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■女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(3)

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そして明日の対戦相手はインターハイ準決勝で旭川N高校に勝ったインターハイの準優勝校・静岡L学園である。その日千里たちは夕食の後で、事前検討会を開いた。
 
「基本的な陣容はインターハイの時と変わっていない。ただひとりひとりがそれぞれ成長しているから、前回と同じ相手だとは思わない方がいい」
と白石コーチは言った。
 
「基本的にラン&ガンのチームという性格は同じだと思う。ただ岡田君のシュート精度がかなり上がっているみたいだね」
「やはりインターハイの準決勝のうちとの試合で最後に決勝点を決めたのが凄い自信になったんじゃないでしょうかね」
 
と薫が言うが、その件では暢子が渋い顔をしている。そのプレイは暢子が滑って転んでボールをこぼしてしまったことから生まれたプレイである。暢子はあの時の自分のミスの分を取り返すためにウィンターカップに出ることを目指したと言っても過言では無い。
 
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「村山君は当然厳しくマークされると思う」
「そんなのは気にしません。振り切るだけです」
「うん。頑張って」
「誰が千里をマークしますかね?」
「インターハイの時と同様に赤山さんなんじゃないかなあ」
「中途半端な選手を使ってもどんどん振り切られるから結果的には4人対5人で試合しているような雰囲気になってしまう。すると強い人が千里をマークするしかない」
「その分、得点能力が落ちるのはやむを得ないという考え方ですよね」
 
そんなことを話しながら、今日の静岡L学園の試合のダイジェストビデオをみんなで見て更に細かい検討をした。(選手たちがお風呂に入り夕食を取っている間に白石コーチが編集してくれたものである)
 
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このミーティングが終わった時、千里は玲央美からメールが入っているのに気づき、電話をしてみた。
 
「千里の占い凄いね」
と玲央美は言う。
「え?」
「あのタロットカードを見た時、これは事故が起きる予兆だと思ったんだよ。そしたら昨夜、まさに危ない事故があってさ」
「もしかして秋子ちゃん、怪我した?」
 
千里は彼女たちが腰を抜かした時にどこか痛めたりしてないかと心配した。
 
「幸いにも怪我は無かった。夜間お腹が空いたといってコンビニにチキン買いに出ててさ、ホテルの前の道路を渡ろうとしていた時に、向い側の工事現場から巨大な鉄骨が落ちてきたんだよ。しっかり固定されていなかったみたいで」
「きゃー」
 
「幸いにもギリギリ当たらなかったんだけど、当たってたら死んでたと思う」
「怖いね!」
「千里、実はあの後、祈願か何かしてくれたのでは?」
「うーん。まあちょっとね」
「やはり。おかげで秋子も月絵も命拾いした」
「良かった良かった」
「ふたりとも夜間外出・門限破りで今日は謹慎させてゲームに出さなかったんだけどね」
 
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「まあ場合によっては強制送還だよね」
「1年生全員で嘆願書書いてきたんで、1日謹慎で済ませた。どうも1年生全員で、あみだくじやって、それで負けて買い出しに行ったみたいでさ」
「なるほどねー」
「それで当人たちも含めて昨夜は1年生全員、夜中に10kmジョギング」
「まあトレーニングだね」
「私も部長責任で付き合わされたけど」
「お疲れ様」
 
「でも千里が何かしてくれたみたいだなと思ったから、御礼言っておこうと思って」
「まあ私は大したことしてないよ。基本的に秋子ちゃんの運が強いんだと思う」
「そうかもね〜」
 

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ところで今日の試合後に暴力行為をした高梁さんは、運営側から事情聴取をされ、老齢の審判委員さんから無茶苦茶叱られたらしい。更に監督からは「もうお前バスケット辞めろ」と言われたらしいが、本人もそれはまだ辞めたくないということで少しは反省する気になったようであった。
 
それでその日の21時過ぎになって、キャプテン・監督・コーチに急遽地元から駆け付けてきた校長まで一緒になってN高校の宿舎を訪れ、今度は本人がちゃんと紅鹿に謝った。
 
「本当に女か?なんて言ってごめんなさい。山下さん充分女らしいと思う」
と高梁さん。
 
「いや、お前男だろ?なんて言われるのには慣れてるし」
と紅鹿。
 
「私なんかは小さい頃よく、お前チンコ付いてるだろ?って言われてたけど」
「あ、それは私もだ」
 
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などと言って、一瞬ふたりは和んでいた。
 

彼女たちがV高校を訪れた時、暢子・千里・揚羽・雪子も同席した。その時、藍川さんが千里に《心の声》で語りかけてきた。
 
『今日は負けた。あんたは偉い』
と藍川さん。
『テレパシーでの通信はルール違反のボーダーラインだと思いますけど』
『テレパシーで話してはいけないというルールは無いはず』
『でもルールの精神に反します』
『ふふふ。あんたってアンフェアってのが嫌いだもんね』
『でも高梁さんが主張した<ずるい>は少しおかしいです』
『うんうん。この子まだルールとかゲームの機微とかが分かってないのよ。ちょっと鍛え直すわ。ごめんねー。ちなみに山王は私からのテレパシーを受けているという意識は無かったと思うよ。あの子感応しやすいんだ』
『やはりねー』
 
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『だけど面白いことしたね。あれ私とあの子との交信自体を遮蔽しちゃう手もあったろうに。あんたならできるでしょ?』
『バスケットは超能力バトルではなく、人間の戦いです』
『ふふふ。そうだよね。またどこかでやろうよ』
『人間同士の戦いでしたらいつでもお受けします』
 
『そうだね。私はもう人間じゃないけどね』
『え〜〜!?』
『私の肉体は実は10年ちょっと前に死んだんだよ。航空機事故でね』
『嘘!?』
 
『もう少し生きたかったけどね。飛行機が着陸に失敗して炎上。乗員乗客の大半が死亡した凄い事故だったよ。まあ私は焼け死ぬ前に肉体を放棄して霊体だけ飛行機から逃げ出したから、こうしていられるんだけど』
『大変でしたね。こういう場合、ご愁傷様でしたというべきなのかな』
『うーん。それは遺族に言うことばじゃない?私は死んだ本人だし』
『確かに』
 
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『でも精神が肉体から解放されるのも悪くないよ。あんたも肉体捨てない?』
『遠慮しておきます。でも霊体でもバスケのコーチになれるんですか?』
 
と言いつつ千里はあらためて藍川さんを見る。物凄い存在感だ。少なくとも幽霊(?)には見えない。ふつうに肉体を持った人間に見える。彼女の霊的なパワーが物凄いので、あたかも実在しているかのようにみんなに見せることができるのだろう。おそらく写真を撮ればふつうに写るはずだ。
 
『私身寄りが無かったから、私の死亡届は出てないんだよねぇ。遺体は身元不明ということで処理されちゃったみたいだし』
『じゃ戸籍上は生きているんですか?』
『そういうこと。まあ戸籍って必ずしも実態を反映してないよ。あんただって本当は女なのに戸籍には男と記載されているし』
『まあそういうこともあるかも知れませんが』
 
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『ところで山王に右か左か教えていたのはお遊びだけどブロックはマジだから』
『え?』
『今日の山王のプレイを見た前原さんは明日千里のシュートを全部ブロックするだろうね』
 
千里はじっと藍川さんを見つめた。藍川さんは千里にニコッと微笑みかけた。
 

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高梁さんが紅鹿を殴った場面はその場面を納めた録画が速攻でyoutubeに転載され、バスケ協会の申し入れで削除されたものの、かなりの人数が高梁さんの「悪行」を見てしまっていた。協会には処分を求める電話やメールが随分来ていたらしい。
 
しかし旭川N高校側は、この日の正式な謝罪を受けて、殴られた紅鹿自身に主将・監督・校長の連名で処分の軽減を求める上申書を協会に提出した。
 
それで倉敷K高校は本来なら向こう半年程度の対外試合禁止の処分が下されかねない所を1ヶ月の対外試合禁止と、高梁さん本人の3ヶ月間の部活動禁止で負けてもらった。ついでに学校からも一週間の謹慎をくらった。1ヶ月という対外試合禁止の期間は2月に行われる新人戦中国大会には出られる温情処分だが、結局高梁さん自身はその大会には出場できない。監督さんも進退伺いを学校に出したらしいが慰留されたとのことであった。
 
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この件で千里が
「なんか後味悪いなあ」
などと言っていたら
 
「気にすることないですよ。本人きっとインターハイでは元気になってまたやってきますから」
などと紅鹿本人が言う。
 
「その時はまた手強くなっているんじゃないの?」
「大丈夫です。またマーカーになってきれいに押さえてやります。今回は結構マーク外されたけど、次は1本もシュート撃たせません」
「うん。頑張ってね」
 
と千里も笑顔で答えた。
 
千里はこの子、このウィンターカップ本戦に出ていて、凄く成長したなと思った。今大会では何といっても絵津子の成長が心強いのだが、紅鹿も完全に戦力になってくれた。
 
なお、高梁さんは2-3月のエンデバーおよび来年のU19世界選手権の代表に招集しようという話もあったようであるが、この暴力行為でその話も消えてしまった(そもそもエンデバーが行われる時期はまだ本人が部活禁止中。また世界選手権の日程とインターハイがぶつかるため高校生選手でインターハイに出場する学校に所属している選手は世界選手権には出られない)。
 
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この日、藍川さんたちが帰った後、千里は撮影係の智加に「今日のうちの試合のビデオ見せて」と言って自分のプレイの、特に山王さんにブロックされてしまったシュートを熱心に見た。
 
熱心に見ていたら、薫が寄ってきて一緒に見てくれる。
 
「ああ。分かった。千里ってさ、シュートのタイミングはバラけさせてるけど、シュートの軌道はいつも同じなんだよ」
と薫が言った。
 
「う・・・・」
「だから千里より背丈があって、ジャンプ力はかなりある山王さんなら、敢えて少し遅れて飛ぶことによって全部叩き落とせるんだな」
「うーん・・・」
 
「そもそも千里のシュートって低軌道でしょ?」
「うん。高いシュートは精度がぶれるから低い軌道のが好きなんだよ」
「低い上に軌道が予測しやすいから叩き落としやすいんだな」
 
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「そうだったのか・・・・」
「去年くらいはまだそのあたりの軌道が不安定だったんだよ。でも千里、下半身が安定してきて、その結果軌道も安定するようになった」
「その結果実はブロックしやすいシュートになってしまった訳か」
「そういうこと」
 
「ところで静岡L学園に前原さんっていたっけ?」
「知らないなあ。ちょっと調べてみよう」
 
と言って薫はハードディスクの中に入っている静岡L学園と熊本S実業の試合の未編集生データを呼び出す。先ほどの検討会で見たダイジェスト版にはその選手は映っていなかった気がしたのである。それで薫が早送りで彼女の出ているシーンを探してくれた。
 
前原さんというのは選手名簿で見ると17番の背番号を付けた1年生のようである。名簿上のポジションとしても単にFと書いてある。
 
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「この人、マーカー専門で鍛えられているみたいね」
「うん。相手の4番にピタリとついて、かなりプレイを防いでいる」
 
彼女が出たのは第3ピリオドの前半、わずか5分だけであった。それで検討会でもこの選手のことは話題に上っていなかった。やはり検討会で議論したのは赤山・舞田の両エース、成長途上のシューター岡田対策である。何と言ってもインターハイでは岡田さんに決勝点を入れられてN高校は負けたので、彼女を抑えるのも勝利のためには必須である。
 
「この前原さんが千里のマークをする訳?」
「ある筋からの情報でどうもそうらしい」
「今日、山王さんが千里を抑えたプレイを凄く研究しているだろうね」
「うん。だからそれを突破するのが必要だよ。薫、今からちょっと練習に付き合ってくれない?」
「いいよ」
 
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それで南野コーチに言って体育館の方に行こうとしたら、コーチも付き合ってくれた。
 
取り敢えず今日のプレイを再現してみようということで薫が山王さん役をする。千里がタイミングを色々変えてシュートを撃っても薫はその7−8割をブロックした。
 
「薫ちゃん、なんでそんなにブロックできるの?」
と南野コーチが驚いている。
 
「今日の山王さんと同じプレイをしただけです」
「それやばいね」
「それでこの時間に練習してるんですよ」
 
それで千里は自分のシュートがなぜ山王さんにブロックされたかその原理を説明した。
 
「その癖に気づいた薫ちゃんも偉い」
と南野コーチは言う。
 
それでこの夜は1時間ほどにわたり、千里が軌道をランダムにバラけさせて撃つ練習をした。これでかなりブロックされづらいシュートになった。
 
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3人での練習が終わってから薫は1・2回戦での前原さんのプレイも抜き出しておくよと言っていたので、それはお願いすることにした。千里がこのビデオを見たのは結局翌日の朝である。千里は薫とコーチが引き上げた後も、黙々と遅くまでひとりでシュート練習を続けた。誰も体育館に居ないのをいいことに《すーちゃん》にボールを返す係をしてもらった。
 

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26日(金)。この日は準々決勝の4試合が行われる。
 
千里たちは11:30からの試合なので朝食のあと軽く汗を流してから会場入りした。ロビーにチアチームが既に来ていてアクションの練習をしていたが、千里たちの到着を見てエールを送ってくれる。
 
志緒がチアの衣装を着けた昭ちゃんに尋ねている。
 
「お母さんやお父さんに何か言われなかった?」
「お父さんは気づかなかったみたいです。お母さんはチアガールの中にボクがいたの見て、可愛かったよと言ってくれました」
「良かったじゃん」
「恥ずかしいです」
「でも昭ちゃん、いい加減自分のこと『わたし』とか『あたし』と言えるようにしようよ。女の子でボクはないよ」
「恥ずかしいです!」
 
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などと言っていたら、留実子が「別に女で僕とか俺でもいいじゃん」などと言っていた。
 

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女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(3)

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