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■プリンス・スノーホワイト(11)

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「しかしスノーホワイトよ。立派になったな。母は嬉しいぞ」
とレザンナは言います。
 
「これまで育てて頂いた恩は忘れませんが、私を殺そうとするのであれば反撃させて頂きます。私は母君を倒します」
とスノーホワイトは言いました。
 
「少し待ってくれ」
と言ってレザンナは玉座から立ち上がると、近くに持ち込んでいた鏡に問いました。
 
「鏡よ鏡、この世で一番美しい者は誰?」
 
「それはスノーホワイト様です。レザンナ様も美しいが、スノーホワイト様はレザンナ様の千倍美しい」
 
レザンナは首を振りながら聞いていましたが、ふと思いついたように再度訊きます。
 
「鏡よ鏡、この世で一番美しい男は誰?」
 
「それはレオポルド王子です。スノーホワイト様の夫君です」
 
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レザンナは「へ?」という顔をしてスノーホワイトに訊きます。
 
「お前、レオポルド王子と結婚したの?」
「結婚する約束をしました」
「そうか!それはおめでとう」
「ありがとうございます」
 
「そうか。スノーホワイト王子がレオポルド王子と結婚するとは。何と楽しいことであろう。いいよ、いいよ。幸せになってくれ。しかしどちらがお嫁さんな訳?」
「私が妻になりますが、レオポルド王子に婿に入ってもらい、ふたりでこの国を収めます」
 
「そうかそうか」
と言って、レザンナは何だか大きな声を出して笑っています。スノーホワイトは、この人もう気が触れているのではと思いました。レザンナは最後にもう一度訊きました。
 
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「鏡よ鏡、この世で一番美しい女は誰?」
 
「それはスノーホワイト様です。女に変わり王子様から王女様になられたスノーホワイト様が、この世の女の中で一番美しい」
 
それでレザンナは怪訝な顔でスノーホワイトに訊きました。
 
「お前、女になったの?」
「ですからレオポルド王子と結婚しますよ」
「そうか。それは良かったなあ」
と言って、レザンナはまた笑っています。
 
そして
「同じ女としてまで、スノーホワイトに負けるなんて!」
 
と嘆くように言うと、いきなり剣を抜いて鏡をたたき割ってしまいました。
 

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「美しさではお前が私に勝った。しかし力でも私に勝てるかな?」
とレザンナは言います。
 
「勝ちます。そして私がその玉座に座り女王になりますから、母君はそこをどいて下さい」
とスノーホワイトは言いました。
 
「だったら奪い取るが良い」
 
とレザンナが剣を持ったまま言うと、いきなり巨大な妖獣が現れ、こちらに向かってきます。
 
ステファンがすぐにスノーホワイトの前に立つと、自分のクロスボウで妖獣の眉間(みけん)を撃ちました。妖獣が倒れるので、ステファンはその後、槍でトドメを刺そうとしていましたが、スノーホワイトはマルガレータだけを連れて先に進みます。
 
女王が勢いよく剣を振りました。すると、物凄い風のようなものが玉座からこちらに吹いてきました。とっさにマルガレータがスノーホワイトの前に立ち、身を挺して女王の攻撃からスノーホワイトを守ります。
 
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スノーホワイトは彼女を遠慮無く楯にしたまま、身体をすぼめ、既に一杯に引いていたクロスボウを女王に向け、発射しました。
 

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レザンナはスノーホワイトの放った矢を腹に受けると、剣を落とし、前転でもするかのように前に倒れ込み、そのまま玉座から転げ落ちました。王冠も転がり落ちます。
 
「スノーホワイト。強くなったなあ。国王たる者、文武両道に長じ、天使のような外見の美しさと、魔神のような内面の強さを併せ持たねばならぬ。そなたは私が理想とした王だ。私は負けた。そなたに王位を譲る」
 
とレザンナは言いました。
 
「母上。ここまでしっかり育ててくれてありがとうございました。譲位も承ります。母上にはトドメを刺させて頂きます」
 
と言って、スノーホワイトは自分の剣でレザンナの心臓を突き刺しました。
 
小さな声を挙げてレザンナは絶命しました。マルガレータが歩み寄って女王の死を確認しました。ステファンも歩み寄ってスノーホワイトの肩を叩きます。アグネスも走り寄って、スノーホワイトの身体をしっかりハグしました。スノーホワイトは剣を落とし、その目から涙がこぼれ落ちました。
 
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その頃、ロンメルとマルスの戦いはロンメルの勝利で決着がついていました。マルスは息も絶え絶えです。
 
「殺せ」
とマルスが言いましたが、
 
「お主はまだ助かる」
と言ってロンメルは剣を収め、近くに居る兵に、医者を呼ぶように言いました。
 

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一方、ソリスとレオポルド王子の戦いも決着がついていました。
 
ソリスの剣が折れ、王子はソリスの右肩を強打して力が入らないようにした上で、心臓の真上、胸板から2mmくらいを剣で突き刺しました。
 
「強いなあ。かなり鍛えられましたな?」
「スノーホワイトにふさわしい男になるべく日々身体を鍛えている」
「それは偉い。我が国も安泰だ」
 
しかし王子はいつまで経っても、ソリスの心臓を貫こうとはしません。
 
「なぜそこで停める?俺を生かしておいたら後悔するぞ」
とソリスは言います。
「お主はまだ利用価値がある。こいつを拘束しろ」
 
と言ってレオポルド王子は剣を引きました。兵が寄ってきて「閣下失礼します」と言い、ソリスを拘束します。そしてこちらもすぐ医者を呼びました。
 
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王宮内は1時間もしない内に、スノーホワイト王女派が完全に掌握し、拘束されたり王女たちを攻撃して倒された者以外の全員がスノーホワイト王女に忠誠を誓いました。
 
夜が明けてから首都アッシュ全体にレザンナ女王が逝去し、スノーホワイト王女はレザンナ女王から死の直前に譲位され、新しい女王になられるというお触れが行われます。
 
「スノーホワイト様って王子様じゃなかったんだっけ?」
「いや王女様でしょ?」
「それはどちらなのかという議論が昔からあった」
 
「女王様になられるのであれば、やはり王女様なのでは?」
「だよな。王子様が女王様になられる訳無い」
 

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翌日にはレザンナ女王の葬儀が盛大に執り行われ、その翌日にはスノーホワイト女王の即位の礼が行われました。スノーホワイトは実母のエレノア様が使っておられた喪服と儀礼服で、この式典に出ました。もっとも背丈が無いので本来の膝丈ドレスがロングドレスになってしまっています。レオポルド王子はスノーホワイトの婚約者として両式典に出席し、事実上のスノーホワイトの配偶者として、新女王をサポートしました。
 
女王が交代したことは1ヶ月ほどで全土に知れ渡りますが、元々スノーホワイト“王女”の人気が高かっただけに、あちこちで歓喜の声があふれました。
 

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ノガルドとアルカスはレザンナ女王の時代は断交していたのですが、レザンナが倒されたことが知れるとハモンド大公自身がすぐにアッシュを訪れ、両国の友好関係の再開を共同で宣言しました。レオポルド王子は取り敢えずスノーホワイト女王の補佐役としてアッシュに留まることにしました。ジャンヌとロンメルも王子の側近として一緒にノガルドに留まることにします。
 
なお、スノーホワイトとレオポルドがまだ13歳と19歳でかなり若いので、摂政としてハモンド大公の大叔父で74歳のオルガン子爵がノガルドに赴任し、スノーホワイト女王が16歳になるまで3年間限定で、様々な助言と補佐をすることにしました。
 
ノガルド王室にゆかりのある貴族もいるにはいるのですが、スノーホワイトは数人の側近と話し合い、むしろノガルドにしがらみの無い人物の方が使いやすいとして、老齢でもあり、また元々無欲なことで知られるオルガン卿に期間限定でお願いすることにしたのです。オルガン卿の温厚な性格はノガルドの貴族たちにも好意的に受け入れられました。
 
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今回の一連の動きで大きな功績をあげたステファン・マルガレータの兄妹については、スノーホワイトは自分の側近になって欲しいと要請し、ふたりは承諾しました。それでステファンはスノーホワイト女王の侍従、マルガレータはスノーホワイト女王の侍女の肩書きで、実質女王のボディーガードとなることになります。ふたりは女王のお出かけの時はいつも付き従って警護をしていました。
 
スノーホワイトにはまだ幼いこともあり、侍女団は居ても、侍従団が作られていなかったのですが、フランツ少尉(軍曹から昇進)が侍従長になり、侍従団が結成されました。ステファンは副侍従長にすると言われたのですが、そんな柄じゃないと言って断り、フランツ少尉に次ぐ「身分証明書番号002」の侍従ということで妥結しました。
 
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すぐそばに居たのに、レオポルド王子に変装したレザンナにスノーホワイト姫を殺されるという失態を演じたことについて、アレクサンドルはハモンド大公に「責任を取って自死したい」という上申書を出したのですが、大公は、スノーホワイト姫は助かったのだから、何も責任を取ることはないし、レオポルド王子も君たちに責任は無いと明言していると言って、それを却下。代わりにノガルドに行ってレオポルド王子を支えてくれないかと言ったので、それに従い、ジャンヌやロンメルと合流しました。
 

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フォーレの都ヴァルトでは、いったんソリスが騒動を収めていたものの、結局ケーンズ皇帝はその後も全く姿を見せないため、とうとう反皇帝派が蜂起してしまいました。
 
数日にわたる戦闘の末、反皇帝派が勝利。そのリーダーを務めたバイサー騎士団のルーカス卿は、国名を元に戻してナンキ王国の再建を宣言しました。ナンキ王国は「王の任期制」を採用し、バイサー騎士団のメンバーの中から5年に一度互選で国王を選出するという、かつてのチュートン騎士団国のような政治システムを採用しました。
 
ノガルド女王となったスノーホワイトはルーカス新国王と連絡を取り、ノガルドとフォーレの同盟は、そのままノガルドとナンキの同盟として継承することを確認しました。
 
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ハンナ国の領域は、フォーレ帝国ハンナ州ということになっていたのですが、フォーレ帝国が崩壊したことから、ハンナ知事に任命されていた人物は身の危険を感じて逃亡してしまい、結局、亡きハンナ国王の従妹で他国の王子と結婚してそちらに出ていたヴァレリー王女が帰国して新女王になり、ハンナは独立を回復することになりました。
 
それで結局、ノガルド・アルカス・ナンキ・ハンナの4ヶ国同盟が成立することになったのです。
 

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ノガルド国内では、スノーホワイトがフェルト中佐を将軍に昇進させ、ソリスに代わる国軍参謀長に任命しました。後任のボウル市長には民衆指導者のリュッソーを指名しました。
 
ソリスやマルスなど、レザンナ女王時代の幹部は裁判に掛けられ、ソリスには死刑、マルスに永年収監の判決が出ましたが、スノーホワイト女王は恩赦を与え、首都アッシュ近くのムスタング山の斜面を開墾して、ここでホップの生産をさせることにしました。この開墾事業には、レザンナ女王派の人々、フォーレ帝国の幹部などをしていてその後の革命でこちらに逃げてきていた人たちなどを積極的に雇用しました。
 
彼らを野放しにしておいて不穏な動きを見せられたら困るので、どうせなら監視しやすい首都の近くに集めてしまおうという考えで、その全体を束ねる役にノガルド・フォーレ両国のレザンナ・ケーンズ派に顔が利くソリスを登用したのでした。
 
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レザンナとケーンズが同一人物であることを知っていたのは(生き残った者の中では)ソリスだけで、彼はそのことを誰にも言わなかったので、結局突如失踪したケーンズ皇帝の行方は歴史上の謎になってしまいました。
 
なお、この開墾地で生産されたホップは、その後ノガルドで良質のビールを生み出していくことになります。
 

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レザンナが倒れてから半月ほどしたある日。スノーホワイト新女王は数人の大臣と連続して会談をし、その後、カーサス州の知事とも会談し、更に軍の幹部とも会談した後、食事を執務室に持って来てもらって食べながら書類10枚に目を通してサインし、それをローラに持って行かせた所で、やっと仕事が途切れ、「ふーっ」と大きく息をつきました。
 
「頑張っているね」
と言って入って来たのはアグネスです。
 
「疲れる〜!」
「仕事がたくさんあるでしょ?」
「女王というお仕事がこんなに忙しいものだとは思わなかった」
 
「女王様のお仕事は、だいたい単純な事務処理が、ふつうの官僚の2倍くらい、それに人と会う仕事がだいたい年間400人くらい、外国の要人と会う仕事が年間40人くらい、国内を巡回する仕事が年間30回くらい、式典に出る仕事が年間80回くらい、儀式をする仕事が年間300回くらい、はあるからね」
 
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「レザンナはそんな凄い量の仕事をこなしてたの〜?」
 
「儀式とか式典は全部サボってたからソリスが代行してた。事務処理もデモスに全部やらせてた。レザンナ様にはあまり会いに来る人はいなかったから、その系統の仕事は少なかった」
 
「僕もさぼりたーい」
「そういう男みたいな口調はダメですよ」
「なんか女ってそのあたりの制約がめんどくさいね」
「女になってしまったんだから仕方ないですよ。頑張って下さい」
 

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■プリンス・スノーホワイト(11)

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