)の実家に戻った。
 
「お疲れ様。どうだった?」
と父は訊いた。
「うん。生まれ変わった気分」
と真紗は答える。
 
「まあ本当に女に生まれ変わったんだからな。俺も手術受けた時は感動したもん」
と父。
「あれは感動だよね」
と真紗は言った。
 
「あ、そうそう。これ学校の先生が持って来てくれたぞ。夏休みの宿題」
「わぁ。頑張らなくちゃ」
 
「お姉ちゃん、お帰り」
と友紀が言う。
 
「ただいま」
「ディズニーランド行った?」
「無理〜。とてもそんな体力無かった。でもバスケットの試合を見たよ」
 
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「へー。向こうはバスケットも本場だもんね。NBA?」
 
凄く可愛いスカートを穿いた、まだ中学生の友紀は訊く。
 
「いや見たのは何とか選手権の日本対オーストラリア」
「アメリカじゃ無いんだ!」
「でもサインもらったよ」
と言って、千里からもらったサインを見せる。
 
「何か美しい!」
 

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千里は、玲央美と別れた後、新幹線で新大阪まで行き、御堂筋線(北大阪急行)で千里中央まで行く。まだ貴司は帰っていないので荷物を置いてから買物に行き、牛肉、野菜、ビール、切れていたお米などを買ってくる。
 
そしてお米を研いでタイマーをセットし、ビーフカレーも野菜やお肉を煮込んでこちらもIHヒーターのタイマーをセットしてから、シャワーを浴びて“裸で”ベッドに潜り込み寝ていたらドアの開く音がする。それで目を覚ます。
 
「千里?」
という声がする。鍋の匂いがしたので気付いたのだろう。
 
「おかえり、マイハニー。私はここよ」
と声を掛ける。
 
「千里?」
と言って、寝室に入ってくる。
 
千里はベッドから抜け出して、裸のまま貴司に抱きついた。
 
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強いキスをする。
 
「こないだは御免ね、御免ね」
と謝る。
 
「誤解が解ければいいんだよ」
と貴司は再度キスして言う。
 
「取り敢えず脱がせちゃおう」
と言って貴司の服を脱がせようとするが
 
「待って。自分で服を脱いでシャワーを浴びてくる」
「うん」
 

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それで千里が待っていると3分ほどで貴司は戻ってきた。多少濡れているが気がせっているからしっかりと拭かなかったのだろう。しかしあの部分は準備万端のようである。
 
「そうだ。お詫びに駅弁してあげようか?」
「え!? 悪いけど、練習の後で疲れているから、そういうハードなのは体力が・・・」
「違うよ。私が抱き抱えてあげるから」
「え〜〜〜!?」
 
それで千里は貴司に両腕を千里の首の後ろに回すように言い、貴司の身体をぐいと抱き抱えると、ちょうどあの付近とあの付近がミートするような位置に調整する。男女の“取り付け場所”が違うので腰を突き出す感じにする必要があり、結構苦しい体勢だ。
 
「ひゃー!」
「行ける?」
「やってみる」
 
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と言って貴司はそっと入れて来た。千里の方は貴司がシャワーを浴びている間にセルフサービスで昂揚させておいたので、もう充分濡れて臨戦態勢である。貴司がそっと入れてくる。それで貴司は身体をゆするようにしてやってくれた。興奮度が高かったせいだろう。貴司はすぐに逝ってしまった。
 
千里が貴司を下に降ろす。
 
「どうだった?」
「あまり楽しくない気がする」
「私もー!」
「一休みしてから普通にやろうよ」
「OKOK」
 

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それでカレーの鍋を再加熱し、カレールーを入れる。ルーは「こくまろ」と「熟カレー」を混ぜて入れる。カレーは“美味しいもの”を2種類混ぜるとより美味しくなるのである。
 
弱火で煮込んでいる間に取り敢えず服を着て!ビールの缶を開ける。ヱビスビールであるが
 
「こないだはこれぶつけちゃって御免ね」
と再度謝る。
 
「ううん。あれはこちらも虚を突かれたから気絶しちゃって」
「気絶しちゃったの!?ほんとに御免ね」
 
ともかくも乾杯して1人1缶ずつ飲んだ
 
やがてカレーのタイマーが鳴るのでごはんを盛り、カレーを掛けて食べる。
 
「あれ?この皿は?」
「うん。ロサンゼルスで買ってきた」
「可愛いね!」
 

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御飯を食べてお茶を飲んでひといき付いた後は、どちらからともなく誘い合い、寝室に行く。そして普通のやり方で久々の愛の確認をした。今夜は1月に会った時以来半年ぶりになったので、明け方近くまでやっていた。
 
16-17日の土日も、千里は貴司と一緒に過ごし、束の間の“夫婦生活”を楽しんだ。この2日間はあまりお出かけもせずに、ずっと家の中に居た。
 
「しかし世界選手権の銅メダル凄いなあ」
と言って貴司は千里が持って来た銅メダルを触っている。
 
「まあアンダーエイジだけどね」
「でも去年U17でも世界5位になったし、女子はきっと2016年のリオ・オリンピックあたりではメダル取るかも知れないよ」
 
「そうなるといいね。貴司もプロに行きなよ。そしたら貴司の力なら日本代表候補くらいまで行く可能性あるよ」
「ちょっと無理だと思うけどなあ」
 
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チリのプエルトモント( Puerto Montt)で行われているU19女子世界選手権は、15-17日の3日間、ABCD 4つの組に別れて予選一次リーグが行われて、各組で次のような結果になった。
 
A 1.Canada 2.Italy 3.China 4.Egypt B 1.USA 2.Japan 3.Russia 4.Argentina C 1.Australia 2.France 3.Chile 4.Nigeria D 1.Brazil 2.Spain 3.Chinese Taipei 4.Slovenia
 
日本はアメリカには負けたものの、ロシアを破る殊勲の星を挙げ、アルゼンチンにも勝ってリーグ2位で2次リーグに進出した。
 
ついでEF 2つの組に別れて18-20日の3日間おこなわれた2次リーグではイタリアには勝ったものの、中国・カナダに敗れてしまった。しかし1次リーグ・2次リーグの通算3勝3敗、リーグ3位で決勝トーナメントに進出した。
 
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E 1.Canada 2.USA 3.Japan 4.Russia 5.Italy 6.China
F 1.Brazil 2.Australia 3.France 4.Spain 5.Chines Taipei 6.Chile
 

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娘たちの世界挑戦(11)

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