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■プリンス・スノーホワイト(7)

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一方、レザンナ女王から「七人の鉱夫と一緒に居る小娘」の殺害を請け負ったクレーテはその翌日になってやっと、鉱夫たちの小屋を見つけ出しました。過去にクレーテが知っていた場所から引っ越していたので、探し出すのに時間が掛かってしまったのです。
 
鉱夫たちがいる間は無理だろうと考え、昼間、彼らが仕事に行っている間を狙うことにします。なおクレーテには、レザンナ女王が飼っているカラスが同行していました。クレーテの仕事を見届けることと、念のためスノーホワイトの居場所を確認するためです。
 
クレーテはその7人が出て行ったのを見て、自らに魔法を掛け、30歳くらいの農婦に化けて、小屋の戸をノックしました。
 
「はい、どなたでしょう?」
とスノーホワイトはドアを開けないまま返事します。
 
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「小間物屋でございます。娘さんですか?髪飾りとか、腕輪とか、興味ありませんか?」
 
「申し訳ありませんが、私はただの留守番なので、勝手にお買物する訳にはいきません。それに私はその手の物には全く興味がありません」
 
実際スノーホワイトは男の子なので、本当にアクセサリーには興味無いのです。
 
「見るだけでも見ては頂けませんか?お代はパンの一切れでもいいですので。私の子供にパンを食べさせてやりたいのです」
などと農婦に化けたクレーテは言います。
 
子供にパンをやりたいとまで言われると、元々優しい心を持つスノーホワイト王子は
 
「だったら少し見てみようか」
と言って戸を開けました。
 
クレーテはスノーホワイトを見てびっくりします。これほどまで美しい姫はめったに居ないぞと思いました。こんな美女を殺すのは心が痛む思いですが、仕事はしなければなりません。
 
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「なんと美しい娘さんでしょう。その黒髪には何もつけておられないのですか?」
「食事の時にピンで留めたり、運動をする時に紐で縛ったりするだけですよ」
「そんなもったいない。もっと美しく飾ればよいのに。殿方にも喜ばれますよ」
「私は別に男の人に喜ばれても仕方ないので」
「それは何とまあストイックな。でもいつかは男の方と結婚なさるのでしょう?」
「気持ち悪いこと言わないでください。男と結婚するつもりなどありません」
 
この姫は男嫌いなのだろうか?とクレーテは疑問を感じたものの、ことば巧みにこれが似合いそう、あれが似合いそう、とやって、とうとう黄色い髪飾りをちょっとつけてみようかなと言わせる所まで持って行きました。
 
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「お嬢さんの髪をこうまとめてですね」
と言ってクレーテはスノーホワイトの後ろに回り込んで髪をまとめると、そこに“死の魔法”が掛かっている髪飾りを刺したのです。
 
すると刺した途端、スノーホワイトはその場で倒れてしまいました。
 

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手首を取り脈をみて、確かに死んでいることを確認します。
 
「この通り確かに殺したぞ」
とクレーテは自分に付いてきているカラスに向かっていいます。その言葉はカラスを通して、レザンナにも届きました。カラス自身もスノーホワイトの身体に留まり、確認しているようです。やがて「カー」と鳴きました。カラスもスノーホワイトの死を確認したのです。
 
「ご苦労。では城に帰還されよ」
とレザンナもカラスを通してクレーテに伝えました。
 
それでクレーテは帰ることにしました。
 
ところが小屋を出た所で、ばったりと1人の男に遭遇しました。
 
「誰だ?」
と男は言います。
 
「ただの農婦ですが」
「嘘をつけ。お前、魔女だろう?見た目は30歳くらいなのに、その手のしわはどうみても70歳か80歳を越えている」
とステファンは言いました。
 
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「はっ」としてクレーテは自分の手を見ました。そこまで気が回っていなかったのです。
 
クレーテはいきなり剣を抜いてステファンに突いてきました(西洋の剣は基本的に突くもの。この時代はまだ有名なレイピアが生まれる前でエストックと呼ばれる菱形の刀身を持つ長い剣が主流)。
 
ステファンはさっと身をかわします。そして自分も槍を取り出しました。
 
クレーテとステファンの戦いは数分続きましたが、腕力と敏捷性に勝るステファンがやがてクレーテを圧倒し、ステファンはクレーテの右肩と左足に槍を刺して相手が動けないようにします。
 
それで、こいつそこの小屋から出てきたなと思い、中に入ったのですが・・・
 

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「スノーホワイト様!」
と言ってスノーホワイトの倒れている所に駆け寄りました。
 
「スノーホワイト様!スノーホワイト様!」
と呼びかけて身体を揺すりますが、スノーホワイトはぐったりしていて全く反応しません。胸の所に耳を当てますが鼓動が聞こえません。口と鼻の上に掌をかざしてみましたが、息もしていないようです。
 
「まさか亡くなった?」
と言って青くなります。
 
そして呆然としたまま、スノーホワイトの身体を抱きかかえて小屋の外に歩き出てきました。
 
ちょうどそこに、レオポルド王子・アグネス・マルガレータと、ジャンヌにロンメルという5人がこちらにやってきました。
 
「お兄様!」
とマルガレータが声を掛けますが、レオポルド王子はステファンが抱いているスノーホワイトの方に先に気付きました。
 
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「スノーホワイト殿!」
と言って駆け寄ります。
 

「どうしたのだ?」
と王子が訊きます。
「心臓が動いていません。息もしていません」
とステファン。
 
「まさか死んでおられるのか?」
と駆け寄ったジャンヌが言います。
 
「お前が殺したのか?」
とレオポルド王子がステファンに詰め寄るように言います。
 
「私が見つけた時はこの状態でした。そこに倒れている女が何かしたようです」
 
するとロンメルがクレーテのそばに寄りました。そして刀を突きつけて言います。
 
「正直に言えば、何らかの配慮はしよう。言わなければお前は今から、想像を絶する苦しみを味わうことになる」
 
と物凄い形相で言いました。
 
「ひー!」
とクレーテはロンメルのいかにも拷問慣れしているかのような表情に悲鳴をあげてしまいました。
 
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その時、近くで様子を見ていたカラスが勢いよく飛んでくると、そのクチバシでクレーテの首の後ろの部分、頸動脈を刺しました。
 
「ぎゃっ」
という声をあげてクレーテは倒れました。
 
「そのカラスを逃がすな!」
とレオポルド王子が言います。
 
ジャンヌがナイフを取り、逃げて行くカラス目掛けて物凄い速度で投げつけました。ナイフが当たってカラスは地面に落ちます。
 
「生かしておいたほうがよかったですか?」
とジャンヌが訊きますが
 
「いや。よくやった。カラスは何もしゃべるまい。逃がして飼い主の所に戻られるよりはここで始末して良かったと思う」
とロンメルは言いました。
 

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その時、死んだようにしているスノーホワイト王子の姿を見ていたアグネスが
 
「その髪飾りは何でしょう?」
と言いました。
 
後ろ髪がまとめられ、そこに黄色い髪飾りが刺さっているのです。
 
「侍女のお主が知らぬのか?」
とレオポルド王子がアグネスに訊きます。
 
「ええ。見たこともありません。そもそもスノーホワイト様がこんなセンスの悪い髪飾りなどつける訳がありません」
 
「それは私の趣味でも無いな」
とマルガレータが言います。
 
「外してみよう」
とレオポルド王子。
 
「待って。手で触らないで」
とジャンヌが言い、布でその髪飾りを持つと、スノーホワイトの髪から外しました。
 
するとどうでしょう! 今まで死んだようにしていたスノーホワイトがハッとしたように目を開けたのです。
 
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「殿下!」
「スノーホワイト殿!」
「スノー様!」
 
とみんなが驚いて、そして喜んで声をあげました。
 

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レザンナ女王は、クレーテが猟師ステファンに捕らえられ、今にも自白しそうだったので、やむを得ず始末し、お使いのカラスもやられたので、これはもうアルカスと近い内に全面戦争になるかも知れんと考えました。その場合怖いのは、国内にかなり居る不満分子たちです。彼らはアルカスの侵攻に呼応して蜂起する可能性もあります。ソリスと相談したいのですが、そのソリスがなかなか戻って来ないので、イライラしています。
 
鏡に訊いてみます。
 
「鏡よ鏡、この世で一番美しい者は誰?」
 
先日「この地上で」と尋ねたら、川の中で流されている最中だったスノーホワイトは対象外などと言われたので、今度は「この世」と言ってみたのです。
 
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「それはスノーホワイト様です。レザンナ様も美しいが、スノーホワイト様はレザンナ様の千倍美しい」
 
「やはり、生きていたか。クレーテは失敗したな」
と女王は独り言のように言いました。
 

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一方、鉱夫たちの小屋では、生き返ったものの、体調が万全ではない感じのスノーホワイトを、取り敢えずベッドに寝せて、アグネスが介抱していました。レオポルド王子の一行は3組に分かれてスノーホワイト“王女”を探していたのですが、ジャンヌがひとりで予め定めていた集合場所に赴き、他のメンバーと合流して、この小屋に全員を連れてくることにしました。
 
「しかし勝手に入ってしまったが、この小屋は誰のものだろう?ベッドが姫のものの他に7つ並んでいるが」
とレオポルド王子が言いますと
 
「ここはこの界隈ではわりと有名な七人組の鉱夫の小屋です。この近くの鉱山で宝石の採掘をしています」
とステファンが言いました。
 
「そのような人たちがいるのか」
「警戒心が強くて、人付き合いの悪い連中ですが、性格は良い奴らですよ。しかし怪我していたのを治るまでとはいえ、他人を泊めてあげるのは珍しい」
とステファンは言います。
 
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「まあ女の子では自分たちに害を及ぼしたりしないだろうと思ったんじゃないの?」
とマルガレータが言います。
 
ちなみにステファンはアグネスから「スノーホワイト様のことをみんな王女様と思い込んでいるので、面倒になるから、事件が落ち着くまで話を合わせておいて」と言われて了承しています。
 

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やがて7人の鉱夫たちが小屋に戻ってきますが、何だか人が大勢居るのでびっくりします。彼らとは顔なじみであったステファンが代表して説明しました。
 
「なんと、スノーちゃんが襲われたのか?」
「襲った奴は倒したし、スノーは少し毒にやられたものの、今回復しつつある。君達に迷惑を掛けて済まんが、彼女が回復するまで数日この小屋に滞在させてもらえないか?アルカス領内に待避させようと思うが、今の状態であまり動かしたくないので」
 
「分かった。そういうことなら、滞在してよいが、我らは昼間は仕事に出るから、スノーの身は守れないぞ」
と鉱夫たちのリーダー、ブリックは言いました。
 
「大丈夫だ。昼も夜も交替で常に2〜3人は姫のそばに居るようにするから」
とレオポルドが言います。
「それならよい。しかし、スノーちゃんはいったい誰に狙われているのだ?」
 
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「この国の女王を名乗っている女だよ」
とレオポルド王子は言います。
 
「なぜ女王に狙われる?」
「この子がこの国の正当な女王になるべきスノーホワイト王女だからだ」
 
「待て。スノーホワイト様は王子ではないのか?」
とブリックは戸惑うように言いました。
「姫君なのだが、男の兄弟が居ないので、王子も兼ねておられるのです」
とアグネスが言います。
 
「そうだったのか!てっきり、スノーホワイト様は男の王子かと思っていたよ」
とブリックは言いました。
 
その会話を聞きながら、まだ起き上がる元気がなくてベッドで休んでいるスノーホワイトは「どうなってんの〜?僕、勝手に女の子ということにされているみたい」と思ったものの、アグネスから「殿下の性別問題は、落ち着いてからあらためて言いましょう」と言われたので、黙っていました。
 
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