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■夏の日の想い出・龍たちの伝説(7)

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ここまで制作が終わった夕方、唐突にアクアNが具現化した。千里が
「彼は朝までには消えてしまう」
と言うので、夜中で申し訳無かったが、スタッフに交替で仮眠を取りながら頑張ってもらって、夕方19時から朝5時まで掛けて、残りの2曲の録音とPV撮影をおこなった。
 
『パールの優しさ』は、思いを寄せていた女の子が、友人の男の子に取られてしまうものの、優しいまなざしで2人の幸せを祈るという歌である。そこには悔しさも嫉妬もなく、ただ好きだった人が幸福になることだけを祈る、とても広い優しさに満ちている。しかし発表後、こういう気持ちは必ずしも理解されなかったようで、結構議論を呼んだ歌である。
 
正直この歌詞は、若くて包容力と寛容さを持つ、花ちゃんにしか書けなかったと思った。むろん青葉は理解してそれによくあった曲をつけたし、アクアNもそういう気持ちをよく理解して歌ってくれた。
 
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『ダイヤモンドの意志』は逆に好きな人に何度も何度もアタックし、相手が根負けして最後は交際に同意してくれるという、ハッピーエンドの歌である。彼がアタックする女の子の顔は映っていないが、実はアクアFが務めている。
 
パールでは乳白色のワイシャツに黒いパンツを穿いている(ドレスの予定だったがNの希望により変更)。またパールのネクタイピンを使用している。
 
主人公の男の子の思いに気付かなかった女の子と、彼女を誘った男の子は顔が映っていないが、実はアクアFとアクアMである。つまりこのPVは3人のアクアが揃い踏みした貴重なビデオになっているのである。
 
ダイヤモンドでは白銀色のスーツを着ていて、ダイヤのアクセサリーはつけていないが、ビデオのラストで、ダイヤの指輪を彼女に差し出し、彼女が左手を出すので、その薬指にダイヤの指輪を填めてあげるところで終わっている。
 
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「これがラストでもいいくらいだ」
と山村さんが呟く映像になった。
 

「あれ〜。また1人になっちゃった」
とその夜、葉月は言った。
 
1月に2人(聖子F・西湖M)に分裂して以来、時々急に1人に戻ることがある。
 
「今度はどっちになったんだっけ?」
と思って自分のお股を触ってみる。
 
「あ、今回は女の子だ」
 
どうも1人になる度に、男の身体が残ったり、女の身体が残ったりするのである。意識は男西湖の意識・女聖子の意識が共存している。二重人格と似たような状態である。
 
西湖はその時によって、自分が男でありたい気持ちと女になってもいい気持ちとの強弱があって、その時に強い方が残るのかな?などと考えていた。
 
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自分自身、性別をどうしたいのか、結構揺れているのかもと西湖は思っていた。ちなみにアクアさんのライブをやった時はMが残っていた。
 
聖子は朝起きてみたらまた2人に分裂していた。それでいつも通り、聖子Fが朝から学校に行き、西湖Mは午前中仮眠しておいて、午後から仕事に出かけた。
 

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アクアNによる歌唱録音は夜通し続けられ、朝6時頃終わった。
 
そして終わってから「お疲れさんでした」などといって軽食をもらって食べながら技術者さんがミックスダウンして再確認でできあがった音源を聞いていた時、Nは唐突に消えてまたFとMの中に半分くらいずつ吸収された。
 
Fが寂しそうな顔をしていた。
 
コスモスが言った。
 
「ねぇ、ダイヤを最後にしない?」
 
「ボクもそれがいいと思います」
とFも言う。
 
「組み替えるか」
と私も言って、コスモスと話し合い、次のような順序に変更することにした。
 
『揺れるトルマリン』(F+M)
『パールの優しさ』(N)
『トパーズの溜息』(F)
『サファイアの高貴』(M)
『アクアマリンの期待』(M)
『ルビーの情熱』(F)
『ダイヤモンドの意志』(N)
 
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アルバムタイトルも『宝石箱−A Boy and A Girl』とすることにした。
 
「なんかきれいにまとまったね」
「うん。わりと美しい物語にまとまった」
「これで映画を作りたいくらいだ」
などという声も出るが
 
「さすがに映画作る時間は残ってないだろうなあ」
とFは少し寂しそうに言った。
 
これがもう9月下旬であった。
 

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しかし映画を作ってしまうのである!!
 
コスモスは『気球に乗って5日間』で助監督を務めたほか、『時のどこかで』の一部、『ねらわれた学園』『少年探偵団』の監督も務めてくれた河村貞治さんに話を持ちかけた。
 
「実はマクラが近く結婚することになって」
「え〜!?」
 
“マクラ”というのは、アメリカに住んでいるアクアの従妹で顔がアクアとそっくりの子という設定の存在である。
 
「しばらく日本にも来られなくなるので、記念にアクアとマクラで青春映画を作れないかと思いまして。建前上は、アクアが男の子と女の子の2役をしているということにして」
 
「それすぐ脚本書かせる」
 
と河村さんは言ってくれた。大曽根部長の承認もすぐに下りた。制作費は§§ミュージックが全額を負担する。脚本は、『ねらわれた学園』の脚本を書いた、小森勇子さんがわずか1週間で書き上げてくれた。
 
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「さすがに勘違いとかで矛盾点があるかも。気付いたら自由に修正して」
「了解了解」
 

それで10月頭から、この映画の撮影が始まってしまったのである。アクアは通常のドラマやバラエティの出演をこなしながらこの撮影に臨んだが、さすがにレギュラー以外の番組の話は、コスモスが先方に謝って、ラピスラズリ、白鳥リズム、姫路スピカなどに振り替えた。一部は品川ありさや高崎ひろかに頼み込んで代わってもらったものもある。
 
「プライドが傷つけられるかも知れないけど」
とコスモスは彼女たちの謝ったが
 
「あの忙しい仕事の合間に映画まで撮るなんて、下手したらアクアが倒れますよ。やれるだけ代わりますから、どんどん持って来てください」
と2人とも言ってくれた。
 
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葉月は1人が映画のボディダブルに取られるので、この月のアクアのテレビ関係の仕事のリハーサル役は、ほとんど佐藤ゆかが務めた。そうしないと葉月は2人いてもとても身体がもたない。しかし佐藤ゆかは「体力持たない!死ぬ!」と叫んでいた。
 

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映画の出演者はこのようになった。
 
一志:アクア
藤子:アクア(二役)
一志が思いを寄せていた女の子:元原マミ
その女の子と恋人になった男の子:七浜宇菜(男装!)
藤子と恋人未満だった男の子:松田理史
一志の友人たち:篠原倉光、木下宏紀、弘原如月
藤子の友人たち:桜井真理子、中村昭恵、三田雪代
 
アクアと長い付き合いの、元原マミ、松田理史が偶然10月だけは空いていたので、出演をお願いした。七浜宇菜はたまたま大和映像に遊びに来ていて所を河村さんが
 
「アクアちゃんの映画撮るんだけど、出ない?」
「出ます!」
という会話で出演が決まった。
 
「アクアちゃんの恋敵の役なんだけどいい?」
「それ男役ですか?女役ですか?」
「どっちだったっけ?」
 
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ほか、友人達役では、信濃町ミューズ・信濃町ガールズから数人が出演する。
 
タイトルは『君はダイヤモンド』で、クライマックスにアクアの『ダイヤモンドの意志』が流れることになる。つまり、Nの歌唱がこの映画に残ることになった。但し伴奏を差し替えた別テイクを使用する。
 

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この映画の前半のヒロインは元原マミで、彼女はこの映画の準主役にもなっているのだが、マミの恋人役が、アクアと宇菜で、世間的にはアクアは実際には女の子ではという疑惑があるので
 
「男装女子2人に愛される役だ」
などと言われることになる。
 
ちなみに、宇菜は充分男に見えるけど、アクアは男装していても女の子に見えるなどという評もあった。
 
この映画には、宇菜が男子トイレで男子の友人と連れションするシーンがあるが、宇菜は後で雑誌のインタビューで「ボク、実際に立っておしっこするのできるよ」と答えて「さすが宇菜」と言われていた。
 
立っておしっこするのが得意というと、白鳥リズムなどもわりと公言している。
 
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この撮影では、時間が無いということもあり、ボディダブルをできるだけ使わずに2人のアクアを、元原・松田および宇菜の3人にだけは見せて、時間を掛けずに撮影をしている。
 
「へー。アクアちゃんの従妹なんだ?」
「ほんとにそっくり」
「演技もアクアちゃん並みにうまいね」
と3人は感心していた。
 
彼女の存在が知られると記者とかに追いかけられて安寧な生活ができなくなるので秘密にしておいて欲しいという要請には3人とも承諾した。3人ともその辺りは充分信頼できる人だし、よけいな詮索はしない人たちである。
 
「あれ?もしかしててこないだの“カナダ”での写真集って、実はマクラちゃんだったとかは?」
 
「実は2人で撮っているんだよ。ビキニとかの写真は仮名・マクラで、ラッシュガードとかワンピース水着を着た写真はボク。だから7割くらいはボクなんだけどね」
 
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「やはり女の子水着を着たんだ?」
「男子水着の写真は需要無いって言われて」
「それは言えてる」
 
「でもさすがにビキニは無理」
「いや、男の子なのにワンピース水着を着ているだけでも凄い」
「ギャラは2人で山分けした。でもこれ内緒でね」
 
「OKOK」
 
「ボクもいっそ男装写真集撮ってもらおうかなあ」
と宇菜が言うと
 
「それ事務所に話持ちかけてみなよ。宇菜ちゃんは水着の写真集とかより、格好良く男装した写真集のほうが絶対売れるし」
と松田君が言っていた。
 

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ともかくも、これでこの年、アクアは主演映画を3本も撮ることになり、後に“俳優アクアの元年”とも言われることになる。
 
(“女優アクアの元年”ではないかという説もある!)
 
撮影していて河村監督は、正直、恋愛禁止のはずのアイドルでちゃんと恋愛物語が撮れるだろうかという不安が少しあったらしいが、マクラちゃんが、さすが結婚が決まっているというだけあって、恋する乙女の表情をしてくれて、いい撮影ができた、と、ずっと後に語っていた。
 

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2020年10月2日(金).
 
この日も満月だった。
 
ローザ+リリンのマリナが男の子を産んだ。産気づいてから丸1日かけての出産だった。マリナはかなり苦しんだようだが
「これは安産の内」
などと母親から言われて
「そうなのぉ?」
と情けない声で言った。
 
ずっと付いていてくれた姉の歩は
「赤ちゃんなんて産むもんじゃないなと思った」
などと言っていたが、
「あんたも40歳になる前に1人くらい産んでおいたら?」
と母親に言われていた。
 
「箱とか袋ってさ、いかにも開きそう方ではなく、開かなそうな側から開くこと多いじゃん」
と歩は言った。
 
「ああ、わりとそうかもね」
「どこからでも開きますなんて書かれているのは、まずどこからも開かない」
「あれ、イライラするよね」
 
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「だから、いかにも赤ちゃん産みそうな私じゃなくて、産まなそうなマーちゃんのほうが赤ちゃん産んだのよ」
と歩は言った。
 
「だけど赤ちゃんって諦めた頃に突然できるとも言うよ」
とマリナは言っておいた。
 
「既に諦めてから10年くらい経つけどなあ」
「10年前ってまだ結婚してないじゃん」
 
しかし歩は翌月妊娠が発覚するのである!結婚して7年目の初妊娠に歩の夫が狂喜していた。。
 

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2020年10月11日(日).
 
私がローズ+リリーのアルバム用の曲を書いていたら、政子が寝室から出て来て
 
「産まれそう」
と言う。
 
「病院行こう」
と言って、私は政子を連れて地下駐車場まで降りると、アクアの後部座席に乗せて病院まで行った。
 
しかし先生は政子を見ると
「まだ数日先ですね」
と言った。
 
「だってこの子、かなり動いているのに」
「あと1週間くらいしたら出て行くよ、というアピールでしょう。本当に産まれそうになったら、また来てね」
と言われてしまう。
 
「でも私苦しい」
と政子は訴える。
 
私は言った。
「私、この子と2人で共同生活しているんですが、仕事が忙しいので、常に付いているという訳にはいかないんです。入院したらいけません?」
 
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「うん、それはいいよ」
とお医者さんも言うので、入院させることにした。
 

連絡を受けてお母さんが出て来た(あやめはお父さんに任せた)ものの、説明を聞いて「なーんだ」と言う。
 
「あんた2度目なのに」
「だってほんとに苦しいよぉ」
「産む時はもっと辛いからこの時期に騒いでもしかたないよ」
「えーん。冬、代わってよぉ」
「私のお腹の中に入っているわけじゃないから無理」
 
結局、しばらく麻央が日中付いていてくれることになった。私の実姉の萌依は現在妊娠3ヶ月なので、負荷をかける訳にはいかない。
 
(萌依の夫が小山内和義さんで、麻央はその妹。麻央の夫は佐野敏春で、私と佐野君と正望は高校の同級生。麻央は私の小学校の時の同級生)
 
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それで政子は入院中、麻央とアクアをネタに楽しくおしゃべりしていたようである。あけぼのテレビの『アクア改造マル秘計画』の方は出産後1ヶ月くらいまでお休みさせてもらうことにするが、光帆が
 
「綿密なアクア拉致計画を立案するからまかせといて」
などと張り切っていた。光帆も妊娠中だが、予定日は3月なのでまだ余裕がある。
 

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さて、マリの産休期間に、私はKARIONのアルバムの制作に入った。
 
私がこちらの作業に入った時点で、既に伴奏はできているし、和泉のリードボーカルはもちろん、更には小風と美空のパートも吹き込まれており、結局私のパートを乗せるの待ちだったのである。
 
私は黒木さんと2人だけで、この作業を進め、約2週間で12曲の歌の私のパートを吹き込み終えた。コロナの折、分散収録をせざるを得ないというのは分かるが私は何だか寂しい気持ちになったのだが、収録中に結構美空や小風が様子見に顔を出してくれたし、多忙な和泉も差し入れを入れたりしてくれて、私は4人の連帯感を感じながら、作業を進めることができた。
 

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夏の日の想い出・龍たちの伝説(7)

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