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■夏の日の想い出・3年生の冬(7)

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「あのぉ、これ今までも何度となくした質問ですが、ケイさんとマリさんって恋人ではないんですか?」
「とっても仲の良い友人です」
と私はにこやかに答える。
 
「ずっと一緒に住んでおられるんですよね?」
「はい、その方が都合がいいので。創作は四六時中してますし。よく目が覚めてすぐに曲が浮かぶんです。今回発売する『ピンザンティン』なども起き抜けに生まれた曲ですね」
「じゃ、24時間、お仕事なさっているようなものですか?」
「ええ、そんな感じです」
 
「ほんとにたくさん曲を書いておられますよね。今年は何曲くらい書かれました?」
「うーん。それは数えたことないです」と私。
「150〜160曲だったと思います」と美智子。
 
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(後でJASRACのデータベースで検索してみると、今年登録した曲は156曲であった。美智子の記憶も大したものである)
 
「凄いですね。2日に1曲書いている感じですか?」
「確かにそのくらいのペースかも知れないですね」
「物凄いペースですよね。モーツァルト並みでは?」
「モーツァルトは上島先生です。上島先生は私たちの6〜7倍書いておられます」
と私が言うと
「ひゃー」
という声が記者席から漏れた。
 
「一部では、マリさん・ケイさんは上島先生のゴーストライターのひとりではという説もあったのですが」
という質問が来る。悪意のある質問という感じではない。上島先生の仕事量がアンビリーバブルなので自然に思ってしまうことだろう。
 
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「上島先生は天才型なんです。しばしば上島先生のお宅を訪問していますが、目の前で、まるでおやつでも作るかのように曲を作られます。『曲を作ろう、ピンザンティン♪』って感じです」
と私は新曲の替え歌で状況を説明すると、また記者席が沸く。
 
「あのPV面白いですね。あれの撮影でおふたりはどのくらいサラダを作って食べられたんですか?」
「えっと・・・・」
と言って私は加藤課長を見る。
 
「レタス2玉、ニンジン3本、ピーマン10個、タマネギ2玉、ミニトマト2パック、水菜1束、キャベツ半玉、セロリ2本、アルファルファ2パック、ジャガイモ1kg。それにピエトロのドレッシング2本。こんなものです」
と加藤さんがメモを見ながら話す。訊かれることを予想して確認してきていたようである。
 
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「あのぉ、それ全部食べられたんですよね?」
「ええ。撮影に参加した人みんなで頂きました。それにマリがいますから大丈夫です。私たちは食べ物を無駄にしません」
と私はにこやかに答えた。
 
「マリさんって大食い選手権に出られるのではという噂がありますが」
「マリはテレビ出演、あまり好きではありませんからありえません。騒がしいのが苦手なので。彼女はほんとに詩を書いているのが好きで、作品化してないものでも、たくさん詩を書いていますから。本物の芸術家なんですよ」
「マリさんが本物の芸術家なら、ケイさんは?」
「似非(えせ)芸術家です。ついでに似非女だし」
と言うと、またまた記者席が沸いた。
 

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そして12月23日は大分でのライブとなった。ローズ+リリーのライブとしては今年4回目なのだが、ふつうの形でチケットを販売して実施するのはこれが初めてである。4月の沖縄はシークレットライブ、8月の夏フェスは突然のステージ、10月の札幌は前日に発表するという突然ライブであった。マリのステージに対する恐怖心を和らげるために、こういう手法を採ってきたのもあるのだが、今回は本人も前日からノリノリであった。
 
都内のスタジオを使っての事前練習でもかなり調子が良かった。夕食はオージービーフを2kg買ってきて、すき焼きにしたが、もりもり食べていた。そして夜はふたりでたっぷり愛し合い、お揃いのブレスレットをして大分行きの飛行機に乗った。
 
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お昼前に現地で集合し、打ち合わせの後、現地スタッフの人に買ってきてもらったケンタッキーでお昼御飯にする。仕出しなどを使い万が一にも食中毒でも起こしたりしたら怖いのでファストフードなのだが、政子がチキンを8本食べたのを見て、現地スタッフさんが驚いていた。クォーツやスターキッズの面々、美智子や氷川さんなどには「おなじみの風景」である。少し休憩した後ステージでリハーサルをし、それからまた少し休憩する。
 
「でもさすが広い会場だね」と政子。
「会議とかなら1万人入るからね。今日の観客は7200人だけど」と私。
「キスして」
「いいよ」
と言って、私は政子の唇にキスをする。
 
周囲が笑顔だが、美智子は
「あんたたち、ほんとにどんどん大胆になってきてるね」
とあきれ顔である。今日の宿は別府市内の高級ホテルだが、みんなシングルの部屋なのに、私たちふたりは一緒にスイートルームである。
 
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1ベル。2ベル。客電が落ちる。緞帳アップ。そして嵐がわき起こるような拍手。この拍手のインパクトというのは普通のホールではあり得ない。大会場ならではの響きである。この独特の雰囲気が私を昂揚させる。私は政子と手を握り合った。
 
物凄い歓声が飛ぶ。しかしまだ音は始まらず、ステージにはキッチンのセットがあって、エプロンを着てヘッドセットを付けた私とマリが並んでいる。戸惑うようなざわめき。やったね!この反応が欲しかったのよ。
 
私はマリと微笑みあうと「さぁ、サラダ作るよ!」とマイクに叫ぶ。ステージの左右から、ギターを持った近藤さんと、ベースを持ったマキが走り込んできて、『ピンザンティン』の前奏を始めた。ふたりの伴奏に乗せて、私たちは
 
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「サラダを〜作ろう、ピンザンティン、素敵なサラダを」
「サラダを〜食べよう、ピンザンティン、美味しいサラダを」
とこの曲のサビの部分を歌い、続けてAメロに入る。
 
この曲のPVをわざわざ会場のロビーでも流していたので、未発売の新曲であっても、反応は上々である(これを含むPVばかり集めた特製DVD-1000円-を会場で発売したら何と用意していた5000枚がきれいに売り切れてしまった)。
 
そして私たちは歌いながら、野菜を切り、サラダを作っていく。作ったサラダは「衛生上の問題が出ると困るから」食べるなと言われていたのだが、私たちはもうノリで「サラダを食べよう」と歌いながら、食べちゃった(後で叱られた)。
 
「こんばんは、ローズ+リリーです」
とふたりで一緒に挨拶する。拍手が来る。会場は満員で空気が熱い。
「マリちゃーん」「ケイちゃーん」という声もたくさん飛び交う。
 
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「今年はライブは実は4回目なのですが、4月は幕が開いてみて初めて私たちが出演するとわかり、8月はほんの20分前に告知。10月は前日告知、とホントに突然のライブばかりだったのですが、今日やっとふつうに告知した上でのライブとなりました。こういう形のライブは2008年11月30日以来、4年ぶりになります」
と私は聴衆に向かって語りかける。
 
「でもこちらへ来る途中、空港でも町でもクリスマスのイルミネーション一色でした。やはりこういう日にライブやるにはクリスマスの歌も歌わないといけないかな、ということで『ピンク色のクリスマス』聴いて下さい」
 
バックではマキが近藤さんと握手して下がったあと、キッチンが片付けられ、スターキッズがスタンバイしている。今日は宮本さんのセカンドギターまで加わった6人編成である。前奏に引き続き、私達は高校2年のクリスマスに書いた曲『ピンク色のクリスマス』を歌い出す。
 
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「だから私はピンクのブラを身につけて」と歌った所で、マリが私の上着を取ってしまう。すると、下にピンクのブラを付けているので、会場が沸く。
 
「この曲は高校1年の時に書いたものです。当時はほんとに私たちはソングライターとして未熟だったんですが、未熟な私たちだからこそ書けた作品も多いなという気がします。このあと少し、私たちがデビュー前に書いていた作品を聴いて下さい。最初は『A Young Maiden』です」
 
私のMCの間に、スターキッズが楽器を持ち換えている。宝珠さんはサックスからフルートに、鷹野さんはベースからヴァイオリンに、宮本さんはギターからチェロに、酒向さんはドラムスのセットを降りて、隣に立てかけていたコントラバスに、月丘さんは電子キーボードからチェンバロに、そして近藤さんはエレキギターからクラシックギターに。
 
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スターキッズのアコスティックバージョンである。
 
この編成で私達は『A Young Maiden』『ギリギリ学園生活』『ブラピエール』
『渡り廊下の君』と歌っていった。『A Young Maiden』で深く愛し合ったけど『ギリギリ学園生活』で生理は来たのでセーフ、『ブラピエール』で突然目が合ってときめきを覚え、『渡り廊下の君』で風に髪をなびかせた姿に心ざわめく。という感じで、この付近はストーリーが対になっている。
 
『ギリギリ学園生活』は坂井真紅が、『ブラビエール』は富士宮ノエルがカバーしているので、アルバム内の曲にしては知られている率が高い。
 
そのあと私たちはMCをはさみながら俗に「高校3部作」とも呼ばれている『遙かな夢』『涙の影』『あの街角で』の3曲を続けて歌った。そして最後は高校の修学旅行の時に書いた『天使に逢えたら』で、この高校時代のシリーズを締めくくった。
 
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そしてその後『神様お願い』を演奏して前半のステージを終了する。
 

「それでは今日のゲストの紹介です。ローズクォーツ」
と私が言うと、会場は「はぁ?」という反応。
 
しかし、ベースを持ったマキ、ギターを持ったタカ、手ぶらのサト・ヤスが手を振りながら登場する。そしてスターキッズは退場する。
 
「まあ、本日のゲストってのは、要するに長時間のライブで途中少し喉を休めないと歌いきれないので、その間ステージをもたせてくれる人ってことなんですけどね」と私。
 
「だけどローズクォーツのヴォーカルはケイだよ」とサト。
「困ったな。じゃマリは休めるけど、私は休めない」と私。
「じゃ。ケイの代わりに、誰か歌ってくれる人を会場内から徴用しちゃおう」
とサト。
「あ。いいね。じゃ、そこのPA席の横に座ってる青い帽子の女の子」
と私が言うと
「はーい!」
とその子が手を挙げて答え席を立ち、駆け足でステージに昇ってきた。
 
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帽子を取った姿を見て「キャー」という歓声が沸く。
 
「はい、自己紹介お願いします」と私。
「東京から来ました、小野寺イルザと申します。19歳です」
 
会場から「イルザ・イルザ・イルザ・イルザ」という男の子たちのリズミカルな声援が飛んでくる。
 
「イルザって格好いい名前ですね。誰が付けたんですか?」
「うちのお母ちゃんです。これ本名なんですよぉ」
「へー!」という会場の反応。
 
「イルザちゃんには2年前にローズ+リリーのPVでマリの代役を務めて頂きましたしね」
「ええ。でも、その縁で、デビュー曲の『エンジェル・シェア』をマリ先生とケイ先生から頂いて、お陰で、いきなりゴールドディスクになりました」
「いや、その後も何枚かゴールド出てるし、やはりイルザちゃんの実力ですよ」
といったやりとりをしてから
 
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「それでは私とマリが少し喉を休めてきますので、その間歌っておいて下さい」
と頼む。
「はい、頑張ります」
 
ということで私とマリは袖に下がる。バックではスターキッズが使っていた機材が片付けられ、代わりにローズクォーツのドラムスとキーボードが設置されている。4人が位置につき、『バーチャル・クリスマス』を演奏する。イルザが私の代わりに歌う。
 
私と政子はそれを聴きながら、うがいをして、服を着替える。政子はお腹が空いたと言って、用意してもらっていたミスドのドーナツを食べている。私はコーヒーを飲みながら体力を回復させていた。
 
イルザがステージ上で更に『聖少女』を歌ったところでサトが
「せっかくステージに立ってくれたので、イルザちゃんの新曲『熱い冬』を」
と言って、発売されたばかりの新曲を歌った。更にもう1曲、イルザの曲を演奏してから、サトが
 
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「今日の本当のゲスト、小野寺イルザちゃんでした」
と再度紹介して、インテルメッツォを終了する。
 
衣装を変えた私と政子も拍手しながら舞台中央に行き、握手して、彼女は下がる。
 

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