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■夏の日の想い出・龍たちの伝説(15)

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「ところでお前、Fだっけ?Mだっけ?」
「Fだけど」
「そうか。折角Mに入れてやるダミーの睾丸が出来たから持って来たのに」
「早かったね!」
「頑張ったからな。女性ホルモンを強力に分泌するタイプだぞ」
「それMは嫌がると思う」
「Mは居なくなってしまったし。お前に入れてやろうか?」
「さすがにボクは睾丸は要らない」
「そうだろうな。残念だ」
と言ってから《こうちゃんさん》は言った。
 
「Fが残ったのなら、明日にでも『アクアは実は女の子でした』という記者会見を開くか」
「それは待って」
「そうか。まだ心の整理がつかないよな。お前が落ち着くまでそれは待つよ」
「ありがとう」
 

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翌日(11/4)、龍虎は朝起きると、念のためMの部屋、Nの部屋などを覗いて廻り、誰も居ないことを確認すると「はあ」と溜息をついた。
 
そして朝御飯を作って食べると、仕事に出かけた。
 
「アクアちゃんどうしたの?なんか元気ないね」
「済みません。頑張りますね」
「うん」
 
それでアクアは空元気で頑張って仕事をした。そして夜遅く、高村マネージャーの車で帰宅した。
 
「アクアちゃん凄く疲れているみたい」
と高村さんは心配した。
 
「ごめんなさい。少し疲れが溜まっているみたいで。でも頑張りますね」
「うん。でも無理しないでね」
「ありがとうございます」
 

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私とコスモスはその日は夜通しコスモスの自宅で打ち合わせをしていたのだが、11/4の朝、千里から電話があり、アクアが1人になったと報された。ただ本人が1人になってしまったことにかなりショックを受けているから、あまりそのことには触れないで欲しいと要請され、私もコスモスも了承した。
 
「結局どちらが残ったの?」
「どちらも残ったよ」
「じゃまだ2人なの?」
「いや1人になった」
「意味が分からないんですけど」
 
「でも1人しかいないから、コスモスちゃん、あの子の仕事の量をコントロールしてよ。でないと過労死するから」
 
「分かった。私の責任で何とかする」
「山村に頼んでてもあいつ適当だからさ」
「ああ、あの人はそもそもそういう性格だもんね」
と3人の見解は一致した。
 
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その日(11/4) 龍虎はマンションに帰ると、またMの部屋、Nの部屋と覗いて廻るが誰も居ない。そして溜息をつくと、気分転換に焼肉でもしようと思って、お肉を解凍する。その間にホットプレートを用意した。
 
レンジがチンと鳴るので、お肉を取り出すが、自分がお肉を500gも解凍してしまったことに気付く。
 
「どうしよう?こんなにひとりで食べられないよぉ」
 
Mがいたら、あの子が300gくらい食べてくれるのに。
 
「寂しいよぉ!」
とFは叫んだ。
 

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ところがその途端、突然目の前にMが出現した。
 
「Mちゃん!」
と言って、Fは彼に飛び付いてキスした!
 
「ちょっとちょっと」
「ね。お願い。今すぐ私を抱いて」
「何を突然」
「だって、消えちゃったらセックスできないじゃん」
「予言する。Fは1年以内に好きな男の子ができるよ」
「ほんとに?」
「うん。僕が言うんだから間違い無い」
 
そんなことを言われるとそういうことあるかもという気がした。
 
「お肉解凍しすぎたのよ。一緒に食べてくれない?」
「OKOK」
 
それでFとMはこの夜、一緒に御飯を食べたのである。
 

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「あ、2人になった」
と西湖は声を出した。
 
「今回はなんか長かったねー」
と西湖Fも言った。
 
「おかげで今日は学校休んじゃったよ」
「ごめんねー。明日はちゃんと私が学校行くね」
「うん」
 
それで西湖は“作りすぎた”ハンバーグをどうしようと思っていた所だったので、ふたりで一緒に御飯を食べ、交替でお風呂に入って寝た。
 

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ところが朝(11/5)、7時半頃、西湖が起きてみるとまた1人になっていた。
 
「えっと・・・どちらが残ってるんだっけ?」
と思って自分のお股を確認する。
 
「あ、ボク女の子だ。今度はMが消えたのか。でも困ったなあ」
と西湖が言っていたら、おキツネさんが何人か出てくる。
 
「西湖ちゃんどうしたの?」
「1人が学校に行って、もうひとりは午前中仮眠しておいて、午後から仕事に行きたいんだけど、1人になっちゃって」
 
「京平さんに頼んだらきっと何とかしてくれるよ」
「あ、ここの主(ぬし)の偉いおキツネさんだね」
「そうそう。京平さんはお母さんも凄いんだよ」
「へー」
 
それでおキツネさんたちは京平を呼んできた。
 
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「西湖ちゃん、こんにちは」
「こんにちは、京平さん」
 
それは何だか幼稚園生くらいの男の子に見えた。スカート穿いてるのはそういうのが好きなのかな?(スカートを穿いていても男と分かるのは自分も男の娘だから!)
 
「西湖ちゃん、この指輪をあげるよ」
と言って彼は緑色の石が入っている指輪を渡してくれた。
 
「右手の人差し指に填めて」
「はい」
 
「それで2人になるように念じてごらん」
 
西湖が「ふたりになれますように」と念じると、西湖は2人に分裂した。
 
「わぁい!2人になった」
 
なお、指輪はFの右手に残っている。
 
「よかったね。でも2倍疲れるからね」
と京平さんが言う。
 
「それは慣れてます。ありがとうございました」
「ふたりに別れる時だけ填めてれば、後はポケットとかに入れておいてもいいから」
「分かりました」
 
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それで京平さんは鏡の中に戻っていった。
 
それでこの日、西湖はFが学校に行き、Mは午後から仕事に出かけたのである。でも、夕方にはFはMの中に合流した。それで指輪で分裂した場合、時間制限があるのかな?と西湖は思った。
 

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11/4の夜、2人に別れた龍虎のほうは、楽しくおしゃべりしながら夕食を食べ、交替でお風呂に入ってから、
「絶対何もしないから」
とFが言うので、ひとつのベッドに並んで寝た。
 
(11/5)朝5時に起きたが、2人のままである。そのまま一緒に朝御飯を食べる。
 
「なんかこのまま行けるのかも。Mが仕事に行かない?」
「それもいいかな」
と言ってMが出かける準備をする。
 
「え〜?ズボン穿くの?」
「僕、男の子だし」
「男でもスカート穿けばいいのに」
「僕のズボン捨てないでよね」
「あれは彩佳のせいだよぉ」
「でも黙認してるんでしょ?」
 
そんなことを言っていた時、Mがむせた。
 
「大丈夫?」
と言ってFがMの背中を叩いてあげる。
 
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ところがその時突然Mは後に気配が無くなったので驚く。
 
「F?」
と言って見回すも誰も居ない。
 
「うっそー!?なんで?」
 
龍虎Mは念のため全ての部屋を見て廻ったが、自分しか居ないことを認識する。
 
「僕が消えてFが残ることになったんじゃ無かったの〜?」
とMは戸惑うように声をあげた。
 

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しかし仕事がある。出かけなければならない。それで今日の仕事のスケジュールを確認し、持ち物を揃えてから出ようとしていた時、唐突にまた2人になってしまった。
 
「あ、また2人になった」
「取り敢えず仕事に行く」
「いってらっしゃーい」
と言ってFはMにキスした。
 
「ちょっとそういうのやめろって」
「早く行かないと。河合さん待たせるよ」
「うん」
 
それでMは和城理紗に“心の声”で呼びかける。原宿界隈のマンションに転送される。その前の通りに“アクアのアクア”がハザードを焚いて停まっているので、駆け寄る。
 
河合マネージャーに
「すみません。遅くなりました」
と声を掛け、彼女の車で今日の仕事先に向かった。
 
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しかしその日Mが帰宅するとFは居なかった。
 

翌日(11月6日)、朝8時頃、龍虎はまた2人に分裂した。
 
「もしかしたら、しばらく1人になったり2人になったりするのかも」
「そのうち完全に1人になるんだろうけどね」
 
「それでさ、ふと思ったんだけどさ」
とFは言う。
 
「最初にボクだけになった時、Mがボクの背中のファスナーを締めてくれてたよね」
「うん。あの状態から唐突に自分がどこかの空間に飛ばされる感覚があった」
 
「次にMだけになった時は、Mがむせてボクが背中を叩いていた」
「そうそう」
「その状態からボクもいきなりどこかの空間に飛ばされた」
「やはりね」
 
「それで思ったんだけどさ」
「1回交代?」
「合体する時に前の方に居た側に統合されるのでは?」
 
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「位置関係なの〜〜?」
 
実はFは数ヶ月前に千里さんが言ってた、ガッターロボ(?)とかいうのの合体の話を思い出したのである。組合せにより別の機能を持つ合体ロボ。千里さんはきっとボクたちがこういう状態になることを知ってたんだ。
 
「あり得ると思わない?」
「かも知れない」
 
「昨日は夕方17時頃にボク消えちゃった。今日はMが仕事に行かない?でもボクも近くまで行ってるからさ。それで17時頃、前後に並んでみようよ。そしたらきっとその時、前にいる側に統合されるよ」
 
「それが本当なら、どちらが表に出るかをコントロールできることになる」
「いつ2人に別れるかは分からないけどね」
 
それでその日(11/6)Mが朝から仕事に出かけ、Fは日中はドラマの台本を読みながらマンションで過ごし、夕方放送局に出かけた。そして17時頃Mがトイレに行くと称して中座。Fと“心の声”で連絡を取りながら、トイレ(むろん女子トイレ)の個室で落ち合う。そしてFが前・Mが後に並んでいた(5分ほど待った)ら、本当にFに統合されたのである。
 
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『これは意外に便利かもね』
『当面これで何とかなりそうな気がする』
『あとは分裂をコントロールできたらいいんだけどなあ』
 

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夏の日の想い出・龍たちの伝説(15)

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