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■娘たち・各々の出発(3)

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なお、現行メンバーの中で来夢は来期のWリーグ復帰が決まっている。また、4月から4年生になる美佐恵が卒論や就職活動で忙しくなるということで退団を表明している。また幽霊部員化していた数名について浩子がひとりひとりと連絡を取り来期以降の参加について意向を確認した所、全員退団することになった。
 
茜・玉緒・夢香も4月から4年生なのだが「就職活動した所でどうせ就職先なんて無いし」と開き直って活動継続である。
 
なお、美佐恵には「卒業記念品」と称して、新しいユニフォームの背番号0のものを作ってプレゼントすることにした。
 
逆に新加入者として、千里の後輩・旭川N高校の島田司紗、麻依子の後輩・旭川L女子校の馬飼凪子(PG)、国香の後輩・A商業の長門桃子(C)が加入することになっており、本人たちの希望も聞いて各々次の背番号を割り当てられた。
 
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16.凪子 20,司紗 35.桃子
 
この他、後の加入者のために6,9,12,13(S) 15,18,19,22(M) 24,25,26,27,28(L)の番号のユニフォームをS/M/Lサイズで一緒に作っておくことにした。これで多分2〜3年はもつのではという考えである。(名前入れは玉緒がそういうの割と得意ということであったので、新加入者があった時は彼女にやってもらうことにした)
 

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3月20日は、新幹線は7:38に福島に到着した。駅構内のマクドナルドで朝食を取ってから8:45くらいに駅そばのホテル福島グリーンパレスに入る。ここで9時から代表者会議があるので、浩子と千里はこれに参加するため、他のメンバーより早く福島に入ったのであった。
 
最終的なエントリーの確認をし、会議では様々な伝達事項、連絡事項を確認する。
 
会議が終わった後、試合会場に移動する。今回の大会はメイン会場の県営あづま総合体育館のほか、福島市国体記念体育館・福島市西部体育館と3つの会場に分かれて行われる。千里たちの今日の試合は西部体育館で13:00から行われる。
 
千里と浩子は代表者会議が終わった所で軽食を取っておいた。メンバーは11:00頃からぼちぼちと集まってくる。
 
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「今回交通費・宿泊費が出るってんで助かったぁと思った」
「いや、実は先月ひたちなか市までの遠征で食費・宴会費まで入れて1万使ったから実はきつかった」
 
などという声が出ている。
 
「今回は打上げ費用も出してもらえることになってるから」
「それは凄い」
「スポンサー様々」
「でもそれどういう会社なの?」
「音楽関係の制作やってる会社らしい。だから一般向けの商品とかは出してないんだよ」
「へー」
「だから宣伝とかではなくて純粋に支援してくれるらしい」
「それは本当にありがたい」
「ユニフォーム作るなら、その会社のロゴを肩布とパンツの裾とかにでも入れようよ」
「ああ、それは打診してみる」
 
そんな会話を聞いて、千里は「ロゴ!?」というので焦っていた。
 
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今回福島に来ているのはこの12名と監督・コーチである。
 
6.浩子ひろこ(PG) 7.茜(PF) 8.玉緒(SF) 9.夏美(SF) 10.沙也加(SF) 14.夢香(PF) 15.美佐恵(PG) 16.国香(SF) 17.菜香子(PF) 18.麻依子(C) 19.千里(SG) 21.来夢(SF)
 
誠美はU24日本代表の合宿中。そして薫は途中登録者なので今月までは全国大会に出場資格が無く欠席である。
 
3月いっぱいで退団する美佐恵と来夢にとってはこれがローキューツでの最後の大会になる。
 
初戦の相手は近畿3位のチームであったが、この試合にはその美佐恵を先発させた。
 
「え〜?私が先発なの〜?」
「決勝戦で先発してもいいが」
「それ絶対無理!」
 
そんな会話をしながらも、美佐恵は結構張り切って出て行った。彼女をサポートできるように、他は千里/来夢/国香/麻依子というメンツで固める。
 
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相手はさすが全国大会に出てくるだけあって、結構強いチームであったが、彼女は何とかこの試合の1,3ピリオドでポイントガードの役目を果たした。試合は20点差で快勝したが、美佐恵は「もう完全燃焼!」などと言っていた。
 

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この日はこの1試合だけで終わり、ホテルに戻って休む。
 
「今回はいい部屋だった」
「ツインで9000円の格安ホテルなんだけどね」
「こないだの旅館よりはずっといい」
「2500円の宿と比較してはいけない」
 
などといった声が夕食の時に出ていた。
 

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この日3月20日、東京ではバスケット協会から今年9月に行われる世界選手権に出場する日本代表の候補選手23名が発表されていた。チーム別にまとめると、こうなっている。
 
BM PG.富美山史織(1981) SF.早船和子(1982) C.白井真梨(1981)★
SB SG.三木エレン(1975)★ SF.山西遙花(1978) PF.宮本睦美(1981)★
EW PG.武藤博美(1983) SG.花園亜津子(1989) C.馬田恵子(1985)★
RI PF.簑島松美(1978) C.黒江咲子(1981) SF.広川妙子(1984)★
SS SG.川越美夏(1982) C.石川美樹(1986)
FM PF.寺中月稀(1987)
BR SF.佐伯伶美(1986)
BB PF.花山弘子(1981)
 
WNBA-Phoenix PG.羽良口英子(1982)★
TS大学 SF.千石一美(1986)
W大学 PF.月野英美(1986)
JI信金 SF.佐藤玲央美(1990)
Oyamazu PG.福石侑香(1979)
Rocutes SG.村山千里(1991)
 
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ポジション別では PG 4 SG 4 SF 6 PF 5 C 4 となっている。そしてここで★を付けた人が、千里と玲央美が話した結果、確定だろうという人達である。この中で白井さん以外の5人は昨年のアジア選手権の代表でもある。白井さんはアメリカ出身でつい先日日本国籍を取得し、ビューティーマジックにも正式加入した(それまではビューティーマジックのスタッフ扱い:Wリーグの選手になるには日本国籍が必要)。195cmの身長は中国からの帰化選手・馬田恵子の190cmをも上回る高身長で、白井さんを使わない訳が無いと思われる。結果的には彼女の加入で昨年の日本代表であった黒江さん(183cm)は代表入りが厳しくなった。
 
「外国出身選手ばかりでセンターを固めるのには疑問があるけどなあ」
と千里は言うが
「強ければどこ出身でもいい。どこの国から出るかも本人の選択だよ」
と玲央美は言った。
 
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今回は昨年9月にインドで行われたアジア選手権で3位になった時のメンバーから4人外れて、過去に代表経験のある人も含めて追加のメンバーが15人入った形である。
 
ただ玲央美と話したのだが、アジア選手権のメンバーで今回名前があがっていない人の中でも、元ビューティーマジックのパワーフォワード横山温美さんは後で追加招集されるのではと見た。彼女は2月からスペインリーグに参加しており、海外の強いリーグで揉まれている選手を代表に入れない訳がないと考えられるのである。ただ彼女は今向こうでずっと試合に出ていて、代表合宿に参加できる状態ではないので、今回発表された候補者リストには入らなかったのではという見方である。
 
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千里はメンバー表を見て、今回は自分や玲央美の世代は「練習相手」含みだろうなと思った。花園亜津子も今回は同類だ。シューティングガードでは日本代表の顔のひとりである三木エレンが34歳とはいえ大きな存在感を持っているし、28歳で選手としてのピークを迎えつつある川越美夏もいる。花園亜津子が代表枠12人の中に入るには、川越美夏に大きく勝たなければならない。似たような動きであれば、経験豊かな川越さんが優先される。
 

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翌21日(日)。全日本クラブ選手権は2回戦と準々決勝が行われる。2回戦の相手は四国1位のチームで、メイン会場あづま総合体育館で11:00からであった。これに勝てば同じ会場で15:30から準々決勝に出ることになる。
 
このチームは東京に居る薫が調べてくれた情報では過去に全日本クラブ選手権に何度も出ている常連ということであった。確かに対戦してみて、大舞台に慣れている感じである。
 
しかしこちらも世界経験者の千里、Wリーグ経験者の来夢、国体経験者の麻依子、インターハイ経験者の浩子と大きな舞台の経験のあるメンバーがいる。更に誰が相手でもビビることのない国香、怖い物知らずの玉緒のような選手もいるので、何とか気合い負けせずに頑張ることができた。
 
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試合は接戦になったものの、最後は10点差を付けて勝つことができた。
 

千里、麻依子、国香の3人は試合終了後、着替えてから食事もせずにひたすら眠って体力を回復させた。
 
予定より少し遅れて15:45に準々決勝が始まる。相手は九州1位のチームで企業名を冠しているので、そこの会社の社員で作っている実質実業団チームということのようである。ここも過去に何度も全日本クラブ選手権に出たチームのようである。
 
このチームは午前中のローキューツの試合を見ていたようであった。実質実業団でおそらくベンチ枠に入りきれない選手がいるので、そういう選手が偵察していたのだろう。
 
卓越した感じの選手が千里の専任マーカーになったものの、今日ビデオで見た程度で千里を停めるのは無理である。しかしそれでも専任マーカーが付いていると、千里がフリーになる時間は短いので、その瞬間にパスを出すのは浩子では無理だ。そこでタイムを取り、システムを変更して、国香がPGとして出て行くことにする。こういう体制になる。
 
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PG.国香 SG.千里 SF.来夢 PF.夢香 C.麻依子
 
すると、千里が相手を振り切った瞬間に国香から矢のようなパスが来るので、それで千里はスリーを放り込むことができるようになる。
 
全体的な実力は向こうの方が上という感じではあったものの、千里のスリーで対抗していくので、結構点差は競っていく。
 
途中で夢香の代わりに夏美を出したり、麻依子がPFの位置に移って菜香子がセンターの役をしたり、また長時間出続けるのは辛い来夢を一時下げて沙也加を短時間使ったりというやりくりをしていく。
 
それで何とか最後は5点差で辛勝することができた。
 
これでベスト4である。社会人選手権に行けるのは3位までなので、このあと準決勝に勝つか、負けた場合は3位決定戦に勝つことが条件となる。
 
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大会は3日目に入る。
 
準々決勝に勝ち準決勝に進出したのは、この4チームであった。
 
千葉のローキューツ(関東2位)・石川の女形ズ(北信1位)・岐阜の美濃鉄道(東海2位)・東京の江戸娘(関東1位)
 
この中の女形ズ(おやまず)以外の3チームが実に全日本クラブ選手権初出場であった。この年は新旧勢力交代の年になったのである。
 
そしてローキューツの準決勝の相手はその女形ズである。全日本クラブ選手権には既に10回出ており、昨年の全日本クラブ選手権で準優勝して、社会人選手権にも出ているチームだ。
 
女形(おやま)と名乗っていてもむろん男装女性ではなく、医学的に女性の選手で構成されたチームである。「おやま」というのは実は金沢市の尾山神社に由来しており、金沢都市圏(金沢市・野々市町・津幡町・内灘町)に住むか通勤している選手を中心に構成されている。最初は尾山ズを名乗っていたものの、しばしば「尾山神社さんのチームですか?」と訊かれるので、後に神社に遠慮して字を「女形」に変えたものらしい。
 
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「強いね」
千里たちは試合前の練習を見ていて言った。
 
「1番付けてる山岸さんと12番の川原さんは以前白鴎航空スカイ・スクイレルにいた選手」
と来夢が言う。
 
「あそこか・・・」
 
それは1年ほど前に会社が倒産し、チームも解散した所である。佐藤玲央美はここに入る予定だったものの、チーム消滅で行き先が無くなり、結局藍川さんとの半年間に及ぶ基礎訓練を経て、彼女は部員が3人しか居なくなって大会参加不能状態にあったJI信金ミリオンゴールドに加入した。
 
「7番付けてる新谷さん、8番付けてる浜坂さんも見たことある。チーム名思い出せないけど、元Wリーガーだよ」
と来夢。
 
「うーん・・・。もしかして今のシグナス・スクイレルより強かったりして」
「たぶんWリーグ下位並みだと思う」
「ああ」
 
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「そして4番付けてるキャプテンの福石さんはステラ・ストラダに居た選手。結婚して出産のためステラ・ストラダを辞めたけど、赤ちゃんの手が離れたところで復帰して女形ズに入った」
と来夢。
 
「そして今回日本代表候補として招集されている」
と千里が補足する。
 
「向こうもこちらをかなり意識しているっぽいね」
と来夢が言う。
 
「ええ」
その4番の福石さんはさっきから何度も千里をチラ見している。
 

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娘たち・各々の出発(3)

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