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■夏の日の想い出・龍たちの伝説(3)

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私は8月23日のアクア・ライブに先立ち“実情”を確認しておく必要を感じて、その日、千里2が住んでいる葛西のマンションを訪れた。
 
(現在、千里3(+1)はさいたま市のマンションに、京平君、青葉の婚約者・彪志君と3人で暮らしている。桃香は早月ちゃん・由美ちゃんと一緒に高岡の実家にいる。京平君だけこちらに来ているのは、幼稚園に通うためである)
 
「ぶっちゃけた話さ、龍虎って今基本的にはMとFの2人だけど、たまにNが実体化して3人になっていることがあるみたいなんだけど、何か法則性あるの?」
 
「別に無いけど」
と千里2は、さすがにガードが堅い。
 
「いや、8月23日に生ライブするからさ、一応前半と後半を分担して歌わせるつもりなんだけど、ライブ中に分裂したり合体したら困ると思って」
 
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千里は少し考えていたが、言った。
 
「桜木ワルツと和城理紗は察しているみたいだけど、冬は気付いてなかったか。山村マネージャーも気付いてないみたいだしね。龍虎の分裂と西湖の分裂は連動している」
 
「そうなの!?」
 
「そして私の分裂と龍虎の分裂はシンクロしている」
 
「連動とシンクロってどう違うわけ?」
 
「私の分裂と龍虎の分裂は無関係なんだよ。ただお互いに関わりが深いから、影響される。誰かがくしゃみしたら、近くの人もつられてくしゃみするようなもの」
 
「龍虎と西湖は?」
「私も不確かなんだけど、どうも2人で4人分のエネルギーを共有しているみたいなんだよ。だから、龍虎が3人になると西湖は1人になり、龍虎が2人になると西湖も2人になる」
 
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「へー!」
と私は感心した。
 
「龍虎が1人に戻ったら葉月が3人?」
「いや。葉月も1人になると思う」
「残りの2人分のエネルギーは?」
「どこかに行く」
「うーん・・・」
 

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千里は立ち上がって、窓の外を見ながら言った。
 
「コスモスちゃん、龍虎、山村、と一緒に一度詳細を打ち合わせない?きっと今回のアクアのライブはアクアが2人の状態でのラストライブになる」
 
「統合は近いということ?」
「11月か12月までには統合されると思う」
と千里は言った。
 
「どちらが残るの?」
「どちらも残るよ」
「2人のままなの?」
「いや1人になる」
「意味が分からないんですけど!?」
 
「まあその時になったら分かるよ」
と千里は言ったが最後にこう言った。
 
「イベントの時にアクアが3人必要なら、ちゃんと3人になるようにこちらでコントロールするから」
 
「ありがとう。頼む」
 

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私はコスモスとも話し合った上で、コスモス・千里・私・山村に、佐藤ゆか・大崎志乃舞の2人も連れて、その日、龍虎のマンションに集まった。
 
龍虎のマンションに来てみると、アクアが2人いる。
 
「嘘!?アクアさんって双子だったんですか?」
とゆか・志乃舞が驚いていると
 
「ボクだよーん」
と言って葉月がフェイスマスクを外した。
 
「びっくりしたぁ」
 
「これ少年探偵団で使っている差分フェイスマスク。本人の顔と偽装する人の顔を各々立体スキャンして、コンピュータで差分を計算して、その人が装着することで、偽装する相手の顔に見えるようにできてるんだよ。瞬きもするし視線も移動するから結構自然」
 
「すごーい」
 
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「明るい所で見るとさすがにすぐバレるけど、ステージの上でなら誤魔化せると思う」
「ああ」
 
それで、ゆかと志乃舞も自分たちが何をするのかを悟ったようである。
 
「鼻の位置は動かせないから、それを中心として配置換えしてる。目の所が見にくいから、楽譜を見ながら演奏するのはちょっときつい。暗譜しておくことが必要」
「それは大丈夫ですよ」
 
「それで今回のライブでこういう演出をしようという訳」
と言って、私は彼女たちに、コスモス・私・アクアたちの4人で話し合って決めた演出を説明したのである。
 
「そうか。それで私とゆかちゃんが呼ばれたのか」
と大崎志乃舞は言った。
 
「これには、ヴァイオリンの弾ける子が3人必要だからね。ひとりは葉月が務めるけど、あと2人をゆかちゃんと志乃舞ちゃんに頼みたい」
 
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「分かりました!」
 
「歌う方の代役さん2人は君たちとはまた別途頼んでいるから」
「アクアさんがウヨウヨですね」
 

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2020年8月23日(日).
 
この日のイベントで、午前中に行われた§§スターズの公演(無料放送)では冒頭のラピスラズリの視聴率が物凄かった。朝8時からの放送というのにいきなり500万回線(あけぼのテレビ)+110万回線(★★チャンネル)接続され、技術者たちが焦る。★★チャンネルは本来100万回線しか同時接続能力が無いので実はいったんダウンしたのだが、フレームレート(**)を落として1分後に再開し、何とか持ちこたえた。結果的にはこれが本番の予行練習にもなった。
 
ラピスラズリの後は、あけぼのテレビが200万回線、★★チャンネルが50万回線くらいに落ち着いたので、★★チャンネルも本来のフレームレートに戻して配信を続けた。
 
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(**)動画というものは基本的にはパラパラ漫画の原理であり、短時間に多数の画像を表示して動いているように見せている。この表示速度をフレームレート(Frame rate)と言い、通常のカラーテレビでは1秒間に約30枚で 30Hz といい、劇場映画では1秒間に約24枚で 24Hz という。映画とテレビの速度が違うので、劇場映画をテレビで放送する場合、余分なフレームを適宜挿入して速度を合わせる必要がある。あけぼのテレビは番組を在来テレビ局と融通しあうこともあるので、在来テレビ局と同じ撮影速度で番組を制作している。
 
(正確には30Hzではなく29.97Hz(30000/1001)、24Hzではなく23.976Hz (29.97×0.8)である。こういう微妙な速度になっているのは、音声信号と画像信号が干渉しあわないようにするためである)
 
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この前座のライブはアクアの本番が行われる深川アリーナではなく、大田区のあけぼのテレビのスタジオを使用している。
 
多数のアーティストが演奏するため毎回消毒が必要なので、2つのスタジオを交互に使用し、次の人が歌っている20分間に“お掃除ルンバ隊”により、消毒と清掃を行うのである。その様子もサブチャンネルで視聴することができる。
 
11:00-11:30の30分間はお休みで、その間はアクアの過去のPVが流されたのだが、これがまた凄い視聴率で技術者たちを焦らせる。
 
11:30-13:30の第2部は有料放送だが、定額料金で見られるので視聴率は高かった。白鳥リズムで500万回線+90万回線、姫路スピカでも400万回線+80万回線来たので技術者たちは、万一の場合に備えながら様子を見守った。
 
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13:30-14:00の30分間はお休みで、ラピスラズリが『作曲家アルバム』で様々な作曲家先生の前で歌ったビデオ(〒〒テレビに放映権料を1000万円払っている)を流し、テロップで14:00からのアクアのライブは定額視聴料では見られないので特別視聴料(視聴チケット)が必要であることを案内する。ラピスラズリなので視聴率が凄いが、この時間帯にアクアライブの視聴チケットを購入した人の累計が推定400万人に達し、本番はかなり凄い視聴率になることが予測される。
 
(決済は1ヶ月以内にすればよいしチケット購入自体もホストとの通信は不要である。ホストが空いた時に順次処理される:未処理でもちゃんと視聴できる。ローソンチケットの源流会社のひとつの設計に関わった後藤さんの設計が生きている)
 
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14:00.
 
深川アリーナに大きな歓声が響く。
 
深川アリーナには5000個の椅子が並べられ、1000個のプロジェクター(+PC)と4000枚の書き割り(ファンから送ってもらった写真をボール紙に印刷したもの)が並べられている。スピーカーから歓声も響く。
 
液晶パネルと違ってプロジェクターで映した映像は、どの角度からでも見られるので「はめ込み合成」する必要がない(震災イベントの時に大量の大型液晶パネルが確保できなかったために取った苦肉の策が、結果的に怪我の功名となった)。技術的にはプロジェクター側のフレームレートがこの番組撮影のフレームレートより速ければきれいに映る。実際にはプロジェクタは60Hz, 番組撮影は約30HzなのでOKである。
 
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司会役の川崎ゆりこが振袖姿でステージ端に姿を現し
 
「それではこれよりアクア・オン・ステージ“龍たちの伝説2020夏”を開始します」
と開会の宣言をした。
 
深川アリーナの緞帳がアップするのと共にエレメントガードの伴奏が始まる。最初の曲は『ぼくのアクア』である。そしてステージ下手から、“アクアのアクア”を運転してアクアが登場すると、会場は物凄い歓声である。
 
この歓声は予め抽選で選んだファンクラブ会員1000名(男女500人ずつ)の所にマイクを設置してリアルタイムでスピーカーで流しているものである。会場の座席上のモニターに映っている1000人とは別である。
 

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中央までゆっくり走って来た“アクアのアクア”の運転席から、可愛い、白いドレス姿のアクアが降りると
 
「うっそー!?」
という驚きの声。そして
 
「可愛い!」
という歓声が響く。
 
アクアが女の子衣装を着けてライブステージに登場したのはこれが初めてである。
 
「とうとうアクアが女の子になったことをカムアウトか?」
などという書き込みがネットを走る。
 
視聴率は高まり、当初300万回線でスタートしたのがわずか5分で600万回線まで跳ね上がる(その間に200万人以上が視聴チケットを購入してくれたことになる)。
 
★★チャンネルが一時的にダウンする!がラピスラズリの時に一度やっているので、またフレームレートを落として3秒で復旧させる。すぐ復旧したので、あけぼのTV側に流れる人は無かった。そもそも有料放送なので、みんな簡単には移動できないのがこういう時に効いている。なだれ現象が起きたら共倒れする。こういう番組は絶対無料放送できない所以(ゆえん)だ。(ラピスは油断していた)
 
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女の子衣装を着たアクアはその後、比較的最近リリースした曲から『ぼくたちは兄弟姉妹』『あの雲の下に』『ラブ・キャンディ』といったナンバーをとても可愛く歌う。
 
その姿は少女歌手にしか見えない。更に
 
「これ北里ナナさんの歌なんですけど、カバーで」
などと言って、『青い城の姫』『白雪姫』『少女の祈り』などナナ名義の曲を5曲、やはりとても可愛く歌った。
 

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ともかくも前半は“可愛い女の子アクア”であった。
 
「アクアちゃん、女の子になったの?」
という声も会場では掛かったが、アクアはそれには答えなかった。普通の質問には、
「お昼何食べた?」
というのに
「モスバーガー食べたよ」
とか
「そのドレス可愛いね」
というのに
「キクチヒロエさんのデザインだよ」
とか答えていたが、性別に関する質問には何も答えなかった。結構MCもしていたのだが、自分の性別については何も言及しなかった。
 

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司会の川崎ゆりこが「10分間お休み頂きます」と言って、緞帳(どんちょう)が下りる。その緞帳の前に最初、白鳥リズムと姫路スピカがお揃いのセーラー服を着て出て来ると「偽ラピスラズリでーす」などと言う。観衆はけっこう喜んでいる。そして2人のギター弾き語りで『亜麻い雨』を歌う。その後、本家ラピスラズリがお揃いの瑠璃色のドレスを着て登場し、カラオケで『夢見るからくり人形』と『赤いセンターライン』を歌った。
 

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