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■女子高校生・冬の夜なべ(2)

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玲羅は桜ジェットのパイロット山橋さくらさんの携帯に電話した。
「近いうちに旭川から神戸に飛ぶ予定とかありません?」
「ああ、フライトなさるのでしたらお迎えにいきますよ。いつがいいですか?」
「だったら21日夕方とか飛んでもらえます?」
「いいですよ。空港に申請入れておきます」
 
それで玲羅はサハリンに頼んで21日(金)の授業が終わった所で学校に迎えに来てもらい旭川空港に連れて行ってもらった。手荷物検査を通り、桜ジェットに乗る。桜ジェットはやがて離陸許可が出ると旭川空港を離陸、2時間ちょっとのフライトで神戸空港まで行った。
 
旭川→神戸はジエット気流の風上へのフライトになる。特に冬はジェット気流が強いのでどうしても夏より時間が掛かる。(非力なプロペラ機だと西に向かっては飛べない場合もある:西へ飛ぼうとしても風で流されて東へ移動する:“バックフライト現象”戦時中日本の戦闘機はこれに随分悩まされたらしい)
 
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神戸空港からはポートライナーとJRで姫路まで行き、タクシーで千里姉の家に到達した。
 
「玲羅来たんだ?受験勉強とかは?」
「意味無い。だって今更少し勉強してもS高校には合格できない。勉強しなくてもU高校に落ちることは無い。だから受験勉強は無意味」
「面白い見解だ」
と言って千里が笑うと
「やはり赤のお姉ちゃんは寛容だ。青のお姉ちゃんなら叱られる所なのに」
と玲羅は言う。
「あの子は真面目だからね。私は適当だもん」
「そうだ。お姉ちゃん、お願いがあんだけど」
「うん」
「私がU高校に行った時の学費を青のお姉ちゃんが出してくれると言ってるのよ。でも青のお姉ちゃん、そんなにお金持ってないからさ。特待生で授業料は要らないといっても実際部活の費用払うのにも割りと苦労しているみたいだし」
「うん。適当に補填しとくよ」
「ありがとう」
 
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千里RはGと相談して、ラッキーブロッサム関係の印税が全部青の口座に入金されるようにしてあげた。本当はラッキーブロッサムに大裳の名前で曲を書いていたのは、BRGJが4分の1くらいずつである(YVやオーリタも若干書いてる)。
 
Gは複数の千里の楽曲納品形式を統一するため、RにもCubaseを覚えるように言い、せいちゃんに頼んでCubaseのインストールされたPCを用意してもらいRに渡した。cubaseはオーリタとオーロラにも覚えてもらった。オーリンにも覚えさせようとしたが逃げられた。
 
「私幽霊なのに」
とオーリタは言うが
「いや30%くらいは人間だと思う」
とGは言った。
 
金色3人はどの子もパソコン自体は使えるようだった。オーリンなんて結構ゲームで遊んでいる(オーリンはDSも持っている)。
 
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オーリタの言う“幽霊”とは肉体を持たないという意味だろうが、肉体の有無はあまり関係無い気がする。Gだって肉体を持っていないがそれで特に不便を感じたことは無い。金色3人は物体に干渉できるし、壁とかを通り抜けられないから純粋な霊とは異なるとGは思う。(テレポートで結果的に壁の向こう側に行くことはできる)
 

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「あと玲羅に毎月2万送ってあげるからさ、自分の携帯代と部活の費用はそこから払いなよ」
「余ったら」
「余ったらおやつ代で」
「分かった。頑張ってみる」
 
「部活は卓球するの?」
「それがU高校には卓球部もテニス部も無いのよね」
「ありゃ」
「運動部は野球部と相撲部とラグビー部だけ」
「女子ができるものがないじゃん」
「そうなのよね。吹奏楽部にでも入ろうかな」
「いいんじゃないの?フルート以外でもクラリネットやサックスは行けるでしょ」
「吹いたこと無い」
「玲羅なら多分すぐ覚えられる」
{文化部も吹奏楽部・JRC・放送部・パソコン部しかない」
「選択肢が少ないな」
「学校自体が適当っぽいしね。先生たちにやる気を感じないとよく言われてる」
「まあ学校当てにせずにベネッセとかで勉強しなよ。料金払ってあげるから」
「ありがとう。でないと大学には行けないよね」
「大学行くつもりなんだ?だったら頑張りなよ」
「うん」
 
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U高校から四大に行ける生徒居るんだっけ?と千里は疑問を感じた。大学行くつもりならS高校の特進とかに行くべきだったが、今からではもう遅い。
 
(玲羅は結局音楽系の大学に行くことになる:玲羅にしては頑張ったと思う)
 

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「そうだ。余裕のある時でいいけど、ロゼお姉ちゃんの家にグランドピアノとか置けない?」
「ああ。今度頼んでおくよ」
 

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21日の夜は玲羅が大量のマトンを持って来ていたので、それでジンギスカンをして食べた。清香も公世もジンギスカンは久しぶりで
「やはり羊も美味い」
と喜んでいた。
 

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「そうだ。お姉ちゃん、お年玉ちょうだい」
と玲羅が言うので
「じゃこれお年玉代わり」
と言って『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』(2007年公開)のDVDとDVDプレイヤーをあげた。
 
「吹き替えじゃなくて字幕か」
「それ流してただ聞いてるだけでも凄く勉強になるから」
「微妙なプレゼントだけど聞いてみる」
「まあ無意味でも少しは勉強しなよ」
「うん」
 
「あと最後の手段はこれだな」
と言うと、千里Rは、六角形の鉛筆の下のほうの各面をナイフで塗装を薄く剥ぐように削ると、そこに123456という数字を書き入れた。
 
「これは強力な御守りだ。ありがとう」
と玲羅は言っていた。
 

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和弥も21日の晩にコリンの車で伊勢から姫路に移動(経路上男装)し、まゆりの家に入った。立花K神社の年末の用意を連休中にする。
 
和弥はまゆりの家(宮司宅)に来ると当然のことながら速攻で女物の服に着替えさせられた!ので、その格好のまま神社の作業をした。越智さんも
「和弥さん、そういう服が凄く似合ってる。本物の女性みたい」
と言っていた。
 

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花絵も21日の夕方、新幹線で京都から姫路に移動し、立花K神社の年末の用意を手伝った。
 
花絵も和弥の服装を見て
「ああ、とうとう女の子になっちゃったね。でも精液保存してるから大丈夫だよね」
などと言っていた。
「精液は保存したからもう睾丸は取っちゃってもいいよと言ってるんですけどね」
「取るつもりはない」
「でもちんちん萎縮してるから、おしっこする時に睾丸が邪魔になってると思う」
「何とかしてる」
 
実は広告紙を小さく切った物をペニスと陰嚢の間に挟んで排尿しているのである。これはFTMの人が使う排尿補助具“マジツクコーン”そのものであるが、和弥はマジックコーンを知らない。
 
和弥のペニスが萎縮しているというのは、やはり女性ホルモンを飲んでいるのかなと花絵は思った。バストも少しあるみたいだし。早く結婚させて良かった!
 
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花絵は化粧ポーチが落ちているのに気が付いたので、まゆりのだろうと思い、
「まゆりさん、これ落ちてる」
と言って渡した。
「あ、それは和弥さんのだと思う。私はメイクとかしないし」
「あ、それぼくの」
「あんたお化粧するの?」
「いや何かクラスメイトの女子に載せられて買っちゃった」
「お化粧してみて」
 
それで和弥は眉毛をカットしてから、顔を拭き取りシートで拭いた。そして化粧水・乳液を付け、ファンデを塗った上でアイカラーを塗り、アイブロウを描き、マスカラを塗りビューラーでカールを着け、チークを濃淡入れて最後にリップを塗った。
 
アイライナーは入れなかった。また唇ではリップブラシは使わず敢えてリップスティックだけを使うことで境界をぼかした。
 
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「きれーい」
と花絵は言った。
「きれいだしメイク上手いですよね。私は普段メイクしないからたまにしようとしても上手くいかないけど、和弥さんは上手です」
とまゆりは言っていた。
 
「クラスメイトの女子たちに教わったんだよ」
「なるほど。あんたお化粧してスカート穿いて大学行ってるのか」
「そんなことしないよ」
「いやきっとスカート穿いてる」
 

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22日(土)、千里と玲羅は今年も大阪に出て、今年は知る人ぞ知る恵比寿様の重要スポット、石津神社・石津太神社(*2) に連れて行ってから、市内の今宮戎にも寄った上で土手焼きを食べ、そのあとキタに出てお洋服などを見た。
 
(*2) 日本最古の恵比寿神社と言われる。古代にえびすさんはUFO?に乗って飛来したという。大阪湾をはさんでやはり古いえびすさんである西宮神社と対称な位置にある。石津神社と石津太神社は現在1kmほど離れており、どちらが本家かしばしば議論されるが、筆者の友人の神社研究家は元々ひとつの大きな神社だったものが後世に境内が分割分離されたものかもと言っていた。京都の下鴨神社くらいの広い神社だったらあり得なくもない話だと思う。
 
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23日(日・祝)は吹奏楽のクリスマスイベントがあったので、夜梨子が銀桃を持って体育会館に行ってきた。演奏した曲目は『宝島』と『ファーストノエル』である。
 
玲羅は清香、清香の妹の明美と3人で大阪に食べ歩きに行っていた。メンチカツ、お好み焼き、と食べて551の豚まんを買って帰ってきた。
 
ロビンは鮎川ゆまから楽曲を頼まれて書いていた。また雨宮先生の居場所が分からないかと聞かれたのでデート中の女性の携帯番号を教えてあげた。それで捕まったようである。
 

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24日(振)は、コーラス部のクリスマス会イベントがあったので、ロビンが市民会館まで行って歌ってきた。演奏曲目は『ホワイトクリスマス』とロシア歌謡の『ともしび』である。
 
この日玲羅は今年も公世と一緒に姫路市内の商店街に行ってきて、ケーキを買って帰って来た。
 
また百合さんが今年もフライドチキンを作ってくれたので16時くらいから公世・清香・玲羅・千里でクリスマスをした。
 

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24日の18時頃、千里R・玲羅・公世・和弥・花絵の5人でウィングロードに乗り、神戸空港に向かった。ウィングロードを使ったのは神社にこの車が駐まっていると和弥が居ると思われてしまうからである。運転したのは花絵である。
 
そしてこの5人で桜ジェットに乗り、旭川へ飛んだ。そこから、花絵・和弥・公世の3人はサハリンの車で留萌に向かい、千里と玲羅はタクシーに乗り天子のアパートに行き、お祖母ちゃん孝行をする。空港のケーキ屋さんでケーキを買って行ったのでそれでこちらもクリスマスをした。
 

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25日(火)は天子・瑞江・千里・玲羅の4人で買物に行き、おせちの材料を買って帰って午後からはおせち作りをした。玲羅が
「伊達巻きってこうやって作るのか!」
と感心していた。
「黒豆もいっぱいできたね」
「いっぱい食べて」
「大粒ですね」
と瑞江が言っている。
 
「知り合いからもらった丹波篠山の黒豆なんだよ」
「それは凄い」
 
むろん千里が所有する畑で採れたものである。耕作したのはおキツネちゃんたちだが。
 
玲羅は黒豆・伊達巻き・鰊の昆布巻き・寒天(みかん寒・牛乳寒など)・カズノコ・小女子(こうなご)などのほか、お餅もたくさん食べていた。
 
ついでに天子からお年玉をもらっていた。
 

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24日に留萌に入った和弥は子供が双子である事を常弥と、こちらに来ていた民弥・睦美に報告しエコー写真も見せた。
 
「今は産まれる前から写真があるって凄いね」
 
「だから順調にいけば来年の4月には男の子が2人または女の子が2人できる」
「それはどちらにしても楽しみだ」
「まゆりは、つわりがきついから男の子かもと言ってる」
「ああ。男の赤ちゃんが頑張って男性ホルモン出すとお母さんのホルモンバランスが崩れるのよね」
と菊子。
「双子だとそれがダブルだもんね」
 
「まあ、大事にしてやりなさい」
「うん」
 
「和弥さん、修士論文はもう書いたの?」
「ええ。提出してOKももらって、あとは印刷・製本するだけです」
「だったら後は卒業式を待つだけね」
 
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「でも男の子は生まれた後がまた大変よ。破壊力が凄いから」
「ああ大変そう」
「茶碗割る、コップ割る、障子や襖を壊す、壁を壊す」
「怪我も多そうだね」
「うん。それも大変」
 
「病気とかも男の子が多いんだよね」
「そうそう。女の子のほうが免疫力あるから病気は少ない」
「たまに例外もあるけどね」
「うん。和弥は女の子並みに手のかからない子だった」
と和弥の母・睦美は言った。
 

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「私と和弥は性別逆だったら良かったのにとよく言われてた」
と花絵。
「ああ、茶碗とかよく割ってたのは花絵だね」
と睦美は言っていた。
「茶碗とか持って来て庭に向かってポーンと放りなげるんだもん」
「ひでー」
「だからうちは以前はノリタケのいいお茶碗が揃ってたけど、花絵に大概割られて100円ショップのになったね」
「なるほどー」
「和弥はそういうの無かった」
「やはり和弥は女の子らしい子だったのね」
「まあ女の子の友だちが多かったね」
「スカート穿いてる写真もあったよね」
「ああ結構穿いてた。友だちが穿いてるから自分も穿きたがって。花絵はスカートあまり穿いてない」
「だから私のお下がりとかじゃなくて和弥のためにスカート買ってたのね」
「うん。花絵がスカート穿くようになったのは小学生になってから。でもその頃はさすがに和弥はあまりスカート穿かなくなった」
「男の子という自覚が出てきたんだろうね」
「それでもよく巫女衣装とかは着せられてたけど」
「巫女舞とかにもよく加わってた」
「3〜4年生頃までは巫女舞してた記憶がある」
「うん。その頃まではしてた」
 
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女子高校生・冬の夜なべ(2)

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