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■夏の日の想い出・秘密の呪文(19)

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常滑舞音と木下宏紀の名取り披露公演は2月14日(日)バレンタイン!に行われることになり、その日は東京の蒲田演舞場からあけぼのテレビでネット放送(無料放送)されることになった。
 
舞音と宏紀は、それに向けて、東京の藤中流の師範さん(風帆伯母の姉妹弟子のお弟子さん:姪弟子?)から公演演目を週に2回お稽古を付けてもらった(お稽古代も私が出す:1回のお稽古代が1人3万円!)。
 
その一週間前の2月5-7日には青葉がジャパンオープンに出場するために東京に来る。私はちょうど1月末に引き渡されたDo228(19人乗り)を能登空港に迎えに行かせた。なお、Do228のパイロットは新中央航空のOBさんをスカウトした(実はN航空パイロットさんのコネ)。
 
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全日本の時はホンダジェットを使ったので、選手だけ疲れない飛行機を使用し、部長さんなどのスタッフは車で移動してもらったのだが、今回はスタッフも一緒に連れてくることができた。所要時間は少し掛かったが (Do228は巡航速度315km/h Honda-Jet:682km/h).
 

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先月来た時は、浦和の新しい家に小型水泳練習場を作ったと聞いていたのだが、今回はプールが完成したというので、私はどんなものを作ったのか興味を持ち、見せてもらいに行った。
 
「冬だから話したけど、他人には言わないでよね」
などと千里は言っていた。
 
「あれ?イナバのガレージが無くなってる」
と私か言うと
「うん。昇降式駐車場を改造して一段増やしたから必要無くなった」
「へー」
 
(Before改造)
 
  0  (地上)
┏━━━┓
┃ B1 ┃(地下)
┣━━━┫
┃ B2 ┃
┗━━━┛
 
(After改造)
 
  0  (地上)
┏━━━┓
┃ B1 ┃(地下)
┣━━━┫
┃ B2 ┃
┣━━━┫
┃ B3 ┃
┗━━━┛
 
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「プールは地下に作るから、プールを作った後だと駐車場の地下への拡張ができなくなる。だからプール作る前に拡張工事をしたんだよ」
と千里。
 
「パズルみたいな話だね」
 

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駐車場のエレベータで下まで降りる。ここ(B2)は以前は最下層だったが、現在駐車場はもう1段下まである。しかしエレベータはここまでである。
 
駐車場と母屋を結ぶ通路(?)を通って母屋の側に行く。

 
アコーデオン・ドアを開けて地下シュート練習場に入る。向こう側の“壁に見える”隠しドアを開けて向こう側の空間に入る。ここは普通に見ればトイレがあるだけである。
 
前回来た時は左側の隠しドアを開けて地下ラウンジに行ったのだが、今日は千里は右側の隠しドアを開けた。
 
「なるほど、こちらにも隠し部屋があった訳だ」
「ここに来られるのは、私と青葉、冬と龍虎までだから」
「了解、了解」
「コスモスちゃんまでは連れてきてもいいよ。彼氏は無しで」
「了解〜」
 
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右側の隠し部屋には正面にエレベータがある。
 
「このエレベータでだけ地下プールに行けるんだよ」
「複雑だね」
「色々公(おおやけ)にできないものが多いからね」
 
公(おおやけ)にできないとは、千里が数人いるとか、龍虎が数人いるとかいう話かな、と私は思った。
 
そのエレベータで下に降りた。
 

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「凄いね、これは」
 
25m×2コースのプールがある。天井は多くの部分で5mほどあるが、片側の端は5mほどにわたり天井が低くなっている。そこが駐車場の部分のようだ。
 
千里が機械室のような所に入りスイッチを入れると機械音がする。
 
「浄水装置?」
「うん。次亜塩素酸で消毒するからコロナは多分大丈夫」
「しかし水道代が大変そう」
 

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「泳いでみる?」
と言われたので折角だから少し泳がせてもらったが、競技用のプールで水深が2mあり、背は立たないので最初はちょっと恐かった。取り敢えず5往復した。私はとっても遅いので5往復に10分掛かっている。千里も一緒に泳いだがさすが、スポーツ選手なだけあり、私が5往復する間に16往復したようである(往復した回数と所要時間が表示されるようになっている)。
 
「冬って運動不足かと思ったけど、わりと頑張ったじゃん」
「そう?でも筋力無いから遅くて遅くて」
「連続して250m泳げただけで偉いと思うよ」
「久しぶりだったけど何とか頑張った」
「まあ青葉なら20往復するだろうけど」
「世界レベルだからね!」
 
結局休み休み2時間程泳いで結構よい運動になった。
 
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「冬ならいつでも来て泳いでいいから」
「たまに運動させてもらうかも」
 

泳いだ後は浄水施設を20分後に停止するようタイマー設定してからB2階にエレベータで戻る。エレベータを降りた所にバスルームがある。シャワーも2セットあるので、ここで身体を洗わせてもらつた。バスタオルを借りて身体を拭いてから、ラウンジの方に行く。
 
「あれ?前回来た時より狭い気がする」
「冬は勘がいいね。実はラウンジを削って部屋を増設したんだよ」
 
「へー!」
「小部屋が2個だったの4個に増設したから」
 
(再掲)

 
千里がトントンと壁(?)をノックする。
 
「はい」
という聞き慣れた声がする。
 
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「え!?」
と私は声をあげた。
 
「入っていい?」
「どうぞ」
 
と言って“龍虎”が隠しドアを開けてくれた。
 
「龍ちゃん」
「おはようございます、ケイ先生」
 
という訳でそこには龍虎(アクア)が居たのである。
 

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龍虎はドラマの台本?を読んでいたようである。
 
「隠れ家に使うといいよ、と言われてこの部屋をもらったんですよ」
と可愛いミッキーのルームウェアを着た龍虎が言う。どうもFのようだ。
 
「今日はマンションを彩佳たちが掃除してくれているから、向こうに居られなくてこちらに来ました。ポルシェ置いてる八王子の家もあるけど、あそこだと食事に困るから」
 
「ああ」
 
「まあここだと私がいなくても誰か私の代理がいるから食事に困ることはない」
などと千里は言っている。“代理”というのがどうも3〜4人いるっぽい、千里の影武者なのだろう。
 
「君はFだよね?」
と私は龍虎に確認する。
 
「そうですよ。今日はMがお仕事に行ってるんです。“こうちゃんさん”(山村マネージャー)は、ボクが1人になったと思っているから、仕事の量がだいたい1人分に減ったから、ゆっくり休めて助かります」
 
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「彼が気付くまでそのままにしておくといいね」
「そのつもりです。もっとも、こうちゃんさんはFが残ったと思っているから、『アクアは女の子になりました』という記者会見しようよとか言ってますけどね」
 
「してもいいんじゃない?」
「ここだけの話だけど、最終的にはMが残ると思うんですよ。ボクは多分数年以内には消えるんじゃないかな」
 
「Fちゃんそれでいいの?」
「最終的にボクが完全に1人に戻っても、ボクはMの心の中で人格としては生きていくから問題無いです」
 
「二重人格みたいな感じになるのかな?」
と私は千里に尋ねる。
 
「まあそのあたりはなってみなければ分からない」
と千里は言っているが本当に分からないのかも知れない。
 
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「だからボクは自分が消える前に赤ちゃん産みたいんですよ」
と龍虎Fは言った。
 
「・・・・・」
 
私は千里を見た。
 
「この子の妊娠中はMが1人で仕事すればいいよね?」
と千里は言っている。
 
「まあ元々1人なんだし。でもFちゃん、種をもらうアテでもあるの?」
と私は訊く。
 
「えへへ。この世の中にボクが間違い無く女の子であることを確信した人物が1人できちゃった」
 
「へー!」
と言いながら私は再度千里を見る。
 
「彼には自分はアクアの従妹(いとこ)だと言ってるんでしょ?」
「ええ。ふたり並んでいる所を彼には見せているし。でも生年月日が同じで名前も同じ“りゅうこ”という従妹という話には半信半疑っぽい」
 
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「龍ちゃんの本当の従妹(長野美奈代)はまだ小学生だもんね」」
 
「あの子のこと知ってるのはワンティス関係者の他は、千里さんやケイ先生だけですね」
 

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「龍ちゃんの三従妹違い(みいとこちがい)なら芸能活動してるけどね」
と千里は言った。
 
「本当ですか!?」
「向こうは多分龍ちゃんとの関係を知らない」
「ボクも知りませんでした!」
 
「それどういう人?」
と私は千里に訊いた。
 
「というか“みいとこちがいい”という関係がよく分からないんですけど」
 
「兄弟姉妹同士の子供がいとこ(従姉妹/従兄弟)、いとこ同士のこどもがまたいとこ(又従姉妹/又従兄弟:再従姉妹(再従兄弟)とも)あるいは“はとこ”、その子供同士がみいとこ(三従姉妹/三従兄弟)。いとこの子供は“いとこ違い”例えば、冬と今田七美花ちゃん(若山鶴海)が“いとこ違い”だよね」
 
「いとこ違いとも言うのか。従姪(いとこめい)と言ってた」
「うん。いとこまではその呼び方もある。又従姉妹の子供が又従姉妹違い、三従姉妹の子供が三従姉妹違いだよ」
 
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「へー」
「英語なら兄弟姉妹はbrother/sister (sibling), 従姉妹(従兄弟)は cousin, 又従姉妹(又従兄弟)は second cousin, 三従姉妹(三従兄弟)は third cousin」
 
「second, third なのか」
「いとこ違いはcousin once removed, またいとこ違いは second cousin once removed. みいとこ違いは third cousin once removed」
 
「何か難しい」
「ちなみに、いとこ違いの子供は cousin twice removed になる。日本語だと従姪孫かな」
 
「もうその辺になるとよく分からない。もう全部“遠い親戚”でいいや」
「私と冬も“遠い親戚”だね」
と千里。
 
「そうなんですか?」
「つながっているのは分かるけど、説明しきれない」
と私。
 
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「私と青葉も遠い親戚、私と桃香も遠い親戚。冬と政子ちゃんも遠い親戚、丸山アイとも“遠い親戚”」
 
「凄いですね!みんな親戚なのか」
 
「世界は一家、人類は皆兄弟姉妹」
と千里は古い言葉を言っている。
 

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「で、そのボクの“みいとこ違い”というのは?」
「神田あきらちゃんだよ」
「♪♪ハウスの?」
「こないだセシルちゃんのチョコのCMでシヴァ神に扮してた?」
「シヴァじゃなくてシリウスね」
「あ、今のは本気で間違い」
 
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