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■続・サクラな日々(7)

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四月中旬の日曜日の昼間、私は進平とふたりでドライブを楽しんでいた。お昼を食べて少し走っていたら雨が降ってきた。しかしムード的が良かったので、このあとホテルにでも。。。あるいは車をどこか脇道に駐めて。。。。という雰囲気になりつつあった。雨なら外からのぞかれることもないし。。。。
 
「しかし急に雨になったね」
「だよね。お昼前までは晴れていたのに」
「傘持たずに出た人もたくさんいるだろうなあ」
などという話をしていた時だった。
 
道路の右側の方で、街路樹に雨宿りしている若い男性を見かけた。
「わあ、たいへんそう」なんて進平が言うので何気なくそちらを見る。
「あ・・・・ね、ちょっと停めて」
「どうしたの?」
「今の人・・・」
「知り合い?」
「うん」
「じゃ、乗せてやるか」
「ごめんね」
 
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という会話をして進平は車をUターンさせ、木の下で雨宿りしている男性のそばに停車させた。
助手席の窓を開けて、私が呼びかける。
 
「荻野君!」
「えっと・・・・」
「私、小学校から高校の時まで何度か同級になった吉岡です」
「え?え?え?  吉岡君のお姉さんか誰かだっけ?」
「本人です。私、女の子になっちゃったの。乗って。濡れちゃう」
といって私は前のドアを開けた(この車は前のドアを開けないと後ろのドアが開けられない)。
「えー!?」
と彼は言ったものの
「じゃ、ちょっと乗せてください」
と言って後部ドアを開けて乗り込んできた。
 
ドアを閉めてスタートする。
 
「びっくりした。ほんとに吉岡君なの?」
「うん。去年の夏頃からこういうことになっちゃって」
「すごーい。可愛くなっちゃって。あ、そちらはお友達?」
「うん。私の彼氏の寺元進平君」
「あ、すみません。お邪魔します」
「いえいえ。困った時はお互い様ですよ」
 
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「でもまだ信じられないなあ。声だって女の子なのに。ホントに吉岡君のお姉さんとかがからかってるんじゃないよね?」
「そんなのからかう意味が分からないよ〜」
「だよね。確かに。あ、でもデート中だったのでは?」
「うん。いいよ。荻野君を駅かどこかに置いたら、デートの続きするから」
「ありがと。良かったら※※駅まで連れて行ってくれると助かるんだけど」
「いいですよ。※※駅まで行きましょう」と進平が答える。
「恐縮です」
 
「荻野君は東大なんだよ」と私が言うと
「おお、すげー」と進平が驚嘆する。
「小学校の頃から何度も学級委員してたしね」
「へー。あれ?そしたら、俺何度か話に聞いてる人だな」と進平。
「あはは、あまり思い出さないで」
 
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「でもとうとう、吉岡さん、女の子になっちゃったんだね。昔の吉岡さん知ってるから、そういう格好がごく自然に思えちゃう」と荻野君。
「お、俺その昔の話って、聞いてみたい」と進平。
「うーん、まいっか」
 
「小学4年生の時に、ちょっと偶然なんですけど、学芸会の劇で吉岡さんが白雪姫を演じたんですよ」
「あ、その話は聞いたことある。主役の子が突然ダウンして代役だったとか」
「そうそう。代役だったんだけど、白雪姫の衣装着せたら、元々その役するはずだった子より、遙かに可愛くなっちゃって」
「あはは」
「クラスの女子達もびっくりしてたんですよ。なんでそんなに可愛くなるのよって。元々の白雪姫役の子だってクラスで1〜2を争う美人の子だったのに」
「へー」
 
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「吉岡さんって男の子の格好してると、そんなに美男子とかいう雰囲気でもないのに、女の子の衣装着せると、凄い美人になっちゃうのね」
「俺も、こいつの女装姿を初めて見た時、驚きましたよ」と進平。
 
「あと、吉岡さん、名前が『よ』で始まるから、クラスの名簿の最後になることが多かったんですよ。それで僕たちの学年は男子の方が多かったから、フォークダンス踊る時とか、男子が余っちゃうんですよね。それで名簿順に並んで最後の人が女子の方にまわって、などというので吉岡さん、よく女子のパートを踊ってたんですけど」
「ああ、なるほど」
「女子のパートを踊る吉岡さんがまた動作が可愛くて」
「えーん」
「けっこう男子達の間で吉岡さんと踊りたいという希望者が多かったんです」
「あう・・・・」
 
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「ね、ハルちゃん、そろそろカムアウトしてもいいよ。私実は物心ついた頃から女の子になりたかったんです、って」と笑いながら進平。
「ううう。。。。。なんでこの手のエピソードがたくさんあるのかしら・・・・」
 
「あと、吉岡さんの名前、しばしば『はるね』と誤読されることが多くて名前だけ見ると女子かと思われることがよくあって」
「うんうん。それは以前から聞いてた」
「私ね、今はもう公式に『はるね』になったんだよ」
「わあ、そうなんだ。おめでとう。それで、小学校の頃から、何度か学籍簿で年度初めに女子のほうに入れられてたんですよね」
「ありそうだな」
 
「中学に入った時とか最初の授業で担任の先生が出席取ってて女子の最後で吉岡さんの名前呼んだら学生服の子が返事するから『なぜ君は学生服なんか着てるの?ふざけないで、ちゃんと女子の制服着なさい。それ、お兄さんから借りたの?』とか」
「あはは。あれは男子の方で呼ばれなかったから、またか!と思ってたけど」
 
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「高校でも女子の名簿のほうに入れられてたんだよね」
「あ、入学時の健康診断を女子と一緒に受けちゃったという話は聞いた」
「女子と一緒に体育も受けてたね」
 
「うん。健康診断の件でちゃんと修正してもらったものと思ってたら全然直ってなくて。体育の時間に女子の方で先生が『吉岡さん、いないの?』と言われてみんなが『いる場所知ってます』と言うから『じゃ、連れてきて』と言われたとかで、男子の方に集合してたのを連れてかられて、なんか結局1回目の授業はそのまま女子と一緒に受けてしまった」
「おぉおぉ」
「そもそも私は、あの高校、女子枠で合格になってたみたいなのよね、成績上は男子の方のラインも上回っていて問題なかったらしいけど、私を男子の枠に移動すると、男女数が予定と変わってしまうというので、職員会議で少し揉めたらしい」
 
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「いっそ高校はもう女子として通えば良かったのに」と進平。
「それ先生からも冗談で言われた。君が今性転換してくれると凄く助かるとか」
「でも、それ先生が言った時、クラスのみんな拍手してた」
 
「チアガールもだいぶやってたよね」
「うん。小学6年の時にはじめてやらされて。あと中学や高校でも高体連とかでチアガールのチームに毎回入れられてたよ。例の白雪姫がきっかけで、私が女の子の服を着ると可愛くなる、というのが知れ渡っちゃったもんだから、やってやってと言われて」と私。
「おお」と進平が嬉しそうにしてる。
 
「チアガールの衣装付けた吉岡さんがほんとに凄く可愛かったんだよね。身長も他の女子と並んでそんなに違和感のない身長で、一応女子の中では比較的背丈がある方になるし、それでバトンの扱いも上手かったし、踊りも上手かったから、チアガールの中でもリーダー格のポジションでアクションしてたね」
「うん、まあね」
 
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「うーん。チアガール姿のハルちゃん見たい!チアガールの衣装ってミニスカだよね。その下には何穿いてたの?」
「ブルマ。その下はふつうにブリーフだったよ」
 
「なんだ。詰まらん。チアガールの衣装に着替えるのは、どこでやってたの?」
「女子更衣室使ってたね」
 
「最初の頃、男子更衣室で着替えてたら、男子の間から苦情が出て、それで女子たちから、一緒に着替えようよって連れてかれて、もっぱらそっちになっちゃった。女子達からは女の子の下着付けないの?とかだいぶ言われた」
「付けてなかったの?」
「そんなの持ってなかったもん」
「ほんとかなあ・・・・」
 
「そういう背景があって、小学校の修学旅行の時も、女湯に拉致されたみたいね」
「さすがにあの当時の身体で女湯は辛かったよ」と私。
「今はもう女湯にしか入れない身体だけど」
「わあ、そうなってるんだ!」
 
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「中学の修学旅行の時も女子制服着てたよね」
「だって・・・初日お風呂に入ってる間に私の男子制服隠されて、女子制服が用意されてて、これ着てねって言われたんだもん。先生たちも『おお似合ってる』
って言うし。修学旅行の記念写真、親に見られないようにするのに苦労したんだから」
 
「その記念写真、見てぇ。今度見せてくれ!」と進平。
「下着まで女の子用が用意されてたんだよ。パンティーは仕方ないから穿いたけどブラはパスさせてもらった」
 
「僕、その中学の修学旅行の時、吉岡さんと同室だったからさ。なんか結構ドキドキしちゃった。湯上がりでセーラー服着た吉岡さん、色っぽくて」
「あははは。確かに同室の男子の視線は感じてた。私、今夜襲われたりしないよねって少し不安だったよ」
「襲ってみようかって冗談だとは思うけど話してた男子はいたよ」と荻野君。
「ははははは・・・」
 
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「いろいろ楽しいエピソードが聞けるなあ」と進平は面白くてたまらない感じ。
 
「でもクラスのみんな、吉岡さんは多分ふだんは女の子の服を着てるよね、きっと、とか言ってたよ。だって、女の子の服を着せられて、それすんなり着こなしちゃうって、ふつうの男の子なら、ありえないもん」
「そのあたりは俺も何度か追求してみたことはあるんだけど、本人は否定するんだよな」と進平。
 
「誰でも女子制服着たら女の子に見えるんだろうかってんで、僕まで実験台にされて女子制服着せられたんですよ。それで『女装してる男にしか見えんな』
と言われた」
「ああ、可哀想」
 
「そうか、それで高校に入った時に、女子として通えばと先生が言ったら、拍手来たわけだな」
「そうそう。同じ中学から来てる子はみんな吉岡さんのこと知ってたし。高校時代とか、けっこう男の子からのラブレター来てたみたいね」
「うん。けっこうもらった。ある時はすごく可愛い字で会ってくださいと書いてあったから、私、てっきり女の子かと思って、指定の場所に
行ってみたら」
 
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「男だったの?」と進平。
「うん。びっくりした。字が下手だから同級生の女の子に代筆してもらったって言ってた。可愛すぎる字になってしまったのは想定外だったらしいけど。でも、マジな感じで愛の告白されちゃったよ。身体の性別気にしないから付き合ってって」
「それで付き合ったの?」
「まさか。『ご免なさい。ボク、女の子が好きだから』って断った。そしたら『君、レスビアンだったの!?』って言われたよ。私、同性愛の趣味はないつもりだったのに」
 
「だけど、ハルちゃん、男の子好きになったこと何度かあるって言ってたよね」
と進平。
「うん、それはまあ・・・・」
「荻野君にもお熱だった時期があると聞いたぞ」
「えー?そうだったんですか?」と荻野君も驚いている。
「わあ、それなら告白しておけば良かったな。僕も随分悩んだ時期あったし」
「あはは」
 
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「逆に女の子を好きになったことってあったの?」
「何度もあったよ。一応女の子好きになった回数のほうが男の子好きになったのよりは多い。でもいつも向こうは私を友達としてしか見てくれないの。けっこう親しい付き合いした女の子は何人かいたけど、向こうは同性の友人の感覚だったみたい。高校の時も映画に誘ったりして一緒に見に行ったことあるけど、向こうは女の子同士のお出かけ感覚で。途中でそれに気付いたから、結局告白しなかった」
 
「だいぶハルちゃんの子供の頃のことが分かってきたな」と進平。
「同級生たちは男子も女子も小学校の5〜6年以降、吉岡さんのこと、事実上女の子と思ってましたよ」と荻野君。
「俺、ハルちゃんのこと好きになってしまった頃、自分は変態なのだろうかって少し悩んだけど、やはり俺はノーマルだったみたいだ」と進平。
「ノーマルだと思います。うちの学年の男子で吉岡さん狙ってた奴もけっこういましたよ。変態と思われそうで言い出せないけど、きっかけがあればって」
「えーん・・・」
 
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「まあ私服でお出かけした時にトイレの場所尋ねて女子トイレに誘導されたことは数限りないけど」と私。
「じゃ、女子トイレ使ってたの?」
「使ってないよー。女子トイレ使うようになったのは、私がこんなふうになっちゃってからだよ」
「話を聞いてると、ずっと前からそんなふうだったみたいだけど」
 

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