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■女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(6)

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牛丼屋さんを出てから駅に行くと、P高校のメンバーが居る。
 
「お疲れ様〜」
「勝利おめでとう」
「そちらも勝利おめでとう」
 
「でもそちらも電車で移動か。バスじゃないのね?」
「ああ。資金のある学校はバスをチャーターしてるみたいね。でも都会をバスで移動するのって渋滞に引っかかった時が怖いんだけどね」
「インターハイで愛知J学園が危なかったよね」
「もっとも公共交通機関も、東京は人身事故でしょっちゅう止まる」
「うむむ」
「あと、私たちは被害にあったことないけど、数年前、ベンチ枠外の子が制服で電車に乗ってて痴漢にあったことあるんだよ」
「ああ、都会は多いんだろうね」
「思いっきり蹴り上げてやったから、潰れたかもねと言ってたけど」
「スポーツウーマンに痴漢するのはある意味自殺行為だな」
 
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「でもこれでどちらも最終日まで残ることが確定したね」
 
ウィンターカップは3位決定戦が行われるので旭川N高校にしても札幌P高校にしても、明日もし負けたとしても最終日に準決勝で負けた同士の試合をすることになるのである。
 
「うちとそちらとが対戦する確率もぐっと高まったよね」
「明日の試合でどちらも勝つか、どちらも負ければ対戦するからね」
「確率50%かな」
「どうせなら決勝戦で対戦したいね」
 
「でも秋子ちゃん、今日は頑張ったね」
と千里は伊香秋子に声を掛ける。
 
「ありがとうございます。昨日はせっかく千里さんに占ってもらったのに謹慎くらって試合に出られなかったので今日はその分頑張りました」
と秋子。
 
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「まあ夜間外出は見付かると厳罰ものだから」
「見付からない自信あったんですけどねー。思いがけない事故があったし。あれひとつ間違ってたら死んでたぞ、って高田コーチから言われました」
 
「秋子ちゃんの運が強いからだよ」
と千里は言う。
 
あれは恐らく秋子の守護霊が千里に助けを求めたのではないかという気もするのである。
 
「でも取り敢えず明日は頑張らないと。晴鹿ちゃんと賭けしたんですよ」
などと秋子が言うので千里は
「し!」
と言って周囲の気配を探る。
 
「うん。それ周囲に他の人がいる所で言ったらやばいよ」
と宮野聖子も注意する。
 
「ごめんなさーい」
「処分くらうのは秋子ちゃん自身だから」
「まあ学校も巻き添え食うけどね」
 
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「いや、お金とかじゃなくて、明日の試合でスリーの本数負けた方が金太郎の格好して写真撮ると」
「変な約束するね〜」
 
「いや、負けた方が女装するという話もあったんですけどね」
 
「ん?」
 

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千里たちはこの日の試合が終わったのが12時半頃であったが、お昼を食べて電車で帰って宿舎にさせてもらっているV高校に戻ってきたのは15時頃だった。その後は、また練習をする。
 
今日の試合が苦戦になっただけに、明日はもっと頑張らなければということで練習に熱が入る。
 
なお滑って転んだ暢子は、現場で指圧の上手な薫にツボを押さえてもらった後で、大事を取って午後の練習を免除し、牛丼屋さんの後、薫と2人で近隣の温泉に行かせた。今夜泊まってきてもいいよということにしたが、怪しい関係になったのではと噂されたくないから、夜までには帰ってくると言っていた。
 
「女同士だから問題ないのでは?」
「薫ってもう、ちんちん無いんだよね?」
 
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「ごめん。まだある」
と本人は言っているものの
「病院の先生がもうペニスは無いという診断書を書いたという噂がある」
などと言われている。
 
「それ何かの誤解だと思うんだけどなあ」
などと言いながら東京駅の方に向かっていった。
 

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夕刻近くになって宿舎に大先輩の富士さんと宮原さんが来訪した。昨年と今年のインターハイBEST4を、旭川まで来て祝福してくれた先輩たちである。富士さんは関東の実業団チーム、宮原さんは東海地方のクラブチームの現役選手になっている。ふたりは12年前に旭川N高校が初めてインターハイ・ウィンターカップに行った時の主将・副主将で、インターハイではBEST8まで進出する快挙をあげた(ウィンターカップはBEST16)。そしてその後、N高校がBEST8まで行ったのは昨年のチームが12年ぶりだったのである。
 
「みんな練習頑張ってるね」
「わざわざご来訪ありがとうございます!」
 
「なんか今年のチームは無茶苦茶強いみたい」
「3回連続でBEST4って凄いね」
「このまま優勝しちゃおう」
「したいです!」
 
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富士さんたちはお菓子の差し入れを持って来てくれていたが、あっという間に無くなってしまう。
 
「休憩中の子や湯治に行った暢子先輩たちに残しておかなくて良かったんだっけ」
「証拠隠滅しておけばOK」
 
「でもこういう時はほんとに勢いに乗っている時だからさ。各々自分の欠点とかはあまり考えなくていいよ。自分の長所をぶつけるような戦い方をするのがきっと勝利への道」
と富士さんが言うと、南野コーチも頷いていた。
 
「でも私たちは1回ずつ学校での報告会での表彰プレゼンターしたからね。今回は特別な人に頼むことにしたから」
と宮原さん。
 
「誰だろう?」
と言って、みんなお互いに顔を見合わせている。南野コーチや宇田先生は笑顔なので、そのあたりも含めて話し合って決めてお願いしたのだろう。
 
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「じゃウィンターカップ(*1)を旭川に持ち帰ってきてね」
「はい!」
 
とみんな明るい顔で返事した。
 
(*1)全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会の通称「ウィンターカップ」の元となっている雪のように美しいガラス製のカップ。男女の優勝校に授与される。
 

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この日は明日の勝利を祈って夕食はトンカツであった。絵津子はトンカツを6枚食べて、更に7枚目を食べようとした所で途中でギブアップ。残りは不二子に食べてもらっていた。南野コーチから
 
「食べ過ぎて動けなかったら罰金だからね」
などと言われていた。
 
結局少しお腹がこなれた所で、不二子・ソフィア・紅鹿・久美子・海音と1年生の6人でV高校の校庭を30周走っていた。途中でそれに気づいた愛実と耶麻都に胡蝶も一緒に走っていた。
 

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今年は28日が日曜なので、貴司の会社は26日(金)が仕事納めとなった。貴司たちの部門は、夕方会社で仕事納めの会をノンアルコールビールでやったが、今年いっぱいで辞める社員2人の送別会も兼ねた。
 
その会が終わってから帰ろうとしていた時、辞める社員のひとり、19歳の山本さんが貴司に声を掛けてきた。
 
「細川さん、今日も練習なさるんですか?」
「うん。7時から9時まで練習するよ。会社は今日で終わりだけど練習は明後日・日曜日までやって終了なんだよ。その後は正月開けてからになるけどね」
 
「凄いですねー。練習見学してもいいですか?」
「うん。社員なら誰でも自由に見学できるよ。山本さんもバスケするの?」
「中学の時バスケ部だったんですけどね」
「凄いじゃん」
「中体連で毎回1回戦負けでした」
「まあ、そういう所も多いよね」
 
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それで彼女とバスケの話題で盛り上がりながら地下鉄で練習場所の体育館の所まで行く。
 
「あ、ちょっと用事があるんで先に体育館に入ってて」
と言って貴司は体育館に入る前に少し横手の方に行って千里に電話をした。
 

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「Best4おめでとう」
「ありがとう。これで参加した3大会連続ベスト4」
「今回はもうこれが最後だしベスト1を目指しなよ」
「うん。頑張る」
「応援に行きたいと思ったんだけど、28日まで練習があるから」
「うん。別にいいよ。貴司はデートしてて」
「えっと・・・」
「今もすぐそばに例の彼女いるんでしょ?」
「いや、あの子は今いないけど」
「ああ、別の女の子なんだ!」
「うっ・・・」
「貴司、あんまり浮気してると恋人に振られるよ」
「ごめーん」
 
その後はけっこうイチャイチャした雰囲気で10分ほど会話をした。
 

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電話を終えてから緩んでしまった顔を引き締めながら体育館に入っていくと山本さんが入口の所で立って待っている。
 
「ごめん。客席で座っていれば良かったのに」
「いえ、待っていたかったから」
と彼女が言うと貴司はドキッとした。
 
「彼女と電話していたんですか?」
「いや、ただの友だちなんだけどね」
「ふーん」
 
そんなことを言いながら、山本さんを観客席に誘導した上で貴司は更衣室で練習用ユニフォームに着替えてきた。
 

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2時間ほどの練習が終わった後、着替えて帰ることにする。
 
「単純な練習の繰り返しばかりだから詰まらなかったでしょ?」
「いえ。自分がバスケやってた頃のこと思い出したりして、楽しかったです」
「だったらいいけど。でもまたバスケやるといいよ。楽しみでやっているようなクラブチームとかもあるからさ」
「そうですねぇ・・・」
 
そんなことを言いながら駅まで来た時であった。
 
「お疲れ様、貴司」
と言って駅の入口で待っていたのは芦耶である。
 
「あっ・・」
「申し訳無いけど、あなたはひとりで帰ってくれる?」
と芦耶が山本さんに言う。
 
山本さんはじっと芦耶を見ていたが
「分かりました」
と言うと
「最後に握手してもらえますか?」
と笑顔で貴司に言い、貴司が彼女と握手をすると、深くお辞儀して、ひとりで駅の階段を登っていった。
 
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「あ、えっとどうしたの?」
「あまり浮気しすぎていると、彼女からも見捨てられるよ」
と芦耶は言う。
 
う・・・さっき千里に言われたことと同じだ! もっとも千里の言う「彼女」は芦耶のことだ。
 
駅に入って山本さんと再度顔を合わせたくないというのもあり、ふたりで近くのマクドナルドに入る。貴司はクォーターパウンダーのセット、芦耶はホットコーヒーだけを注文した。
 
「そういえば貴司は車は買わないの?」
と芦耶が訊く。
 
「うーん。必要無い気がするなあ。会社も練習場も自宅も全部御堂筋線・北大阪急行で行けるから」
「無茶苦茶便利な場所に住んでいるもんね! でも休日にドライブとかしないの?」
「うーん。休みの日はバスケの練習してるし」
 
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芦耶はあらためて貴司って「色気のない」男だと思った。そういうストイックな所好きだなあ。でもその割に浮気が多いよね!?
 
どうも「何度か見かけた」女子高生とだけ深い仲のようだが、それ以外でも貴司が様々な女性と手を握って一緒に歩いている所や、カフェで親しそうに話しているのを見たことがある。今日追い払った女の子は新顔だ。どうも本命以外とはデートはしてもセックスはしないポリシーのようだけど、さすがに遊びすぎなのではという気もする。まあ、自分もそういう「遊び相手」の一人なのかも知れないけどね。
 
「でも車ってある程度の頻度で運転してないと腕が上達しないらしいよ。私は完璧なペーパードライバーだから上達するつもりもないけどね。でも男の人は運転技術必要だろうし、自分の車買って少し練習したらいいよ」
 
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「そうだなあ」
「見に行くの私、手伝ってあげようか?」
「え?」
「明日はバスケの練習何時から?」
「夕方からなんだけど」
「じゃ、日中は時間が取れるよね?明日一緒に見に行かない?」
 
「うーん。じゃ見るだけなら」
 
ということで貴司は芦耶と車を見に行く約束をしてしまった。結局この日は彼女とはマクドナルドで話しただけで、地下鉄駅のホームで別れた。
 

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女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(6)

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