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■女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(4)

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フロアでは10:00からの試合があと少しで終わる所であった。
 
福岡C学園と札幌P高校の試合は札幌P高校が10点差で勝った。愛媛Q女子高と岐阜F女子高の試合は1点を争う激しい戦いであったが最後に愛媛Q女子高が江美子のゴールで2点差つけて勝負あったかと思われたものの、残り5秒から岐阜F女子高の速攻で晴鹿がスリーを撃ち込み逆転。岐阜F女子高が勝った。そのスリーを成功させた後晴鹿と千里は目が合った。晴鹿がガッツポーズをするのに千里も笑顔で手を振ってあげた。
 
コートの清掃が終わった所でフロアに出て行く。今日の試合の相手はインターハイの準決勝で戦った静岡L学園である。同じ時刻に隣のコートで行われるもうひとつの準々決勝は愛知J学園と東京T高校の試合である。
 
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スターティング・ファイブがコート上に出て行く。両校のオーダーはこうなっていた。
 
N高校 PG雪子/SG千里/SF絵津子/PF暢子/C紅鹿
L学園 PG竹下/F前原/SF赤山/SF赤田/PF舞田
 
スターターに紅鹿を使ったのは昨日、嫌な形で試合を終えたので気を取り直してプレイに集中してもらうためである。ティップオフは紅鹿と舞田さんで争ったが紅鹿が取って雪子がボールを確保。そのまま攻め上がる。
 
果たして前原さんがピタリと千里に付いた。雪子は敢えて千里にボールを供給する。スリーポイント・ラインの近くで前原さんと対峙する。ここはシュートを撃つ場面である。千里はドリブルしながら相手の呼吸を伺う。相手にはここを抜いて内部にドライブインするというオプションも提示しておく。
 
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そして複雑なフェイントを入れて抜くか・・・と思わせて千里はシュートを撃った。千里がシュートを撃った直後前原さんが思いっきりジャンプする。しかし千里が撃ったボールは高い弧を描いてゴールに飛び込んだ。
 
ゲームはこちらの3点先取で始まった。
 

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「あぁあ、千里さん気付いちゃったみたい」
と客席で見ていたF女子高の晴鹿は言った。
 
「晴鹿が言っていた千里の癖ね?」
と彰恵は答える。F女子高は第1試合の激戦に勝って、第2試合を観戦していた。
 
「間近で千里さんのシュートをたくさん見ている内に気づいたんですよ。千里さんのシュートって物凄いスピードで飛んで行くからブロックしづらいように感じるけど、実は軌道がほぼ一定していると。だからシュートを撃つまで待っていてその次の瞬間ジャンプすれば、ある程度の背丈とジャンプ力のある人ならブロックできるんじゃないかと」
と晴鹿。
 
「実際には晴鹿に仮想千里を務めてもらって実験したら、シュートするために腕を縮めた次の瞬間くらいに飛び上がる感じがいちばん撃ち落としやすいみたいだったね」
と百合絵も言う。
 
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「それを倉敷K高校の山王さんがやってたんで、あ、うち以外にもこれに気づいたところがあったのかと思った」
と晴鹿。
 
「あそこは旭川N高校の試合を随分詳細に分析したんだろうな」
「やはり強豪同士の戦いは情報戦だよね」
 
「たぶん千里は、昨日の試合で山王さんにたくさんブロックされたんで、なぜかというのをビデオとか見ながら研究して、自分の癖に気づいたんだよ」
と彰恵。
 
「でもそれを一晩で修正してくるところがさすがだね」
と百合絵。
 
「静岡L学園の前原さんも昨日の試合で気づいたみたいで、同じことしようとしているけど、千里が改良しちゃったから、このやり方ではブロックできないね」
と彰恵。
 
「しかし彰恵や私の癖もきっと絵津子ちゃん気づいて向こうで対策練ってるよ」
と百合絵。
 
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「まあそれはお互い様だね」
と彰恵は言った。
 
「でも暢子さんはまだ自分の癖に気づいていないみたい」
「うん。決勝戦でぶつかったら、完璧に封じてあげよう」
 

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前原さんは結構千里に食らいついてきた。その点は観戦していた多くのバスケ関係者が認めたところであろう。千里が攻撃してくる時に何度か千里を停めることに成功する。但し千里は1度もボールを盗られることはなく、自分がダメと思ったら絵津子や雪子にボールをパスしていた。
 
前原さんが何とか千里の猛攻を防いでいる間に向こうの主力・赤山さん・舞田さんが積極的に攻める。一方でこちらの暢子・絵津子も頑張るので第1ピリオドは20対17と向こうが3点リードした状態で終わった。一応千里は2本のスリーを放り込んでいる。
 
第2ピリオド、向こうはフォワードの赤田さんを下げてシューティングガードの岡田さんを入れてきた。インターハイでN高校との試合の決勝点を入れた選手である。こちらは絵津子を下げてソフィアを入れる。
 
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するとソフィアは岡田さんの動きを完璧に封じた。パスも甘いパスは全部カットしたし、何度か岡田さんがスリーを撃ったのは全部ソフィアがブロックした。
 
一方、千里は前原さんと対峙していて、彼女がどうやって自分を停めようとしているのかを分析していた。強引な突破は可能だとは思ったのだが、それ以前に彼女の動きを通して自分の「見抜かれている癖」を見出そうとしていた。それは第1ピリオドの間は曖昧だったものの、第2ピリオドではかなり明確に分かってきた。
 
しかし、千里はその癖を修正せずに、第2ピリオド後半からは強引に突破する作戦に切り替える。
 
それでこのピリオド後半で千里はスリー2本と通常のゴール1本で合計8点を奪う猛攻を見せる。また暢子も前回してやられた岡田さんがコートインしていることから発憤して彼女もピリオド通して4本のゴールを奪い8点。それ以外にソフィアが4点取って、このピリオド16-20とリードを奪い、試合をひっくり返す。前半の合計は36-37である。
 
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第3ピリオドでは、不二子/ソフィア/絵津子/揚羽/リリカと「新レギュラー組」を先発させる。やはり1年生のこの3人はお互い強いライバル意識を持っているだけに同時に出すと対抗心を燃やしてワザがブーストするようである。
 
この3人の変幻自在の攻めに相手は翻弄される。向こうは赤山・舞田が休んでいたこともあり、大きくバランスが崩れてこのピリオド、12-20と大きくリードを奪った。ここまで48-57である。
 
第4ピリオド。
 
こちらは不二子/千里/揚羽/暢子/留実子というオーダーで行く。向こうは竹下/前原/赤山/福田/舞田というオーダーで来た。福田さんは初めてのコートインである。この人がこういう所で出てくるというのは、こちらとしては想定外だった。彼女はウィンターカップ本戦でまだ1度も出てきていなかった。
 
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ピリオドが始まってから3分経ったところで宇田先生がタイムを取る。
 
「なんであんな選手をL学園はここまで使ってなかったんですか?」
と言ったのは不二子である。
 
この3分間に福田さんが1人で8点も取り、舞田さんの得点と加えて10点、58-61と猛追されているのである。
 
「多分体力が足りないんですよ。だからここぞという時に使うつもりがこれまで、そういう場面が無かったんだと思う」
と薫が言う。
 
「村山君は前原さんに勝てるよね?」
と宇田先生は確認する。
 
「勝ちます」
「だったら山下(紅鹿)君、福田さんを封じて」
と宇田先生。
「はい。封じます」
と紅鹿。
 
「では突き放して明日の試合に進もう」
と宇田先生。
「はい!」
「勝って女になろう」
と暢子。
「そうですね。こないだはその話から負けたけど今回はちゃんと女になりましょう」
と揚羽も言った。
 
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それで円陣を作って「ファイト!」と気合いを入れて出て行く。向こうは竹下さんを下げて岡田さんを入れて来た。向こうも猛攻を掛けようという態勢だ。
 
N高校 不二子/千里/紅鹿/暢子/留実子
L学園 岡田/前原/赤山/福田/舞田
 
というオーダーである。
 

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結果的に、岡田−暢子、前原−千里、福田−紅鹿、赤山−不二子、舞田−留実子というマッチアップになる。
 
試合再開後、いきなり岡田さんがスリーを決め、L学園は同点に追いついた。L学園の応援席が物凄く盛り上がる。しかしその後は暢子が岡田さんに食いついて、そう簡単には仕事をさせない。千里は前原さんをパワーで振り切ってシュートを撃つ。紅鹿はもうファウル覚悟で必死で福田さんの猛攻を防ぐ。この試合、ここまでファウルは絵津子が1個、ソフィアが1個取られただけであったが、紅鹿はこのあと2個ファウルを取られ、福田さんはフリースローを得て1回目はきれいに2個とも入れた。
 
そして2度目の福田さんのフリースローの時であった。
 
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両チームのメンバーが左右に並ぶ中、審判が福田さんにボールを渡す。福田さんがボールを構えて撃とうとした時、彼女はボールをファンブルしてしまった。
 
ボールがポトリと落ちて下に転がる。
 
福田さんは慌ててそのボールを拾って再度フリースローラインの所に立とうとしたのだが、・・・
 
審判が笛を吹く。そして首を振っている。
 
どうも今のファンブルが「シュート」とみなされてしまったようである。
 
福田さんがえ〜!?という感じの表情になるが、こんな所で抗議すればテクニカルファウルを取られるくらいのことは分かっている(それが分かっていなかった感じなのがK高校の高梁さん)。
 
不満そうな顔だが、ぐっと我慢していったん審判にボールを返し、再度ボールをもらって2投目を構える。
 
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今度はきれいに決めて1点。
 
しかしこのフリースローでL学園は66対65と1点のリードを得ることができた。
 

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激しい攻防が続く。N高校も取られたら取り返すという感じで、千里のスリー、暢子の通常のゴールが決まって70点まで点数を積み上げるが、L学園も赤山さんが経験の差で不二子を振り切って通常ゴールに加えてスリーも決めてこちらも71点まで点数を積みあげる。残り1分の所で71対70と1点差のままである。
 
N高校が攻めて行く。複雑なコンビネーションプレイから不二子がシュートしようとした所を舞田さんが停めようとして舞田さんはファウルを取られた。彼女はこれが5つ目のファウルで退場になる。
 
L学園にとって攻防の要である彼女の退場は痛いはずだが・・・・
 
むしろ嫌〜な顔をしていたのはN高校の暢子や千里である。インターハイの時は舞田さんの退場後にこちらが負けの展開になったのである。
 
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気を取り直して声を掛け合う。
 
不二子はフリースローを2本ともきっちり決めて71-72と逆転する。
 
向こうが攻めて来る。舞田さんの代わりには赤田さんが入っている。向こうは岡田さんがスリーを撃ったのだが、暢子が指で弾いて軌道を変えたので入らない。そのリバウンドを留実子と赤山さんが争い、赤山さんが確保して福田さんにパスする。しかしこれを紅鹿が根性でカットする。
 
転がったボールに不二子と赤田さんが飛び付く。一瞬の差で赤田さんがボールを確保。そのままレイアップシュートに行くかに見えた。その前に暢子が立ちはだかる。
 
そこで赤田さんはシュートするかに見せて空中で赤山さんへのパスに切り替える。赤山さんのすぐ前に留実子が居る。
 
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すると赤山さんは留実子の右側に右足を1度ステップしてそこからシュートを撃つ姿勢を見せる。そこで留実子がジャンプする。ところが赤山さんはその足を軸にして反転し、留実子の左側に左足を再度ステップする。そして留実子がジャンプした裏側からきれいにシュートを決めた。
 
彼女の物凄い反射神経と筋力がなせる技巧的なシュートである。千里は彼女のワザを見て純粋に「すげー!」と思った。
 

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これでまた73対72とL学園のリードとなる。しかしN高校のボール。但し残りは27秒! こちらが得点を取って逆転しても相手が1度は攻撃できる。だからここは出来るだけ相手に時間を残さないようにゆっくり攻め、そして確実に得点を挙げたいところだ。
 
インターハイの時と本当に似た展開なのだが、あの時はこちらが1点リードしている状況だった。今回は1点ビハインドである。
 
不二子のゆっくりした攻めから千里にボールが来る。前原さんをスピードで振り切って中に進入し、シュートしようとするが、向こうは赤山さんと赤田さんがふたりで千里に覆い被さるようにする。これではさすがに撃てない。そこで暢子にボールを送って、千里は制限エリアから抜ける。
 
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ボールを受け取った暢子は前に居る岡田さんの呼吸を伺う。
 
まさにインターハイの時と同じパターンである。そして攻めに時間を使っているので、24秒計の残りが少ない。暢子は複雑なフェイントから岡田さんの右を抜こうとした。
 
そしてその時。
 
暢子はまた滑ってしまったのである!
 
暢子は「やだー!この展開!!」と一瞬神様を呪いたくなったと後から言っていた。しかし暢子は倒れながら「絶対に負けるのは嫌だ!!!!!」と思い直した。そして、体勢を完全に崩しながらもボールをゴールめがけて思いっきり投げた。
 
 
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女の子たちのウィンターカップ・接戦と乱戦(4)

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