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■女子高校生・冬の宴(4)

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“東の千里”はインターハイ予選での貴司とのキス事件をきっかけに、バスケ協会から
「女子選手は女子の部に出てください」
と言われたのだが、千里は自分は男子であると主張した。それで戸籍謄本の提出を求められ出したのだが、バスケ協会は納得せず、11月13日バスケ協会が指定する病院で性別検査を受けて下さいということになった。
 
この時、病院に行って、協会からの依頼状を提出し、カルテを受け取ったのはWonBであるが、出羽のH大神から依頼されたA大神はこの千里をまるごとコピーした。そしてコピーの方にはWを“脱がせた”。結果的にカルテを持ったBのコピーができる。これをB'(ビーダッシュ)という。この子の出没管理はH大神の眷属である美鳳が行う。あわせて美鳳はこの病院のナースの制服を着て、病院に潜入していた。
 
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(ポケットの中には千里が1人。ポケットを叩くと千里は2人)
 
かくしてB'はうまくWとは遭遇しないように、Wと同じ検査を受けたのである、Wは男の形をしてるのに対し、B'は中身は男でも外形は女である。それで「心理的には女だが性器の形状は男性の股間に酷似している」という診断書(M)と、「染色体は男だが、心理的には女で股間は“女性の股間に酷似している”という診断書(F)の両方が作られてしまった。後者の診断書にはこのような意見が添えられていた。
「クライアントの身体は性転換手術を受けて女性になった人に似ている。しかしクライアントは喉仏が無く、ヒゲなどの体毛も生えておらず、なにより骨盤の形状が完全に女性型なので、元々睾丸が欠損していたかあるいは思春期以前に睾丸が除去され、思春期の男性ホルモンのシャワーに曝されていないのは確実である」
 
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病院では美鳳が
「同じ受付番号で診断書が2枚あるのは2回プリントしたのかな」
などと言って、時刻の新しいほうの診断書(F)をバスケ協会に郵送した。
 
それで協会では「やはり女性であったか」ということになり、千里が中学時代に使用していた女子選手としてのid番号を復活させて所属チームを旭川N高校女子に変更してバスケ協会の会員証を発行し、学校に診断書のコピーと一緒に送付。次の大会からは女子の部に出るよう通知した。かくして千里は病院では「男性の股間に酷似している」という診断書が書かれたのを見たのに、学校では「女性の股間に酷似している」と書かれた診断書を見せられて驚愕することになる。それでともかくも千里は女子バスケ部への移動を通告されるのである。
 
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留萌。
 
桜鱒養殖プロジェクトでは7月下旬から留萌湾内に設営した養殖場で桜鱒の稚魚を育て始めたのだが、12月の頭にこういう噂が流れた。
「留萌湾で釣りをすると桜鱒が釣れるらしい」
 
更に漁協関係者からこんな話まで出てくる。
「地引き網の漁獲物に桜鱒が混じってる」
 

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「養殖場の桜鱒が逃げ出しているのでは」
「調べてみよう」
 
それでプロジェクトメンバーが調査してみると、養殖場の網に数ヶ所破損箇所が発見されたのである。
 
この養殖場は海を網で区切って生け簀状態にしているのだが、その網が破れて、飼っている桜鱒がそこから外に出られる状態になっていた。逆に生け簀内に他の魚が居るのも発見された。網の破損箇所から侵入してきたものと思われる。
 
「自然に破れたのかな」
「ヒグマが来た時、破ったのかも」
「ああ。その可能性もあるね」
 
メンバーは取り敢えず網の補修をしたものの、最終的には、作り直しが必要と思われた。
 
「普通の網、金網、鉄格子の三重構造がいいと思う」
「今年は無理だな」
「うん。来年はそういう構造で作ろう」
「鉄格子とか動物園だな」
「ヒグマは猛獣だからね」
「サメとかシャチ対策にもそのくらいしっかりしたものが必要だと思う」
「そこまでやるとなると、また陸上養殖に切り替える選択肢が浮上するな」
「それ選択と言うより、海面と陸上の2方面作戦で行く手もあると思う」
「佐々木君、陸上養殖する場合の必要な設備と費用概算を計算してみてくれない?」
「分かった」
「こないだ市長さんと話したんだけど、議会の承認は必要だけど、小型の風力発電ユニットを作っても良いと言ってた」
「風力発電か」
「なるほど。そういう手もあるか」
「風力発電で作った電気はいったん蓄電施設に貯められるから、それが非常電源の役割を果たす」
「うまいな。それ」
「化石燃料を燃やす非常発電施設よりエコだね」
「エコを主張できるのはいいね」
「うん。魚を売り込む時のセールスポイントにもなる」
「じゃそれも含めて費用概算してみる」
「よろしくー」
 
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陸上養殖の可能性が浮上したので、千里は三泊北部の小平町(おびらちょう)との境界近くに、風力発電所と養殖場が取れる程度の土地を購入した。結構な面積を買ったのに1000万円しかせず、お買い得だなと思った。
 
留萌市では風力発電で成功している近隣の苫前町(とままえちょう)から技術者を招き、小型の風力発電所を建設し始めた。
 
また千里は柳里君たちと話し合い、風力発電を補完する設備として敷地内にソーラーパネルを50枚並べて一般家庭10軒分程度の電力を自給することにした。
 

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交野と片倉は10月にプリンセスというスーパーの経営を受け継いだのだが、そこと直接の資本関係は無いものの、プリンセスの社長が筆頭株主であったPドラッグというドラッグストアの面倒も見てくれないかと言われ、引き継ぐことにした。ここは多くの店がプリンセスと店舗が隣接していて、一部商品も重複していた。それでトイレは共同で利用できるようにしたし、安いトイレットペーパーをこちらにも置いた。また買った物のお届けサービスも共同ですることにした。それでPドラッグは万桜の7つめの子会社となった。
 
天野産業
┣天野海運
┣播磨製紙・播磨合板
┣岡山新鮮産業
 ┗北陸新鮮産業・姫路新鮮産業など
┗万桜HLD
 ┗万代堂・桜製菓・銀馬車・銀馬車亭・姫北ハム・プリンセス・Pドラッグ
 
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千里の事業はこの他にミンタラHLDの系統に多数の製材所・山山家具・ユーニンがある。また神社を通して立花会館・三泊会館も実質運営している。それ以外に桜鱒・鰊の養殖事業がある。
 
(きっと千里は青年実業家)
 

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千里は11月上旬、きーちゃんから
「不動産屋さんのCMを撮るよ」
と言われた。これはちょうどお留守番の直後になったので応じたのはRである。
 
それで姫路ハウジングさんのCM撮影をした。“姫路ハウジング”などというから、てっきり姫路の会社かと思ったら、神戸の会社だった!それで神戸市郊外の住宅展示場に行き、モデルハウスのお庭やリビングでフルートを吹いた。ただし音は別途スタジオ録音である。こういうのは北海道でやっていたのと同じ方式だ。使用したのは“銀桃”で曲はフランス民謡の『月の光に』である。このCMは神戸など阪神地区でのみ流れ、姫路市では放送されなかった。見られると、みんなに、特に吹奏楽部の望美ちゃんなどに何か言われないかなと思っていたのでほっとした。
 
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なおギャラの100万円は、千里ときーちゃんで山分けした。
 
 

その日千里は太田フルート工房に呼ばれて試作品のフルートの試奏をしていたのだが、ふと言った。
 
「でもこの子も先日頂いたフルートも平均律ではないんですね」
「うん。それが分かるのはさすが耳がいいね。ソロ演奏で映えるように音程を微調整してるんだよ」
「なるほどー。トゥッティ向きではないんですね」
「メーカー品には平均律で作られたものが多数あるよ」
 
というので千里は太田さんと一緒に白鷺楽器に行く。
「例えばこれとか平均律だったと思う」
と1本のフルートを手に取る。太田さんがお店の人に視線をやる。お店の人が
「吹いてみていいですよ」
と言ったので千里は音階を吹いてみた。
「ほぼ平均律ですね」
「あはは。なかなか厳しい」
「C#だけが僅かに高いです」
「ほんとに耳がいいね」
「平均律の楽器をお求めなら、これとかはいかがでしょう」
とお店の人が別のメーカーのものを勧める。
「ああ」
と太田さんも頷いている。
 
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試奏させてもらつたら、少なくとも千里の耳では平均律の音だと思った。
「じゃこれ買います」
 
と言って、千里はその60万円ほどのフルートを現金で買った。
 
(千里が多額の現金をバッグから出したので太田は驚いたが、実は千里はきーちゃんに「現金貸して」と呼びかけてからバッグの中を見たら100万円入っていたので、それで払った)
 
 
千里が現金で払ったのでお店の人が言う。
「お客さん、クレカはお持ちでない?」
「いいえ」
「お作りになりません?今ヤマハのカードのキャンペーンしてますよ」
「私高校生だからまだカードは作れません」
「ああ!だったら、これなら高校生でも作れますよ」
と言って、お店の人はVISAデビットカードの案内を渡した。
 
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千里はこのフルートにどん栗の絵のシールを貼った
のでこれを“銀栗 silver nuts”という。平均律→どんぐりの背比べという発想である。きーちゃんは
「桃と言えば栗だよね」
と言っていたが。
 

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その日千里は市内の竹刀製作所の人と笛製作所の人を山奥の自分の山の竹林に連れて行き、ほしい竹に目印の黄色いリボン・青いリボンを巻いてもらった。山奥への往復はロデムが操縦する小型ヘリを使用する。2人乗りなので、操縦士のロデム以外には1人しか乗らない。それで2人を運ぶのに2往復してもらった。
 
竹を選んでもらった後、ロデムに2人を里に送り届けてもらい、九重にリボンを巻いた竹を切って取り敢えず1ヶ所に集めてもらうのを千里が見ていたら、ヘリが戻って来る。
「どうしたの?」
「千里さんを里にお送りしますよ」
「私は大丈夫なのに」
と言うが、九重が
「先に降りててください。私は竹をまとめてから持って降ります」
と言うので
「じゃ、よろしく〜」
と九重に言って、千里はロデムのヘリに乗った。
 
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このヘリは2人乗りで、左右に座席が並んでいる。左側の機長席にロデムが座り、右側のコーパイ席に千里が座っていた。
 
(一般に固定翼機では右が機長席で左がコーパイ席だが、ヘリコプターでは左が機長席で右がコーパイ席。これは機長が右手で操縦桿を操作できるようにするため)
 

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それでヘリが飛んでいる時、突然ロデムが胸を押さえて苦しそうにする。
 
「どうしたの?」
「胸が苦しい。心筋梗塞か何かだと思うんですが」
「それはいけない。ちょっと待っててね。取り敢えずヘリをどこかに降ろそう」
 
その時千里はすぐ先に学校のような物を見た。千里は青池に直信した。
 
「青池さん。今から伝える緯度経度に何があるか教えて。学校みたいなのが見えるのよ」
と言って千里は位置情報を伝えた。
「それは**分校ですが既に廃校になってて、今は何にも使われてません」
「ありがとう」
 
千里は廃校ならそこの校庭にへりを降ろしてもよかろうと判断した。それで
「コントロールこっちにちょうだいね」
とロデムに声を掛けると、左手で操縦桿を操作し、ヘリを校庭に寄せる。そしてゆっくりと高度を下げ、校庭のド真ん中に着陸させた。ヘリが停止すると、千里はすぐにロデムをきーちゃんの家に転送した。そしてきーちゃんに直信する。
「きーちゃん、ロデムが具合が悪いみたいなの。そちらに転送したから見てあげて」
「分かった」
 
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それで、きーちゃんは廊下に出るとロデムに声を掛けた。
「あんたなにやってんのよ」
 
ロデムは苦笑いして手を振った。
 
千里はヘリを完全に停止させると自分もきーちゃんの家にジャンプした。
 
「どうだった?」
「無事。だいぶ落ち着いたよ。今ベッドに寝せてる」
「無事なら良かった」
 

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きーちゃんはロデムの部屋に入ると“椅子に座っている”ロデムに言った。
「千里はいったん家に帰したよ」
 
ロデムは言う。
「しかし飛行中にパイロットが苦しみだしたら乗ってる人は普通パニックにならない?」
「あの子は普通じゃないから」
「きれいにヘリを操縦して着陸させた。あの子ヘリの操縦できたの?」
「あんたが操縦してるの見てたから見よう見真似だと思う」
「見るだけで操縦できるもん?」
「あの子はそういう子なのさ」
「しかも操縦桿を左手でちゃんと動かしてたし」
「あの子は左利きだから」
「ああ!」
 
「降りられる場所探すのに、緯度経度を伝えてたのはGPSをいつも持ってる?」
「そんなものなくてもあの子は自分の居る場所の緯度経度くらい分かるよ」
「うっ」
「まあ、あんたもからかう相手を間違えたね」
「千里は凄い奴だ」
「私たちはその凄い人に仕えてるのさ」
 
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千里Rはその日、きーちゃんと一緒に北陸のある町に来ていた。他に居るのは、桃源、天機、桃月、順恭、七尾善美(子牙)、月夜、それに地元の霊能者で慈眼さんという結構高齢の女性である。
 
例によって、セーラー服姿の紫微が言う。
「みなさん、お疲れ様。今日みなさんにしてほしいのは登山道の“清掃作業”です」
「以前九州でやったね」
「そそ。あれは観光道路だったけど、今回は登山道。でも同様のことを冬山シーズン到来前にやる」
「既に冬山だという気もするが」
「まあ、山の上のほうはそうかもね」
 
山には多数の亡霊・邪霊・雑霊が居るのでそれを“掃除”して、登山者がより安全に登山できるようにしようという趣旨である。
 
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「今回の報酬は1人400万円ということで」
「九州でやった時より多いね」
「登山が趣味の国会議員さんのグループが出してくれた」
「へー」
 
千里は桃源に小さな声で訊いた。
「あの人(慈眼)誰かガードしなくても大丈夫?」
「平気平気。あの人、今年の春にはハーフマラソン走ってるから」
「すごっ」
 

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この作業は危険ではないが、邪霊・亡霊の類いを一瞬で粉砕できる法力、自分の身は自分で守れる防御力が必要である。あとは登山道を歩ける脚力である。千里ときーちゃんは今日は登山靴を履いている。念のためアイゼンも持って来たが使わなかった。でもホットグローブは役に立った。この冬山でスカートを穿いていて生足を曝している某紫微のことは取り敢えず気にしないことにする。世の中には凄い人が居るもんだと千里は思った。
 
しかしそれで紫微まで入れた10人は1日かけて登山道の清掃作業をした。なお、善美の分は実際には千里Vが処理している。
 
(善美はもらった報酬を全部千里にくれたが千里は「ブランド料だよ」と言って半分返した)
 
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千里は念のため南田息子(追風)を慈眼のそばに付けておいたが、慈眼は実際には全く危なげが無かった。険しい道も軽快に登って行くので、スーパーお婆ちゃんだなと思った。慈眼が癌に倒れるのは7年ほど先である。
 

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その日、播州銀行の支店長は交野と一緒に立花K神社を訪れていた。
「村山さん、こちら播州銀行の姫路中央店の支店長さん。君と話したいらしい」
 
それで神社の応接室でお話をした。
「何でしょうか」
「峠の丼屋さんというのが元々やっておられた会社ですか」
「ええ。私は北海道の留萌という所の出身ですが、ほんとにそこの峠道に丼料理を出している店があるんですよ。留萌の市内にも支店を作っていますが」
「会社は天野産業というんですね」
「私は未成年で会社役員にはなれないので、知人に代理で社長をしてもらっているんですよ」
「そこの収入が大きいのかな」
「小さいですよ。半分道楽みたいなお店ですね。一応店は黒字ですが」
「元々資産家でいらっしゃるんですか?遺産か何かで」
「うちの親は貧乏ですよ。電気代払えないとか言ってよく私に泣き付いてきますし」
「するとあなた独自の収入源があるんですね」
「そうですね。北海道では、不動産屋さんのCMに出演してましたから、そのギャラを年間数百万頂いていました」
「なるほど。芸能収入ですか」
「後は私は占い師なので、その報酬が大きいです」
 
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支店長は試してみたくなった。姫路市の地図を広げる。
 
「交野さんからお伺いしましたが、あなたの占いは凄く当たるらしいですね。ちょっと見てもらえません?今うちの銀行で、この場所とこの場所のどちらかに新しい支店を出そうと計画してるんですが、どちらがいいと思います?」
 
千里は筮竹で易を立てた。そして言った。
 
「支店長さん、からかってはいけません。既に中井町の方に決定済みですよね」
 
支店長は参ったと思った。
 
「ご相談なんですが」
「はい」
「定期預金とか少し作って頂けません?」
「いいですよ。じゃ100万円を3本とかでもいい?」
「ありがとうございます」
゜じゃ通帳預けますから。この口座に」
「分かりました。あとクレジットカードも作られませんか」
「私まだ高校生だから作れないと思う」
「高校生でも収入がある方でしたら作れますよ」
と言って、支店長は書類を出した。それで“西の千里”は最初のカードをここの銀行で作ることになったのである。千里は本人確認書類として、この神社から交付されている健康保険証と、生徒手帳を提示した。支店長はそれを神社のコピー機を借りてコピーしていた。
 
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女子高校生・冬の宴(4)

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