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■夏の日の想い出・3年生の冬(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2012-10-13  
ある程度話がまとまった所で、御飯を食べましょうということで、食事が運び込まれてくる。このホテルのレストランで調理された洋食メニューで、素敵な感じのビーフシチューに、豚肉と根野菜のココット、それに魚介類のパスタ、小さめのテリーヌが添えられている。軽くトーストしたバゲットを自由に取れるようにテーブルの数ヶ所に置かれた。
 
「わあ、美味しそうな御飯ですね。いただきます」
と私が言ったら
「そういうのって、本来マリちゃんの台詞だよね」
と言われる。
 
「はい。でもあの子連れてくるんだったら、3人前くらい用意してあげて下さい」
と私は笑って言う。
 
「シャブシャブの食べ放題の後、焼肉の食べ放題に行ったという話は聞いた」
「あれは大変だったんです。私も氷川さんももうとても食べきれなかったから、食べる係で、宝珠さんと北川さんを呼び出しましたから」
と私は昨年4月の沖縄ライブをした時の「食事工作」のことを話す。
 
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「あの子、ふだんもそんなに食べるの?」と町添さん。
 
「唐揚げは2kg揚げますし、カレー作る時は26cmのルクルーゼの鍋を使います。26cmなんて、ふつうなら食べ盛りの男の子が何人かいるような家で使う鍋ですね」
「ひゃー」
「それ、一食で無くなるんだよね?」
「はい、たいてい」
「凄いな」
 
「でもあの子、それだけカロリーを使ってるんですよ。いつも頭があちらの世界に行っていて、物凄く深い思索をしてますから。常時頭脳フル回転です。手塚治虫さんが1日8食くらい食べていたといいますが、やはり似たタイプだったのかも知れません。創作するのに、そのカロリーが必要なんですよ」
「ああ」
 
「あの子、典型的な天才型だよね」と浦中さん。
「ボーっとしているみたいに見えるけど、頭がいつもそちらの方で使われてるから、現実世界のことに疎くなってしまっているだけで」
 
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「ええ、そんな感じです。ですから、あの子、テレビはやはり苦手みたいです。10月から今月まで3ヶ月間、少し番組に出させて頂きましたが、テレビで求められるようなサービス精神は持ってないから」
「あれ見てて、ケイちゃんの方は芸人さんたちに反応してるけど、マリちゃんは完全に黙殺してるなと思ってた」
「元々、お笑いとかあまり好きじゃないみたいですね。実際、うちではテレビなんてほとんど点けませんから」
「へー」
 
「うちでは食事の時にテレビ点けたりしないの?」
「ええ。だいたいおしゃべりしながら食べてますよ。BGMとかも特に流さないです。食事中に突然詩を書き出したりすることもあるから、そういうのあると邪魔なんですよね」
「ああ」
 
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「でもテレビ要らないって新婚家庭の食事みたいだね」
と津田さんが言うと
「いや、実際新婚さんみたいなものだよね」
と上島先生が言って、私は微笑んだ。
 
「マリちゃんとケイちゃん、放送局なんかに行く時はしてないみたいだけど、プライベートで行動している時、最近よくお揃いのブレスレット付けてるよね」
と町添さん。
 
「このメンバーなので言ってしまいますが、あれは私たちにとって愛の証、マリッジリング代わりです。さすがにマリッジリング付けたら叱られるから」
と私は正直に言った。
 
「おお!」
 
「結婚式とかしたの?」
「夢の中でしました」
「へー」
「ふたりが一緒に同じ夢を見たんですよ」
「へー!!」
 
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「でも、公式見解では私たちは『とっても仲の良い友だち』ということで」
「いいよ、いいよ」
と浦中さんも楽しそうに言う。
 
「なんか、夏頃から君たちの公式サイトで、ふたりの関係の所にハートマークが付いてるなと」
「2chの『ローズ+リリーはレズか?』のスレッドで、スレタイを『ローズ+リリーはレズである』に変えるべきかとか議論されてましたね。結局そのままになったようですが」
 
「でも結婚するんなら、ケイちゃん性別変更しない方が良かった?」
「いいえ。私たちの関係は関係で、各々別の男性と結婚するつもりですから」
「えー!?」
 
「マリは2019年くらいに子供を産んで、2025年くらいに結婚しようかな、と言ってます。どちらも当てがある、という話なんですけどね。どういう当てなのかよく分かりませんが」
「ほほお」
「私も子供は産めないけど、やはり2025年くらいに結婚しようかなと。私も一応当てがあるので」
町添さんが頷いている。
 
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「もっとも、ふたりとも、他の男性と結婚しても私たちふたりで一緒に住み続けるつもりです」
「えー!!?」
「通い婚ですね。私たち、創作活動のためには一緒にいる必要があるから」
「ああ」
「それは僕はありがたいけどね」と町添さん。
「君たちに主婦なんかやらせるのは日本にとっての大きな損失だよ」
と浦中さん。
 
「でも最近は、子供作ってから結婚するパターン多いよね」
「明治の頃ってそうだったみたいだから、昔に戻ったのではないでしょうか」
「ああ」
「HIJKと言いますね。HしてからIして、Junior作ってからKekkonして、と。だいたい最近はデートしてから告白するのが多い。昔は告白してからデートだったのに」
「1度デートくらいしてみなきゃ、付き合っていいのかどうか分からないから、ということらしいね。言われてみたらそうかも知れないけど」
「最初のデートはテスト、恋愛試験ということか」
という言葉が出た時、上島先生がピクっとしたので多分『恋愛試験』という曲を書くなと私は思った。
 
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「世の中、いろいろ変わっていくのかねぇ・・・」
「僕らの中高生時代は、キスが恋愛のゴールだったのになあ」と浦中さん。
「最近の子はキスくらい、すぐしちゃいますね。中学生でも普通にセックスしてるし」と上島先生。
「私とマリもそういう前提で若い人向けの曲は作ってますよ」
と私も言う。
 

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「そういえば、先週発売になった花村唯香だけどね」と浦中さん。
「初動で6万行ったよ。初ゴールド行くかも知れない」
「おお、凄いですね」
 
「ケイちゃんや春奈ちゃんが活躍してるのもあって、こういう子に対する抵抗感のようなものは、かなり減ってきているんだろうね」
と津田さん。
 
「ケイちゃんにしても、春奈ちゃんにしても、唯香ちゃんにしても、女声の発声が素晴らしいよね。かなり注意して聴いても女性の声にしか聞こえない」
「ええ、それなりに苦労というより苦闘してきましたから」
と私は微笑んで答える。
 
「唯香ちゃんは私と同じタイプの発声ですよ。細かい点は異なりますが。春奈ちゃんの場合は変声期前に女性ホルモンを取り始めたので、そもそも変声してないから、本当にふつうの女の子と同じです」
 
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「僕も元男性という女性と何人か付き合ったことあるけど、ケイちゃんや唯香ちゃんほどの声じゃないよ。声自体は男声かも知れないけど話し方で女性が話してるように聞こえるというパターンや、うまい子でもふつうに聞けば女性の声に聞こえるけど、男と思って聴くと男の声にも聞こえるという子とか」
と上島先生が言うと
 
「先生、あまり浮気自慢なさらないように」と町添さん。
「あ、済まん、済まん」
 
「あ、いえ、そのレベルの人は女声の発声としてかなりの上級者ですよ」
と私はコメントする。
 
「うん。だと思う。たいていのその傾向の子は、男声だけど開き直ってるタイプ」
「開き直ってるのも実は上級者です」
と私は微笑んで言う。
「開き直ることで不自然さが減少するから。不自然さが無いだけで実は相手は女性と会話している気がしてしまう。実際ほとんど男声って感じの声の女性もいますし」
「なるほどね」
と上島先生が納得するように言うと、その言葉を美智子が少し考えているようだった。
 
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その日の夕方。UTPの事務所にマキ・サト・タカ・ヤスにマリまで緊急招集して、美智子はお昼の会議で承認された内容を話した。
 
・今後、マリのローズクォーツの音源制作への参加は「Rose Quarts Plays」
シリーズのみとする。
 
・『夏の日の想い出』のクレジットを変更する。ただし印税の分配比率は変えない。
 
・ローズ+リリーの伴奏は、スターキッズとローズクォーツを半々くらいずつ使っていく。主として小さい会場でスターキッズを使い、大きい会場ではローズクォーツを使う。今度の大分ライブには両方連れていく。
 
「ちょっと仕事減っちゃう人も居て、申し訳無いけど」
「いや、ローズ+リリーとローズクォーツが結果的にほぼ同じメンツでやってるのは気になってました」
とタカ。
「私は負荷が減るので助かります。私、ケイほどパワフルじゃ無いので」
とマリ。
 
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「最近、ローズ+リリーの音源制作には、宝珠さんと鷹野さん・酒向さんはたいてい入ってましたね」とサト。
「ええ。サックス・トランペットとヴァイオリンが必須なもので」と私。
 
「マキさんもいいかな? 特にクォーツの仕事が減るのが申し訳無くて」
と美智子。
「あ、いえ。『夏の日の想い出』の印税比率変更無しというの助かります」
とマキ。
「うん。リーダーらしい発言でいいね」
と美智子が言うと、マキは微笑んだ。
 
「ヤスさんからは何か無いですか?」
「私も、タカさんと同じで、両方同じメンツでやってるの気になってました。何度か友人から『ローズ+リリー/伴奏ローズクォーツ』と『ローズクォーツ・マリちゃんボーカル参加』というのと、何が違うのかと訊かれて、答えに窮してました」とヤス。
 
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「一時期、ローズクォーツ++とか、ローズクォーツ−−というクレジット作ろうなんて話もあったね」とサト。
「ああ」
「イベントなんかの伴奏に行くのにはボーカルが要らないからケイ抜きで行くので、そういう時が−−(デクリメント)、マリちゃんも参加する時は++(インクリメント)」
「インクリメントPみたいね」
「あれはパイオニア++という意味だからね」
 
みんな、なごやかに会話する、けっこうみんなが内心思っていたことなのではないかという気がした。
 
「ね、この際だから言っちゃうけど、ヤスさんの報酬を改定しない?」とタカ。「俺もそれ考えてた」とサト。
「ん?」と美智子が訊く。
「今、ローズクォーツがイベントなどで演奏した時の報酬はその時参加したメンツで均等割してますが、CDの演奏印税についてもその方式にしませんか?」
とタカは提案した。
 
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「ほほお」
「だから、マリちゃんが参加してない音源については、ケイ・マキ・タカ・サト・ヤスの5人で均等割、マリちゃんも参加してたら6人で均等割。まああまり売れなかった時は、マリちゃんとヤスの報酬が今より下がっちゃうけど」
 
「私の方はローズ+リリーで充分頂いているから全然問題無いけど、ヤスさんはどうだろう?」と政子。
 
現在マリとヤスはローズクォーツの音源制作の場合、1曲に付き2万円をもらっている。(ローズ+リリーの音源制作より安いが、予算の都合上やむを得ない)
 
「ちょっと計算してみましょうか」と言って私はパソコンを開きExcelで数値を入れてみた。
「現在ローズクォーツのCDの演奏印税は2%なので、1000円のシングル1枚売って印税は18円(1割は自動控除される。通称ケース代)。6人で割ると3円ですから、10万枚売ると30万円。1万枚だと3万円です。シングルでもアルバムでも3万枚くらいが今より報酬が増えるか減るかの分岐点ですね」
 
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「今のままの方が収入良さそうだ」とヤス。
 
確かに特にRose Quarts Playsシリーズでは報酬が激減するだろう。
 
「今のままで行く?」と美智子。
「いや。出来高にしていいならしてください。励みになります。でも私の分まで均等割りすると、他の人の収入が減りますがいいんですか?」
「その分たくさん売れたら、結局増える」とタカ。
「ではその方式で」
 
ということでヤスの報酬は(先月収録したRQP Minyo以降)、正式メンバーと同じ方式になることになった。今月支払分から適用ということにすると今月は(私と政子以外の)契約アーティストには年末のボーナスが出るので、それで収入の落ち込みが緩和されるのである。更に美智子は言った。
 
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「この方式に変えると、印税が入るのは3ヶ月後になるから、取り敢えず3ヶ月分の生活費で100万くらい貸し付けようか? 返済は毎月2万くらいの天引きで」
と美智子。
 
「100万まではいいですけど、50万くらい貸してください」とヤス。
「OK」と美智子。
 
「いっそ、本人も良ければヤスも正式メンバーにしちゃう?」とサト。「でも4人だからクォーツじゃなかったの?」とヤス。
「5人ならクィンツ?」
「でも結構3人でやってた時もクォーツのままだったし」
「面倒だから、クォーツのままでいいですよ」
 
「で、結局正式メンバーになるの?ならないの?」
「報酬は等分で頂くし、正式メンバーと準メンバーと何か違うんでしょうか?」
「うーん。。。リーダーを選挙で決める時に投票権があるかどうかかな」
「リーダーを選挙で決めてるんですか!?」とヤスが驚いたように言う。
 
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「ああ、1度やったね」とサト。
「任期でもあるんですか?」
「無い。マキは死んでもリーダー」
「死んだら演奏できないよ」
「いや、骨壺をベースの前に置いて譜面を置いておけば、マキだったら、死んでてもベース弾いてくれそうな気がする」
「ああ、ありそう!」
「マキさん、すげー!!」
 

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■夏の日の想い出・3年生の冬(5)

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