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決勝の相手は福岡のN学園女子高である。一昨年の玉竜旗準決勝でやった相手だが、向こうはかなり選手が入れ替わっている。
先鋒戦、双葉はかなり苦戦していた。1分で相手から小手を取られたが、修了間際こちらの面が決まり、1-1の引き分けとなった。そのあと千里と清香が勝ち、副将戦に行く。香織はこれを0-0で引き分けた。
この時点で、もし大将戦にこちらが負けても勝ち数がこちら2向こう1となるから、大将戦をしないままH大姫路の勝利、優勝が決まった。
こうして千里たちは選抜を制したのである。
表彰式では主将の清香が優勝旗、副主将の千里が優勝の賞状を受け取った。
なお男子は3位だった。
一行は表彰式の後、すぐに名古屋駅に戻り新幹線に飛び乗る。なお優勝旗は控え部員に姫路に持ち帰ってもらう。また優勝のお祝いに校長先生からひつまぶしのお弁当が配られ、新幹線の中で食べた。
昨年千里が配ったのはコンビニの弁当で中国産うなぎだったが、今年のは専門店ので浜名湖産のうなぎである。うなぎの量も多い。値段は3倍以上する。
「凄く美味しい気がする」
「うん。美味しいと思う」
「勝つと美味しいものがもらえるんだな」
「魁星旗も頑張ろう」
「校長先生が破産したりして」
今年も乗り継ぎ駅の東京駅でシレーヌにミスドを買わせておいたのを受け取り、秋田に向かう新幹線の中でみんなで食べた。
秋田駅には夜遅く到着した。
清香が「腹減った」というので、アイリスにコンビニで少し食べ物を買ってきてもらった。アイリスは“横手風焼きそば”を買ってきてくれた。
「普通の焼きそばだ」
「まあそばが光ったりはしないね」
「長崎県には金色のそば焼きがあるね」
「そば焼き?焼きそばじゃなくて?」
「長崎では“焼きそば”というと揚げ麺に中華風のあんかけをしたものを言うんだよ。だから他の地域の焼きそばに相当する物は、そば焼き(*9)と言う」
「ほほお」
「その内長崎にも食べ歩きに行かねば」
「いいかもね」
「今年のインターハイどこだっけ」
「埼玉県」
「仕方無い。もんじゃ焼きでも食うか」
「それ東京では」
「東京都埼玉県だろ」
「ああ、埼玉・神奈川・千葉までは東京の範囲だよね」
「茨城もだな」
「茨木は大阪だよ」
「でも東京都埼玉のインターハイでは優勝して校長に築地の江戸前寿司をおごらせよう」
「お寿司もいいね」
(*9) “柔らか焼きそば”とか大阪風焼きそばなどとも言う。なお長崎風焼きそばで揚げてない麺を使用したものは“皿うどん”と呼ばれる。外見はほとんど同じである。金色の麺はカレー粉をまぶしたもの。長崎県内ではわりと見かけるが全ての店では無い。
そういうわけで、3月29-31日は秋田県立武道館で魁星旗(かいせいき)争奪全国高校剣道大会が行われる。H大姫路のオーダーは選抜と同じである。
女子
先鋒・島根双葉(2年)
次鋒・村山千里(2年)
中堅・木里清香(2年)
副将・春風香織(1年)
大将・最上光(1年)
男子
先鋒・谷口春恵(2年)
次鋒・福田一鉄(2年)
中堅・工藤公世(2年)
副将・長浜勇気(1年)
大将・山崎一(1年)
初日3月29日、この日は女子の1回戦と男子の1〜2回戦が行われた。H大姫路はこの日は男女とも最初の3人だけで勝ち上がり、明日に駒を進めた。
この日の夕食は、しょっつる鍋だった。
3月29日(土)、玲羅に高校の制服ができたという連絡があったので、母に車を出してもらいジャスコまで行って受け取ってきた。母には「もうお金は払ってあるから」と言って、車を出すのを頼んだ。でないと母は「お金どうしよう」と狼狽しかねない。
3月30日(日)、玲羅はS高校の入学説明会に行った。母は休日出勤していたが、ロゼ姉に付き添ってってもらった。サハリンの車で高校まで行った。
昨日受け取った制服を著て行ったが、生徒手帳の撮影とかもあったので、制服間に合ってよかった!と思った。
説明では校則の説明、高校生生活に関する注意、学習のしかた、男女交際に関する注意、ネットの利用に関する注意などがある。特に女子たけ集めて、性犯罪や援交などに関する注意もあった。
一般的な説明のあと、教科書、体操服、内履き、学校指定のコートなどを購入する。玲羅は先日千里からもらったお金で払った。学校指定の電子辞書も売っている。
「お姉ちゃん、あれだめ〜?」
「買ってあげるよ」
それでロゼ姉は電子辞書を買ってくれた。玲羅はお姉ちゃんと来て良かった!と思った。
会場で何人かの友人と会ったが
「村山さんS高校通(とお)ったんだ?」
とみんな驚いていた!
「補欠合格。入学手続きしなかった人が今年は例年より多かったらしい」
「運がいいね」
「だから制服は昨日夕方ぎりぎりで受け取ってきた」
「間に合ってよかったね」
「お姉さんはそれどこの制服ですか」
「関西のほうの高校なんですよ」
「へー。何か都会の高校の制服は可愛い!」
「セーラー服の高校は珍しいですね」
魁星旗の2日目3月30日、女子は2〜4回戦、男子は3〜5回戦が行われた。この日も男女とも最初の3人だけで勝ち上がり、明日に駒を進めた。
この日公世の竹刀が2本とも続けざまに折れてしまった。顧問の先生は彼が選抜で使用した竹刀を長浜君に持たせて検査をしてもらった。公世本人に検査に行かせると女子の検印を押されてしまう危険があるからである!
この日の夕食はきりたんぽ鍋を食べた。
31日最終日は男女の準々決勝以上が行われる。
女子の準々決勝は最初の3人で勝って勝ち上がる。準決勝では先鋒の双葉が0-0で引き分けになってしまった。しかしそのあと千里・清香が勝ち、香織が引き分けたことから、こちらのチームの勝利が確定し、大将戦無しで決勝進出である。
決勝は福岡のT高校とである。先鋒の双葉は凄い接戦でなかなかどちらも1本取れない。しかし3分で双葉が小手で1本取る。更に時間切れ間際、双葉が面打ちに行ったのを受け止められ返し胴で1本取られてしまった。結局1-1で引き分けである。千里はこの対戦を見て腕を組んだ。
そのあと千里と清香が0-2で勝ち、香織と光が2-0で敗れた。勝ち数・本数が等しいので代表1名ずつ出ての決定戦となる。
「誰が出る?」
「じゃんけんする?」
「だめです。千里はじゃんけん無敵です」
「不思議なものが強いのね」
「先生、コインを投げて決めてください」
「分かった。表なら清香ちゃん、裏なら千里ちゃん」
それで先生が百円玉を投げると100という数字のある方が出た。
「裏だな」
「え〜〜!?それ裏なの?」
「コインは数字が書いてある側が裏」
「そんな」
「ということで千里ちゃん頑張ってこよう」
それで千里が出て行く。向こうは先鋒の人が出て来た。やはり強い人を先頭に置いていたようだ。
それで対戦する。千里が面を打ち込むと抜き胴をやられそうになった。それを防御し、体勢を建て直してから小手で1本取る。更に再開後きれいに面を決めてこれで勝利。しかし凄い技巧派だった。強そうに見えないのにゲームとしての剣道の試合でポイントを取れる人である。これは清香ではなく自分が出てよかったと千里は思った。真っ向勝負の清香では相性が良くなかった。これは双葉の試合を見た時から感じていた。だから実は清香とじゃんけんということになったら自分が負けるつもりでいた。
しかし千里はこの面倒な相手に勝ち、魁星旗優勝を決めたのである。
ロビンは対戦が終わったあと、今年もジェーンに交代してもらい、自分は留萌に行った。それで表彰式では魁星旗を清香が受け取り、優勝の賞状をジェーンが受け取った。なお男子はまた3位だった。
表彰式の後で今度は教頭先生が天麩羅屋さんに連れて行ってくれた。ジェーンは儲け儲けと思って美味しく頂いた。本当に美味しいお店だった。
清香が教頭に言っていた。
「先生、インターハイで優勝したら、お寿司おごってください」
「よしよし。校長に伝えておくよ」
「でもこの天麩羅も凄く美味しいです」
「良かった良かった」
3月29日、参議院で平成20年度政府一般会計予算案を野党の反対多数で否決するも、両院協議会を経て、予算案については衆議院の議決を国会の議決とする日本国憲法第60条の規定により、衆議院本会議で予算案の成立を宣言。
3月29日、Suica・ICOCAとTOICAの相互利用開始。
3月31日、東京地方裁判所は、弁当販売大手ほっかほっか亭が、フランチャイズ離脱および独自ブランド立ち上げを表明したプレナスの営業停止を求めた仮処分申請を全て却下した。これでプレナスの新ブランド移行が確実となる(“ほっともっと”が設立される)。
3月31日、KDDIが展開する携帯電話サービスツーカーが終了。
3月31日夕方から留萌P神社の会議室では桜鱒プロジェクト2年目の納会が開かれていた。
「そういうわけで11月から3月までに4000匹の桜鱒を出荷でき3200万円の売上があがりました」
との報告がある。
「予想以上の成果だ」
「素晴らしい」
という声が相次ぐ。
「副業の観光船事業も12月から3月までに40回運行し107万6000円の売上です」
「しぐまは?」
「ヒグマ・エゾシカはこの1年間に22頭捕獲して220万円の売上です」
「結構大きいな」
「これで日常の費用をまかなえてるんですよ」
「すごいな」
それで今年も神居酒造の清酒“ルルモッペ”の一斗樽で鏡割りをした。
「来年もうまく行きますように」
「お魚が元気に育ちますように」
なおこれで安野さんは岡山に帰ることになった。
「ありがとうございました。色々お世話になりました」
また柳里君から“個人的な”発表がある。
「大変個人的なことなんですが、私と田崎玲耶は婚約しました」
「おめでとう!」
田崎さんがこれを機会に役職をおりたいというので、女性の出資者のひとりである吉田さんが暫定的に継承することになった。
「網元(千里のこと)がすればいいのに」
「すみません。未成年なもので」
「今幾つ?」
「今月17歳になりました」
「あと3年か」
「七尾さんは?」
「私はただの連絡係ですー」
しかし桜観光の社長は田崎さんが続けることになった。
代わりにそちらは柳里君が取締役を退任した!(佐々木君が桜水産・桜観光両方の役員になっているから問題は無い)
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女子高校生・冬の夜なべ(12)