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■女の子たちの性別変更(12)

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祈祷が終わって神殿から降りた後で《いんちゃん》が言った。
 
『言われたように、あの子の男性機能停止させたよ』
『ありがとう。私のも停止させてよ』
『私たちは宿主の身体を壊してはいけないことになってるのよ』
『不便だな』
『千里の男性機能は、数年後に千里と知り合う少し親切すぎる子が破壊してくれるよ』
『ふーん。それまでに私、結構男の子になっちゃう?』
『それも話してはいけないことになってるから』
『不便だな』
 

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「でも千里ちゃん、マジで貴司のお嫁さんに欲しいわあ」
などと待合室の掃除を一緒にしながら、細川さんに言われる。
 
「私と貴司さんの関係は、お互いに結婚まで続くとは考えられない年齢での恋愛ということで割り切っています。彼はふつうの女の子と結婚すると思いますよ」
と千里は笑顔で言った。
 
「貴司のこと、そんなに好きじゃない?」
「大好きです。特に夏に仲が復活してから自分にとっては欠くべからざる存在になっちゃいました。別れたら2−3年くらい落ち込む気がします」
 
細川さんは頷いていた。
 
「貴司さん、たぶん6年後くらいに結婚すると思います」
「へー」
「貴司さん、多分関西方面で就職する気がしますけど、ここか旭川で里帰り挙式するなら、呼んでもらえたら私が結婚式の笛や舞を奉納しますよ。その頃は私も性別変更が終了して、法的にも医学的にも完全な女の子になってるだろうし」
 
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「そうだよね。。。。笛と舞は本当にお願いするかも」
「はい」
と千里は笑顔で答えた。
 
「でも関西なの?」
「今、私、関西って言いましたね。自分で言ってて『へー』って思いました」
 
「千里ちゃん、それがあるんだよねー。千里ちゃんってチャネラーだよ」
「それは自分でも思うことあります」
 

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「だけど、その頃にはじゃなくても、既に千里ちゃん、戸籍の変更も終わってたんじゃなかったんだっけ?」
 
「終わってません。その前にまだ身体の方も直してません」
「え? お医者さんの診断も受けて女性に登録変更になったとか貴司が言ってたけど」
 
「お医者さんの診察は受けました。それで君は女だと診断されたんですけど、登録変更になったのはバスケ協会の選手登録上の性別で、戸籍の変更は20歳までできないんですよ。協会の登録変更に合わせて私の所属も男子バスケ部から女子バスケ部に移動になって、それでこないだの新人戦にも女子チームで出場したんですけど」
 
「お医者さんの診察受けたのなら間違いようがない気もするけど。それに貴司ったら、実地に確かめたとか言ってたのよ」
 
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「細川さん、こういう話信じます?」
「うん?」
「私、多分21歳くらいで性転換手術を受けると思うんです。そして手術が終わって3ヶ月目の身体を、貴司さんと過ごしたその晩だけ先取りで体験したなんて」
 
「千里ちゃんならあり得る気がする」
 
「だから、私、貴司さんに2回ヴァージンを捧げたんです」
 
細川さんはしばらく考えていた。そして言った。
 
「私、千里ちゃんのこと、既に貴司のお嫁さんだと思うことにする」
 
千里はにっこりと笑い
「はい。ふつつかな娘ですが、よろしくお願いします」
と言って、お辞儀をした。
 
「うんうん」
 
細川さんは笑顔で頷いていた。
 

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その日も午後からはS高バスケ部の練習に顔を出したのだが、練習が終わった後で貴司から言われる。
 
「今夜さ、うちに泊まってよ」
「うん?」
「母ちゃんから言われたんだけどね」
「へー」
 
それで千里は自分の母に電話を入れると、貴司君の家なら構わないよと言うので泊めてもらうことにした。お父さんの手前、また例によってウィッグを外して、丸刈り頭で訪問した。いつものように晩御飯を作るのを手伝う。全員食卓についたところで、お母さんは
 
「そうそう。ちょっと変わったジュースをもらったのよ」
と言って瓶を出して来た。
 
その瓶を見てえ?と思う。それは昨日千里の母が、友人が山形に行ったお土産にもらったと言っていたジュースと同じものだ。もしかしてこれうちの母が持って来た?
 
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「理歌、美姫、お前たちも要る?」
「いらなーい」
 
どうも事前にこのふたりの妹には事情を話していた感じであった。
 
「あなたは?」
「俺は甘いものはいいや」
「うん。ピール開けるね」
 
と言ってお母さんは先にお父さんにビールを注いだ。そしてお母さんは貴司と千里の前にグラスを2つ置いてジュースを注いだ。
 
これってまさか・・・・。
 
貴司も一瞬戸惑った感じであったが、目で会話して先に貴司が飲む。貴司はそれを3回に分けて飲んだ。それから千里が自分のグラスのジュースを3回に分けて飲む。するとお母さんは次に《千里のグラス》にジュースを注ぎ、それを貴司が取って3回に分けて飲んだ。お父さんはビールを飲みながらテレビを見ているので、千里のグラスで貴司が飲んだことには気付いていないであろう。
 
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「そうだ。千里さん、これあげる」
と言って理歌が千里に金色のリングのついた携帯ストラップをくれた。
 
「お兄ちゃんにもこれあげる」
と言って美姫が貴司に同じような携帯ストラップを渡す。
 
「なんだ、同じものを買ったのか?」
とお父さん。
 
「そうなんだよね。初売りで偶然美姫と同じもの買っちゃったから、ひとつはお兄ちゃんに、ひとつは千里さんにあげよう思って」
と理歌が説明した。
 
「ありがとう。大事にする」
と言って千里はそれをほんとに大事そうに両手で握りしめた。
 

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「今夜も村山君、泊めるから」
とお母さんがお父さんに言ったが、お父さんは千里を男の子と思っているので
「ああ、どうぞ、どうぞ」
と言っていた。
 
食事が終わった後、後片付けをお母さんと一緒にする。その間にお父さんがお風呂に入っていたようである。それからいつものように家の外に出て一緒にバスケの練習をした。そして終わって帰る前、闇に紛れて抱き合い、ディープキスをする。
 
「今夜は私たちの初夜ってことみたい」
「僕、今、本気で千里と結婚してもいい気分」
「私もー」
 
それで再度キスしてから帰宅した。お母さんが
 
「あんたたち、お風呂入りなさい」
と言った。
 
「貴司、先に入って。私、お母ちゃんにメールしとく」
「うん」
 
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それで貴司が先に入りに行く。千里は貴司の部屋に入る。
 
今夜泊まることは既に母に連絡して承認を得ているのだが、千里は少しだけ考えてから
「私、今夜結婚しちゃう。17歳と15歳で本当は年齢1つずつ足りないけど」
とメールした。すると母から
 
「うん。細川君のお母さんと話したのよね。結婚おめでとう。届けなんて気にすることない。結婚は気持ちの問題」
と返事があった。
 
その後、蓮菜や留実子とたわいもないメール交換をしている内に貴司がお風呂から上がってきた。
 

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キスしてから、着替えを持ってお風呂に行く。
 
身体と頭を洗って、湯船に浸かっていたら《いんちゃん》が語りかけてきた。
 
「千里、今夜も女の子の身体にしてあげようか?」
「あんまりやると、それが普通になっちゃうからさ」
「じゃ、今夜は男の身体のままでいいの?」
「うん。それでも私と貴司の愛は揺るがないよ」
 
湯船の中で堅くなっている手足の筋肉を揉みほぐしていたのだが、練習疲れが出たのか少しうとうととしてしまった。やっばー。貴司待ちくたびれてるかな、と思って湯船から上がり、脱衣場に出てバスタオルで身体を拭く。そのとき、脱衣場の外の台所に誰かが入ってくる音があった。
 
あ、貴司がとうとう待ちきれなくて呼びに来たのかな、と思う。ところがその人物は冷蔵庫を開けているようである。あれ?お母さんかな? と思ったら、いきなり脱衣場と台所の間のドアを開けられた。
 
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「貴司、ビールのストックは表に出したままだっけ?」
とお父さんは言ったが、千里を見るなり
「あ、ごめん」
と言ってドアを閉める。そして奥の方へ行った感じ。
 
「おい、母さん。村山君って女なの?」
とお母さんに訊く声。
「男の子ですよ」
「だって今うっかりお風呂の戸を開けたら、おっぱいもあったし、チンコも無かったし」
とお父さんの声。
 
「あ、えっと。本当は女の子らしいけど、男並みに頑張りたいって、頭も丸刈りにして男子と一緒にバスケしてたらしいですよ」
とお母さんの声。
 
それって、11月までの話なんですけど!?
 
「ちょっと待って。だったら女の子を貴司の部屋に泊めていいの?」
「あっと、ふたりは一応自制してるみたいだし、もし何かあった時は、お嫁さんに来てもらえばいいからということで、向こうのお母さんとも話してますし」
とお母さん。
 
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ごめんなさい。全然自制してません!
 
「そうだったんだ! あ、ドア開けちゃってごめんと言っといて」
とお父さん。
 
えっと、私、この先、どんな顔してこの家に来ればいいのかしら?と千里は焦る気持ちであった。
 
《いんちゃん》が再び語りかける。
「女の子にしてやってもいいよー」
 
えー!?どうしよう?と千里は思った。
 
 
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