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■女子高校生・冬の宴(1)

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2006年9月6日、秋篠宮ご夫妻に悠仁(ひさひと)親王がお生まれになり、小泉首相が強力に押し進めていた、女系天皇を容認する政策は、いったん白紙に戻された。
 

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花絵は秋祭りで留萌に戻って今年は神殿の火の不寝番を務めたが、弟で祭の祭主を務める和弥が初日、女物のドレスを着ていたので、気でも変になったかと思った。奉燈が出発した後で和弥の部屋に行ってみると、女物の下着や、スカート、なども散乱している。(スカートはきっと金色千里の贈り物)花絵は思った。
「この際、もうまゆりさんでもいいから少しでも早くあいつ結婚させなくては。男である内に」
 

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素麺屋継承者問題。
 
姫路市内で“揖保乃糸”を製造している“冷水製麺”は、戦後間もない頃、川岸明という人が始めた。彼には息子が無く、娘ばかりだった。それで末娘の峰子が平田郷史と結婚し。郷史が後継者となった。この平田郷史は立花K神社の先々代宮司・平田晴観(先代宮司・平田茂行の父)の弟に当たる。平田郷史は神社なんて“しんきくさい”物には関わり合いになりたくなかったので、素麺屋の娘と結婚してしまった。しかし、平田郷史と峰子の間にも息子はできず、女の子ばかりだった。
 
越智総次の妻・響子はその三女である。一応、素麺屋および飲食店・冷水食堂は現在長女・晴子と、その夫・西岡広義(専務)が実質運営している。しかしこの夫婦には子供がいない。なお次女の明子は関東で暮らしているが、この人にも女の子しかいない。
 
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この一族はほんとに女の子の多い女系一族である。(まゆりちゃんホントに男の子産める?)
 
それで関西の大学に入るのに平田郷史の家に下宿していた越智総次の娘・春佳はさかんに
「いい婿さん紹介してやるよ」
などと言われて閉口していた。(総次夫婦が姫路に来たので現在は両親と同居中)暫定後継者の西岡さんも現在60歳で本格的後継者問題は急務になりつつあった。それで越智一家は、神社後継問題と素麺屋後継問題の両方に関わっていたのである。 越智の妻・響子はどちらにも関わりたくないと思っていた。
 

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吉本健一は喫煙で高校を首になったあと、解体作業員を2年、建設作業員を3年したあと、冷水製麺に入り、5年間素麺の製造をしてきた。そしてこの10月、冷水食堂のアルバイト店員・岸本京と婚約した。そしてこの婚約により、彼は素麺屋・後継者の有力候補になった。
 
実は京は、平田郷史の孫なのである。平田郷史が若い頃、神社の巫女をしていた女性(当時女子大生)を半ばレイプに近い状態で妊娠させ作った、平田郷史唯一の息子・浩の娘である。浩はその出生の経緯から平田郷史の妻・峰子には嫌われていたものの、晴子・明子・響子の三姉妹からは頼りがいのある兄として慕われていた。それで京も西岡晴子からは“可愛い姪”なのである。そして実は浩は冷水の筆頭株主である。冷水が経営の苦しかった時代彼が資金的に会社を支えてくれた。
 
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春佳は京の婚約で自分への縁談圧力は無くなりそうなのでほっとしていた(甘い!)。
 
京は春佳にとっては従姉にあたる。
 
京は創業者の血を引いてないし、現副社長の峰子が無視している。峰子としては自分の孫である春佳や光貴の系統に継いでほしいのである。しかし素麺屋の創業者は確かに川岸明ではあるが、大きくしたのは50年間社長を務めている平田郷史である。食堂も彼が始めた。また揖保乃糸のブランドに認定されたのも平田郷史の代になってからである。
 

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千里Y2(夜梨子)は、P神社の秋祭りが終わった後、ロビンから“神様のお留守番”を代わってくれないかと頼まれたのを何とか断って姫路に戻った。ところがそれで寝ようとしていた時、急にお腹が空いておにぎりが食べたい気がした。千里は(この家の調理担当の)百合さんを起こすのは申し訳ない気がしたので、コンビニにでも行ってこようと思い、家を出た。それでセブン・イレブンまで行き、シーチキンおにぎりと鮭おにぎりに紅茶のペットボトルを買った。
 
お店を出て帰ろうとしていた時、30代の女性が手招きする。千里はこの人をどこかで見た覚えがあったので、
「どうしました?」
と言って、彼女のほうに行く。すると女性は
「こちらへ」
と言って、千里を導き、やがて立花K神社の境内に入っていく。千里は彼女に付いて行っている内に来たことのない場所に入り込んだ。
 
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千里はここは初めてだったが、似たような感じの場所なら知っていた。
「ここはK神社の深部ですか」
「そうです。さすがよくお分かりですね」
 
それで灯明が並ぶ廊下の奥にある立派なお部屋に入る。K大神ご本人がおられた。
 
「ああ、千里待っていたぞ。妾(わらわ)は神様会議に行ってくる。その間一週間留守番を頼む」
「え〜」
「P大神から聞いたが毎年あちらで留守番を立派に務めていたそうだな。こちらでも頼む」
「そんな。いつもの年はどうなさっていたんです」
「一昨年までは境内にあった桜の木の精に頼んでいた。それが昨年切られてしまったのじゃ」
「なんで」
「桜の木には虫が付くから切ってほしいと近くの住人が」
「ああ」
「全く非道いことをする。あの桜、みんなを守ってあげていたのに。ばちでも当ててやろうか」
「そういう不毛なことはやめましょうよぉ」
 
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神様に意見が言えるのはきっと千里くらい。
 
「それで去年は留守番をおけなかったから、私が不在の間はひどいことになっていた」
「ああ」
「まとにかく今年は千里、頼む」
「はいはい」
 
それで夜梨子はその部屋の神様の座の隣に座ったのである。こちらも昼間は、お園というキツネの女の子が留守番してくれるということだったので、千里の担当は夜間のみである。
 
夜間夜梨子が神社深部に居ると、大神の不在をいいことに、変なのが寄ってくる。すると千里は即、それを粉砕する。それを見て、他の邪霊は寄ってこなくなる。
夜梨子は5人の千里(R,Bw,Bs,Y1,Y2)の中で最も霊力が高い。11時頃、親玉みたいなのがきたが、夜梨子が小指でちょちょいと軽く粉砕したので、その後はかなり静かになった。
 
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(見ていたジェーンは思った。今のは夜梨子だから小指で済んだ。RやBなら本気が必要だったなと)
 
なお、留守番中の食事や飲み物は千里をここに導いた女性、みつ子さんが用意してくれた。それ以外に夜梨子はジェーンに頼んで缶コーヒーやカップ麺などを持って来てもらった。むろんカップ麺を作るのはみつ子に頼む。
 
夜梨子は朝になってお園ちゃんと交替し。外に出たらK神社の本社に居たので驚いたが、自宅まで10kmくらいなので、軽くジャンプして帰宅した。
 
しかし夕方再度神社に行ってみると(深部に行くのは立花K神社から入れる)、変なのがいっぱい入り込んで、お園ちゃんが怯えている。千里があっという間に駆除すると、お園ちゃんが「すごーい」と感動していた。
 
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留守番の本来の仕事というのは、神様ご不在の間に願い事をしに来た人の案件を記録し、神様に伝えることである。しかし神様がいないと自分が神様みたいに尊敬されたい奴や興味本位の奴が神社に寄ってくるので、そいつらを排除する必要がある。自分が尊敬されたい奴には結構強い奴が多いので、こちらもある程度のパワーが必要である。お園ちゃんは願い事の記録はするが彼女には邪霊の排除はできない。弱いのは狛犬ちゃんや御神木の杉の木の精が対処してくれていたが、強いのは手に負えなかった。
 
2日目以降は2時間に一度くらいジェーンが見に行くようにしたが、あまりに大変なのでA大神に訴えたら、大神は夜梨子(Y2)のコピーy(スモール・ワイ)を作り
「お前は神社深部で寝ているだけでいい」
とおっしゃった(ジェーンは大神の「だけでいい」という言葉は当てにならないよなと思った)
 
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(かくして千里の数は増えていく。ポケットの中には千里が1人。ポケットを叩くと千里は2人)
 
しかし夜間の夜梨子の活躍を見ているので邪霊たちは昼間yが寝ているだけで近寄ってこないようであった。それでお園は3日目以降は随分楽にお留守番ができたようである。
 
かくして夜梨子は留萌では留守番から逃げたものの、姫路で一週間、神様のお留守番をする羽目になった。
 
夜梨子は昼間は学校に行くのが本来だが、辛いのでジェーンに頼んだ。それで結局この一週間はほとんどの授業にジェーンが出ることになった(地理はRが出る。また数学と物理は夜梨子が出た)。
 
なお、千里は(お留守番が終わった後)松岡さんに許可を取り、切られた桜の代わりに檜の苗木を植えた。きっと30年くらい後には“K神社の檜”と呼ばれるようになるだろう。境内の樹木にはしばしば神様の余気が宿り、神様の分身のようになるが、檜は杉より成長は遅いものの、より強い精が宿ってくれることが期待できる。
 
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翻田和弥は秋祭りの初日の朝、起きたら女の身体になっていた。驚いたものの、とにかく秋祭りをしなければならないので、結局女の身体のまま2日間過ごし、ふつうに秋祭りを取り仕切った、
 
2日目の最後、21時すぎに神殿に行き、不寝番の人たちに「お疲れ様です」と声を掛ける。番のひとりである(姉の)花絵が
「今年は一度も火が風では消えなかったよ」
と言った。
「凄いね。そんなこともあるんだ」
「昭和20年代に一度あったらしいです。そのときは翌年が大豊作だったらしいです」
と田代さんが言っている。
「だったら来年は大豊作かもね」
「そうなるといいですね」
 

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火が自然に燃え尽きて消えるのを待ち、〆の神事をする。今年この神事に参加したのは、和弥・まゆり・村山さん・七尾さん・小鳩ちゃんである。去年までは 深草(小春)さんのお孫さん?が参加していたが交替したのだろう。こんな遅い時間に行われる行事に小学生が参加するのは何故だろうといつも思って居たが、深草さんは何か特別な家系なのだと祖父は言っていた。何か特別な役割を与えられている一族なのだろう。小鳩ちゃんも苗字が深草らしいし、小春さんと親戚なのだろう。
 
〆の神事が終わり、村山さんがまゆりを連れて帰宅する。不寝の番を務めた人たちが帰るのを見送り、和弥は燈台に火が残ってないことを確認(火の用心)して、拝殿を降りて、自分の部屋に戻った。パジャマに着替えて布団に入る前にトイレに行く。女の形の股間からおしっこが出るので「はあ」と、ためいきをつく。
 
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この状態を2日もやってると慣れてきたけど、これではまゆりに精子を渡せないじゃんと思う。いや彼女に子供を産んでもらわなくても自分で産めばいいんだっけ?その場合、精子はどうしよう。ぼく誰か男の人と結婚するとか。ぼくがウェディングドレスとか白無垢着るのだろうか。なんか恥ずかしー。でも僕が妊娠しちゃったら、妊娠中の神社の神事は誰にやってもらおう??
 
和弥は唐突に6年前のバス事故の時のことを思い出した。事故で重傷を負って、怪我も痛かったけど、男性器に酷い損傷を受けて、危険なのでやむを得ず陰茎と睾丸(陰嚢)を切除したと告げられた時はショックだった。もう人生終わったような気がした。でも翌朝目が覚めたら陰茎と睾丸(陰嚢)は復活していた。医者も首をひねっていたが、結局「何も起きなかった」ことにされて、男性能力のある状態で1ヶ月後に退院した。今回もまた寝て起きたらちんちん復活してたりしないかなあ、などと思いながら和弥は眠りに落ちて行った。
 
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夢の中にまたあの金色の女性が出て来た。彼女は言った。
 
「和絵ちゃん、男の子に戻っちゃうの?」
「僕は男に戻りたい」
「せっかく女の子になれたのに」
「僕は男のほうがいい」
「そんなに男がいいのなら仕方無いね。でももしまた女の子になりたくなったら私を呼んでね」
「君の名は?」
 
女の子になりたくなることがあるとは思えないが、名前は聞いておいたほうがよい気がした。
 
「私はオーリタ。必ず私かオーロラを呼んでね。オーリンを呼んじゃだめだよ。あの子勘違い・思い違い・物忘れが酷いから」
「オーリタかオーロラを呼ぶのね」
「そうそう。じゃ、またね」
と言って、彼女はどこかに行ってしまった。和弥は目が覚めた。そして期待感を持ってお股に触る。
 
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果たしてペニスは存在した!
 
やった!男に戻れた!嬉しい!そして和弥は6年前の事故の時も村山さんに似た女の子の夢を見ていたような気がした。
 

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和弥は枕元に女性下着やスカートがたくさんあるのを人に見られないよう旅行バッグに詰めた。
 
(既に見られていたりして)
 
和弥は普段着のポロシャツとジーンズのパンツに着替え、リビングに行った。
 
「おはよう。お祭り、お疲れ様でした」
と花絵が言う。
「姉ちゃんこそ不寝番お疲れ様でした」
「かずちゃん、御飯にする?パンにする?」
と菊子さんが訊く。
「ちなみにご飯のおかずは」
「たらこ、ごはんですよ、納豆、味付け海苔、のりたま、ひややっこ、」
「パンにしようかな」
 
それで菊子さんはハムチーズトーストを作ってくれた。
 
和弥は姉に言った。
「姉ちゃん、お金貸してくれない?」
「いくら?」
「多分100万円くらい」
「何に使うのよ」
「エンゲージリングを買いたい」
「ああいよいよか」
「僕今無収入だから。できたら出世払いで」
「まあいいよ。利子はといちで」
「さすがにもう少し安くして」
 
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女子高校生・冬の宴(1)

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