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■続・サクラな日々(6)

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4月の第2週。その週は健康診断が行われることが告知されていた。
健康診断・・・・・あはは、私どうしよう?
 
場所は医学部キャンパス。同じ日の9時から女子で10時から男子と掲示されていた。私の名前は間違いなく男子の方に入れられているだろう。しかし・・・という訳で学生課に行って相談した。
 
「ああ、あなたの件は呼び出して確認した方が良いかなとも思っていた所でした」
などと見知った顔の事務の人から言われる。
「もう性転換手術は済んでるんですか?」
「いえ。それはまだですが、バストが膨らんでいますし、私、いつもお風呂は女湯に入っています」
「なるほど、それでは男子と一緒という訳にはいきませんね・・・」
といって、窓口の人が奥の方に行き相談している。
 
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「分かりました。ふだん女湯に入っておられるということでしたら、女子学生と一緒で良いでしょうから、そちらの名簿に今回は名前を入れておきます。法的な性別の変更の予定はありますか?」
「今年中に申請するつもりです」
「なるほど。では法的な性別が変わったらこちらにも届けて下さい」
「はい、その時はよろしくお願いします」
 
ということで、私は当日は9時から、女子達と一緒に健康診断を受けることになった。莉子が「おお、やはりこちらの時間帯で来たか」と言って喜んで?いる。「受付したら、ハルリンの名前も入ってたから『わぉ』と思ったよ」と涼世。「ま、男子と一緒にはさすがに受けられないよね」と妃冴。
 
問診票に記入する。名前を書き、性別は女に○をした。最近私は性別欄にはためらわずに女の方に○をすることができるようになっていた。以前はそちらに○を付けることに結構思い切りが必要だったものである。
 
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しかし、やや頭がクラクラと来た項目もある。
「現在妊娠していますか?あるいは妊娠の可能性がありますか?」「いいえ」
「現在生理中ですか?」「いいえ」
「生理は順調・不順・○日周期」「(むむむ。取り敢えず空欄!)」
こういう質問は昨年まで男子として受診した時には無かった項目だ。
 
最初に胸部X線撮影で並ぶ。ひとりずつ名前を呼ばれ、中に入ってから服を脱ぎ、撮影される。ここでは時間短縮のため、前の子が撮影されている間に次の子が控えの間で服を脱ぐようになっていた。結果的に2人前の子と控えの間で一緒になる。私は入っていった時は妃冴と一緒になり、出る時は地質学科の松美と一緒になった。妃冴にはヌードを見せたことがあったが松美には初披露になった。松美は「なるほど。それだけ胸があったら女子として受診しないと無理よね」などと笑って言っていた。X線の後、今度も心電図の所で上半身だけ脱ぎ測定される。X線の所でも心電図の所でも女性の技士がやってくれた。そのあと、最後に身体測定と検診になった。
 
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男子として健康診断を受けた昨年はみんなパンツ1丁になって並ばされたのであるが、女子はそういうのではなく、カーテンの内側で、自分の順番の直前に脱げば良いようであった。名前順なので私はクラスの最後である。
 
中で服を脱ぐ。パンティは穿いたままだがブラは外す。今日はさすがにブレストフォームは付けていない。でもAカップ程度のバストは既に形成されている。ちなみに下はいつものようにタックしている。
 
身長・体重・胸囲を測定された後、お医者さんの診察を受ける。
「あれ?君、生理は?」
「すみません。私、MTFなので」
というと先生はキョトンとしていたが、少し間を置いて
「あ、そうだったの?はいはい」
と言う。
「でも全然そんな風に見えないね。凄く自然。手術済み?」
「いえ。でも今年中には手術するつもりでいます」
「うん。胸は・・・・ホルモン?」
「はい。今年の1月から飲んでます」
「それにしてはよく発達してるね。何を飲んでる?」
「プレマリンとプロベラを毎日1錠ずつです」
「ほほお。控えめな飲み方だね」
「様子を見て増やすことも考えましたが、一応胸が発達してきたから、このままでいいかな、と」
「お医者さんの検診は受けてる?」
「はい。△△の○○クリニックに定期的に通って血液検査してもらっています」
「ああ、あそこね。じゃ、大丈夫か」
 
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お医者さんはその後聴診器を当ててあちこち診ていたが
「うん、問題無いね。血液検査・尿検査も特に問題のある数値は無いし。体内のホルモンも完全に女性ホルモン優位になってるね」
と言って解放してくれた。
 
服を着てカーテンの外に出る。他の3人が待っててくれて笑顔で手を振る。「どうだった?女子として最初の健康診断は?」と涼世。
「ちょっとだけドキドキした」
 
お昼は「血液検査で血を抜かれた分補充しなくちゃ」と涼世が言ったので、地質学科の2人も誘って6人で医学部の近くの焼肉屋さんに入り、たくさんお肉を食べた。松美など、「体重を計られるからと思って3日前から御飯控えめにしてた」といって、モリモリ食べていた。
 
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「だけどハルリンのヌード初めて見たけどウェストくびれてるねー」と松美。
「うん、凄いよね。でもこの子、男の子してた頃からこんなだったって」
「へー、それは凄い」
「でも実際は昔から女の子してたからウェストくびれてたんじゃないかって気がしてならないね」と涼世。
「あ、その説に同意」と莉子。
「去年の夏以前は女の子の服着たことなかったというのは大嘘であることは既に判明しているのだけどね」と付け加える。
「なんか誰かひとりに話すとクラス全員に伝わってるんだよなあ」と私。
「当然」
 
「健康診断を女子と一緒に受けたのも今度が初めてじゃないよね、実は」
と莉子。
「・・・・高1の時ね。正確には入学前。合格通知と一緒に送られてきた紙に書いてあった場所・時刻に行ってみたら回りが女子ばかりで」
「あら」
「私の名前、しばしば昔から女の子と誤解されてたから書類が女子の方に入れられていたのよね」
「それでそのまま女子として受診しちゃったの?」
 
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「男子の方はもう終わってしまっていて、その時間帯は女子だったんだもん。でも、男子でも女子でも私は名簿の最後になっちゃうから、どうせ最後になるし、女子の健康診断は診断受ける直前に脱げばいいから、っていわれて結局そのまま女子と一緒に受けてしまった」
「なるほど」
 
「中学の時の友達がたくさんいて『この子中身はほとんど女の子ですから、女子と一緒にいても問題無いですよ』なんて言われたのもあったんだろうけど」
「いい友達持ってるね」
「うーん。。。」
「中学では女子更衣室でよく着替えてたというしね」と莉子。
「何それ?」と妃冴。
「あっとその件はまた。でも健康診断の時は、お医者さんから君、胸の発達が遅れてるね。生理はいつあった?とか聞かれて何と答えればいいか困っちゃった」
 
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「実は生理があったりしないのに?」
「ないない」
 
「よし、ハルリン、ナプキン買いに行こうよ」
「えー?」
「ハルリン、最近おっぱい膨らんで来てるから、そろそろ生理が始まってもおかしくないぞ」と妃冴。
「そんなの始まらないよ〜!始まったら嬉しいけど」
「生理来たら嬉しいんだったら、ちゃんと準備しておこうね」と松美。
 
そういう訳で、私は焼肉屋さんのあと、みんなでドラッグストアに行き、妃冴が私に生理用品の種類とか特徴とか説明してくれて、彼女のお薦めで私は、羽根付きの軽い日用とパンティライナーを買ってしまったのであった。
 

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