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■プリンス・スノーホワイト(12)

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「ねえ、アグネス」
とスノーホワイト女王は小さな声で訊きました。
 
「なんですか?陛下」
とアグネスも小さな声で聞き返します。
 
「あのさ、僕が女王になって以来、侍女の誰も僕に添い寝しなくなったんだけど、どうしてかな?」
 
アグネスは吹き出しました。
 
「それは陛下が女になってしまったからですよ。さすがに男を添い寝させる訳にもいきませんし。寂しいですか?」
「いや、そういう訳ではないんだけど・・・僕が男だったら、女の子が添い寝してよかったの?」
 
アグネスはこの人、全然分かってないのかなあと考えながら答えます。
 
「あれは陛下がどこかの姫君と結婚した場合の練習をしてもらうためだったんですよ」
「練習?」
「夜の生活の練習ですよ」
「夜の生活って?」
「陛下、ほんとに分かってないんですね!」
とアグネスは呆れたように言いました。
 
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「私と一度しましたでしょ?」
「あっ・・・」
「気持ち良かったですか?」
「凄く気持ちよかった!」
 
「陛下は女の人になってしまったから、今度はあの時、私がしたようなことを殿方にしてあげないといけないんですよ」
 
「・・・僕にできるかな?」
「きっとできますよ。何なら練習してみます?」
「練習?」
「優しく練習相手をしてくれる人を手配しますよ」
「ほんとに?」
 
とスノーホワイト女王はアグネスに言いました。期待とかしているのではなく、とても不安そうな顔をしているので、ほんっとに知らないんだなあとアグネスは思いました。東宮時代のスノーホワイト様は、ラテン語に古典に数学に音楽に運動に剣術にと教育されているものの、確かにそういう教育だけはしてないもんね!と思います。
 
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「じゃ今夜手配しますから、きちんと沐浴しておいてください。特にお股の付近はきれいに洗っててくださいよ」
と言うと、部屋を出て行きました。とりあえず身体を洗うのは侍女のウルズラに手伝うよう指示しておきました。
 

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その夜、ウルズラに手伝ってもらってきれいに身体を洗い、アグネスの指示で用意されていた、真っ白の絹の下着と真っ白いドレスを身につけます。まだ女の下着を初めて着けてから2ヶ月ほどなので、着ける度にどきどきするのですが、自分はもうついこないだまで着けていた男の下着を着けることはないんだよなと思うと、それもちょっと寂しい気もしました。ドレスを着た後、ウルズラはムーンストーンのペンダントも掛けてあげました。
 
「あれ?これは?」
「陛下が一番お気に入りのペンダントでしょ?」
「うん、そうだけど」
 
ベッドに入って待つように言われていたので待ちます。部屋には侍女のテレーゼとヴィクトリアが控えています。スノーホワイトは彼女たちとおしゃべりしながら待っていました。
 
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ドアが開きます。スノーホワイトはベッドから起き上がってそちらを見ました。
 
「レオポルド?」
「スノーホワイト陛下、夜のお勤めの練習のパートナー、務めさせて頂きます」
「え〜!?レオポルドが?」
「こういうことは初めてでしょうけど、優しくしてあげますから、怖がらなくていいですからね」
 
「ねえ、これ私どのようにすればいいのかな?」
「大丈夫ですよ。分からない所は全部教えてあげますから」
と言うと、レオポルドはベッドの傍まで寄ります。
 
「そのペンダントをつけて待っていてくれたんだね?」
「うん、まあ」
 
「キスしていい?」
「うん。キスくらいはいいよ」
 
それでレオポルドはスノーホワイトにキスをしました。
 
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「お召し物を脱がせますよ」
「これ脱ぐの?」
「はい。脱いだ方が気持ちいいですよ」
 
それでレオポルドはスノーホワイトのドレスの背中の紐をほどいてしまいます。
 
「レオポルドうまいね。私、他の子のドレスの紐を締めたり解いたりするのも苦手」
「練習していればできるようになりますよ」
「レオポルドは練習したの?」
「ドレスで練習しましたよ」
 
レオポルドが言う意味は、誰かに着せたり脱がせたりして練習したのではなく、ドレスだけを置いて、紐を解いたり締めたりする練習をしたという意味なのですが、スノーホワイトはそのあたりもよく分かっていません。
 
レオポルドは服の紐をほどくとペンダントを外して枕元に置いた上で、ドレスを脱がせてしまいます。スノーホワイトは下着だけになるとちょっと恥ずかしい気持ちになって頬が赤くなります。実はスノーホワイトはまだ女物の下着に慣れていないので、その自分でも慣れていないものを見られて恥ずかしがっているのですが、レオポルドは裸に近い状態を見られて恥ずかしがっているのだろうと思い「可愛い!」と思いました。
 
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「僕も服を脱ぎます」
と言って、自分のシャツとズボンを脱いでしまいます。
 
「レオポルドって結構たくましい腕をしているね」
「スノーホワイト陛下。あなたをしっかり抱くためです」
「レオポルド、足も太い」
「スノーホワイト陛下。あなたを支えるためです」
「レオポルド、石けんの匂いがする」
「スノーホワイト陛下。あなたと素敵な思い出を作るためです」
 
「レオポルド・・・」
「何ですか?」
「その・・・パンツが凄く膨れているのは何?」
「あなたとひとつになるためですよ」
 
と言うと、レオポルドは再度スノーホワイトにキスをしました。
 
そしてスノーホワイトの胸当てを外し、自分のシャツを脱ぎます。スノーホワイトがドキドキしているのが分かりましたが、レオポルド自身も実は初めての経験なのでドキドキしています。アグネスは自分以下、誰か好みの侍女が居たら夜のお相手させますと言っていたのですが、自分はスノーホワイト以外とはそういうことをしたくないのでと言って断っていました。
 
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再度キスしてからスノーホワイトのパンティを脱がせます。スノーホワイトが物凄く不安そうな顔をしています。レオポルドは自分も物凄くドキドキしながらパンツを脱ぐと、指で“その場所”を確認しました。
 

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テレーゼとヴィクトリアが、スノーホワイトとレオポルドがひとつになった日付と時刻をきちんと記録します。テレーゼたちはそのまま警護も兼ねておふたりの営みを見守りました。
 
夜更け過ぎ、別の侍女と交代して部屋の外に出ます。記録をまだ起きていたアグネス侍女長に提出しました。
 
「ご苦労さま」
とアグネスがふたりにねぎらいの言葉を掛けます。
 
「アグネスが見届けなくて良かったの?」
と地位の上下はあるものの古くからの同僚なので気易い言葉でテレーゼが訊きます。
 
「だって私がその場に居たら嫉妬しちゃうし」
 
「・・・」
「それどっちに嫉妬する訳?」
 
「もちろんレオポルド王子に嫉妬する」
「アグネス、やっぱりスノーホワイト様が好きなんだ?」
 
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「もちろんお后になれないことは納得していたけど、愛人にでもしてもらえたらって、心の隅ではよく考えていたよ。純粋な欲求の処理係でいいからさ」
 
「女同士になっちゃったら、どうにもならないね」
「うん。だから思い切ることにした」
 
「でも女同士で気持ち良くなる方法もあるらしいよ。古代ギリシャでは男同士でも女同士でも、そうやって楽しんでいたらしいから」
とテレーゼが言います。
 
アグネスは一瞬考えたものの言いました。
「ねぇ、それ詳しく教えてくれない?」
 

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アグネスは実はスノーホワイト女王のバックアップ業務で多数の書類を処理していたのですが、少し仮眠して、翌朝もうレオポルド王子は自分の部屋に帰ったろうというタイミングでスノーホワイト女王の部屋に行きました。
 
スノーホワイト女王はボーっとしていました。
 
「おはようございます。どうでした?」
「気持ち良かった」
「それは良かったです」
「でも、まだよく分からなくて」
「だったら今夜も練習なさるといいですよ。私がレオポルド殿下にお伝えしておきましょうか?」
 
スノーホワイトはしばらく考えていたものの言いました。
 
「自分で伝える」
「はい、それでいいですよ」
 

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「ところでスノーホワイト様。ここだけの話ですが」
とアグネスは訊きました。
 
「なぁに?」
と訊くその言い方はかなり女っぽい雰囲気です。やはり昨夜“女”になったから、女としての自我も育っているのかな?とアグネスは思いました。
 
「男としての愛の営みと、女としての愛の営み、どちらが気持ち良かったですか?」
とアグネスが尋ねると、スノーホワイトは口元に手を当てて、しばらく恥ずかしそうな顔をしていましたが、やがて言いました。
 
「これアグネスだけに言うからさ、他の子には言わないでよ」
「私は陛下のことは決して誰にも言いませんよ」
 
「女の方が男の倍、気持ちいい」
「それは良かったですね」
「うん。やっぱり女になって良かった!」
 
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アグネスはその言葉に吹き出しそうになりました。
 

スノーホワイト女王とレオポルド王子はレザンナ女王の喪が明けた1年後に結婚式を挙げる予定だったのですが、式は延期になってしまいました。
 
それはスノーホワイト女王が妊娠し、出産したからでした。
 
スノーホワイトは出産の時も
「僕にできるかなあ、不安だよお」
などとアグネスに言っていたものの、産んでしまうと
 
「思ったより辛くなかった」
などと言っていました。
 
14歳での出産は、さすがに早すぎるのではないかと言われましたし、その件でレオポルド王子が「申し訳無かった。次はしばらく自重する」とコメントまで発表したのですが、国民はスノーホワイト女王の男児出産を祝福してくれました。
 
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世間ではスノーホワイトは女王と名乗っているが、実は女装の男王ということはないか?という噂もあったのですが、スノーホワイトの出産によりその噂は消えてしまい、やはり女王様だったんだ!ということで国民は納得してくれました。
 
スノーホワイトとレオポルドの結婚式は出産の半年後にあらためて行われました。
 
その後、スノーホワイトは19,21,24,26,29歳の時に、更に2人の王子と3人の王女を産みました。
 
スノーホワイトの出産に関して周囲は前後半年程度の休養を勧めたのですが、事務的な処理はレオポルドやアグネスたちにある程度任せても、国内の行幸のスケジュールは出産して2ヶ月も経つと入れて、超人ぶりを見せていました。
 
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なお、スノーホワイトが最初に産んだ王子はゴールドと名付けられました。
 
そしてお城では実はゴールドと同じ日、ほぼ同じ時刻に生まれた女の子がいました。その子はシルバーと名付けられました。その子を産んだのはアグネスで、実はスノーホワイトの要請で隣り合った産屋で産んだのです。スノーホワイトが実際に赤ちゃんを産み落とすまで「不安だ」「僕に産めるかな」などと物凄く不安そうな声を出していたので、アグネスは
 
「じゃ私も一緒に産みますから」
と言って、隣の産屋から自分も出産に臨みながらスノーホワイトを励ましていたのでした。
 
ゴールドはレオポルド王子を父親とし、スノーホワイト女王を母親とする子供なのですが、シルバーはアグネスを母親とし、スノーホワイト王子を父親とする子供なのです。あの日の1回だけの交わりでアグネスは妊娠してしまったのでした。つまり、スノーホワイトは1日にして、1人の子供の母親と1人の子供の父親になってしまったのです。
 
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ゴールドとシルバーは受胎したのは1ヶ月違うのですが、ゴールドが早産になったため、結局同じ出産日になってしまいました。
 
なお絶対にそのことを他人には言えないものの、アグネスはあの時、自分の排卵日が近いことを意識した上で《万一の場合》に王室の正当な子孫を残すことを狙って、わざと王子とセックスしたのですが、その試みは成功したとも言えます。このことを何となく意識していたのはローラとマルガレータくらいでした。むろんスノーホワイトは全然気付いていません。
 

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スノーホワイトはシルバーについて
「この子は確かに私の子供である」
 
というお墨付きも与えた上で、王位継承権は無いことを宣言し、女大公の称号を与えました。シルバーは表向きにはレオポルド王子とアグネスの間の子供ということにしていました(どっちにしてもゴールドとシルバーは兄妹として振る舞うことができる)。
 
アグネスは出産してから1ヶ月もすると公務に復帰し、シルバーとゴールドの2人にお乳をあげながら、超多忙なスノーホワイトの事務を相当代行しました。アグネスはスノーホワイトとそっくりの署名をすることもできるので単純な承認書類などはどんどんアグネスが代理署名しました。
 
アグネスは一切の政治的な地位を望まず、高額の報酬の提供も拒否し、全ての賄賂の申し出も断って、純粋にスノーホワイト女王の侍女長として、ステファンたちと共に、ずっとスノーホワイトを支えていきました。
 
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なお世間的には兄妹ということにしていますが、本当はシルバーの産声の方が一瞬早かったので、実はシルバーの方がお姉さんです。しかしそれも話が面倒になるからということで、スノーホワイト、アグネス、レオポルドの3人で話し合い、ゴールドがお兄さんということにしました。
 
シルバーに王位継承権が無いことはスノーホワイト女王が宣言しているにも関わらず、シルバーはやはり微妙な出生なのでかなり注目を浴びながら育つことになります。物心付く前から縁談がたくさん舞い込んできました。しかし母親のアグネスは
 
「私自身も野心は無いし、この子はちゃんとゴールド様を支えていけるように教育しますから」
といつも言っていました。
 
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ゴールドとシルバーは兄妹(姉弟)なので顔がそっくりでした。それで小さい頃はこっそり入れ替わって、周囲の人間を混乱に陥れて遊んだりしていました。シルバーは公的にはレオポルド王子とアグネスの子供ということになっているのに実際はシルバーがスノーホワイトによく似た超美人であったことから、本当はこの2人はスノーホワイト女王が産んだ双子なのでは、と世間の人たちは噂をしていました。
 
成長してからは、ゴールドはスノーホワイト政権の国務大臣、シルバーが外務大臣となって活躍します。
 
そしてずっと将来、ゴールドの子供と、シルバーの子供が結婚(従兄妹同士の結婚)することになるのですが、それはまだ遠い遠い先の物語です。
 
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スノーホワイトがゴールドを出産してから1年ちょっと経った時。それはスノーホワイト女王の即位2周年が過ぎて少しした頃のことでした。
 
スノーホワイトが
「アグネス、アグネス」
と焦ったような声で呼ぶので、一体何事かと思って駆け寄りますと
 
「僕どうしたのかな?怪我しちゃったのかな?」
などと言っています。
 
「どこを怪我したんです?」
「あのね、あのね、お股から凄い血が出てくるの。どこを怪我したらこんなに血が出るんだろう?」
などとスノーホワイトは言っています。
 
アグネスは額に手をやって、呆れたような顔をしました。
 
「それは月の物です」
とアグネスは言いました。
 
「何だっけ?それ?」
とスノーホワイトが真剣に訊くので、アグネスはため息を付きました。
 
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この人には性教育がゼロから必要だ!!
 
しかし、考えてみると、結局スノーホワイトは月経を1度も経験しないまま先に出産を経験してしまっていたのです。
 
「取り敢えず処理しましょう」
と言って、アグネスはまずスノーホワイトのお股をきれいに拭いてあげた上で布を当てさせました。
 

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「まず、男の子と女の子の身体の違いから説明しましょうか。スノーホワイト様、男の子と女の子の身体は何が違いますか?」
 
「えっと、男の子にはちんちんとたまたまがあって、女の子には割れ目ちゃんとか、サネとか、秘密の小さな穴と秘密の大きな穴があって、おっぱいも大きいことかな。何か女の子の方がたくさんあってお得な気がしない?」
 
「私は男になったことがないので分かりません」
「男の子もけっこうよかったよ」
「男に戻りたいですか?」
「ううん。女の子の方が快適だからこのままでいい」
 
「まあ、それでですね・・・」
 
と言って、アグネスはスノーホワイトに性の仕組みについての講義を続けました。
 
 
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■プリンス・スノーホワイト(12)

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