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■私の高校生活(12)

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(C)Eriko Kawaguchi 1999.03.29
 
 
学校に戻ると私はまた普通の女の子としての生活を始めました。
一応来学期からは男の子に戻れるはずですし、人生の中でこういう経験もそうできるものではないから、いいだろうと私は開き直って考えるようになりました。
 
そう考えてみると色々と「忘れていたこと」を思い出して来ました。
 
小さい頃妹が可愛い服を着せられているのを見て、自分も着たいなどといって「だって啓一は男の子でしょう」と言われ、つまらないなと思ったことがありました。ある時は親戚のおばさんが「啓ちゃんて色白で可愛い顔立ちだし、女の子だったらよかったのにね」などと言われ、そのあとしばらく<自分が女の子だったら>というフレーズを頭の中で繰り返しリピートしていました。
 
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子供の頃はいつも女の子たちとばかり遊んでいました。男の子たちはがさつで嫌だと思っていたようにも思います。そのことを何度か親に言われ、無理矢理男の子たちの輪の中に入れられたことも何度かありましたが、あまりうまく行きませんでした。いつか私は面倒くさくなって一人でいる時間が多くなりました。今は女の子たちとずっと一緒にいれてとても幸せな気分です。思えば高校に入って1学期の間はやはり一人でいることが多かったのに今は絵里や裕子たちがいます。男の子に戻って来学期からも彼女たちが自分を友達と思ってくれるか。それがちょっと不安でした。
 
相変わらずその絵里には精子を毎週2回渡しています。そして週1回あの注射を打たれています。注射を打たれるとその日はなんだか体がだるく頭痛がしたりしました。それをいうと絵里は「それは普通だから問題ない」と言って笑っています。また吸引パッドはその後ずっと付けさせられていました。そのせいか12月の中旬頃にはほんとに少し胸が大きくなってきました。
 
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「へー、ほんとに大きくなるもんなんだね」と絵里がまさに他人事という感じでいいます。乳首をさわられると少し痛い感じです。
 
「どのくらいまで大きくなるのかな?」と私はやや不安げに聞きます。
 
「もうそのままBカップは付けれそうだね。これだと冬休みにはほんとにCカップまで行くかも。」
 
「でも冬休みに家に帰ったときバレないかなぁ」
 
「冬休みの大半は私たちとスキーでしょう。家にいるのは2〜3日じゃない。裸にならないようにして、普段はだふだぶの服を着ておけば平気じゃない?」
 
 
「うーん」
 
絵里は気楽に言いますが、私はまだ少し不安でした。ところがそれを心配する必要がなくなる事態が発生したのでした。
 
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それは突然の授業中の呼び出しでした。「1年3組の因幡啓一君、ご両親が来ていますので至急校長室に来るように」
私はちょっと青くなりました。突然の両親の来訪。まさか女の子の格好などしているのがバレて抗議にでもきたのでしょうか?そもそもこの格好ではとても両親の前には出られません。
 
私がどうしよう?と思っていたら、裕子が「私が連れていきます」と言って立ち上がりました。そして、そばの体操部の山本さんに「それ貸して」といって彼女がいつもジャージを入れているカバンを取ると、私の手をひっぱって教室の外に連れ出しました。
 
そして裕子は有無をいわさず私を女子更衣室まで連れていくと「すぐ着替えて」と言ったのでした。なるほど確かにジャージなら男女の別はありません。私がいそいでセーラー服を脱ぎジャージを着ると、更に裕子は私の長い髪をうまくまとめて、しかも男の子のように七三に分けてしまいました。「うん。これでとりあえず男の子にも見えるよ。後は声を出しまちがえないでね。グッドラック」
 
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私は裕子に感謝し、走って校長室に向かいました。
 
「失礼します。因幡です」
 
気を付けて男声を出して中に入ります。
 
「やぁ、来ましたね。おや、体育の時間だった?」
 
校長はほっとしたような感じで私に声を掛けました。ここまで走ってきたおかげで、まるでほんとに体育の時間の最中だったみたいです。見ると両親のほか、妹と弟もいます。妹は私を見て意味ありげな笑みを浮かべました。
 
「啓ちゃん、実はね」
 
と母が切り出しました。
 
「お父さんが急にドイツに行くことになったのよ」
 
「行くってどのくらい?」
 
「向こうの大学との交流人事でね。多分3年か5年」
 
「えー?そんなに?」
 
「でね、和美と武徳は中学生に小学生だから連れていくとして啓ちゃんはどうしたらいいかと思ってね」
 
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「ぼく残るよ」私は即座にそう言いました。後で考えてみるとこれが私の人生の中の大きな分岐点だったと思いますが、その時は絵里たちと離れたくないという気持ちだけでした。
 
「ほらね、啓ちゃんはそういうと思ったのよ」と母が言います。するとそれまで黙っていた父が初めて口を開きました。
 
「そうか。啓一ももう高校生だもんな。ちょっと女みたいで頼り気ないと思っていたが、全寮制の高校に入れて正解だったな。和美が友達たくさんできているみたいだと言ってたし」
 
「うん、まぁね」
 
「先生、それでは啓一をこのまま卒業までお願いしてよろしいですか」
 
「ええ、もちろん。責任もってお預かりしますよ」校長は笑顔で答えました。
 
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「で、いつ向こうに行くの?」
 
「話が急でね。今週の金曜に出発する。おまえは大変だから見送りとかは来なくていいから」
 
「うん。じゃあ元気で」
 
「おまえもな」
 
そういうと両親たちは嵐のように去っていきました。去り際、和美が私にさっと手紙を握らせました。
 
玄関でそれを見送ると、校長は大きくためいきをつくと、まだ少し話があるといって私を校長室にもう一度連れていきました。
 
「どうなることかと思ったが、体育の時間でよかった」
 
「あ、いいえ。国語だったんですが、友達が機転を利かせてジャージに着替えさせてくれたんです」
 
「そうか。君はいい友達を持っているみたいだね」
 
校長は緊張がゆるんだのかお茶を入れるといって道具を取り出し、2杯入れて、私に一杯すすめました。
 
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「ありがとうございます」
 
「うちの学校の毎年の伝統行事からはじまって、みんなの悪ふざけが高じて、君をずっと女生徒扱いにしてしまって済まなかったと思っている。私がみんなの暴走を止めなければならなかったのだが」
 
「あ、別に構いません。貴重な体験をさせてもらっていると思っていますから」
 
「そうか。しかし本当に済まなかった。今日からでも男子生徒に戻っていいから。先生たちには私が言っておく」
 
私はその校長の口調から、このままだと何人かの先生が処分をくらうかも、という気がしました。そこで心にもないことを言ってしまいました。
 
「いえ、ほんとに構わないんです。何でしたら3年間このままでも構いません。せっかく女の子の友達がたくさんできましたし。私は中学までは全然友達いなかったし、男子として過ごした1学期もおなじような感じだったんです。女の子になれてほんとによかったと思っています」
 
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「じゃあ、君は女の子でいる方がいいの?」
 
「はい」と答えながら私は自分は何を言っているんだ?と思っていました。
 
「うーん。しかし今ご両親から君のことを頼むと言われたばかりだしなぁ」
 
「私、無理に男の子に戻されたら、友達もいなくなるだろうし、寂しくておかしくなってしまうかも知れません」私はわざと声を女声に切り替えて言いました。
 
校長はその声にちょっとびっくりしたようでした。
 
「分かった。それでは取りあえず3学期までは女生徒のままということにしよう。その後はまたその時考えよう」校長はずいぶん悩んだ末にそう結論を出しました。
 
そういう訳で、私は自ら、2学期末で終わるはずだった私の女子高生生活を少なくとも3学期まで延長することになってしまったのです。
 
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校長室を出たらもう12時20分でした。もうそろそろ4時間目が終わります。呼び出されたのが2時間目の途中の10時頃でしたから、2時間以上校長室にいたことになります。3時間目のリーダーと4時間目のホームルームを休んだことになります。私は校長室でしゃべったことを少し後悔しながら教室の方へ歩いていきました。その時ふと手にした手紙に気づきました。妹から渡されたものでした。開いてみます。
『お兄ちゃん改めお姉ちゃんへ。 きっとお姉ちゃんは日本に残るというと思ったのでこれを書いておきます。
 
親の目もないし、のんびりと女子高生をやってください。劇のためとかじゃなくて、ほんとに女の子になりたいんだよね?昔から女の子っぽいと思ってたし。
 
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タマは17〜18くらいまでに抜いておいた方がいいそうですよ。3〜5年なんて言ってるけど、お父さんはずっとドイツで暮らすつもりだと思います。私は高校まで向こうで出たら日本の大学に入ろうと思っているので、その時は姉妹で一緒に暮らそうね。
 
向こうからは因幡直美様宛で手紙出します。それを取っておけば名前の永年使用の証拠になって改名が認められるかもよ。それではまた』
 
私は何か引き返せない道を歩き始めたような気がしました。
 
教室に戻るとたちまちみんなに取り囲まれました。
「やっぱり女の子やってるのバレたの?」
 
「ううん。そんなんじゃないよ。家族がみんなドイツに行っちゃうことになって」
 
「え?じゃ直美も行っちゃうの?」
 
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「ううん。私は残るよ。このまま日本で女子高生3年やって、それから女子大生やって、OLやって、お嫁さんになって」
 
「じゃ、まだ女の子のままでいられるのね?」
 
「うん。校長先生が取りあえず3学期まではこのままでいいって。その後はその時考えましょうということで」
 
「すごい。直美が自分で女の子続けたいと言い出すなんて、けっこうその気になってきた?」
 
「うん。当面女の子のままでいいよ」
 
「じゃあ、やっぱりあれ問題なしだね」
 
「何が?」と聞くと裕子が笑って答えました。
 
「実はね。さっき直美がいなかった間にホームルームでさ。今年のミス北山コンテストのうちのクラスからの候補者直美が選ばれたのよ」
 
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「うっそー!どうして?」
 
「まぁ、その場にいなかったからでしょう。そういうものよ。コンテストは24日クリスマスイブだから」
 
「ミス北山コンテストって何審査するの?」
 
「制服と私服と水着で舞台に上がって、全校生徒の投票で決めるの。候補者は1年と2年の全クラスから一人ずつ出して、ミス北山になった人はその後1年間学校の行事などでプレゼンターとかやるんだよ」
 
「水着審査もあるわけ。うっそー。でも私男の子だよぉ」
 
「大丈夫よ。胸はけっこうあるという噂だし。それに大会要項を確認したけど、染色体的に女性でなければならない、なんて条件は入ってないから」
 
「はぁぁ」
 
私はどっと疲れてそのまま椅子に座り込んだのでした。
 
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