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田崎玲耶は言った。
「出演してくれるバンドが足りないのよ。あんたたちで何かやって」
「んじゃ佐々木がギターで俺がベース、杉田がドラムス」
「ボーカルは?」
「田崎だな」
「え〜?私へただよ」
「いや結構うまい」
「それに女が歌えば何とかなる」
「そうだ。村山さんが歌うまいよ」
「彼女にはひとりでエレクトーン弾いてもらう」
「ああ。キーボードはソロ演奏が成り立つからなあ」
「ベースとかソロが成り立たん」
「ベースのソロというとヒゲダンスのテーマくらいしか思い浮かばんな」
「あれで30分とかのステージを構成するのは厳しい」
しかしそれでともかくも“チェリーズ”が結成?されたのである。なおドラムスセットは柳里君が買って杉田君に渡したようである。
2008年1月14日(月)、雨宮グループの作曲家・アキ北原さんが急死した。ちょうどバスケットのオールジャパン(皇后杯)に出場するため東京に来ていた“東の千里”は雨宮に急遽呼び出されて北原さんのマンションに向かい、まず彼女のパソコンを起動した。
パソコンにはパスワードが設定されていたがパスワードを想像(連想)してパソコンを起動する程度は霊的な力がそう強くない青にも充分可能である。
(青ができなかったらGは自分が出ていくつもりだったが必要無かった)
北原はインディーズで3人組の(当時は3人組だった)アイドルユニットAYAの次作CDに入れる曲5曲を書いていた。千里が起動したパソコンのCubaseには4曲入っており2曲は完成していたが2曲は途中だった。雨宮はその2曲を毛利に完成させ、千里に朝までに1曲新曲を書かせて音源制作に間に合わせた。(後日手書きの譜面が1枚見付かって、AYAのメジャーデビューCDに北原の遺作として収録された)
2008年1月19日(土). 姫路のH大姫路高校で入学試験が実施された。玲羅は千里から「度胸付けと試験慣れで受けてみなよ」と言われたので受けてみたが、何て難しい問題なんだと思いながら解答した。分かる問題がひとつも無かった。
でもその晩と翌日、オーリタが全ての問題を詳しく説明してくれて随分勉強になった。特に国語の問題とかは自分でももう少し考えていたら解けていたかもしれない気がした問題が結構あった。
1月19-20日、剣道で選抜の兵庫県予選が行われた。事実上の新人戦であり、2年生以下のチームで出場するが、元々H大姫路はレギュラーがほぼ1〜2年生なのでこれまでとほとんど変わらないチームで参加した。
女子
先鋒・島根双葉(2年・三段)
次鋒・村山千里(2年・三段)
中堅・木里清香(2年・三段)
副将・春風香織(1年・三段)
大将・最上光(1年・三段)
男子
先鋒・谷口春恵(2年・三段)
次鋒・福田一鉄(2年・三段)
中堅・工藤公世(2年・三段)
副将・長浜勇気(1年・二段)
大将・山崎一(1年・三段)
結果は男女とも優勝して本戦参加を決めた。昨年E高校は男子で「大将戦まで回すな」作戦できたが、今年はこちらは公世が中堅に入っているのでその作戦は通じなかった。そのE高校が男女とも2位だった(本戦には行く)。
長浜君は「ごめんなさい。僕負け役です」と言っていたが、この大会では男女とも最初の3人だけで決勝まで行き、副将・大将は一度も対戦が無かったので彼は負けもしなかった!
女子のマネージャーの知代ちゃんは長浜君といい勝負をするので
「あんたが男子の副将したら」
などと言われていたが
「男子の部に出たら女子トイレで痴漢として逮捕されるから遠慮します」
と言っていた。でも男子チームで長浜君以外の4人は女子トイレを使っている!知代が出ていたら男子チームの全員が女子トイレを使うことになっていた。
どこの学校も強い人から並べるオーダーだったが、双葉も春恵も相手の大将格に勝っていた。
ロビンが選抜予選をやっていた1月19-20日、夜梨子は新幹線で名古屋まで行った。高木真理と落ち合い、彼女の車に乗る。
「悪いけどこれ付けて」
と言って、アイマスクを渡された。
それを付けて車に乗る。けっこう走って車が渋滞に掛かっている時、隣にいたバスの車内アナウンス?が「次は岡崎市民病院前です」と言っていた。
やがてマンションのようなところに着き、エレベータで昇って1軒の戸に入る。アイマスクはその中で外した。そこの一室に光辞(多分原本)が置かれていた。
「ではお願いできますか」
「はい」
実は真理さんは昨年の春から光辞の新たな書写を作る作業をしていたのだが、光辞の中には△□とかお日様マークみたいな文字に準じる記号で綴られたページが多いが、中には絵だけで構成されたページが20ページほどあり、これが真理さんには描き写せないので千里に描き写してもらえないかと依頼があったのである。それで千里は名古屋の近くにある秘密の光辞保管場所に行き、その描き写し作業をすることになったのである。作業はこの土日で終わらなかったら、来月続きをすることになっている。精神力を使う作業なのであまり集中してすることができない。そして保管場所は千里にも秘密にしておきたいようである。それでアイマスクをされ、途中でミスリードするようなバスのガイドテープも聴かせられた。
作業は1枚写すごとに1時間の休憩を置き、おやつとコーヒーをいただいた。またお昼・夕食・夜食に豪華な仕出しをいただいた。仕出しには「岡崎市※※町OO軒」と書かれていた。あくまでミスリードを狙っているなと思った。こんなの私には通用しないの真理さんは知っているだろうに!千里は自分のいる場所の緯度経度が分かるのでこの場所の正確な位置も把握していた。しかしそれは言わぬが花だ。
最後は熱田区のお店でひつまぶしをおごってもらった。
名古屋まで戻った後、千里(夜梨子)は、真理さんの友人に連れて行ってもらい常滑市に行った。常滑焼き会館に行き、多数の招き猫を見て思わず
「可愛い!」
と声を挙げる。千里はそこで20cmくらいの白招き猫を買った。
「それ今から連れて行こうと思ってた窯の作品」
と言われた。
「凄い偶然ですね」
それで1軒の窯に連れて行ってもらった。そこでも
「わっ、うちの製品だ」
と言われた。それで千里はここの窯と招き猫の直売の契約を結び、ここの窯の招き猫が留萌P神社と姫路立花K神社で売られることになる。これはどちらもよく売れた。P神社でも立花K神社でも縁起物の中でトップの売上となる。特に若い女性に人気だった。
「北海道と兵庫なんですか」
と窯の人に訊かれる。
「ええ。私は留萌の出身で今姫路に住んでるんですよ」
「それで留萌と姫路の2つの神社に関わっておられるんですか」
と窯の人は感心していた。
千里は招き猫の他に恵比寿大国猫(恵比寿様は猫が鯛を持っている・大国はネズミを連れている!)・七福神猫も買ったが、これもよく売れた。
なおこの土日、ロビンは大会に出て夜梨子が愛知に行っていたので受験に来た玲羅のお世話をしたのはジェーンである。
「あれ?緑のお姉ちゃんとは少し違うみたい」
「よく見分けられるね。私はグリーンの代理のジャスパーだよ」
「西洋の緑ではなくて東洋の碧か」
「赤が神戸で剣道の大会に出てるんだよ」
「自分のやりくりが大変だね」
「全く自分使いが荒い」
「あはは」
でもあなごめしをおごってあげたら「美味しいね」と言っていた。
なお夜梨子はいったん姫路に戻ってから、洞門の鏡で留萌に行き、この日買った白招き猫を玲羅にあげた。
「ありがとう。でも黄色のお姉ちゃん、久しぶり〜」
「まあ勉強頑張りなよ」
と言って数学の問題集もプレゼントした。
「嬉しくて涙が出る」
また夜梨子はひつまぶしのお弁当を玲羅とロゼの分、2つ置いていった。
「こちらは純粋に嬉しい」
夜梨子はひつまぶしをP大神とA大神にもお届けした。どちらも喜んでおられた。
(4つとも名駅裏手の地下街のものなので、高かったがとても美味しい)
1月下旬、玲羅はロゼ(r)に相談した。
「最近私が夜遅くまで勉強してると、お母ちゃんが早く寝ろってうるさいのよ。何か手が無いかなあ」
「勉強してないと少しくらい勉強しろと言うのにね」
「そうなのよ」
それでrはA大神にお願いして玲羅のコピーを作ってもらった。
「コピーを作ったから、コピーちゃんに早寝してもらえばいいね」
「だったら、コピーに帰宅して早寝してもらって、私はここで晩御飯食べて夜勉強してもいい?」
「いいよー」
それで結局玲羅のコピーが村山家に帰宅し早寝早起きして学校にも行った!玲羅はロゼの家の1階4畳半の部屋をもらった。実は貞美が使っていた部屋である。なお貞美は姉(紀美)と同じK高校に行くつもりのようである。貞美ちゃん頭いいからなあと玲羅は思う。
玲羅本人は1日中rの家に居て、昼間は主として国語や社会の勉強をし、夜間はオーリタに指導してもらって主として数学を勉強した。英語は主に早朝に勉強したほかハリーポッター以外にも洋画をだいぶ見た。
rの家では確実に御飯が食べられるし、おやつもあるし、父と話さなくても済むし、両親のケンカを聞かなくても済むし暖かいしで快適だった。それで勉強が進んだ!玲羅がこれまで全然勉強してなかったのは家庭環境が悪すぎたのもあったと思う。(両親の仲が悪い家庭では子供の成績が悪いというのは昔からよく言われている)
ここにいれば学校にも行かなくて済むし!
本数の少ないバスに飛び乗りバス停から学校までの坂を登るのは大変!掃除とかもしなくて済むし!お昼もお弁当が無いから購買部でパン買うけど、パンだけではお腹が空く!:rの家ではお昼もちゃんともらえる。
「玲羅、学校行くなら、私がお弁当作ってあげようか」
とロゼ姉は言ったが
「ううん。ここに居る方が快適」
と玲羅は言った。
「まあ受験まではそれでもいいかもね。でも高校入ったら毎日お弁当作ってあげるよ」
「さんきゅ。期待しとく」
(高校入ってもコピーを身代わりに学校に行かせ村山家にも帰宅させて本人はこで暮らす生活が続いたりして)
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女子高校生・冬の夜なべ(5)