[*
前頁][0
目次][#
次頁]
最後の30分は紅白戦をした。千里は女子バスケ部員として練習に参加するのは初めてではあるが、これまでも何度か女子の練習試合に千里が参加するために彼女たちと一緒に練習したことがあるし、しばしば紅白戦の時に久井奈が千里を男子の方から連行してきて参加させたりしていたこともあったので、コンビネーションではほとんど問題が起きなかった。
1年生vs2年生でやったのだが、千里と暢子はお互いに相手を見なくてもパスが通るし、留実子にもスムーズにパスできるので、2年生チームが結構苦戦していた。1度は久井奈さんから、巧みに千里がスティールを決め、「えー!?」
などと久井奈さんは絶叫していた。
「久井奈ちゃん。あんたさあ、何度か注意してるけど、ドリブルしてて立ち止まる直前に一瞬、隙ができるんだよ」
と南野コーチが指摘する。
「でも今、千里が近づいてきたのに全然気付かなかった!」
「男子の方でもさんざん言われてたけど、千里ちゃんは霧に変身して近づいて相手のそばで実体化するから」
「それって悪魔の実の能力者ですか〜!?」
と久井奈。
「千里は中学の頃は忍者って言われてましたよ」
と留実子。
「むしろ。くノ一?」
「当然そうでしょうね」
練習が終わって、みんなで更衣室に行き着替える。千里は汗を掻いたので下着を交換していた。
「千里、胸大きいね」
「大したことないですよー」
などと良いながらブラを交換する。更にショーツを交換していたら
「ほんとに付いてないね」
と言われたが、留実子が
「お医者さんにも確認されているから今更ですよ。内診台乗せられたでしょ?」
と言う。
「あれ、恥ずかしかったよぉ。クスコまで入れられるし」
と千里。
「ああ、ちゃんとヴァギナもあるのね?」
「でも処女にもクスコ入れちゃうんですか?」
「いや、千里は処女ではないから」
「あ、そうか!こないだの大会の時に彼氏としてたんでしょ?」
「抱き合ってキスしただけで、セックスまではしてないんだけどなあ。なんでそういう話になってるんだろう」
「1年生の女子の間では、そういう話で確定している」
「うん。女子トイレの中で裸でセックスしてたと聞いた」
「何それ〜!?」
「今更否定しても誰も信用しないだろうね」
「そんなぁ」
下着を交換した後、千里が女子制服を身につけていると
「あれ、そちらに着替えるの?」
と言われる。
「うん。このあと授業受けるわけじゃないから。女子バスケ部からの帰りなら女子仕様のほうがいいかな、と」
「それでおうちに帰っても大丈夫なの? 性転換しちゃったことは親には内緒なんでしょ?」
「私、叔母ちゃんちに下宿してるんだけど、叔母ちゃんは私の生態を知ってるから」
と千里。
「知ってるというより、煽ってるよね」
と留実子。
「そんな感じがする時もある」
「まあさすがに性転換したら一緒に暮らしている人にはバレるだろうからね」
「いや、叔母ちゃんは私が性転換までしたとは思ってないと思う」
「じゃ誰にも言わずにひとりで手術受けちゃったんだ?」
「心細くなかった?」
「もしかして彼氏に付いててもらったとか?」
何かこの疑問文が数日後には平常文に変化してないだろうか?と千里は不安を感じた。
「でも叔母ちゃんにはカムアウトしといた方がいいよ」
「そうそう。理解者を増やしておかなきゃ」
「うーん・・・」
「あ、ちょっと図書館寄ってから帰るね」
と言って千里は、他の子と別れて図書館に行った。この学校の図書館は夜9時まで開いていて、今日の千里のように部活の後で寄りたい子や、学校の近くにある寮に住んでいる生徒たち、また塾に行ったあと資料を調べたい子などに重宝されている。
原子の構造について、授業の内容では何か割りきれないものが残ったものの、参考書などでは《試験に出る》ような内容のことにしか触れてない。それで何か理解を深めるのに良さそうなものがないかと思って探していた。
420.物理とラベルが貼ってある付近の棚を見ていて、ノーベル物理学賞を取った人が書いた『原子と素粒子』という本があった。開いて読んでみると、よく書いてあるっぽい。そして授業で誤魔化された気分になった界隈が正確に書かれているっぽい。
よし、これ借りて帰ってよく読もう、と思ったものの「あっ!」と思う。千里は生徒手帳の写真は《長髪・女子制服》なのに、実態が《丸刈り・男子制服》なので、ひとりで本を借りようとすると「この生徒手帳違うよ」などと言われてしまうのである。それで、いつもは蓮菜や鮎奈などに付いててもらい「極端に写真が違いますが確かに本人です」とか「女から男に性転換したんです」とか言われて(後者は冗談と思われるだろうと思ったのにマジで取られてる気もした)、それで何とか借りることができていた。
しまったぁ。るみちゃんでも誘って残っててもらえば良かった、と思ったものの、「あれ、待てよ?」と考える。今は部活が始まる前に付けた女の子のショートカットのウィッグを着けている。それで今着ているのは女子制服。
もしかして、このまま借りられたりして?
と思ったので物は試し。カウンターの所に行く。夕方から出て来ているパートの司書のおばさん、もとい、お姉さんに「これ借ります」と言って、生徒手帳と一緒に本を出す。
「はいはい」
と愛想良く言ったお姉さんは、生徒手帳のバーコードをスキャンした。モニターに千里の生徒手帳に載っているのと同じ写真が表示される。チラっと千里の顔を見る。そして続けて本のバーコードをスキャンする。
おぉ!同一人物と認めてくれたっぽい!
それで
「来週の火曜日までに返却してください」
と言われたので
「分かりました。ありがとうございます」
と言って、本をスクールバッグに入れて図書館を後にした。
やったぁ!ひとりでできたぁ!
その週の金曜日、部活が終わってから帰宅すると、なんと貴司が来ていた。
「お邪魔してるよー」
と貴司。
「千里、彼氏呼ぶんなら、一言言っておきなさいよ」
と美輪子。
「ごめーん」
だって私も聞いてなかったよぉ。
「いや、済みません。僕が千里さんに言ってなかったんです」
と貴司は言うが
「かばってくれるのは良い彼氏だ」
などと美輪子は言っている。
御飯を食べた後、美輪子が先にお風呂に入って「後は自由に」と言ってくれたので、千里→貴司の順にお風呂に入る。貴司がお風呂に入っている間に千里は布団を敷いてファンヒーターをつけておく。
千里は少し迷ったが、着衣のまま取り敢えず今日の宿題をやった。
やがて貴司が裸のまま部屋に入ってきた。しかし千里は単に
「お疲れ様ー。お茶入れるね」
と言って、沸騰させておいたポットのお湯でコーヒーを入れて貴司に勧める。
「ありがとう」
と言って、貴司は裸のまま千里の隣に、あぐらをかいて座り、コーヒーを飲む。おちんちんは丸出しだ。しかし千里は平常心である。
「でも今日はどうしたの?ちょっとびっくりした」
「千里の顔が見たくなったから来た」
「それはいつでも来ていいよ」
と言って千里は貴司にキスをする。
「そのさ。『医学的に女と判定された』から『女子バスケ部に移動』になったという経緯が確認したくてさ」
「あれ、すっごく不可解。病院では私確かに先生が『医学的には男』という診断書を書いたのを見たんだよ。でも協会側から学校に回ってきた診断書のコピーでは『医学的に女』という診断書になってたんだよね」
「千里のこれまでの言動からすると、そう言う千里の言葉の方を信用できないんだけど」
と貴司は言う。
「私、そんなに信用無い?」
「うん。千里って嘘つきだもん」
「えへへ」
「笑って誤魔化そうとしてる」
と言って貴司は千里にキスをする。
「本当の所は千里、どっちなんだろうと確かめたくてさ」
「実地に確かめてみる?」
「確かめさせてよ」
「じゃ、冷静に確認できるように、いったん鎮めてしまおう」
と言って千里はあぐらをかいて座り、既に大きくなって上向きの角度を持っている貴司のそれを、いきなり口に咥える。
「あ・・・・」
貴司の鼓動が伝わってくる。ふふふ。ドキドキしてる。私もドキドキしてるけどね。私、ソフトクリームでけっこう練習したけど少しはうまくなったかなあ。私、男の子の快感ってのがいまいち分からないし。
そんなことを考えながら千里はそれを舐めてあげた。舐めている内に自分自身もHな気分になってくる。やがて貴司はお口の中で逝ってしまう。千里は飲み干してから、優しく舐めてきれいにしてあげる。
「せめて電気消させて」
と言って立ち上がり電気を消す。窓には厚手のカーテンが引いてあるので本当に真っ暗になる。ファンヒーターの音だけが鳴り響いている。
「私も脱ぐね」
と言って千里は服を脱いで行く。暗闇に少しずつ慣れてきた貴司の目に千里の美しい裸体が映る。
「今日は偽乳付けてないんだ?」
「さっき、お風呂に入った時に外したよ。付けといた方が良かった?」
「ううん。生胸のサイズを確認できるから」
ブラも外し、ショーツも脱いでしまう。
「やはり女の子だよね?」
「触るならお布団の中でにして」
「いいよ」