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■娘たち・各々の出発(12)

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留実子はU19世界選手権の時はサクラが直前まで見つからなかったため、代わりに頼むと言われ、本人もその気になっていた。留実子は貧乏でパスポートを作るお金もないので、それを高田コーチが個人的に出してあげた。
 
しかし高田は代表発表の前日にとうとうサクラを見つけることができた。見つけたのは実は同じく補欠候補者であった海島斉江である。高田はサクラを説得して代表入りを承諾させた。それで高田は留実子に平謝りすることになる。留実子は「いやサクラが見つかって良かったです。僕は代表なんてガラじゃないし」と言った。
 
ところがそのサクラがタイに出発する直前になって「自信が無い」と言って、留実子に代表を代わってくれないかなどと言い出した。留実子は黙ってサクラの前で自分のパスポートを燃やしてしまう。
 
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「ほら、僕のパスポート燃えちゃった。これで僕は海外に行けないから代表にはなれないね。仕方ないからクララ何とかしなよ」
と留実子は言った。
 
それを見たサクラはその場で泣き出した。そして泣き言を言わずに頑張ることを留実子に誓ったのである。
 

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留実子はせっかく高田コーチが個人的にお金を出してくれて作ったパスポートを燃やしたことを謝罪したが、高田は
 
「いや、あれはナイスだった。あれでサクラは本気になった」
と言った。
 
高田は代わりのパスポートをすぐに再発行してもらうよう留実子に言い、この費用は実は千里が出してあげた。それで留実子はすぐに新しいパスポートを手にしたのである。
 
今回のU20の活動では、留実子はやっとそのパスポートを使用することになる。
 

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竹宮星乃は元々U18の時もほぼ代表当確であったのに、直前に骨折してしまい、おかげで代表を逃した。補欠組の中では実力もひときわ飛び抜けているのだが、既に12人のロースターが固まってしまっているために、何かアクシデントでもない限り出場の機会はない。しかし補欠としての招集の話には
 
「やります!やります!」
と言っての参加である。
 
森田雪子は昨年のインターハイ・ウィンターカップでもポイントガードとしての実力はナンバー1と評価が高かった。数字に表れた成績自体は札幌P高校の江森月絵の方が高かったのだが、安定性と信頼性を評価された。
 
大学進学志望ということで、有力大学の間でかなりの勧誘合戦があったのだが、関女1部の大学には入らず、わざわざ2部の東京N大学に入った。しかしお陰で1年生で入って即ベンチ枠に入ることができた。
 
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雪子は内部競争があまり好きではないし、2部の方が試合の出場機会が多くなると思って、そこを選んだのである。
 
そして今回の代表の補欠での招集の話に「村山先輩がいるし、やりたいです」と言って応じた。孤立しやすい性格の彼女としては、千里がいることで身の置き場があると考えたのであろう。なおN大学にはN高校での同輩で、バスケ部でもいちばん仲が良かった杉山蘭も進学している。その蘭は近くに来たのをいいことに、しばしばジョイフルゴールドの練習場に顔を出して、湧見昭子をいじっているようである。
 
しかし結果的にはU20代表チームに旭川N高校の出身者が3人入ることになった。この補欠3人は全員U24(Univ)候補にも加えられ両者兼任となる。
 
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今年はU17,U18,U20,U24,U24(Univ),A代表と、いくつもの代表チームが同時稼働しているため、兼任者が多い。
 
千里と玲央美がU20,Aの兼任、花園亜津子はU24とAの兼任である。
 
U20の第1次合宿は5月下旬に予定されている。
 

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千里は毎週火木土にファミレスの夜勤のバイトをしている。もっとも今年の前半はバスケの合宿で出られない日も多い感じである。
 
4月20日(火)の夜は、夜中過ぎに桃香と朱音が来て、千里に位相幾何の分からないところを聞いたりしながら、2時間ほどおしゃべりして帰った。2人が帰った後で、ふとテーブルを見ると男物のバッグが残っている。
 
「こんなの持ってるのは桃香かな」
と独り言を言うと、《たいちゃん》が
『うん。桃香ちゃんが持ってたよ』
と言うので、学校で渡そうと思い、それを持って学校に出て行った。
 
「千里もそんな男っぽいバッグを使うんだ?」
などと友紀に言われるが
「これ桃香の忘れ物」
と千里は答える。
 
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「ああ、そういえば桃香が持っていた気がする」
「桃香はかなり性別に疑惑がある」
「昨夜、うちのファミレスに来た時、忘れていったみたいでさ」
「ああ」
 
ところがその桃香が来ない。出席を取る授業は真帆が代返してあげていた。
 
「昨夜、遅かったの?」
と朱音に尋ねる。
 
「桃香のアパートで朝6時近くまで話してたかな。それで私はガストで朝御飯食べてから出てきたんだけど。桃香は仮眠してから学校に行くと言っていたんだよね」
 
「まだ仮眠してるんだろうな」
「午後からは出てくるかなあ」
 
「桃香の仮眠はしばしば夕方まで続く」
「あぁぁ」
 

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結局4時間目まで桃香は出てこなかったので、千里が持って行ってあげることにした。スクーターで学校を出て、桃香のアパートまで行く。
 
アパートの少し手前でスクーターを停め、そちらを眺める。
 
『えーっと・・・・とうちゃん、頼める?』
『よっしゃ、みんな来い』
 
と言って《とうちゃん》が《いんちゃん》《くうちゃん》以外の全員で桃香のアパートの周囲に集まっていたものを全部片付けてくれた。
 
『ここ、時々メンテが必要みたいだな』
『まあ空気の流れが悪いからなあ』
 
『餌場と考えると悪くない場所でもある』
と《こうちゃん》は言う。
『うん。ここに住んでいたら御飯には困らない』
と《せいちゃん》も言っている。
 
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『それ住んでいる人間は、いわば餌箱の中に住んでいるみたいなものね?』
と千里が言うと
『まあ俺たちは人間を食ってはいけないと、美鳳さんから命じられているから』
と《こうちゃん》が答える。
 
命じられてないと人間でも食うのか!?
 

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ともかくも、それでクリーンになったアパートに寄せてスクーターを駐め、桃香の部屋に行き、呼び鈴を鳴らす。反応は無いが、桃香がいるのはその「存在感」を感じるから確実である。10回くらい鳴らして、やっと桃香は起きてきた。
 
「ショック。もうこんな時間だ」
などと言っている。
 
「これ昨夜、うちのファミレスに忘れてあった」
「ありがとう!」
「何度かメロディーが鳴ってたけど」
「うん。ここに携帯も入れてあったんだよね」
「なるほどー」
 
「目覚ましのアラームも全部携帯にセットしてるし」
「なるほどねー」
 
「バイトに行かねば」
「何時から?」
「17:30からだけど17:20には入っておかないといけない」
「間に合う?」
「やばいかも」
 
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今もう17:05である。
 
「私のスクーター貸そうか?」
「あ、貸して貸して」
 
それで桃香は千里のスクーターを使ってバイト先に行った。
 
千里は桃香も自動車の免許を持っていたはずだから、原付は大丈夫と思って貸したのだが、実は桃香は母から免許を取り上げられているので、この時は免許証不携帯であった。
 

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桃香を見送った後、千里は歩いて表通りに出た。バスでいったん駅前に出ようかなと思ったのだが、少し行った所の歩道に花束が置いてあるのに気づく。
 
何だろうと思って近寄ってみた。
 
金物屋さんの前の歩道にチョークの跡が少し残っており、そこに花束が5つも置かれているのである。げっ。これは交通事故で誰か亡くなったのか?と思う。
 
すると近所の人らしきお婆さんが寄ってきた。
 
「あんたも亡くなった学生さんの友達?」
と訊く。
「誰か学生さんが亡くなったんですか?」
「C大学の経済学部の女子学生さんらしいよ」
「あらあ・・・」
 
「今朝方、バイト帰りで歩いていた所を暴走族の車にはねられたんだって」
「ひどい・・・」
 
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夜勤のバイト明けなら、自分と同じ立場だ。千里はその女子大生の冥福を祈る気持ちになり、合掌して般若心経を唱えた。
 
お婆さんも一緒に合掌してくれていたが、千里の般若心経を聞いた後で
 
「私は80年生きてきて、こんな心経は初めて聞いた」
と言って、笑っていた。
 
「私、巫女なんですよー」
「うんうん。神道流の般若心経だね」
とお婆さんは言った。
 
「犯人はまだ捕まってないらしいよ」
とお婆さんは言ったが
「すぐ捕まりますよ」
と千里は微笑んで答えた。
 
そして唐突にこんなことを言ったが、言った千里自身驚くことになる。
 
「亡くなった子の冥福を祈ってここにお地蔵さんとか置いてもいいですかね?私も同じC大学の学生なんですよ」
 
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お婆さんは驚いていたが、答えた。
「この部分の歩道は私有地なんだよ。この金物屋さんに私が話付けてあげるよ」
 
そう言って、お婆さんがお店の中に入っていく。千里もその後に続いた。
 

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4月21日(水)。バスケ協会, JBL, bj の三者は覚書調印式を行い、5年前の分裂以来の対立に終止符を打ち、『次世代型トップリーグの創設』について話し合っていくことになった。
 
チーム運営の方向性に関する対立からプロ化志向のチームがJBLを脱退してbjを創立して以来、両者はお互いを非難しあってきて、選手に「向こうのリーグの選手には年賀状も出すな」と命じるなど、おとなげない喧嘩をしてきていたのだが、やっと手打ちをすることになり、新リーグ(NBL)への統合について話し合っていくことになった。この成果は麻生太郎会長が就任以来、両者の説得に尽力してきた成果でもあり、国内のバスケット関係者も、ホッと胸をなで下ろしたのであった。
 
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4月26日。旭川の赤坂司法書士が千葉に来訪した。
 
健康保険証はこちらに郵送してくれたものの、社印や銀行の通帳・カードなどはさすがに郵送する訳にはいかない。しかし千里が忙しくて旭川に行けないので、持って来てくれたのである。
 
「済みません。わざわざこちらまで」
「いえ。ちゃんと出張費も頂いていますから。それにたまには私も東京に出てきたいし」
と赤坂さんは笑顔で言った。
 
千里がアッサムのロイヤルミルクティーを入れて、香蘭社のティーカップに注いで渡すと、赤坂さんは飲んでから
「美味しいですね!」
と言った。
 
昨日焼いておいたパウンドケーキなども勧め、それを摘まみながら少し話していたのだが、千里が台所に衣装ケースやら本棚やら並べているのに気づくと、赤坂さんは不思議そうに
 
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「居室のほうが随分空いているようなのに、どうしてこちらに荷物を並べておられるんですか?」
と尋ねる。
 
「向こうは雨漏りが酷いんで、荷物を置けないんですよ」
「それ改修とかできないんですか?」
「どっちみちこのアパートは近い内に崩すらしいんですよね。だからそれまでという約束で借りているんですよ。ここ家賃が1万円ですから」
 
「1万円!?それは凄い」
「私、安いの大好きだから」
「でも年収が億近くあるのに」
「それにですね」
「ええ」
「何となくですけど、このアパート、あと1年もしないうちに引き払うことになりそうで」
「ああ、やはりもっといい所に引っ越すんですね?」
「うーん・・・、それがもっと悪い所に引っ越しそうで」
「え〜〜〜!?」
 
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多津美は少し寂しげな表情で、かなり融けかけている雪に穴を掘ったりして遊んでいた。
 
その時
「たぁちゃん」
という声が掛かる。多津美は顔をあげたが、そこにあった優しそうな眼差しに、多津美は涙があふれ出てきた。
 
「お母ちゃん!」
と叫ぶと走り寄る。
 
そして母娘はしっかりと抱き合った。多津美が泣いているが、母も涙を浮かべていた。
 
「あんた。戻って来たのかい?」
と家の中から出てきた多津美の祖母が声を掛けた。
 
「お母ちゃん。やったよ。30万、お金作ったから。これで弁護士に依頼して自己破産の申告ができる」
 
そう有稀子は言って微笑んだ。
 

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ゴールデンウィーク。千里は再び東京北区の合宿所に向かった。4月29日から5月9日まで、A代表の第2次合宿が行われるのである。
 
また例によって合宿開始前の4月28日夜、ベテラン組対ヤング組で練習試合をしたが、今回はやはりベテラン組もかなり本気になって練習を重ねていたのだろう。ベテラン組が3点差で勝った。しかし三木さんや簑島さんたちに笑顔は無かった。
 
今回は同時期にU24の合宿もおこなわれるので、花園亜津子は日程が重なるのだが、重なる人は上位の合宿に出て下さいということで、A代表の方に参加である。
 
両者は合同合宿をするわけではなく、A代表は2階のバスケットコートを使用し、U24は同じ2階だが共用コートの方を使用する。しかし宿泊棟の方では顔を会わせるし、何度も練習試合をした。
 
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お互いほぼ知っている顔同士なので、U24の選手たちからは
 
「来年はそっち行きますからよろしく〜」
「早く隠退してくださいね〜。隠退してなかったら蹴落としますよ」
 
という声がありA代表側からも
 
「返り討ちにするから、一昨日来てね」
 
などと返していた。
 
 
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娘たち・各々の出発(12)

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