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■女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-08-14
 
なお、この日の朝、千里が暢子や絵津子たちに梵字を書いてあげていたら揚羽たちも「力の出るおまじないなら私にも描いてください」などと言うので、今日は雪子と留実子以外の全員に書くことになった。
 
「なんで私はダメなんですか?」
と雪子が言うので
「この梵字は力を引き出す代わりに消耗も激しくなるんだよ。雪ちゃんの場合はそれでは体力が持たないから」
と千里は言う。
 
「確かに雪子ちゃんは体力が無いのが唯一の欠点」
と南野コーチも言う。
 
「もっと食べなくちゃ」
「入りませんよ〜」
 
「千里ちゃんも昔は食が細かったけど随分改善されたね」
と南野コーチ。
「まあ千里は《可愛い女の子でありたい》というので無理して我慢してたんだよ」
と暢子は鋭い指摘をする。
 
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「雪子は別に男の娘でもないから気にすることないだろうに」
と志緒。
「別にスタイルを気にしてる訳じゃないよ!」
と雪子。
 
また留実子は
「僕はおまじないとか関係無しに頑張る」
と言っていた。
 

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この日、女子は3回戦の8試合が行われる。
 
今日の旭川N高校の対戦相手は今大会の注目株、倉敷K高校である。昨日も大差で勝って3回戦に上がってきた。
 
今年の夏は3回戦で静岡L学園に敗れてBEST16に留まったものの、昨年のインターハイ・ウィンターカップではBEST8(各々岐阜F女子高・愛知J学園に敗れる)、そして一昨年のウィンターカップの優勝校である。今年の3年生の中にはその2年前に優勝した時のメンバーも2人入っている。それがキャプテンでセンターの愛宕さんと、ポイントガードの烏丸さんである。2人は春のトップエンデバーにも招集されていた。
 
烏丸さんは2年前にこの東京体育館で行われたウィンターカップ準決勝で愛知J学園の入野さんと渡り合った経験の持ち主である。むろん当時は控えポイントガードという立場だったので出場時間はそう長くはなかったと思うが、ともかくもK高校はその試合でJ学園を1点差で破り決勝に進出し、同様に札幌P高校を1点差で破った福井W高校と決勝戦を戦い、優勝を決めたのである。そしてその準決勝での最後の決勝点を挙げたのが今はキャプテンとなった179cmの愛宕さんであった。
 
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そのウィンターカップ優勝校も昨年は振るわず、今年の夏もBEST16であった。しかし今大会この学校が注目されているのは182cm,85kgの大型フォワード・高梁王子(たかはし・きみこ)の存在だ。春からバスケを始めて全国で活躍できるフォワードに成長したことから『女桜木春道』の異名もある。天然の赤い髪を短く刈り上げている所は、容貌も桜木春道に似ている感もある。
 
ネットでは彼女の写真を見て「ワイルドだけど美人じゃね?」という書き込みもあったが、それを見て本人(と推定される人物が)「男の娘だったりして」と書き込んだことから、病院で性別検査を受けさせられたというのが、また本人(らしき人物)により書き込まれていた。
 
しかし千里たちはこの強力な攻撃陣にどう対抗するか、一週間前からビデオを見ながら色々と検討をした。
 
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しかし今日勝てばBEST8に進出することになる。
 
千里は全国大会に3度目の出場をしてBEST16とBEST8とは大違いだというのを認識していた。BEST8になる学校というのは、まさにトップクラスのチームだ。まぐれでBEST16になることはあっても、BEST8は相当の実力が無ければほとんど無理。もっとも昨年のインターハイで旭川N高校がBEST4まで行ってしまったのは、まぐれと幸運と対戦チームの油断があったこと、どこもうちを未研究だったことがあったと、今になれば思う。
 
しかし今年のインターハイのBEST4は本当に実力で勝ち取ったBEST4だ。こちらをよく研究し、対策を取ってきたチームに勝って準決勝まで上がっていった。
 
そんなことを考えながら、朝1番に東京体育館のコートに入った時、千里は今日の対戦相手・倉敷K高校のベンチに思わぬ人がいるのを見て、まさに仰天した。彼女は千里と目が合うと笑顔で手を振った。
 
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うっそー!?
 
それは出羽の修行仲間で、1970年代に日本代表(フル代表)として活躍した「伝説のシューター」藍川真璃子さんだったのである。
 
千里は慌てて大会名簿を見る。倉敷K高校アシスタントコーチとして田中真璃子の名前がある。結婚して田中さんになっていたのか!? でも出羽の修行では彼女は藍川を名乗っていた。それで全く気づかなかったのだ。
 
倉敷K高校のプレイの映像は、地区大会のものを一週間前から、本戦に入ってからのものも昨夜見ているが、編集されたダイジェスト版であったこともあり、コート上の選手のみ映っていた。ベンチも元映像では映っていたのかも知れないが、おそらく編集でカットされている。それで見ても気づかなかったのだろう。
 
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千里の様子に気づいた南野コーチが声を掛ける。
 
「どうかしたの?」
「向こうのチームのアシスタントコーチ、私の先生なんですよ」
「え?」
「ある時期、私はあの人について随分シュート練習をしたんです。それで私のシュートの精度はものすごく上昇したんですよ」
 
「ということは、向こうは千里ちゃんのこと、千里ちゃん自身よりよく知っていると考えた方がいいね」
と南野コーチは言う。
 
「向こうのアシスタントコーチがどうしたって?」
と揚羽と別の話をしていた宇田先生が尋ねる。
 
「私のシュートの先生です。私はあの人について1万本か2万本くらいシュート練習してますよ」
 
「ああ、向こうもシューターなの?」
「結婚して苗字が田中になっていますが、元は藍川と言ったんです」
「藍川真璃子!?」
「元日本代表の?」
「ええ。そうです」
 
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「前から倉敷K高校に居たっけ?」
「倉敷K高校の試合は一昨年のウィンターカップ、昨年のウィンターカップと生で見ていますが気づかなかったから、最近スタッフに入ったんではないでしょうか? 最後に会ったのがこの春ですけど、暇だ暇だとか言っておられましたし」
 
藍川さんは今冬の出羽の山駆けには参加していないのである。9月の「表の修行」(神子修行)にも参加していなかったので体調でも悪いのだろうかと心配していた。
 
「そういう相手なら村山君のことは徹底的に分析しているだろうね」
と宇田先生。
 
「たぶん私本人より詳しいです」
と千里。
 
「どうします?この試合は水嶋(ソフィア)を先発させますか?」
 
と南野コーチが尋ねるが、宇田先生は少し考えてから
 
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「では村山君、その元先生の前で成長した姿を披露しておいで」
と笑顔で言った。
 
「はい、打倒してきます」
と千里は答えた。
 

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千里は2年前にウィンターカップを会場まで見に行った時、倉敷K高校が優勝を決めた試合や、あるいはもっと重要だったかも知れない愛知J学園との準決勝は生では見ていないものの、準々決勝の金沢T高校との試合を生で見て「全国レベル」の物凄さを実感した。
 
その後千里は縁があって出羽での冬山修行に参加することになるが、そこで体力を徹底的に鍛え直されるとともに、藍川さんと知り合い、彼女にたくさんバスケットについて教えてもらった。月山頂上に置かれたバスケットゴールはふたりがそこで練習するのに設置してもらったものである。その藍川さんが今敵のコーチとして向こう側のベンチに座っている。千里は闘志が湧き上がってくる思いであった。
 
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N高校は、雪子/千里/絵津子/暢子/紅鹿というオーダーで出て行った。一方のK高校は烏丸/山王/広瀬/高梁/愛宕というオーダーである。
 
向こうのキャプテン愛宕さんとこちらのキャプテン代行雪子で握手した後、ティップオフは愛宕さんと暢子で争う。愛宕さんが取って広瀬さんがボールを確保。彼女がドリブルして攻め上がる。この時、紅鹿がピタリと高梁さんに付いた。
 
広瀬さんは高梁さんにパスしようとするのだが、紅鹿が高梁さんにくっついていて、色々動き回るもののどうしてもマークを外すことができない、それで広瀬さんがそのまま進入を試みるも暢子に行く手を阻まれる。そこで烏丸さんに戻そうとするのだが、そこを素早く千里がカットした。
 
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そのまま自らドリブルして反転。攻め上がるが、そこに向こうの山王さんが追いついてきて千里の行く手を阻む。ドリブルしながら1−2秒相手の呼吸を伺う。複雑なフェイントを入れた末に右側を抜いた。
 
と思ったら千里はボールを奪われていた。
 
今度は山王さんがドリブルで攻め上がる。
 
高梁さんを見るが高梁さんには紅鹿がピタリと付いている。山王さんはそれでも高梁さんにボールを渡そうと、紅鹿のいる側と反対側、ぎりぎり高梁さんが取れそうな位置にボールを投げる。しかし紅鹿は一瞬の瞬発力で飛び付くようにしてボールを確保した。
 
紅鹿は体勢を崩していたが、それでも雪子の前方に向けてボールを投げる。雪子が高速ドリブルで攻め上がる。
 
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千里と絵津子が全力で走って雪子に先行する。それで雪子は今度は絵津子にパスする。絵津子が必死で戻って来ていた烏丸さんをうまく交わしてシュート。
 
これがきれいに決まり、この試合で序盤の激しい攻防切り替わりの末、最初に得点を挙げたのはN高校の絵津子であった。
 

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第1ピリオドで旭川N高校は紅鹿が相手の中心得点源である高梁さんにピタリと付いて、そのプレイを悉く邪魔した。どうしても高梁さんの方がうまいので何度かパスが通り、ゴールも決めたが、あげた得点はわずか6点に留まる。他の選手が高梁さんに何とかパスをしようとした結果、紅鹿や千里などによるインターセプトで、高梁さんはこのピリオドだけで8個ものターンオーバー(攻撃中に相手にボールを取られた時に付けられる)を記録されるハメになる。
 
更に高梁さんは強引に紅鹿のマークを振り切ろうとして、このピリオドだけでファウルを3つも犯してしまった。
 
ところで高梁さんのマーカーを紅鹿にさせることにしたのは、何と言っても本人がやりたいと言ったからである。
 
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182cm,85kgの体格の高梁さんには、それなりの体格のある選手でなければ対抗できない。小柄な絵津子や雪子にはできない仕事である。184cm,85kgの留実子なら対抗できそうだが、困ったことに高梁さんは留実子を遙かに上回るスピードを持っている。177cm,70kgの暢子、175cm,65kgの揚羽、174cm,60kgのソフィア、の3人を候補として検討していた時に、紅鹿がやりたいと言い出したのである。確かに体格的には177cm,72kgでいちばん対抗できる可能性がある。しかし技術的にはとても高梁さんにかなわない気がした。しかし彼女は地区大会の彼女のプレイをよくよく見て研究して頑張りたいと言うので、前半を彼女に任せることにしたのである。
 
そして少なくとも第1ピリオドでは紅鹿は自分の仕事を充分やり遂げた。
 
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一方で倉敷K高校は山王さんがピタリと千里に付いて、このピリオドでは千里に全くまともなシュートを撃たせなかった。千里が彼女を抜こうとすると高確率でボールを奪われる。奪われないにしても進路を阻まれる。めったにファウルの無い千里がこのピリオドでは2個ファウルを取られてしまった。またシュートしようとしても、タイミングを完全に合わされてしまい、全部叩き落とされるか落とされなくても指を当てて軌道を変えられた。
 
これほど千里を封じた人は、千里はまだ男子として試合に出ていた時の1年秋のウィンターカップ道予選決勝での札幌Y高校での試合以来だと思った。自分はあれから物凄く進歩したつもりでいた。しかし自分にはまだ大きな欠陥があるのだろう。それをよく知っている藍川さんが指導していたゆえにこんなにも封じられるのだろうか。千里はそんなことを考えながらも、色々自分の頭の中のロジックを変えたりして対抗するも、このピリオドでは1度も山王さんに勝てなかった。
 
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結局千里もこのピリオドでターンオーバーを8個も献上してしまった。
 
得点は向こうは愛宕さんや広瀬さんが頑張り、こちらも絵津子や暢子が頑張って18対16とほぼ互角の展開である。
 
ピリオド終了のブザーが鳴った時、千里は向こう側のベンチに座って厳しい顔でコート上を見ている藍川さんの姿が巨人のように見えてしまい、自分がとても矮小な気持ちになってベンチに引き上げた。(バーバラ・ウォーカーのタロット)の聖杯6の絵柄だなと千里は思った。
 

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「千里、完璧に読まれていたね」
とマネージャーとしてベンチに座っている薫が声を掛ける。
 
「ごめーん。途中で色々ロジックを変えてみて、こないだノノちゃん(釧路Z高校の松前乃々羽)相手に試してみた方法もやってみたんだけど、それにも付いてくるんだよ」
と千里は、珍しく弱音を吐く。
 
「ああ、やはりそうか」
と薫が言う。
 
「やはり?」
「今まで使ったことのなかった方法にでも相手が付いてこれるというのは、これは千里の癖を見抜いてどちらを抜くかを判断しているんじゃない。千里、今のピリオド全部停められていたろ?」
「うん」
 
「相手の動きを予測するだけで全部停めることは不可能だよ。誰かが山王さんに千里が左右どちらで来るか教えている」
「へ?」
「恐らく、千里のことを知り尽くしている向こうのコーチが何かサインを出して、それを見て山王さんは動いているんだよ」
 
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「でも角度的にベンチは見えないはずだよ」
 
「だから客席にコーチのサインを中継している人がいるのさ、きっと。それもどこからでも見られるように数ヶ所にね」
 
「えー?」
「それ応援団の誰かが旗とかで合図しているのでは?」
と南野コーチが言う。
 
「ただね。サインを中継するには、どうしてもゼロコンマ数秒掛かるじゃん」
と薫。
「だろうね」
「だから千里、どちらから行くかを決めてから、実際にそちらに行くまでの時間を短縮できない?」
 
「・・・・・」
「サイン中継のための光速と千里の思考速度との勝負だな」
と薫は言った。
 

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千里はコートに出て行きながら考えた。
 
自分がどちらに行くかを決めるのは相手の呼吸などを見て実際に行動するほんの0.1-2秒前だと思う。そのわずかな時間に藍川さんが自分の動きを読んでサインを出したとしても、その短い時間で中継者を介してサインを伝達するなんて絶対不可能ではないか?
 
もし本当に藍川さんが教えているのなら、それは伝達方法はひとつしか無い。
 
テレパシーだ。
 
その結論に達した時、千里は猛烈に怒りが込み上げてきた。
 
バスケットでコーチが試合中のプレイヤーに指示を与えることは違反ではない。ただそれは声を出して伝えるのが基本である。アメリカン・フットボールの場合はコーチとクォーターバックが無線で会話しているがバスケットボールの場合、通信機器を装着してプレイすることは許されない。
 
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テレパシーでの通信はいわば無形の通信機器を使っているようなものであり、ルール上は違反ではないかも知れないが、ルールの精神を逸脱するものだし、そもそも超常的な能力をスポーツに使うべきではないのだ。千里も試合中は一切のその系統の能力を封印している。眷属たちにも試合中は絶対に介入してはいけないこと、自分に語りかけたりしてもいけないことを徹底させている。
 
第2ピリオドはオルタネイティング・ポゼッションがN高校の番だったので、このピリオドでパワーフォワードの位置に入っている揚羽がスローインのためにサイドラインに行く。その時千里は相手側ベンチに居る藍川さんを見るとニコっと満面の笑みを見せた。へ?と藍川さんが驚いたような表情をした。千里は今度は可笑しさが込み上げてきた。
 
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女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(1)

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