広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・振袖の勧め(12)

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このあと場面は耕児と和美が校舎裏の体育倉庫で密かに会話するシーン、西沢響子が数人の生徒(玲子を含む)を塾に誘うシーン、耕児の夕食での両親との会話シーン、楠本和美の方の自宅での夕食シーン、また和美が超能力に関する資料を色々調べた上で、何やら計画表のようなものを紙に書いているシーンが続く。
 
更に真夜中に外を歩いている白い服の生徒達を見た耕児がその後を付けて高見沢みちると京極(大林亮平)のペアに遭遇する。
 
耕児は京極の凄まじいパワーを見せつけられ、かなり緊迫したやりとりがあった末、結局、京極は耕児のことが気に入ってしまう。
 
「うちの塾に入らないかい?」
とも言われるが当然耕児は拒否した。
 
京極は笑顔で「また会おう」と言って高見沢みちると一緒に去って行くが、耕児は金縛りにあったかのように、その場からしばらく動けなかった。
 
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ここまでに既に30分近く経過しているが、いまだに高見沢みちるの顔は映らない。放送局のツイッター・アカウントから「あの人の中の人が誰なのかは17:44頃に明かされます」という情報が流されている。「ありさちゃんのお顔を早く拝みたいよぉ」という書き込みが多数見られる。ほとんどのネット住人が高見沢みちる役は品川ありさだと信じている感じである。
 
翌日午前中に数学のミニテストが行われるが、ここでこれまでいつも下位の成績であった青山玲子(今井葉月)が
 
「すごーい!90点も取れた」
と言って喜ぶ。
 
「よく頑張ったね」
と周囲の子から言われ
「どういう勉強したの?」
と訊かれる。それで玲子は
 
「うん。西沢さんから誘われて英光塾に行ったおかげだよ。あそこの教え方って変わっていて、人間の潜在能力を引き出すんだって」
と玲子は言うが
 
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「ちょっと塾の中のこと他人に言ってはダメと言ったでしょ?」
と西沢響子から注意される。
 
「あ、ごめんなさい」
と言って玲子は恐縮するものの、他の女子生徒(和美を含む)はお互いに顔を見合わせた。時刻は既に17:34である。
 

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いよいよ学級会のシーンとなる。本来ならパトロール委員が数名同席する所を高見沢みちるが自ら教室に入ってきて着席する。しかしまだみちるの顔は映されない。
 
一郎の処分を決める会議が、耕児の司会で始められるが、厳しい処分を求める西沢響子(馬仲敦美)に対して、荻野君(松田理史)は処分の必要は無いとして議論になる。しかしクラスの大半は荻野君の意見に同調する。それで決を採ろうとしたところで耕児が頭を押さえて倒れる。
 
そして倒れてうずくまる耕児の向こうに初めて高見沢みちるの顔が映った。
 

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その数秒後、いくつかのSNS系サーバーがダウンした。
 
「うっそー!!!!」
「高見沢みちるってアクアだったの!?」
「1人2役か!!」
「えーん。ありさちゃんじゃない!!!」
「きゃー、アクア様〜〜〜!!!!」
「アクアちゃんのセーラー服姿可愛い!!!!!」
 
様々な立場の書き込みがあり、その書き込みを見た人が慌ててTVを点けたりチャンネルを変えたりした結果、この教室での対決シーン、番組の視聴率は50%を越えたらしい。冬休み期間中とはいえ平日17時台の番組でこんな視聴率が出るのは異例である。
 
倒れた耕児に代わり、副代表委員の和美が教壇の所に立つ。「決を採ります。吉田君の処分が必要だという人」と言って、響子と、響子から睨まれた玲子(今井葉月つまり西湖)が手を挙げる。しかし今度は和美が頭を押さえて倒れる。向う側に厳しい視線を送る高見沢みちる=アクアの姿が見える。
 
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しかし和美が倒れて苦しみだしたら、今まで倒れていた耕児が起き上がり、頭を押さえながらも「では吉田君の処分は必要無いという人」と言うと響子・玲子以外の全員が手を挙げる。しかし耕児=アクアは再び頭を押さえて倒れる。それを向こうで厳しい視線の高見沢みちる=アクアが見つめる。
 
「この番組では合成やCGは一切使用していません」というのがあらためてテロップで下に流れる。実際カメラは耕児と高見沢みちるの顔を絶対に同時には映さない。
 
耕児の顔が映る時は高見沢みちるは西湖のボディダブルであり、高見沢みちるの顔が映る時は、耕児が西湖のボディダブルなのである。
 
しかしこのシーン、アクアは耕児とみちるの1人2役をしているが、西湖は2人のボディダブルに加えて、玲子までやっている。つまり1人3役である。なかなか忙しいなと私は見ていて思った。
 
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結局、耕児と和美はみちるが同時には1人しか攻撃できないという欠点を利用して2人で交代で議長を務め一郎を守り抜くが、捨て台詞を言って教室を出て行く高見沢みちるが最後にギロリと西沢響子を睨んだ。響子は倒れたりしなかったものの、顔面蒼白になる。
 
それを見て、おろおろしたような顔をする玲子まで一瞬映ったが、美味しい役どころじゃんと私は思った。
 
今回はそこで番組が終了する。
 

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次回の予告編が流れた後、セーターとロングスカートにも見えるガウチョパンツという姿のアクアが何かの機械の前に立っている様子が映る。髪の長さもショートカットの女の子くらいの長さ、アクアの地毛である。
 
またもやネットでは
「アクアちゃん、可愛い〜!」
「アクアちゃん、スカート似合ってる!!」
という書き込みがあふれる。
 
スカートではなくガウチョパンツというのは認識していないファンも多いようだ。そのアクアはおなじみのボーイソプラノで
 
「えー、この機械がおなじみボイスチェンジャーです。そしてこちらが関耕児のウィッグ、こちらが高見沢みちるのウィッグです」
と言い、ふたつのウィッグを両手に持ってみせた。
 
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最初に髪をヘアピンで留めて上にあげてから関耕児のウィッグを頭にかぶると、ボイスチェンジャーに接続したマイクに向かって
 
「超能力にはめげない」
と話す。ちゃんと関耕児の声、男の子の声になっている。
 
次にアクアは高見沢みちるのウィッグをつける。そしてまたマイクに向かって
 
「超能力って何のことかしら?」
と話す。ちゃんと高見沢みちるの声、キリリとした雰囲気の女の子の声になっている。
 
「まあそういう訳で、不肖私が対立するふたりの役を両方やらせてもらっています。でもこれってどちらが正義かって考えても仕方ないんですよね。関耕児も高見沢みちるも、どちらも自分が正しいと思って行動している。学校の秩序を守りたいみちると自由を守りたい耕児。正義と正義のぶつかりあいなんです」
 
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とアクアは意味深な言葉を述べて、この日の特別シーンを終えた。
 
なお番組オープニングのクレジットは次回から「関耕治・高見沢みちる/アクア」という表示に変わった。
 

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このシーンでガウチョパンツ姿だったことについてアクアは後で
 
「最初スカート穿いてと言われたんで、嫌ですと言ったんです。そしたらこれはパンツだよと言われてあの裾の広いパンツ渡されたんですけど、あとで映像みたら、なんだかスカートみたいなシルエットですね」
 
などと言っていた。
 
彼がほんとうにガウチョパンツがレディース用の服であることを認識していなかったのかどうかについてはネット住民の意見は分かれる。
 
そして主として女性ファンの間では
「アクアちゃんはガウチョパンツじゃなくて普通のスカートでも良かったのに」
 
などという意見があり、一方男性の視聴者の間では
 
「気づかない訳無いじゃん。確信犯だろ?やはり、こいつ女装趣味なのでは?」
という意見もあった。
 
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なお、アクアがこの時に着ていたセーターは「2016 AQUA」という文字が入っていて、ガウチョパンツの方にはアクア(水)を表す波模様が入っていた。この番組の後「そのセーターとかガウチョパンツ売ってないんですか?」という問い合わせが殺到する。
 
元々は春休みのツアーでの販売を想定して生産していたものであったが、プロダクションでは急遽通販方式でセーターとガウチョパンツ、同じデザインのロングスカートを一般販売するとともに、大手コンビニチェーンとも契約して店頭にも置くことにした。
 
最初は女性用のサイズだけを想定して販売計画を進めていたものの、コスモスが「男性が着られるサイズも作った方がいい」と言い、女性用のLL・LLLのセーター(男性用L・LL相当)、更にウェストが76,79,82,85などというスカートまで作ったら、これがかなり売れたらしい。
 
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コスモスはこの放送の翌日、1月5日にうちのマンションに新年の挨拶がてら来ていたが
 
「スカートにハマる男性を増産しているかも知れない」
などと言って若干悩むような表情をしていた。
 
今日のコスモスは加賀友禅の訪問着を着ている。まだ24歳で未婚なのだから振袖を着てもいいのだが、社長という立場なので敢えて訪問着にしたのだろう。
 
「でもロングスカートはわりと男性も穿きやすいよ」
と私は言っておいた。
 
「まあ膝丈スカートだと、むだ毛の処理が大変だもんね」
と政子も言う。
 
「大林亮平が、足の毛を剃るのって、最初やったことが無かったから全然剃れなかったと言ってたよ。あれ要領いるみたい。特に男性の太い毛は」
 
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「ああ、彼もここしばらく何度も女装させられてたね」
「そうそう。最初、例の番組で女装させられた時は女性のエステティシャンが剃ってくれたらしいけど、最近は『大林さん、足の毛の処理は自分でできますよね?』とか『アイラインは自分で入れた方が怖くないですよね』とか言われるらしい」
 
「なるほど」
「その内、自宅から女装で来て下さいくらい言われるかも知れん、なんて言ってたから、ソフィーナの化粧水と乳液にマックスファクターのビギナーズセット、それからスカート5着とブラとショーツのセット10着送りつけておいた」
と政子。
 
「なんか楽しそうですね」
とコスモス。
 
「からかっているだけよ」
と政子は言ったが、目は本当に楽しそうな目をしていた。
 
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女装マニアという人は多いが、政子の場合は《女装させマニア》かも知れんと私は思った。松山君というおもちゃが使えなくなってしまったので、新しいおもちゃが欲しかったのかも知れない。
 
「でもさ」
「ん?」
「大林君、マジでマリのこと好きみたいだから、マリからのプレゼントだったらきっと喜んで、その女の子の服、身につけてるよ」
と私は言う。
 
コスモスも笑っている。
 
「んーん。じゃ、性転換手術のコーディネーター会社の案内と裁判所に出す性別変更申請の書類も送っておくか」
などと政子は言っていた。
 

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「そうそう。そのアクアもあとでこちらに回ってくると思いますから。今日中に主だった先生方の訪問は済ませる予定なので」
とコスモスは言っている。
 
「ああ、明日から学校なのかな?」
「いえ7日からなんですけどね。明日までに挨拶まわりできなかった所はまた週末に回らせますけどね。こちらへの挨拶が遅くなってすみません」
 
「いやいいよ。放送局とかプロデューサーさんとかにしっかり挨拶しとかなくちゃいけないし、東郷先生とか上島先生の方が私たちより優先だし」
「実はそのおふたりで1日ずつ使いました」
 
「ああ、どうして偉い先生は話が長いんだろうね」
 
そんなことを言っていたら、訪問者がある。モニターで見ると川崎ゆりこに連れられたアクアである。
 
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「アクアちゃん? あがってあがって」
と政子が騒いでいる。私は、実際のアクアを見たら、もっと喜ぶだろうなと思いながらマンションの駐車場の入口を開ける。ゆりこの愛車・ポンガDXが中に入っていく。何度も来ているので来客用駐車枠は分かるはずである。
 

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「お邪魔しまーす」
とゆりこが言って、ふたりが入ってくる。ゆりこもやはり副社長ということで訪問着を着ている。彼女はコスモスより1つ下の23歳である。
 
そしてアクアの格好を見た瞬間、政子が「きゃー!!!」と嬉しい悲鳴をあげた。
 
「アクアちゃん、どうして振袖なの?」
「お正月にはタレントさんはみんな振袖着るんだよ、と言われて着せられちゃったんですが、それって女の子だけってことないですか?。みんなボクは振袖でいいとおっしゃるんですけど。上島のおじさんまで『似合ってる』と言うし」
 
などと豪華な加賀友禅の振袖を着たアクアは困ったような顔をして言った。
 
上島雷太先生はアクアにとっては父親代わりである。それでもアクアは人前ではちゃんと「上島先生」と言っているが、身内に近い私たちの前なので普段プライベートで呼んでいる「上島のおじさん」という言葉が出たのだろう。
 
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しかし政子はアクアの言葉を聞くと笑顔で
 
「うん。アクアちゃんは振袖でいいんだよ」
と言い切った。
 
 
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■夏の日の想い出・振袖の勧め(12)

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