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■女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(7)

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12月27日(土)。今日女子は準決勝の2試合が行われる。千里たちは早朝からの軽い練習の後、6:30に朝御飯を食べ7時半まで休憩した後、着替えてから8時にV高校を出て、9時頃会場入りした。
 
東京体育館に行くと、フロアの様子が昨日までと違うのが分かる。
 
東京体育館はメインアリーナに4面、サブアリーナに1面のコートを取ることができる。ウィンターカップの場合、女子は準々決勝までは分割されたコートで試合が行われるが、準決勝と3位決定戦・決勝はセンターコートと言ってメインアリーナの中央に1面だけコートが取られ、周囲に仮設観客席も設置された中で行われる。このセンターコートで戦うのはウィンターカップで全国上位4チームに入った者だけに与えられる名誉である。
 
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(但しウィンターカップでは男子と女子の日程が1日ずれている関係で男子は準々決勝以上がセンターコートで行われる)
 
2007年唐津でのインターハイの時は、準々決勝はサブ会場の鎮西スポーツセンターのセンターコートで行われ、準決勝・決勝がメイン会場の唐津市文化体育館のセンターコートであった。今年の埼玉インターハイでは準々決勝以上がメイン会場の本庄総合公園体育館(シルクドーム)のセンターコートであった。
 
千里も昨年の夏まではそんなことを考える余裕も無かったが、今年の夏の時はセンターコートに立てるってのは凄いことなんだなと思いながらプレイした。そしてまた今度もセンターコートに立つことができる。その仮設観客席に取り囲まれたフロアを見、そしてそこに昨日までより随分多い応援の人が居るのを見て、千里は武者震いをした。
 
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見知った顔が随分ある。花野子や受験勉強で忙しいはずの蓮菜・鮎奈たちの顔もある。どうも準決勝進出の報を聞いて、わざわざ旭川から出てきてくれた人たちが20-30人加わっているようである。チアの人数も40人ほどに増え、昨日の試合までチアに徴用されていたバスケ部員たちも解放されて、昭ちゃんたちはバスケ部のユニフォームを着て最前列に陣取っていた。
 
(蓮菜たちは昨日の夕方の飛行機で東京に来て1泊したらしい。旭川から出てくる場合、旭川空港を使っても新千歳空港を使っても朝からの移動では10時の試合に間に合わないのである。また夜行急行はまなすでも間に合わない)
 

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さて今日、千里たちは10時からの第1試合で東京T高校と当たる。11:30からの第2試合が札幌P高校対岐阜F女子高である。
 
東京T高校は数年前、ウィンターカップで3年連続準優勝というのをしたことがある(優勝はいづれも愛知J学園)。今年のインターハイこそBEST8停まりであったものの、昨年はインターハイでBEST4、国体とウィンターカップで準優勝、一昨年はインターハイと国体でBEST4、ウィンターカップでBEST8。間違いなく超強豪校のひとつである。
 
ミーティングの後、今日のスターターを記した選手名簿を提出。20分前にはフロアに入って、軽い準備運動やシュート練習などをした。
 
やがて試合開始時刻になる。スターティングメンバーがひとりずつ名前を呼ばれて出て行き、コート上に並ぶ。今日の最初のオーダーはこうなっていた。
 
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N高校 黒木不二子/村山千里/湧見絵津子/若生暢子/花和留実子
T高校 山岸典子/萩尾月香/竹宮星乃/大島陽奈/森下誠美
 
N高校は3年生の3人に1年生の不二子・絵津子、T高校は2年生の大島以外の4人は3年生である。
 
ジャンプボールは留実子と森下で争うがふたりは最初から鋭い視線を交換していて審判からいきなり警告を受けていた。
 

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審判がボールを持ち、ふたりがジャンプする準備をする。ボールが上に放り上げられると同時にふたりがジャンプする。公称は森下が184cm, 留実子が180cmであるが、実際には森下は186cm, 留実子は184cmある。更にふたりとも物凄い跳躍力を持っているので、双方ともボールより高く飛んでしまい焦っていた(審判も驚いていた)。
 
森下がタップして山岸がキャッチしたものの、トスが低すぎたということになり(ルールでは両者が届かない位置までボールをトスアップしなければならないことになっている)、やり直しになる。再度全員が周囲を囲む中、森下と留実子がセンターサークルに立ち、審判は全力でボールを高く上に放り上げた。
 
今度は留実子がボールを先にタップする。森下が悔しそうな表情をする。
 
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ところが!
 
留実子のタップしたボールはT高校の竹宮の所に飛んできたのである。
 
嘘!?
 
と竹宮も驚いたものの、遠慮するような彼女ではない。そのままドリブルして攻め上がる。千里たちは必死に戻る。竹宮と千里のマッチアップ。竹宮が一瞬右に来るが千里は一瞬だけそちらに身体を動かした後で急いで逆に手を伸ばす。竹宮はそれで停められてしまうので大島にボールを送る。彼女がミドルシュートを撃って入る。
 
試合はT高校の先制で始まった。
 
ジャンプボールに勝ったのに相手にボールを渡してしまった留実子が
「ごめーん」
と言って手を合わせてみんなに謝っていた。
 

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こちらは暢子がスローインして不二子がドリブルで攻め上がる。T高校は素早く戻り、ゾーンディフェンスを敷いた。トップが山岸、両肩に竹宮・萩尾、両翼に大島・森下である。
 
これでN高校の普通のオフェンス体勢だと、だいたい山岸−不二子、竹宮−千里、萩尾−暢子、大島−絵津子、森下−留実子、というマッチアップに近い状態になるはずだった。
 
しかし
 
N高校のオフェンス陣形に観客席がざわめく。
 
N高校は5人全員を(N高校側から見て)右側に集めたのである。左側はガラ空きで、向こう側にいる竹宮・大島が「え〜!?」という顔をしている。
 
この体制でN高校側は萩尾の所に千里・暢子、森下の所に絵津子・留実子という1対2の状況を作り出した。そして不二子から絵津子の所にパスが行く。森下が絵津子の進入を防ごうとするものの、そもそも164cmの絵津子は184cmの森下からすると「低い所でチョロチョロする」イメージがある上に留実子がサポートするので、まんまと絵津子に抜かれてしまう。向こう側のサイドから慌てて大島がフォローに来るものの絵津子は巧みに大島をかわして華麗にレイアップシュートを決めた。
 
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2対2の同点である。
 

前夜、N高校はミーティングでJ学園を倒して準決勝に上がってきたT高校とどう戦うかを検討した。
 
こちらは実は準々決勝に勝った場合、翌日の準決勝の相手はJ学園だと思って、それを想定した検討をたくさんしていた。それで急遽3時間も掛けたミーティングと、一部実践練習もしたのである。実践練習はミーティングが終わった後も千里・暢子・揚羽・絵津子・ソフィア・不二子・紅鹿・久美子の8人でかなり遅くまでやった。雪子や志緒・蘭などもやりたいと言ったのだが、彼女らの体力を考えて今夜は休めと言った。
 
T高校とJ学園の試合のビデオを詳細に検討した結果、結局T高校のゾーンディフェンスがひじょうに固くて、J学園は攻めあぐねて点数をあまり積み上げることができずに敗れてしまったと考えられた。大秋・道下・篠原・加藤らの強力なフォワード陣が、各々詳細に分析されていたようで、各々の癖に応じたゾーンの連携的な動きで完璧に封じ込まれていたのである。唯一、成長盛りの加藤だけがT高校側も完全には対応できずに16得点を許しているが、中心選手でもあるキャプテンの大秋はわずか2点、副主将でセンターの中丸も4点しかあげることができなかった。この2人については特に強烈なシミュレーションが行われていたようであった。
 
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「千里、暢子、揚羽、絵津子については完全に分析済みと考えた方がいいね」
「恐らく仮想千里、仮想絵津子とかを誰かにやらせて、相当の練習をしていると思う」
 
「どうする?」
「なんか逃げ帰りたい気分だ」
「暢子ちゃん、帰るなら青森までの夜行バスの切符買ってあげるよ」
「バスで帰るんですか?津軽海峡は?」
「泳いでもらおうかな」
「それも大変そうだ」
 

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それで悩んだ末にN高校が考えたのがこの「オーバーシフト」戦略であった。実はゾーンディフェンスに対する代表的な対抗策のひとつなのである。ゾーンは各ディフェンダーの場所が固定されているので、N高校がしたように片側に選手を集めてしまうと、オフェンス選手が集まっている側は数的優位になり、オフェンスの居ない側で守っているディフェンダーが無駄になってしまうのである。
 
N高校は自分達のディフェンスの時はふつうにマンツーマンで守る。T高校はポイントガードの山岸から竹宮−大島と繋いでシュートしたが外れたのを森下がリバウンドを取り、いったん萩尾に送り、彼女が壁になって竹宮がシュート。しかしこれを森下と争った留実子が何とか確保する。
 
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T高校のメンバーが急いで戻る。それを見て不二子は速攻ではなく通常攻撃を選択するサインを出す。
 
そして再びN高校はオフェンスを全員右に集めた。
 
ちなみにN高校が「右側」を選択したのは、中心選手の竹宮が左肩を守っているので、彼女が居ない側を選んだためである。
 
このオフェンスに対して、T高校側もディフェンダーを(N高校から見て)右側に集めた。トップの山岸、ミドルに竹宮・萩尾、エンドライン側に大島・森下と並べる。結果的に両軍の選手が全員右側に居るという異様な光景となる。
 
すると不二子からいったん暢子にボールが渡り、そこに竹宮・萩尾が共同で守ろうとするのだが、暢子はボールを受け取ると即、反対側左側のコートにポーンとボールを放り投げた。
 
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そこにハイポストに居た不二子が走り込むと、そのまま華麗にランニングシュートを決めた。
 
これで2-4と逆転。
 

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再びT高校の攻撃。N高校はやはりマンツーマンで守る。山岸から竹宮にボールが来て、竹宮と千里が対峙する。ここにエンドライン側に居た大島が走り込んできてふたりのすぐそばで停止する。スクリーンプレイだ。竹宮は大島をスクリーンに使って中に進入するも、前には留実子が頑張っている。すると竹宮はそこからボールを外側に抜けた大島に送り、彼女がミドルシュートを狙う。結果的にはピック&ポップになる。
 
しかしフォローに入った暢子がきれいにブロックする。
 
こぼれ球を不二子が取るとドリブルで攻め上がる。向こうは急いで戻ると、今度は、櫛刃型の陣形を取った。
 
トップに山岸、ミドルに萩尾、ローに森下が並ぶが、竹宮は山岸と萩尾の間の少し後ろ、大島は萩尾と森下の間の少し後ろ。こうすることで先ほどのように誰かが反対側に走り込んで攻めて来るプレイを防ごうというものである。
 
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しかし不二子は千里の背中付近に速いボールを送る。
 
千里がバックステップしてそのボールを掴む。
 
萩尾がブロックに行こうとしたものの暢子に阻まれる。
 
そして千里はスリーポイントラインのすぐ外から美しいフォームでスリーを決めた。
 
これで2-7。
 

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結局N高校としては、相手が本来の陣形でゾーンを作っていたら右側に選手を集めて数的優位を作り出してしまうし、相手が陣形を崩して対抗してきたら、それによってできたスペースに不二子が走り込んでそこから攻撃すればいい。
 
そして今のような中間的な防御態勢を取ったら千里がスリーを撃てばいい。
 
これは不二子というポイントフォワード的な選手と、千里という優秀なスリーポイントシューターがいる故に取れる戦略である。
 
T高校はタイムを取った。
 
そしてかなり激論していたようであるが、その後向こうはマンツーマンに切り替えてしまった。並みのチームならそのままゾーンでも頑張れないことはないものの、この相手には無理だと判断したようである。
 
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結局、山岸−不二子、竹宮−千里、萩尾−暢子、大島−絵津子、森下−留実子、と「当初の予定通り」のマッチアップになる。
 
ここで千里がボールを持った状態で竹宮と対峙した時、千里は軽く右に行くフェイントからさっと左を抜いた。竹宮が一瞬「え?」と声を出した。次に彼女と対峙した時は、千里は左に行くフェイントから、結局そのまま左を抜く。竹宮が悔しそうな顔をしていた。
 

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女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(7)

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