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■夏の日の想い出・3年生の冬(12)

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仙台に着いてから、私たちは駅の構内のカフェでしばし休息を取っていた。ここまで来ると政子もやっと饒舌になる。少しHなやりとりなどもしながら私たちはいろいろな話をする。その内突然政子の口が止まる。私がレポート用紙を渡してやると、政子は「青い清流」の方をバッグから出して詩を書き始めた。政子がこのボールペンを使う時は、悲しい詩や厳しい詩を書く。
 
10分ほどで書き終えてタッチと言って、自分のバッグから五線紙を出し、ボールペンと一緒にこちらに渡してくれた。私は微笑んでその詩に曲を付けて行った。少し悩みながら、またところどころ「この詩、こう変えてもいい?」
などと訊きながら、作曲作業を進め、曲は20分ほどで完成する。
 
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私が小声で歌ってみせると「うんうん、いい感じ」と政子は言った。政子はタイトルのところに『事象の夜明け』というタイトルを書いた。
 
「ふーん。ちょっと抑制したね」と私は言った。
「本当は『プロトンの夜明け』にしようかと思ったけど、あまり政治的な意図とか見られたくないから」
 
「私も、あまり政治的な思惑に取られやすい曲は出したくない。怒りはあるけど、自分たちの歌をそういうことには使いたくない」
と私。
「私たちフォークライターだって随分いわれたけど、フォークは本来すごく政治的なんだけどね。『花はどこへ行ったの』とかね」と政子。
「私たちは完璧なノンポリだもんね」
 
「でもマーサって原発に反対なの?賛成なの?」
「冬は?」
「じゃ、せーので。反対なら指は下向き、賛成なら上向き」
「よし。せーの」
 
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私たちはお互いの指を見つめて「うーん」とうなった。
 
「愛が足りないのよ!今夜は私を5回くらい逝かせて」と政子。
「いいけど」
と言って、私は微笑む。
 

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そんなことを話していた時、私はカフェの窓の外を通りがかった人物とふと目が合ってしまった。私が挨拶すると向こうも手を振り、店の中に入ってきた。
 
「おはようございます、部長」
「おはよう、マリちゃん、ケイちゃん」
 
「こちらは仕事だっけ?」と町添部長。
「個人的な行動です。今日は南相馬市まで行ってきました」
「おお」
「私たち実は昨年の5月から月に1回くらいのペースで東北のあちこちで突発ストリートライブしてたんです」
「なに〜〜!?」
 
「だいたいはマリのヴァイオリンと私のフルートだけですけど、歌うこともありました」
「マリちゃんも歌うの?」
「今日は歌わなかったけど、けっこう歌ってたよね」
「うん。私にとっては人前で歌ったり演奏するリハビリも兼ねてたんだけどね」
「なるほど」
 
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「でも今度の3月11日で一応結願にしようかと」と私。
「ああ」
「偶然にもここまて誰にも知られずにやってきたので。知られて騒がれると、ずっと続けないといけない雰囲気になっちゃうから。今まではとにかく何かしなきゃという気持ちで行動してきたけど、惰性でするのは嫌だし、私たち偽善的な行動も嫌いだし」
と政子が言う。政子がこんな長くて理屈っぽいことを言うのは珍しい。だいたい彼女は感覚人間だ。
 
「ああ、そういう気持ちも分かる」と町添さん。
 
「先月福島市に行った時、あの地域のことを聞いたので、今日は南相馬市まで行ってきたんです」と私。
「双葉町に行きたかったけど、無理に行っても誰もいないし」
「そうだね。今あそこにいるのはネズミくらいかな。でも例のカントリーソングのPVに使われているのが双葉町の映像だってことに気付いた人たちがポツポツと出ているみたいね」
「自然に噂が広がるのは構わないと思います」
と私は微笑む。
 
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「昨年は『暗い小径』の悲鳴のようなピッコロも随分ネットで議論されてたけど、結局あれって何だったの?」
 
『暗い小径』は昨年のアルバムに入っていた曲で、少し寂しい小径を辿りながら、片思いの彼のことに思いを馳せる女の子の思いを歌った曲だが、曲の途中に入るシンバルの音と悲鳴を思わせるピッコロの音が何を意味するのか、物議を醸した。
 
「ああ、あれは」
「私が蛙を踏んじゃったんです」と政子。
「えー!?」と言って、町添さんが大笑いする。
「でも蛙は無事で逃げて行きましたよ」
「それは良かった」と言って、町添さんはまだ笑っている。
 
「そうそう。南相馬市の農産物直売所で少しお野菜買ってました」
「・・・大丈夫なの?」
「全部放射能検査通ってますよ」
「だったら問題無いか」
「今夜サラダにして食べます。ピンザンティン」
「君たち、ほんと時々不思議なことばを発明するね」
 
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「ああ、そういう能力って女性だけにあるという話です。男は既存の言葉を組み合わせることしか思いつかないんですって」
「なるほど、そうかも知れないね」
 
「ケイも結構不可思議な単語を作り出すよね」
「ああ、私の脳みそは女性型だってのは、結構奈緒たちから言われてたね」
「ケイちゃんって、いつ頃から女の子だったんだろう?」と町添さん。
 
「私が想像するのには、生まれた時既に女の子だったのではないかと」
「ふふふ」
 

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「そうだ、部長。私たちのライブ、5月に仙台でやりますが、一度福島でもできませんかね。南相馬市はさすがに難しいでしょうけど、福島か郡山か、あるいは原発から離れる意味で会津若松でもいいですが」
と私は言ってみた。
 
「うん。。。。それは考えてもいいけど。福岡で予定している年末のライブを振り替える?」
「今のラインナップに加えていいですよ」と政子。
「分かった。考えてみよう」
 
「ありがとうございます」
 

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翌12日はローズ+リリーの名古屋公演(2月23日)のチケットが発売されたが、一般発売した2800席が3分でソールドアウトした。むろんチケットは転売禁止で入場には予約に使用した携帯電話か写真付き身分証明書が必要である。私は何人かの友人からチケット何とかならない?と言われたが、今回は会場が狭いので無理、といってお断りした。
 
その翌日1月13日はGD賞の授賞式があり、ローズ+リリーは『影たちの夜』
で、ローズクォーツも『起承転決』で受賞したのでみんなでぞろぞろと出て行った。高校の時に『甘い蜜』で受賞した時は、上島先生が私たちの代理で授賞式に出席してくださった賞である。
 
これで私たちは今年の年末年始の大きな音楽賞のほとんどに入賞した感じもあった。またローズクォーツもこの賞だけでも受賞したので私はホッとした。
 
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「なんか悔しいなあ。マリちゃん・ケイちゃんはどれかひとつくらい大賞を取っても良かったと思うんだけど」と一緒に入賞したAYAが言う。
 
「私たちよりたくさん売ったグループも複数あったからね」
「あれは買ってる人の『中の人』の数に疑問があるけど」
「それに私たちテレビに出ないし。今日の賞なんかは単純に統計で選考するみたいだけど、年末のRC大賞とかは、やはりテレビに出るアーティストにあげたいんじゃない?」
「うん。それはあるかも知れないけどね」
 
19歳頃までは結構テレビに積極的に出ていたAYAも最近は音楽番組以外にはほとんど出ていない。むしろライブ活動の方に力点を置いている感じだ。
 
「なんかテレビに出るのが時間の無駄のような気がしてさ」とAYA。
「そう感じる人も多いだろうね。スリファーズも最近もうバラエティ系に出てないけど、事務所の社長が言ってたのよね。テレビに出しても全然宣伝効果が無いって」
「テレビ見てるのは小さな子供かお年寄りだけって感じだしなあ。中学生世代から60歳前後くらいの人はテレビ見てるより、ゲームしてる時間の方がたぶん長いよ」
 
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そんな話をしていた所に XANFUS のふたりがやってくる。私たちはいつもの流儀で、音羽と私、政子と光帆がハグし、それから光帆と私、政子と音羽がハグし、最後に私と政子、音羽と光帆でハグする。
 
「あんたたち、いつもそれやってるね」とAYA。
「そうそう、友情の儀式なんだよ」とXANFUSの音羽。
 
「私も混ぜて」とAYA。
「ダメ」とXANFUSの光帆。
「なんで〜?」
「だって私たちビアン同士だから」と光帆。
 
「むむむ。私は確かにストレートだ!」とAYAは残念そうに言った。
 

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その日、私たちがマンションに戻って、まずは夕食前にちょっとだけ愛し合い、それから曲作りをしていたら、政子の携帯に着信がある。政子のお母さんからだ。
 
「あ、もしもし。うん。うん。えー!?」
「いや、それはお疲れ様。あ、えっと。。。。はい、お掃除します!」
「じゃ、4月1日からはしばらく東京本店勤務なのね? 了解!」
と言って政子は電話を切った。
 
「参った・・・・」と政子。
「もしかして、お父さん、日本に戻ってくるの?」と私は訊く。
「うん。正式辞令はまだなんだけど、向こうを3月29日金曜日で離任して4月1日月曜日からは東京勤務だって。その後国内の支店のどこかに赴任するらしいけど行き先が決まるまでは東京本店に籍を置くらしい」
 
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「良かったじゃん。5年間のひとり暮らしだったからね」
「まあ、途中1年間母ちゃんと一緒だったけどね。というか、今私、実際問題として冬と同棲状態だし」
「別にそれは今までと一緒でいいんじゃない?」
 
「そうだよね。私、春以降は主としてマンションで寝泊まりしよう」
「今既にそうだと思うけど」
「そうかも知れん・・・・でもそれより、実家のお掃除しなきゃ!」
 
「・・・色々見られたらやばいものあるよね」
「うんうん。冬の緊縛写真とか、逆さ吊り写真とか、冬のヌードにボディペイントした写真とか、私たちの愛の記念写真とか、今となっては貴重なちゃんと立ってる冬のおちんちんが写ってる写真とか、女の子になったばかりの冬のお股を撮った写真とか、Hな道具とか、拷問の道具とか、医療器具とか・・・」
「まあ、確かにそういうの、あまり人には見られたくないね」
逆さ吊りなんてあったっけ?などと思いながらも私は答えた。
 
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「高3の時は母ちゃんがいたから、あまり散らかしてなかったけど、その後の3年間、ひたすら放置してるからなあ」
「若干、ジャングル化しているエリアもあるよね」
「明日からお掃除作戦開始するよ!」
 
「えっと、私も参加するんだよね、その作戦」
「当然でしょ。私が先に緊縛写真とか見つけたら、ブログに貼っちゃうよ」
「それやると、みっちゃんがショック死するから」
「じゃ、冬も一緒にお掃除ね」
「はいはい」
と言って私は笑った。
 
そして、このお掃除大作戦で、私たちは行方不明になっていた貴重な譜面などを発見することになる。
 

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翌1月14日(祝)。私と政子が早速、政子の実家で大掃除をしていたら、町添さんから私の携帯に着信があった。
 
「ね、ね、ケイちゃんさ、*KB商法って嫌い?」
「嫌いです。あれはファンを消耗させる売り方です。個人的に*KB自体は好きですよ。特にフレン*キスは好きで彼女たちのCDは全部買ってます」
「へー。それでさ、うちも*KB商法をしてみようかと思うんだけど」
「えー!?」
 
「お話としては、ローズ+リリーの第2ベストアルバムを作りたいんだよね」
「ああ!」
 
「それで、その収録曲目を投票で決めようと」と町添さん。
「それで、その投票券をCDに付けようとか?」と私。
「正解」
 
「最初単純なネット投票にしようと思ったんだけど、重複投票を防ぐ手が無いでしょ」
「まず無いですね。意図的な票の操作が誰にでもできます」
「それで、CDに入ってる投票券で投票されたら、かなり抑制できると思うの。ローズ+リリーのファンは*KBのファンみたいに1人で100枚買って投票しようってほどまでしないでしょ?」
「・・・・私が大学生になってから知り合った友人で、高校時代に『甘い蜜』
を100枚買ったって人を知ってますが」
 
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「そんな人がいるのか!?」と町添さんは本当に驚いたようであった。
 
「でもあれは、私たちの復帰を求めての行動ですからね」
「だろうね」
「今はそこまでの人はそういないと思いますよ」
 
「そういう訳で、4月頭くらいに発売する予定の次のローズ+リリーのシングルに投票券を封入して、その投票結果を受けて5月に制作して、6月にも発売しようかと」
 
「了解です。音源は全て既存音源ですか?」
「2010年以降に収録したものについてはそのまま使おうと思う。高校時代に収録した曲がランクインした場合は、録り直しを考えたい」
「そうですね。私もあまり古い録音は出したくないです。ただ、『遙かな夢』
『涙の影』は当時の録音をそのまま使った方がいいかも。逆に今の私たちにはああいう歌い方ができないから」
「確かにそれは言えるね」
 
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「ということで、4月頭に発売するということは、2月中に音源制作を終えないといけないから、次の曲よろしくね。あ、これ上島君にも既に伝えてあるから」
「分かりました。でも、多分それに使いたい曲は既にあります」
 
「おお、さすが。今聴ける?」
「はい。マリ歌うよ」
「あ、うん。最初の音を頂戴」
 
私がその曲の最初の音を「アー」で教えてあげる。
「じゃ、1,2,3, 」
とカウントして、私たちは『言葉は要らない』を歌い始めた。
 
何の曲かということを言わなかったのに、ちゃんと同じ曲を歌い始められたことで、私たちは微笑んだ。
 
歌い終わってからキスをする。
 
「いい曲だね!」と町添さんの声。
「ありがとうございます」
「ところで今ケイちゃんとマリちゃん、キスしなかった?」
「どうして分かるんですか?」と政子が驚いたように言う。
 
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「僕は超能力者だからね、君たちの姿がクレヤボヤンスで見えるんだよ」
と町添さん。
 
「凄!」
 
電話を切ってから政子は「今日は愛がたっぷりあったね」と言った。
「そうだね」と言って、また政子にキスする。
「じゃ、今から私を7回逝かせて」
「はいはい」
 
私たちは部屋の片付けを中断して寝室に行った。
 
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■夏の日の想い出・3年生の冬(12)

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